The New Abnormal/The Strokes 感想レビュー

洋楽レビュー:
 
『The New Abnormal』(2020) The Strokes
(ザ・ニュー・アブノーマル/ザ・ストロークス)
 
 
ストロークスというと、リバーブ無しの単音のギターに代表されるシンプルこの上ないサウンドでかっこいいロックンロールをやってのけるっていうイメージがあるんですけど、このアルバムを聴いていると彼らの魅力ってそれだけじゃないなって改めて思いますね。
 
当然のことですけどメロディですよね、ここが抜群にかっこいいんです。で、ここもサウンド同様シンプルで、これまた誰にでも真似できそうなメロディなんですけど、これはサウンド同様絶対真似できないやつですね(笑)。
 
聴いてると割とはっきりとしたメロディで何も特別なことはしていないんですが、それが幾つも積み重なることで独特のムードを生み出している。で、かっこいいのが大体の曲で途中で違ったメロディでを持ってくるんです。分かりやすいのが1曲目の『The Adults are Talking』で普通にバースがあってコーラスがあってって曲で、これでもかのストロークス節だからそれだけでも全然かっこいいのに、最後に別のメロディを持ってきてもう一段ポップさ加減を押し上げてるんですね。しかもここ、ジュリアンのファルセットがしびれるぐらいにかっこいい!
 
こういう展開って普通つぎはぎが目立ったりわざとらしくなるんですけど、これを自然に響かせてしまえるのがストロークスで、続く『Selfless』も全くそうですよね。今回割とこういうドラマチックな曲が多いです。リードトラックになった『At The Door』なんてアウトロのシンセが宇宙っぽい!こういう面白いことができるのがそんじょそこらのバンドとの違いですね。しかも旧来のストロークス・ファンが小躍りするような『Bad Decisions』もちゃんと聴かせてくれるんですから、やっぱ彼らは特別なバンドです。
 
でさっきジュリアンのファルセットって話しましたけど、これも今までこんなあったかなって。前作の『Comedown Machine』(←このアルバムも僕は好きです)でもありましたけど、ここまで全面的にアピールしてませんでしたよね。ファンキーな『Eternal Summer』なんてほぼ全編ファルセットですよ。ていうかジュリアン歌うまい(笑)。こう考えると、シンプルに見えるストロークスって実にいろんな引き出しを持ってます。
 
なんかストロークスって1stとか2ndだけっていう印象が強いですけど、僕はこれら初期の作品をリアルタイムで聴いていないんですね。で、未だにやっぱストロークスは1st、2ndだよって声があるのも知ってますけど、今この時に出たこの『The New Abnormal』も相当かっこいいですよ。しかも時勢にドンピシャのこのタイトルのものを去年作ってて、今出てくるっていう(笑)。
 
1stの『Is This It』の初期衝動もそりゃあかっこいいけど、当然時間がたってるわけで、今の方が間違いなくレベル・アップしてるし、スケール・アップしてます。勿論 『Is This It』も素晴らしいしどっちがいいではなく、どっちもいいって話です。
 
ただ今この時点で聴くべきなのはやっぱ『The New Abnormal』だと思います。それだけ完成度の高い近年の彼らの、近年と言っても非常に寡作ですけど(笑)、これは同時代性を感じさせる彼らの代表作になると思います。バスキアをジャケットにするぐらいの自信がここにはある。
 
 
Track List:
1. The Adults are Talking
2. Selfles
3. Blooklyn Bridge To Chorus
4. Bad Decisions
5. Eternal Summer
6. At The Door
7. Why Are Sundays So Depressing
8. Not The Same Anymore
9. Ode To The Mets

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