Where We’ve Been, Where We Go From Here / Friko 感想レビュー

洋楽レビュー:

『Where We’ve Been, Where We Go From Here』(2024年)Friko
(ウェア・ウィーブ・ビーン、ウェア・ウィ・ゴー・フロム・ヒア/フリコ)

 

長らくロック不遇の時代などと言われてきたが、なんの前触れもなくこういうのが突如やって来るのがロックである。去年から騒がれていたザ・ラスト・ディナー・パーティーと違い、フリコは特に取りざたされることなくデビューしたにも関わらず、なぜかここ日本で真っ先に大バズリ。洋楽離れが叫ばれているこの日本でこんなことが起きる嬉しさ。早速、フジロックに出演決定ということで、ザ・ラスト・ディナー・パーティーとフリコそろい踏みのフジロック、うらやましすぎるぞ!

ザ・ラスト・ディナー・パーティーと同じく、フリコもライブ表現が抜群に恰好いい。バンドはボーカル&ギターのニコ・カペタンとドラムのベイリー・ミンゼンバーガーの二人。ライブではそこにサポートとしてベースが加わるのみというのが基本スタイルか。しかしこの小ユニットで鳴らされるサウンドの隙の無さ。荒々しくも洗練されたサウンドからは彼らの基礎体力の高さが伺える。しかし何より脇目もふらぬ初期衝動。やっぱロックはこれに尽きる。

アルバムを聴くのもいいけど、ついついライブなYouTubeを見てしまう。これはやっぱり単に音楽がいいということではなく、その音楽の鳴りに立ち居振る舞いを含めたビジュアル的なカッコよさがあるから。また実際のビジュアルもボーカル&ギターのニコ・カペタンがジョニー・デップ似のイケメンでドラムのベイリー・ミンゼンバーガーが女子というのもポイントが高い。狙ってできるわけじゃないけど、こういうところは非常に大きいです。寡黙にドラムをばしばし叩くベイリーもカッコいいけど、情熱的に体をくねらせセクシーにシャウトするニコにキャーキャー言う女子はきっと多いぞ。

Pratts & Pain / Royel Otis 感想レビュー

洋楽レビュー:

『Pratts & Pain』Royel Otis(2024年)
(プラッツ&ペイン/ロイル・オーティス)

 

オーストラリアの新人デュオ。ラスト・ディナー・パーティーやフリコがドカンと来た一方でその隙間を縫うように個性的なバンドが登場している。この二人もなかなか凄い。先の2組が将来のヘッドライナー候補だとすれば、こっちはもっと斜に構えたひと癖もふた癖もあるバンド。ドラムスみたいなへなちょこロックかと思えば、シェイムみたいな硬派な一面もあってどれが本当の姿か分からないが、きっとどれも本当の姿。

しかしそれが誰でもできる手垢のついた代物であれば何もわざわざ表現することは無い。ここには彼らなりのやり方で彼らなりに捕まえた真実を彼らなりの誠実さで表現せざるを得ない性急さがある。一見すると変態的な音楽が鳴ってはいるように見えるけれど、彼らはロックの系譜にただ忠実たろうとしているだけ。ここには後に取っておこうなどという成熟さは一切なく、ただ自分たちの思い出を救い、目いっぱい青空に投げつける焦燥感しかない。へなちょこでも剛速球でも気にしちゃいられない。これは青春のパンク。あらゆる音楽をとっかえひっかえ夢中になり、ありとあらゆる栄養を身に付けた彼らは迷いなくアウトプットする。

これはあれに似てる、これはあれっぽいというのはあるにせよ勿論それらも織り込み済みで、彼らにとってはそのいずれもが大切な音楽。そんな距離が離れているわけでもない音楽を行ったり来たりしながら、妙に耳に付く愛嬌のあるメロディー。それを支えるのはギター。やっぱり青春はギターだ。

Prelude to Ecstasy / The Last Dinner Party 感想レビュー

洋楽レビュー:

『Prelude to Ecstasy』The Last Dinner Party(2024年)
(プレリュード・トゥ・エクスタシー/ザ・ラスト・ディナー・パーティー)

 

話題のラスト・ディナー・パーティーのデビュー作。噂に違わずめっちゃカッコいい。2024年にもなってこんな煌びやかに伸び伸びと自己表現をするバンドに出会えるとは。しかも全員女子!着飾った見た目に先ず持ってかれますけど、そこも含めよくもまあこれだけのことが表現できるなと。これからどうなっていくかも全く想像できないですけど、新しい世代の新しいロック・バンドがドドーンと登場しましたね。

