Supermodel/Foster The People 感想レビュー

洋楽レビュー:

『Supermodel』(2014) Foster The People
(スーパーモデル/フォスター・ザ・ピープル)

 

新しいアルバムが出たら、自動的に買ってしまうバンドがあるけど、フォスター・ザ・ピープルもそのうちのひとつ。この人達はまず間違いないだろうという感じ。難しく言うと、表面的なキャッチーさだけではなく、何かしらの奥行を感じさせるということかな。といっても今回で2作目なんだけどね。

1stがマーク・フォスターの才覚のみで作られた作品だとしたら今回はバンドが前面に出ている。1st後に多くのライブをこなし、バンドとしての練度を固めていったのには勿論理由があっての事で、それはもうこのバンドでやってくんだという意思表示に他ならない。彼らは1stの取っつきやすいエレクトロ・ポップでブレイクした訳だけどマーク・フォスターの野望はもっと遠いところにあるのだ。

アフロ・ビートやサイケデリア、フォークといったスタイルを縦横無尽に採用し、更にその向こうへ突き抜けようとする態度がここにある。ようやく手に入れたバンドのダイナミズムが向かう先はどこ?それは遠くにかすかに見える光に向かって何とか前へ進もうとする意志。ここには混沌と言う言葉だけでは片付けられない切迫感がある。彼らは世界はこのままでもいいとは思っていないのだ。その分厚い壁をなんとかしてぶち破るべく選んだのは紛れもないロックンロール。

サウンドはより緻密によりダイナミックに。バンド・サウンドが前面に出ているとはいえ、全体を通してせわしなく繰り出されるエレクトリカルや細かなフレーズは流石。マーク・フォスターはブレイクするまでに紆余曲折を経たキャリアの持ち主。その細かなプロデュース力は裏方に回っても相当な力を発揮しそうだが、彼が選んだのは自分たちの言葉で、自分たちの声で、自分たちのサウンドで道を切り開いていくこと。そのサウンド・デザインには凄みさえ感じる。

1stの時からそうだが、彼らは自分たちの音楽的バックボーンをしっかりと持っている。最新のスタイルを纏ってはいても、綿々と続くロックやポップ音楽の伝統を意識している、というかどうあっても意識してしまうようにも思える。僕がこの人達は間違いないと感じるのは、もしかしたらそういうところから来てるのかもしれないし、変則的でありながらもこのアルバムから感じる王道感はそんなところにもあるのかもしれない。いつか他愛のないポップ・アルバムを作るんじゃないか。ただ王道と呼ぶには最後にバシッと決めてほしいところ。冒頭3曲の勢いと、その流れで突き進む#8『ビギナーズ・ガイド・トゥ・デストロイング・ザ・ムーン』に至るサイケデリックな熱量に比べ、最後の3曲はもう一押し足りないかなという気もする。

彼らは音楽の、バンドのマジックを信じて疑わない。僕は少なくとも#3『アスク・ユアセルフ』冒頭のギターリフにはそのマジックがあると思う。

 

1. アー・ユー・ホワット・ユー・ウォント・トゥ・ビー?
2. アスク・ユアセルフ
3. カミング・オブ・エイジ
4. ネヴァーマインド
5. シュードロジア・ファンタスティカ
6. エンジェリック・ウェルカム・オブ・ミスター・ジョーンズ
7. ベスト・フレンド
8. ビギナーズ・ガイド・トゥ・デストロイング・ザ・ムーン
9. ゴーツ・イン・ツリーズ
10. トゥルース
11. ファイア・エスケイプ

12. カシアス・クレイズ・パーリー・ホワイツ [ボーナス・トラック]

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