Superorganism/Superorganism 感想レビュー

洋楽レビュー:

『Superorganism』(2018) Superorganism
(スーパーオーガニズム/スーパーオーガニズム)

 

少し前から話題のバンドがある。名前はスーパーオーガニズム。メンバーは8人で今はロンドンで同じ屋根の下、共同生活をしているそうだ。国籍もまばらで英国、ニュージーランド、オーストラリア、韓国、そしてボーカリストでリリックを書いているのは17歳の日本の女の子、オロノだ。

年齢も国籍も異なる若者がインターネットを介して知り合い、実際に会うことなく曲を作り上げ、それをネットに上げたところ、フランク・オーシャンやヴァンパイア・ウィークエンドのエズラの目に留まり一躍脚光を浴びて今に至るという。この辺になるともう想像がつかない(笑)。

ただ共同生活をしているといえども、分かりあえないことが大前提というか、そんなことは当たり前でデフォルトとしてそこにある、そりゃそうですよ、っていう感じ。つまり色んなアイデンティティーを持った人たちが寄り集まって一人では出し得ないようなアイデアを皆で出しあって創作していくことを全面的に信頼はしているけど、そこに固執していないというか、何より創作の自由さを重んじるフラットさというか風通しの良さが、その若さでもうそんな感じなのって。普通はそういうことを経験を通して知っていくんだろうけど、それをもう達観してしまっているというか、大げさに言えば我々人類の集合知が一足跳びに始めから彼らには備わっているような、大げさに言えばこれはもう新しい人類だなと感じざるを得ない。

つまり資本主義とか個人主義っていいことだって教わってきたけど、それってホントかなっていうこれまでの常識が疑われつつある世界で、或いはインターネットが生まれてあらゆるものの境界線や速度が格段に早くなった世界で、仮に人類が新たな段階へ変容しつつあるとすれば、彼らはその第一世代ということなのかもしれない。

口に出すことを憚れるような震災のことをリリックにしたり、或いは日本の緊急速報アラームをサンプリングしたりということを自然にやってしまえる胆力と無垢さを併せ持った強さは若さ故か。これが若者の単なる無邪気さに過ぎないのか、そこになにがしかの人々が拠って立つ新しい世界の前触れがあるのかは誰にも分からない。しかし彼らは若さゆえの圧倒的な正しさに自覚的だ。

プロデューサーも立てずに好き放題鳴らしているサウンドに目を奪われがちだが、そうした意匠もただの借り物。出入り自由でどう変容していくかもわからないバンドの行く先は当人たちも分からないだろう。しかしガチャガチャとしたサンプリングの向こうにあるのはポップ・ソングという強固なメロディだ。

そんな自分たちのことをアンディ・ウォーホールの芸術工房、「The Factry」になぞらえたり、スーパーオーガニズム(超有機体)と名付けてしまうセンスにはもう脱帽するしかない。リリックの中にはデイドリームという言葉があちこちに見受けられて、これも彼らキーワードなのかもしれないが、アルバムの最後に一番にポップな曲を持ってきて、その最後の最後で目覚ましのピピピピッて音が入って、オロノの欠伸があって、小鳥のさえずりで終わるっていうセンスといいもう完璧過ぎる。

 

1. It’s All Good
2. Everybody Wants To Be Famous
3. Nobody Cares
4. Reflections On The Screen
5. SPRORGNSM
6. Something For Your M.I.N.D. 
7. Nai’s March
8. The Prawn Song
9. Relax
10. Night Time