How Long Do You Think It’s Gonna Last ? / Big Red Machine 感想レビュー

洋楽レビュー:
 
『How Long Do You Think It’s Gonna Last ?』(2021年)Big Red Machine
(ハウ・ロング・ドゥ・ユー・シンク・イッツ・ゴナ・ラスト?/ビッグ・レッド・マシーン)
 
 
ザ・ナショナルのアーロン・デスナーとボン・イヴェールことジャスティン・ヴァーノンによるコラボレーション第2弾。ビッグ・レッド・マシーンというとこちらも最新型のサウンドを期待してしまうのだが、その点で言えば少し肩透かし。
 
ただこのコラボの元々の始まりはアーティスト同士が自由に出入りできるオープン・コミュニティという趣旨だったと思うので、この2ndアルバムの方が本来の形なのかもしれない。てことでゲストも盛んにフィーチャリング・ボーカルも増え、随分とバラエティー豊かな。しかもアーロンさん、今回はご自身で初めて歌っています。なのでアーロン・デスナーとジャスティン・ヴァーノンが主催する音楽祭に招かれたという感じかな。
 
ただ肝心の曲がどうなのかねぇというのは正直ある。コロナ禍になってからというものの、アーロン・デスナーはテイラー・スウィフトとの2枚のアルバムもあって曲を作りどおし!いくら天才といえど2年ばかしの間にそんな名曲ばかり生まれないだろうというのが素直な感想。このアルバムにしても計15曲の64分!もう少し厳選してもよかったんじゃないかなと。。。テイラーさんのアルバムも曲数多かったもんな。
 
そのテイラー・スウィフトをボーカルに迎えた#5『Renegade』。なんかテイラーさんとアーロンの共作アルバム『evermore』に収録された『Long Story Short』に雰囲気近いぞ!ていうか『Long Story Short]』の方がカッコいい! と、そういう中で#5『Renegade』がこのアルバムでは際立ってしまうというのがね、ちょっと微妙な気持ちにはなります。
 
今回は沢山のボーカルを迎えているものの基本はジャスティン・ヴァーノン。ボン・イヴェールを僕は狂気の音楽と思っているので、彼のボーカル曲にはそのいたたまれなさを求めてしまう。ただ今回は仲間と共に作り上げていくというところでの創作になるので、そこのところは薄まったかなとは思います。その点で言えば、ラッパーのナイームとの共作#9『Easy to Sabotage』は一緒に狂ってる感じがして面白いです。
 
ちょっとネガティブな意見を書いてしまいましたが、単純にこちらの耳の鮮度が落ちてしまったのかなという気はします。やっぱりアーロンとテイラー・スウィフトの出会いは互いに新しい音楽への目覚めをもたらしたしあれは現時点でのクリエイティビティなピークとも言えるわけで、あっちが光輝いている間はこっちはやや曇った印象になるのは致し方ないかなと。
 
ただ始めて聴いたときのなんじゃこれ感は減退したものの、良い作品であることには変わりなし。アーロン・デスナーのサウンドとジャスティン・ヴァーノンの声とよく分からないリリック(笑)、が基本的に僕は大好物ですから、なんだかんだ言ってこれからも聴くでしょう。ていうかバラエティーに富んでいるので聴きやすさで言ったら、ビッグ・レッド・マシーンは1stよりこっちかもしれない。
 
アーロン&ジャスティン色が薄いのに物足りなさを感じつつもも、これこそが彼らが求める本来の形と思えば納得感はある。これは彼らの主催する自由な音楽祭なのだから。

Big Red Machine/Big Red Machine 感想レビュー

洋楽レビュー:

『Big Red Machine』(2018)Big Red Machine
(ビッグ・レッド・マシーン/ビッグ・レッド・マシーン)

 

ビッグ・レッド・マシーンとはボン・イヴェールことジャスティン・ヴァーノンとザ・ナショナルのアーロン・デスナーによるコラボ・プロジェクト。ボーカルがジャスティン・ヴァーノンなので、聴けば、あぁボン・イヴェールだということで、僕はあの静謐な狂気とでも言うような世界が好きなので迷わず購入した。ザ・ナショナルのことはアーロン・デスナーのことも含めて知らない。

ソングライティングは共同で行っているようだが、恐らく歌詞はジャスティン・ヴァーノン。ていうかあんなヘンテコな歌詞は彼にしか書けないだろう。サウンド的にもほぼボン・イヴェールの延長線上にあると考えていい。その点、僕はザ・ナショナルのことは知らないので詳しくは聴き分けられない。でも1曲目の電子音にはちょっと身構えた。『KID A』やんって(笑)。

でもそれは最初だけ。参加ミュージシャンは50名!ほどいるらしいからいろんな音が聴こえてくる。ストリングスもあるからそれぐらいの人数にはなるのかもしれないが、それにしても多い!っていうかボン・イヴェールもそうだなと思いつつ、このいろんな音がチクチクと聴こえてくるのはやっぱ病みつきになる。体の中の手薄なところをいちいち突いてくる感じが心地よいのは僕もヘンテコなのか。

ボン・イヴェールの時もそうだけど、沢山のミュージシャンがいて、沢山の音が奏でられて、その上コンピュータ音もあって、にもかかわらず賑やかな感じがしないというのは不思議。つまりはお行儀がいいということか。けれど全体として飛び込んでくる印象は狂気。イメージも都会の喧騒と言うより、緑豊かな、或いは湖があってっていう景色が広がるんだけど、そこからはみ出るような、いや、はみ出さずにはいられないという狂気がある。それでもやっぱり行儀の良さを感じてしまうのは、周りに迷惑を掛けたくないというごく普通の感情と他者へのいたわり。しかしそのちゃんとした人の狂気は、我々が持っているごく普通の狂気とも言える。だからこそ我々の体の中の無防備なところをチクチクと突いてくるが心地よいのだ。つまり僕たちは人である以上ヘンテコなのだ。という僕たちのごく当たり前の狂気をごく当たり前に表したアルバム。

それにしてもなんでビッグ・レッド・マシンて名だ?シンシナティ・レッズとは関係あるのだろうか?

 

Track List:
1. Deep Green
2. Gratitude
3. Lyla
4. Air Stryp
5. Hymnostic
6. Forest Green
7. Omdb
8. People Lullaby
9. I Won’t Run From It
10. Melt