健康的

ポエトリー:

「健康的」

 

健康的な体だ
健康的な頭だ
健康的な顔だ
健康的な腹だ
健康的なふくらみだ
健康的なくびれだ

健康的な川だ
健康的な流れだ
健康的な道だ
健康的な位置だ
健康的な旅だ
健康的な速度だ
健康的な渋滞だ
健康的な花と嵐だ

健康的な暑さ寒さだ
健康的な浅さ深さだ
健康的な傘とツルハシだ
健康的な汗と疲れだ
健康的な噂話だ
健康的なすれ違いだ
健康的な別れだ
健康的な驚きだ

健康的な緑だ
健康的な水色だ
健康的な華やぎだ
健康的な結ばれだ
健康的な挑戦だ
健康的な限界だ
健康的な囁きだ
健康的なお囃子だ

健康的な諦めだ
健康的な黄昏だ
健康的な戯れだ
健康的な後悔だ
健康的な終わりだ
健康的なお迎えだ
健康的な墓だ
健康的な順番だ

健康的なお祈りだ
健康的な念仏だ
健康的な生涯だ
健康的な正体だ
健康的な悟りだ
健康的な光だ
健康的な天国だ
健康的な地獄だ

つまりもう
健康的に永遠だ

 

2026年1月

かすれて

ポエトリー:

「かすれて」

 

熱心なひとびとの
事柄が届く頃には
海は荒れて
魂はすさんだ

魂はいつものように服を着て
街へ出た
傍目にはわからないけれど
憎しみをこらえて

往来は最下層の海
人恋しくとも
灯りはささず

ひとそれぞれに
母の言いつけも忘れて闊歩する
命からがら
魂はかすれて

 

2025年11月

儚くも美しき12の変奏 / くるり 感想レビュー

邦楽レビュー:
 
『儚くも美しき12の変奏』(2026年)くるり
 
 
聴きだして2週間ぐらいが経ち、ようやく本作の聴くコツが掴めてきたような気がしている。簡単に言うと今回は言葉とかメロディーとかサウンドをちゃんと聴いた方が楽めるんじゃないかということ。当たり前だろというツッコミは横に置いといて、このところサブスクになったせいかザクッと聴いてしまうクセが付いてしまっている。バンド回帰の前作『感覚は道標』(2023年)なんかはそれでもよかったのだけど、今回の場合はそうしちゃうと曲の全体像がよく分からなくなる現象が少なくとも僕の場合は起こってしまう。前みたいにちゃんと聴く姿勢が必要だということを再確認した。
 
本作に関わるインタビューで岸田繁は、放っておけばインストばかり作ってしまうから今回は歌のアルバムにしようと心掛けた、と面白いことを言っていた。いつも歌ってるんだからいつも歌のアルバムなわけで今回は何が違うのよ、とその真意をもうちょっと深く突っ込んでほしかったのだけど、とは言いながら心構えどおり言葉とかメロディーとかサウンドを慎重に聴いてみると、やっぱり個別に集中した方が楽しめる仕様になっている。
 
インタビューでもうひとつ興味深かったのは、流行りのJ-POPからは距離の置いた、つまりあのAメロ、Bメロ、サビ以外にCメロがあったり、大サビがあったりする複雑な曲展開に反するように(インタビューでは反しますとは言わなかったけど)今回はAメロBメロだけの二部構成で行きます発言。とはいえ、飽きないように、ぱっと見は分からない転調をそこらじゅうで行っているとかで、数年後にこのアルバムの面白さに気付いてくれたらと言っている。この辺の反抗具合がよいなぁと思いつつ、実際それが上手くいっているかというと、つまり僕視点ではあるけど単調に感じないかどうか、飽きないかどうかで言うと、そうでない曲もあるしそうかもって曲もある。そういう実験をくるりはいつもやっているから、そういうこれはどうなんだろう、というのも楽しみ方のひとつ、というのもくるりを聴くうえで最近分かってきた。
 
くるりの歌詞の情景をスケッチしていくみたいなところが僕には合っていて、年齢的にも同世代なので、分かるような分からないような歌詞であっても聴き心地はいい。ただ今回は岸田繫の独白みたいな曲が2曲ある。岸田のnoteはたまに読んだりするがそこには近況報告以外にも今思うところが述べられていて、その2曲もまぁそういう内容にはなるのだろうけど、その辺の雑感的なものを歌にするのはどうやら難しいようで割とユーモアで済ませているようなところはある。とはいえ岸田の個人的な見解であってもどこかのおじさんのひとり言みたいな所在なさが出ているので面白い。これも実験のひとつなのだろう。
 
今回は特にサウンドデザインが聴いてて心地よいので、放っておけばインストばかり作ってしまうのならいっそのこと全部インストにして、そこに1曲目のような朗読を載せる全編ポエトリーリーディング・スタイルでアルバム1枚やってみるのも聴いてみたいと思ったけど実験の多いくるりでもそういう変な振り方はしないバランス感覚は持っている気はする。
 
いろいろと工夫を凝らしているそうなので、なにかひっかりを感じて改めて言葉とかメロディーとかサウンドをちゃんと聴こうとした僕の心構えはくるりの思惑通りなのかもしれないと思いつつ、最終曲の『Wandering』のせーのでジャ~ンみたいなノリを聴くと、そんなん別にええやん感に包まれた。アルバム・タイトルは『儚くも美しき12の変奏』。タイトルどおりいろいろな聴き方ができるアルバムだと思った。

もう終わりだろ

ポエトリー:

「もう終わりだろ」

 

なるようにはなるのか
すべては眠るようにはいかない
やがてわたしたちは
倒れ込むようにうずくまる

すべてのつらさを
業績のように語るなら
こんなにも瞼の裏
暴れたりしない

うるさいな
タイミング的にはもう終わりだろ
ほんとうにもう眠れたら

夜明けに咲く花と
透けて見える月は
太陽に向かって

 

2025年12月