安野光雅展 / あべのハルカス美術館 感想

アート・シーン:

安野光雅展 / あべのハルカス美術館

 

最初の絵本『ふしぎなえ』を見ていると、描きたいことがどんどん溢れているんだなぁ、手が勝手に動いているんだろうなぁと思ってしまいました。それぐらいアイデアが出てきてどんどこ描けたんじゃないか、そんな気がしました。もちろんそんな簡単な話ではないでしょうけど(笑)。

エッシャーみたいな不思議な絵も楽しいけど、僕はその絵の中にいるピエロだかなんだか分からない異国的な登場人物が右往左往している様子がおかしくて好きです。手足が長くてキャラ的にデフォルメされたものだけど生き生きとしている。こういうところも楽しくずんずん描けちゃったんだろうなぁ。

あとまぁすんごい緻密です。『もりのえほん』なんてやっぱすごい画力だなぁと驚きますね。これもやっぱり頭の中にイメージがあってどんどん描き進めていけるんだろうなと。考えていたら多分描けないよ、こんなの。ってそれは凡人の考えかな(笑)。

それとは対照的に『天動説の絵本 てんがうごいていたころのおはなし』という、しっかりと構成を練られたような作品もあります。空想ばかりしていたという安野さんの真骨頂のような作品です。ストーリーが記載されてはいますけど、やっぱり絵が面白いです。この絵の空想力あってこそなんだと思います。

『旅の絵本』シリーズは俯瞰で風景やらそこにいる人々やらを描いているんですけど、これもやっぱり細かいです。で面白いのが、細かいんだけど人物の遠近感がさほど気にされていなくて、遠くの人の方がちょっと大きかったりする(笑)。こういう大らかさもいいなぁと思ってしまいます。やっぱそれよりも人物たちが動いているんです。安野作品の一番の魅力はやっぱりこの’動き’なんだと思います。

経歴を見ていると多分本格的な絵の勉強はされていないみたいですけど、実際はどうだったんでしょうか。アールブリュットという言葉がありますが、安野さんの絵もそういう魅力、規定されない自由さ、大らかさ、ユーモアがあるような気がします。あ、でも安野さんは普通に上手いです。

三国志を描いたシリーズもあるし、いろんな本の表紙絵やポスターもある。単に同じような雰囲気のものを描き続けたという人ではないということが分かります。晩年まで創作、空想が止まなかった、描きたいことがいっぱいあった芸術家だったんだろうなと思いました。

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