先ず音楽的なバック・ボーンが凄くしっかりとしています。転調の多い非常に難しい曲ばかりですけど、しっかり埋めるところは埋めて空けるところは空けて、強弱というか起承転結が見事ですし、それにこんな難しい曲なのにちゃんとボーカルがリードしている歌モノとしての強さが感じられる。やっぱりどんだけ凄いことしていても広く受け入れられる素地が無いとね。ここがすごく大事です。

てことで思い出すのはやっぱりクイーンです。ああいう芝居がかった曲、大袈裟なアクション、そういうのが何の違和感もなくスッと受け入れられるのは異例です。はっきり言ってラスト・ディナー・パーティーも異端児ですよね。でもそうは感じさせないスマートさ、華やかさが彼女たちにはあるんです。フレディ・マーキュリー擁するクイーンだってそうだったし、デヴィッド・ボウイだってそうだった。もっと広げればマイケルだってプリンスだってそうですよね。

つまりかつては沢山あっていつの間にか無くなった大袈裟で過剰なロックがここに来てまさかの復権ですよ。その先鞭をつけたのが言わずと知れたマネスキンですけど、そのマネスキンにしてもまだ20代前半ですから、ロックは完全に復活したと言っていいですね。

あともう一つ付け加えると、音源は確かにかっこいいけどライブはねぇ、というのは新人あるあるですけど、彼女たちの場合はむしろライブの方が格好いい!!そういう意味ではマネスキンもそうですけど、フェスやなんかで一気に客を掴むことが出来る強さ、場を制する強さを持っているのも非常に大きいです。やっぱロックはこうでなくちゃね。

Wall of Eyes / The Smile 感想レビュー

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『Wall of Eyes』The Smile(2024年)
(ウォール・オブ・アイズ/ザ・スマイル)

 

レディオ・ヘッドのツートップであるトム・ヨークとジョニー・グリーンウッドがジャズ・ドラマーのトム・スキナーと組んだ2作目。レディオヘッドは全く音沙汰なしなのに、こっちは2022年の1作目からわずか2年で新作を出すなんて、いったいどういう料簡だいトム・ヨークにジョニー・グリーンウッド。創作意欲が無いわけではなく単にレディオヘッドだとやる気が起きないということなのか。

このアルバムはそりゃあいいです。1枚目の初ユニットゆえのウキウキ感から一歩進んで、更に深化しています。目につくのはストリングスですね。1作目でも一緒にやったロンドン・コンテンポラリー・オーケストラが更に重要な役割を果たしていて、特に8分の大作、#7『Bending Hectic』なんて、そこにジョニーがいつ以来かっていうぐらいギターをギャンギャンかき鳴らしてますから、不思議な音階の序盤も含めてここがやっぱりハイライトですね。

1作目にあったテンポの速い曲は#4『Under our Pillows』ぐらいですけど、代わりにゆったりとしたよいメロディが目立ちます。ということで最後の美しい#8『You Know Me!』なんて普通にレディオヘッドですけど、一体レディオヘッドと何がどう違うのか分からなくなってきた。

ロンドン・コンテンポラリー・オーケストラはレディオヘッドの最新作(って言っても2016年ですけど)『A Moon Shaped Pool』でも大々的に参加していて、てことはつまりこのアルバムは『A Moon ~』からコリンとエドとフィルの3名が抜けただけということになりますな。これだけいい曲あるんだったらレディオヘッドでやってもええ感じになると思うんやけど、そういうわけにもいかんのだろうか。ていうかThe smile はレディオヘッドを差し置くほど心地いいのか。『A Moon ~』の延長線のように思うんだけどなぁ。

Madra / New Dad 感想レビュー

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『Madra』(2024年)New Dad
(マドラ/ニュー・ダッド)

 

アイルランドのギター・バンドのデビュー作。10年代なんてギター・バンドの噂などろくに聞かなかったのに、ここ数年で次々と新しいバンドの名前を聞くようになった。これはやっぱり今流行っているものだけを聴くということではなく、サブスクにより時系列があまり関係なくなったというのもあるだろうし、音楽に限らず物事はどちらかに偏っているように見えて、いずれは行ったり来たりするということなのかもしれない。それにしても昨年あたりから素敵な女性ギター・バンドが本たくさん出てくる。

