Kind/Stereophonics 感想レビュー

洋楽レビュー:

『Kind』(2019)Stereophonics
(カインド/ステレオフォニックス)

11作目のオリジナル・アルバム。今回はいたく地味~なアルバムです。しかしこのいたく地味なアルバムがまたしても全英1位だそうでこれで8作目の全英№1!なんかよう分からんけど相変わらず英国では物凄い人気です。僕もフォニックスは大好きだけど、8回も1位になるかねっていう(笑)。日本で言えばB’zみたいなもんでしょうか。

前回の『Scream Above The Sounds』(2017年)がこれぞフォニックス!というような力作だったのに対し、今回はものすご~く力が抜けています。期待するようなロック・チューンは冒頭の「I Just Wanted the Goods」ぐらいなもんで、あとはもうケリー・ジョーンズが鼻歌まじりにポロ~ンと弾いたような曲ばかり。けどこのポロ~ンと弾いたような曲がちゃんと目鼻立ちがはっきりとしていて簡単には聴き耳を離さない。これがケリーの声であり、ソングライティングであり、バンドの地力なんでしょうな。

落ち着いたテンポの曲が多いとはいえ、ゴスペルもあるし(#3「Make Friends with the Morning」)、カントリー調もあるし(#8「Street of Orange Light)、白黒テレビから流れてくるような古い意匠を纏った曲もあるし(#10「Restless Mind」)、勿論いかにもフォニックスなだんだん盛り上がってくるバラード(#5「Hungover for You」)や泥臭い曲もある(#2「Fly Like an Eagle」)。ちょうど折り返しの6曲目でディスコ調のダンス・ナンバー(#6「Bust This Town」)を入れてくるのも効果的。スロー・ソング主体といえど全く単調にならないのは流石だ。

僕は夜遅くに耳にイヤホンを突っ込んで音楽を聴くことが多いので、日によってはそのままウトウトして、半分寝てしまっていることがある。けどこのアルバムはスロー・ソング主体なのに一気に最後まで聴けてしまう。それはさっき言った全体の流れに動きがあって飽きさせない工夫がしてあるというのもあるけど、リリックがね、やっぱり肩肘張ってないリリックが大きいかも。

生活の延長線上にあるリリックというか、それこそ風が吹いてくように耳にスッと入ってくる。トータル時間42分強。音楽を聴いて特別な時間を過ごすというのではなくて日常の暮らしに溶け込むような音楽。だから時間なんか気にならないのかもしれない。

国内盤には歌詞カードが付いていて、ちゃんと英詞と訳詞を並べてくれているのが嬉しい。ただラーナーノーツというか解説の類は一切ない。他に理由があるんだろうけど、今さら言うことないということなのかと笑ってしまった。

 

Tracklist:
1. I Just Wanted the Goods
2. Fly Like an Eagle
3. Make Friends with the Morning
4. Stitches
5. Hungover for You
6. Bust This Town
7. This Life Ain’t Easy (But It’s the One That We All Got)
8. Street of Orange Light
9. Don’t Let the Devil Take Another Day
10. Restless Mind

Leave a Reply

Your email address will not be published. Required fields are marked *

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)