Lonely Avenue/Ben Folds and Nick Hornby 感想レビュー

洋楽レビュー:

『Lonely Avenue』(2010)Ben Folds and Nick Hornby
(ロンリー・アヴェニュー/ベンフォールズ・アンド・ニック・ホーンビィ)

 

ベン・フォールズとニック・ホーンビィによるコラボレーション・アルバム。ニック・ホーンビィという人は英国の著名な作家で、幾つかの作品がハリウッドで映画化されているそうだ。そんなことは全く知らないが、英国人らしい皮肉やユーモアを交えながら素晴らしい詩を紡いでいる。そしてそこに曲を付け、表情を与えるのがロッキン・ピアノ・マン、ベン・フォールズ。とても素晴らしいメロディ・メーカーであり、サウンド・デザイナーである。

その詩の内容はとりわけ特別なテーマを描くのではなく、僕たちの隣人の物語。例えば、大晦日の夜を病気の息子と病院で過ごす母親の心象風景『Picture Window』。副大統領候補の娘と付き合ったばっかりにマスコミの格好の餌食となった青年のため息『Levi Johnston’s Blues』。お互いささやかな幸せを掴みつつも、一向に巡り合えないソウル・メイツを描く『From Above』。どれも人生つまずきながらも、なんとかやりくりしていこうとする人々の日常を切り取ったもので、まるで良質の短編映画を観るよう。

良い悪いの判断も、彼らがどうなったかもとりあえずは横に置いておいて、ただ彼らの動く様子をカメラで追ってゆく。そんな俯瞰的な描写が好い。しかしながら、作者の登場人物に対する愛情は多量である。

彼ら登場人物を更に活き活きと動き回らせるのが才能豊かなピアノ・マン、ベン・フォールズ。ニック・ホーンビィが登場人物を温かく見守る親なら、ベン・フォールズは彼らの肩を叩く友人といったところか。彼らがしっかり歩いてゆけるよう、珠玉のメロディで道を照らしている。

本作で僕が最も好きなのは『Claire’s Ninth』。「もう、最低!」と歌うところは本当にスクール・ガールのよう。この曲の主人公はティーン・ネイジャーだが、曲によっては年老いたミュージシャンであったり、作家であったり老若男女問わず様々。どれも素晴らしいストーリー・テリングと色彩豊かなサウンド・デザインで幅広く奥行き深く楽しむことが出来る。シリアスなストーリーが多かったりもするのだが、あくまでもポップに。そこがまたいい。

日本盤ボーナストラックとして最後に『Picture Window』のポップ・ヴァージョンが収められている。ストリングスとピアノによる本編とは異なるバンド・サウンドだ。歌詞がシリアスな分、ポップなサウンドとの落差にかえって胸が締め付けられる。本編は絶望を幾分和らげるためにストリングスというオブラートを掛けたのかもしれない。

 

Tracklist:
1. A Working Day
2. Picture Window
3. Levi Johnston’s Blues
4. Doc Pomus
5. Your Dogs
6. Practical Amanda
7. Claire’s Ninth
8. Password
9. From Above
10. Saskia Hamilton
11. Belinda
(日本盤ボーナストラック)
12. Picture Window(Pop Version)