夏の余韻

ポエトリー:

『夏の余韻』

 

酷い雨が降ってきた
路地裏で雨宿りをしよう
古い家と適度な湿度に心が柔らかくうずくまる
ひと息つく 回復してゆくのがよく分かる

今思っていることを明日の朝
誰かに言おうと思ったけど
明日の朝ではなく
今すぐにあの人に言うべきだと
帰る道すがら軒先に垂れる雫が
優しく背中を伝う

雨上がりのプリズムの中
大声を上げて走り抜ける子供らを横目に
今宵は地蔵盆
それらしき準備の路地裏で
私にも降る夏の終わりの心構え
最後の余韻が始まろうとしている

それは温もりやいたわりや未来の先を
永遠に枯れることなく
日々を生きる糧として
ずっと向こうまで指し示す
くっきりとしたその生の余韻が
水たまりにのぞくこの光のように
私たちを導かんことを

翌朝早く あの人のおはようが
生暖かい電波に乗ってやってきた
考えるいとまもなく返事を返す指先は
ふんわりと温かい

 

2016年9月

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