それはさておき何かひっかかるバンドではある。シューゲイズかと思えばそうとは言い切れないし、ドリーム・ポップという雰囲気でもない。そう思いながら何回か聴いているとこれは歌のアルバムなのだろうということに気付いてきた。サウンド的に何かに特化するのではなく、あくまでも歌に寄り添うサウンド。しかし歌を前面にださないそこはかとない歌心。つまりどっちかって言うと、シューゲイズよりフォークロックの感触。ってことで僕は引っ掛かるのだろう。

つい特定のジャンルに引き寄せてしまいたいこちらの気持ちをはぐらかすようなどっちつかずのサウンドで、浮遊感というより寄る辺なさを歌う。今はやりのサッド・ソングかと思いきやそうでもないユーモアの残骸。物事に言い切れることはないんだよということを初めから分かっているかのよう。とか言いながら、突然#5『In My Head』とか#8『Dream Of Me』とか#9『Nigntmares』みたいなキャッチーなポップ・ソングが突然やって来る。確かに言えることは、これはやっぱり2024年の音楽ということだけだ。

Me Chama de Gato que Eu Sou Sua / Ana Frango Eletrico 感想レビュー

洋楽レビュー:

『Me Chama de Gato que Eu Sou Sua』(2023年)Ana Frango Eletrico
(ミ・シャマ・ヂ・ガト・キ・エウ・ソウ・スア/アナ・フランゴ・エレトリコ)

25才で3枚目のアルバムだそうです。ブラジルでは大層な人気だそうで、音楽以外にもアート本を出すなどマルチに活躍している才能溢れる方のようです。2023年のベスト・アルバム選のあちこちに顔を出すものだから気になって聴いたのですが、おったまげました。最高じゃないですかこれは。ブラジリアン・ブギーなんて言葉もあるみたいですが、なんせすごくゆるくていい感じです。彼女の甘いんだけど、まるで言うこと聞かなさそうな声もなんかいい。

あと国民性ですかね、根底にユーモアとか陽気さが流れているような、いやサンバみたいな楽しい感じではないんですけど、ゆる~くボーっとするみたいな気楽さがいいです。でも音楽としちゃイケイケで攻めてます。唯一英語表記の#5『Boy of Stranger Things』なんて転調してシャウトですからカッコいいのなんの。でも基本的にはオシャレ感満載のアルバムですね。

このオシャレ感、なんか聴き覚えあるなぁと考えたら渋谷系ですね。あの時のピチカートファイブとかフリッパーズギターみたいなセンスの塊みたいなオシャレ感。パァ~パァ~っていう女性コーラスとか管楽器がふんだんに使われている点なんかもまんまそうだし、サンプリングをかなり多用しているところなんかホント渋谷系。加えてフレンチポップのフワフワした雰囲気もあるから、ほんとにオシャレ。あと言語的な面白さ、これはポルトガル語ですかね、耳当たりが妙に心地いい。ポルトガル語と日本語って相性よいのかな。

とても気に入っているので、彼女の過去作も聴いていますが、それも最高です。来日公演してくれないかな。

Black Rainbows / Corinne Bailey Lae 感想レビュー

洋楽レビュー:

『Black Rainbows』(2023年)Corinne Bailey Lae
(ブラック・レインボウズ/コリーヌ・ベイリー・レイ)

 

どうしちゃったんだいコリーヌ・ベイリー・レイ!ということで7年ぶりの新作でまたまたやってくれました。前作の『The Heart Speaks in Whispers』(2016年)もそれまでのオーガニックなサウンドからの急展開がありましたが、今回はその比じゃないですね。またまたやりたいようにぶっ飛んでます。いいぞ、コリーヌ・ベイリー・レイ!!

元々ソングライティングには長けた人なので、恐らく初期のようなソファに寝っ転がってギターをポロロンな穏やかなアルバムは作ろうと思えば作れるはず。なのにこうもグイッと舵を切るのはなんなんでしょうか。チャーミンングな見た目に騙されますが、コリーヌさん、やるときゃやります。それにしても刺激的なアルバムや!

