ポエトリー:

『月』

 

今宵、
蒸発した細かな雨粒がおぼろげな雲となって爪の先
みたいな月、
薄おっと浮かぶ

風呂上がりに切ったオレの爪
は、ふくよかな歌声を聴いて一目散
に空に伸びてゆき
お前か、そこにいるのは

間違ってはいない
湯上がりの
雫、ポタリと垂れて
戻ってこいよ
戻らないのか平成みたいに

分け隔てなく自由に
ウサギとなって跳び跳ねよ
だからコップに掬ってドボドボと
注ぎたいです栄養を

おぼろげな記憶が
明確な影になってしまうまで
ひとつの本当のことが
なくなってしまうまで

片膝を立て
ゆっくりと息を吸い
私の命が暴れぬよう
ふやけた爪を今日も切ります

詩行が覚めて
爪の先
みたいな月
薄おっと浮かぶ

 

2020年2月

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