Exorcism of Youth / The View 感想レビュー

洋楽レビュー:

『Exorcism of Youth』(2023年)The View
(エクソシスム・オブ・ユース/ザ・ビュー)

8年ぶりだそうです。前作『Rope Walk』(2015年)も悪くなかったんですけど、迷いというかもやっとした感じはありましたから、そこから長い沈黙があったのも頷けるかなと。もともと音楽的な野心というより、勢いでやってきたという印象なので、その初期衝動というか、もちろん才能はあるので手癖でよい曲は書けるんだろうけど、一番大事な気を込めることが難しくなっていたのかなと想像します。

というわけで8年ぶりの新作です。流石に初期の『Wasted Little DJ』や『5Rebeccas』みたいな爆発力はないけど、各々の曲の出来というか、全体としてのレベルの高さやまとまりは彼らのキャリアでも屈指だと思います。

プロデューサーは3作目にあたる『Bread And Circuses』(2011年)で組んだユースを再び迎えたそうですが、それが良い方向に出ていて、どっちかというととっちらかってしまう彼らの特性、それが魅力でもあるわけですけど度が過ぎないように交通整理するというか、特に3作目はとても洗練されていて受けも良かったと思うので、復帰作がそっち寄りになったのは良かったと思います。

それにしてもカイル・ファルコナーのソングライティングは変わりませんね。12曲ありますけど、全部特色があって工夫があって単調なところが少しもない。それでいて英国ロックの伝統を感じさせる雰囲気もあるし、やっぱこの人はアークティックのアレックスとかクークスのルークと並ぶ、この世代を代表するソングライターだと思います。

あとカイルと言えば終始シャウト気味に歌うボーカルですよね。久しぶりの新作でも変わらぬシャウターぶりでめっちゃカッコええです。アルバム屈指のポップ・チューン、#10『Woman of the Year』の声を張り上げるミドルエイトも最高です。そうですね、ザ・ビューと言えばミドルエイトですけど、復帰作でもそこの魅力は変わりません。

本作の気に入らないところは曲順ぐらいかな。#1『Exorcism of Youth』のいい曲だけどオープニングじゃない感とか、彼らのキャリアにおいても随一のスローソング#7『Black Mirror』の置き場所はもっとええとこあるやろとか、#6『Allergic To Mornings』の後は#9『Dixie』みたいなポップチューンがええやろとか、もうちょっとええ感じにでけたやろ感ありありです(笑)。

バンドの休止中にカイルのソロ作はありましたけど、あれはやっぱ元気なかったですから、やっぱ一人じゃ楽しくないのだと思います。演奏力とか表現力云々じゃなく、カイル・ファルコナーはやっぱこのバンドが良いのかもしれませんね。

Bread And Circuses/The View 感想レビュー

洋楽レビュー:

『Bread And Circuses』2011)The View
(ブレッド・アンド・サーカシズ/ザ・ビュー)

 

UKギター・ロックの雄、ザ・ビューのサード・アルバム。これだけ何の但し書きも必要のないロック・バンドも珍しいんじゃないだろうか。同世代のアークティック・モンキーズのような派手なインパクトはないかもしれないが、逆に言うと今の時代、オーソドックスなロックでありながらキチンと聴き手にまで届く力を有するということ事態が驚くべきことなのかもしれない。中でもこのアルバムの飛距離は半端ない。

言ってみれば、それは初期衝動のなせる業かもしれないが、彼らの場合それだけではすまされない音楽的基礎体力が背景にあるように思う。しかもそれは気をてらったものではなく、ポップ・ソングの王道を行くものであり、同時に僕たち自身に「あぁ、なにも突飛なことをしなくても、格好いいんだ」ということを改めて気付かせてくれる。結局それが一番難しいんだけどね。

とにかくもう、屈託なく鳴らされるひとつひとつの楽曲が素晴らしく、メロディが頭にこびりついて離れない。正面から取り組まれているアレンジも楽曲の良さがあってこそなのだろう。キーボードにしてもストリングスにしても特に際立ったアレンジでもないのだが、こうも効果的なのは何故なのだろう。恐らくそれは、彼らのボーカルを含めた演奏力の確かさと、加えて音楽を良く知っているということに尽きるのではないだろうか。今どきこれだけシンプルにカッコイイ音を出せるロック・バンドはそうはいない。

しかし彼らにしてみれば、本作は少しウェル・プロデュースが過ぎた模様。確かに1作目2作目と比べればやんちゃくれ感は乏しいが、このまとまりの良さはそれを補って余りある。カイル・ファルコナーの愛嬌のあるメロディが前面に出てとてもいい感じだ。うん、やっぱ飛距離が半端ない。