まぁ7年の間にはそりゃいろいろありますから、世間的にもBLM運動があったり#Me Too運動があったり、そういう中で、特にブラック・カルチャーに関しては芸術家チームとも関わりがあったりで随分と影響を受けた、そこでの活動が今回のアルバムに繋がったとのアナウンスもありますから、そう考えると今回の振り幅も合点がいきますけど、なんてったってギターかき鳴らしてのシャウトもありますから。可憐なコリーヌさんがここまでするとはさすがに想定外です。。。

彼女の一番のストロング・ポイント、いいメロディと甘い声というところはちょっと横に置いといて、サウンドでもって、世界観でもって、音楽全体で勝負していく、その心意気がビシビシ伝わってきます。タイトル曲の『Black Rainbows』なんて彼女、歌ってないですから(笑)。それでもいーんです!これがコリーヌ・ベイリー・レイの作品だという強さがこのアルバムには焼き付いていますから。

#9『Peach Velvet Sky』でのローラ・ニーロのような変幻自在のボーカルを聴いていると、あれだけの声を持っていながら彼女にとってそれは音楽を構成する要素の一つに過ぎないのだと。最終曲『Before the Throne of the Invisible God』に至っては音楽の中で混じりあい、完全に楽器の一部と化している。忘れかけていたが、アーティストにとって創作とは全身全霊をかけた芸術作品なのだ。いや~、それにしてもコリーヌさん、音楽を楽しんでますな~。

Guts / Olivia Rodrigo 感想レビュー

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『Guts』(2023年)Olivia Rodrigo
(ガッツ/オリヴィア・ロドリゴ)

 

評判がいいのは知っていた。でも二十歳の女の子ですから、聴くこともないかなと思っていたのですが、各媒体による2023年のベスト・アルバムに出てくるわ出てくるわで、日本の『ロッキンオン』誌ではなんと1位。ということで、じゃあちょっと聴いてみるかと。で、ビックリしました。タイトルどおりガッツ溢れる作品で、昔のパラモアを彷彿させるエモいロック・アルバムでした。

基本的に彼女のファン層は多くがティーンエイジャーなのだと思うのですが、評価も高く年配にも好まれているというのは、僕もそうですけど90年代を思わせるオルタナティブ・ロックですね、アラフィフ世代にとっては親しみのあるガッツリとしたロック音楽が基盤にあるからです。若い世代にとっては新鮮なのだろうし、それに彼女が世に出た『Driver’s License』のようないわゆるサッド・ガールな曲もちゃんと入っていますから、単調にはならずちゃんと強弱のついた、年間ベストに選ばれるのも分かる、ポップでありつつ彼女の哲学が詰まったいいアルバムだと思います。

驚くのはソングライティングをダニエル・ニグロって人と二人だけで行っている点。ビリー・アイリッシュの兄妹コンビじゃないですが、彼女自身にもその能力があるっていうことですからどんだけ凄いねんという話です。特にリリックですよね。勿論恋バナがメインになるのですが、同世代だけでなく幅広く支持されるということは、ただ単にそれだけではとどまらない何かがあるということ。

この辺は彼女が愛するテイラー・スウィフトにも通じますが、’私の話’が’皆の話’になってしまう歌詞の奥行、恋バナに収まらない普遍性でしょうね。いい年をした僕でもこの歌詞にはグッときます。パラモアのヘイリー・ウィリアムスやテイラーなどの系譜に連なる、新しい世代を代表する語り手でもあります。

Cousin / Wilco 感想レビュー

洋楽レビュー:

『Cousin』(2023年)Wilco

(カズン/ウィルコ)

 

このところウィルコは多作だ。2022年に2枚組の『Cruel Country』があったし、ジェフ・トウィーディーはソロでも活動している。パンデミックがあって戦争があってというところが影響しているのだろうか。だとしたらあまりよいきっかけではないような気はするが、とりあえず沢山聴けるのは嬉しい。でもこのアルバムは少しシリアス。

前作『Cruel Country』はいわゆるオルタナ・カントリーに回帰したようなアルバム。ダブル・アルバムだったので曲数も沢山あったが、バラエティーに富んでいたので退屈することはなかったし、勿論沈みこんだ印象は全くなかった。今回は音を歪ませたりして、久しぶりにこれも本来の持ち味である不思議なサウンドのウィルコに戻っているが、どうも快活というわけにはいかない。外部のプロデューサーを迎えているので、きっと凝り固まったサウンドをほぐしてまた変なこと、新しいことをやりたかったのだろう。このキャリアでそれをするのはとてもカッコいい。

でも正直言って今回のタッグは今一つのような気はする。やっぱり閉塞感を感じてしまうんだなぁ。一言で言うと暗い。これはアルバムの出来不出来ではなくて僕の好みなんだろうけど、なんか重苦しいなと。最終曲の『Meant to Be』でようやく開放感を感じるものの全体の印象としてはやっぱイマイチかな。ウィルコならではのユーモアというか親密感が今回はちょっと薄いかなと。