次のアルバムではウェル・プロデュースを嫌って原点回帰を目論むのだが、結果が付いてくるのはむしろこっちか。何気にすごい作品だけど、彼らなら普通にやれゃこれぐらいはやる。

 

1. Grace
2. Underneath the Lights
3. Tragic Magic
4. Girl
5. Life
6. Friend
7. Beautiful
8. Blondie
9. Sunday
10. Walls
11. Happy
12. Best Lasts Forever

Ropewalk/The View 感想レビュー

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『Ropewalk』(2015)The View
(ロープウォーク/ザ・ビュー)

 

3年ぶり、5枚目のオリジナル・アルバム。デビュー以来、ずっと疾走感のある溌剌としたサウンドでここまで来た彼らではあるが、クークスやアークティックがそうだったように、いつまでもデビュー当初のスタイルが続いてく訳でもなく、3年のブランクがあったということは彼らは彼らで新しい扉を開けたいという欲求があったんだと思う。所々に音楽的偏差値の高さを見せながらも、よくもまあこれだけ続くなあっていうくらい、ご機嫌なロック・チューンを奏でてきた彼らだけど、今回のプロデューサーはストロークスのギタリストにストロークスのプロデューサー。ということでこれまでの熱さから一転、ストロークスばりの低体温のサウンドになっている。

曲の方は相変わらず素晴らしい。デビューして8年経っても一向に枯れることなく、UKロック直系のメロディもあって、粗っぽかった前作よりずっといい。もう初期衝動ではないところで今だにこれだけシンプルないい曲が書けるってのは素直に凄いことだ。

ただやっぱりこのサウンドは物足りないんだよなあ。元々アコースティック・ギターも上手に使う人たちだけど、どうせならもっとドタドタ感があってもいいし、もっとこうグワッとした感じが欲しい。まあストロークスがそうだから今回はそういう狙いだったんだろうけど、それにしてもちょっと食い足りない。焦点ぼやけちゃってる感は否めない。

エレキ・ギターをかき鳴らし、アクセル一杯まで開けてシャウトするっていうのはベタかもしれないけど、一番難しかったりするわけで、それをいとも簡単にやってのけるところに彼らの魅力はある。今回も後ろの音がどうなっていようが、相変わらずカイルは派手にシャウトしているし、やっぱりこのボーカルには電気的に増幅されたギュンギュン言ってるギターを当てて欲しいというのが素直な感想。曲がいいだけに少し残念。

僕は好きだし地味にいいアルバムだけど、ファン以外への訴求力があるかといえばちょっと厳しいかも。みんなそんなじっくりと聴いてくれないぞ。あとバンドの姿勢として分からなくはないけど、ギタリストの下手なボーカル曲は正直要らない。にしても一番疾走感のある#6でそれをしなくても(笑)

 

1. Under The Rug
2. Marriage
3. Living
4. Talk About Two
5. Psychotic
6. Cracks
7. Tenement Light
8. House of Queue’s
9. Penny
10. Voodoo Doll

Which Bitch?/The View 感想レビュー

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『Which Bitch?』(2009)The View
(フィッチ・ビッチ/ザ・ビュー)

 

ザ・ビューの2nd。キャリアを重ねる毎に音楽性が広がるのはよくあることで、このバンドも例に漏れず引出しが増えていくんだけど、そうはいっても彼らの場合は相変わらずのロックンロールというか、身も蓋もなくジャカジャカすんのが好きだからしょうがないってところに落ち着いてしまうのがいい。しかし結局そういう馬鹿みたいなロックをいつまでも続けてって、飽きもせずちゃんと聴いてもらえるってのが一番難しかったりするわけで、多くのバンドがだんだん音楽性を変えていくのも実はただの初期衝動ではやってられなくなってくるってのが本心だったりもする。そんな中、いつまで経ってもジャジャ~ンってこうすんのが最高だろ?ってギターを鳴らしているのがザ・ビューだ。

この2ndは前作の最後の曲のパート2みたいな小品で始まって、#2『5 レベッカズ』で一気にスピードを上げる。もう滅茶苦茶カッコよくてブレーキかけてもつんのめって止まれない感満載のロック・チューンだ。中盤のブリッジからラス・サビへ向かうギター・ソロといったら、なんのこたあないリフだが、ハンパないカッコよさ。

ただ彼らの場合はやっぱり勢いだけってことではなく、音楽的基礎体力とでも言うような確かなソングライティングがあるわけで、それはストリングスを用いた#6『アンエクスペクテッド』とか、ホーン・セクションが賑やかな#9『ジミーズ・クレイジー・コンスピラシー』を聴いてりゃよく分かる。#10『カヴァーズ』なんて大人しいけど複雑な曲だ。ということで当然のことながら優れたソングライティングとそれをしっかりと支える音楽的なバックボーンがちゃんとあるってのがミソなんだろう。

彼らはこの後もジャカジャカしたロックンロールをやっていくんだけど、年月を重ねるとどうしても洗練されてくるというか余計な凸凹が無くなってくる。それはそれでいいんだけど、このアルバムはそうしたウェル・プロデュースされていない無駄な凸凹がまだまだあって、好きなことをひたすらやってるってところも魅力だ。

他愛のないロックンロールだけど、ガッとした手ごたえがあるから他愛なくなってしまわない、流れてってしまわない力強さがこのバンドにはあって、#10『ダブル・イエロー・ラインズ』なんて特に目新しいところが何もないよくあるポップ・ソングだけど、いちいちちゃんと決まってるんだからしょうがねぇなって感じ。#13『ギヴ・バック・ザ・サン』も長尺だけどホントに良く出来た曲で最後のシャウトなんて最高だ。ついでに言うと、ボーカルのカイル・ファルコナーのスコットランド訛りだかなんだが知らないけど、巻き舌で飛び跳ねちゃってる感も最高だ。

 

1. ティピカル・タイム2
2. 5レベッカズ
3. テンプテーション・ダイス
4. ワン・オフ・プリテンダー
5. ショック・ホラー
6. アンエクスペクテッド
7. グラス・スマッシュ
8. ディスタント・ダブロン
9. ジミーズ・クレイジー・コンスピラシー
10. カヴァーズ
11. ダブル・イエロー・ラインズ
12. リアライゼーション
13. ギヴ・バック・ザ・サン
14. ジェム・オブ・ア・バード

(日本盤ボーナストラック)
15. ダンディール
16. ミスター・メン・ブック
17. フォア・ユー

Hats off to the Bsusker/The View 感想レビュー

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『Hats off to the Buskers』(2007) The View
(ハッツ・オフ・トゥ・ザ・バスカーズ/ザ・ヴュー)

久しぶりにザ・ヴューのデビュー作を聴いたら、すっげー良かった。彼らの持ち味であるどう転んでも間違いないソングライティング力がグイグイ飛び込んでくる。今もいい曲を書いてるけど、純粋なソングライティングの力という意味ではこのデビュー作だろう。走り抜けるようなロック・チューンもいいし、テンポを落としたのもちゃんと聴かせる。落ち着きのないガチャガチャした連中かと思いきや、ちゃんと整理整頓されてて、イケイケなくせに自分勝手でないところがこのバンドの最大の魅力だろう。

聴いてて思うのは、ザ・フーとかクラッシュといったUKロックの伝統が自然と体の中にあるということ。そこを踏まえての今の若い世代が奏でる元気のいいギター・ロックという感じがとてもいい雰囲気だ。2015年のアルバムでは新たなニュアンスに取り組んでたけど、やっぱザ・ヴューといえばこっち。

勿論そんなことはないんだろうけど、遊び半分で適当に作ったらこんなん出来ましたみたいなノリがやっぱいい。そのぐらいのノリでもこれぐらいは作れちゃう力がやっぱり彼らにはあるんだろうし、今もそっちの方がいいんじゃないか。長くやってるとロックのくせに頭でっかちになりがちだけど、やっぱこれでしょ。でまたこういうのって誰にも出来るってもんじゃないし、それが今だに出来ちゃうのがザ・ヴューってことだろう。

音楽性とか意味性とか別にどっちだっていいよ、っていう姿勢は今もそうなんだろうけど、この外連味の無さというのは1stならでは。普通に歌っててもついついシャウトしちゃうカイル・ファルコナーのボーカルが最高だ。駆け出しロック・バンドの無敵感、存分に出とります。「ちょっと兄ちゃん、景気いいのやってよ」、「ほいきたっ!」って感じ。

 

1. Comin’ Down
2. Superstar Tradesman
3. Same Jeans
4. Don’t Tell Me
5. Skag Trendy
6. The Don
7. Face For The Radio
8. Wasted Little DJ’s
9. Gran’s For Tea
10. Dance Into The Night
11. Claudia
12. Streetlights
13. Wasteland
14. Typical Time

しんみりとした#7からアクセル全開で#8へ繋がるところが最高!