と言ってもあくまでも僕の印象です、世間の評判はいいみたいだから。とか言いながら、これはCDでも買っているし、僕の2023年のSpotifyのよく聴いたランキングにも入っている。なんだかんだ言いながら聴いていたってことか。

2023年 洋楽ベスト・アルバム

「2023年 洋楽ベスト・アルバム」

 

2023年は圧倒的に女性アーティストの年だった。特に前半はほとんど女性ばっか聴いていたんじゃないか。別に僕が女性好きということではなく、世の傾向が全くそうだったということです、はい。その最先端にいるのは間違いなく、フィービー・ブリジャーズ、ジュリアン・ベイカー、ルーシー・ダッカスによるユニット、ボーイジーニアス。勿論音楽も素晴らしいが、特筆すべきは3人の佇まい。そこには性別や国境を超えた新しい世代による新しい美しさがありました。そしてそれを多くの人々が支持している。よい方に向かっているとは言えない世界ではあるけど、彼女たちの音楽には希望を感じました。ということで、2023年の個人的なベスト・アルバムはボーイジーニアスの『The Record』です。やっぱり後で振り返った時に2023年の象徴として残るのはこのアルバムだと思います。

 

2023年によく聴いた女性アーティストを振り返ってみると、久しぶりのパラモアの会心作に始まって、ブロンドシェルやウェンズデーといったインディー・ロック勢があり、先ずそこで勢いを感じました。ロックじゃないけどソウルフルなジェシー・ウェアもカッコよかった。後半に入ってもジャパニーズ・ハウスが期待通りだったし、ミツキもいいのを出しました。日本で印象深かったのはカネコアヤノ。オアシスばりの轟音ギターで、ライブにも行きましたけどエモーショナルでとても記憶に残るものでした。そうそう、羊文学もついにブレイクしましたね。というところで年末、各種媒体の年間ベストを眺めていると、知らぬ間にコリーヌ・ベイリー・レイに新譜が出ていたじゃないか、オリビア・ロドリゴもパラモアみたいなロックをやってるじゃないか、なになに、アナ・フランゴ・エレトリコ?誰だそれ、めっちゃええやないか、と今慌てて聴いているところです。

 

そういう後から知ったのも含め、2023年は女性アーティストが多かったわけですが、嬉しいのはその多くがギターを抱えたロック音楽だということ。ただ、ロックと言うのは世の中に対する異議申し立てと言う側面もある。それだけ女性が言いたいことを言えるようになってきたとも言えるし、ジェンダーレスなんて言ってもまだまだ理不尽なことは山ほどあるってこと。いずれにしてもめちゃくちゃカッコいい女性のロックがどんどん出てきている。ロックにおいても男とか女とかはもう関係ない。

 

あと2023年の個人的ベスト・トラック。これは年初に聴いたインヘイラーの『When I Have Her on My Mind』がずっと印象深く残っていたのですが、後半に入ってザ・ビューの嬉しい復活があって、そこからの『Woman of the Year』、これにしようと思います。曲といいボーカルといい、ずっと持っている強みと今になって出せる深み、これらが両立した素晴らしい曲でした。ミュージック・ビデオも素晴らしかったです。

 

あと個人的なトピックとしてコーネリアスのことも書いておきます。高校生の頃はよくフリッパーズ・ギターを聴いていましたが、ソロになってからはあまり聴いたことがなかった。そこに例のオリンピック騒動。かつて大好きだった音楽家が本当にそうだったのかというところが僕の中で結びつかなかった。そしていろいろと調べてある程度納得がいった、そういう中で再活動後のアルバムが出た、それがとてもよいアルバムだった。という流れで過去作も沢山聴いてライブにも行きました。それは本当に心に残るものでした。彼の活動はこれからも見ていきたいと思います。

 

ちなみにSpotifyによると、2023年に僕が最も聞いた曲はボーイジーニアスの『$20』。ていうか再生ランキングの上位ほとんどがボーイジーニアス『The Record』からの曲だったので、客観的に見ても僕の2023年ベスト・アルバムはこれだということです。一番聴いたアーティストはさっき書いた理由でもってコーネリアス。ウィルコはなんだかんだで3位に。やっぱ僕はウィルコ好きなんだな。