Let’s Go Sunshine/The Kooks 感想レビュー

洋楽レビュー:

『Let’s Go Sunshine』(2018)The Kooks

 

出ましたクークス。4年ぶりです。えらい待たせたね~。かなり前に前作(『Listen』 2014年)の続編みたいな感じでレコーディングを始めていたらしいけど、これは今すべきことじゃねぇって一旦白紙に戻したそうだ。で仕切り直し。じゃあこれぞクークスってのを作ろうじゃないかって出来たのが本作だ。

アルバムはイントロ(←このイントロが最後にいい感じでリプライズされる)があって2曲目『Kids』で始まる。僕はクークスを表す際、ついUKギターバンドの雄とかUKギターロックの系譜なんて言ってしまうんだけど、この『Kids』は正にそんな感じ。リアム・ギャラガーのソロ作(『As You Are』 2017年)に入ってそうな雰囲気で、間奏のタンバリンもリアムが叩いてんじゃねぇかって(笑)。ただ大きく違うのはバンド感。そりゃソロ1作目のリアムとは比べぶべくもないけど、このバンド感は流石というか、今回はルークのソングライティングに重きを置いたアルバムだという情報が頭にあったけど、それプラス、バンド感。ルークのソングライティングも含めて、バンド感がすっごく前面に出ていると思います。

例えば#5『Fractured and Dazed』。曲がまたいいんだけど、バンドがそれをしっかり下支えしている。ルークの作った曲に寄り添っているというか、派手さは無くても全体が塊としてガッ来る感じが一体感があってとてもいいのです。またギターのヒュー・ハリスがいつもながらバックで実にいいフレーズを奏でてます。この人は前へ前へっていうギタリストではないんだけど、実はクークス・サウンドの肝はこの人なんじゃないかというぐらい毎回いい仕事をしています。ちなみにこの曲は終わったと思ったらまたドゥンドゥドゥドゥドゥンッて始まるところも最高だ。

このアルバムはとにかくメロディがいいんだけど、初期からのファンにはちょっとスピードが物足りないかもしれない。でもよ~く聴いて欲しい。#7『Four Leaf Clover』なんてどうです。心が走ってませんか。メロディはとても綺麗だけど心がつんのめって走り出している。音は成熟しているけど、心は切羽詰っている。この曲はキャリア12年を経たクークスの一つの到達点と言っていい名曲じゃないでしょうか。ルーク節の「んまぁい~ん♪」(←mind のことです)も聴けるし(笑)。

アルバムはここで前半の区切り。LPで言うところのA面終了やね。後半はレトロな#8『Tesco Disco』、#9『Honey Bee』で気分転換。『Honey Bee』なんてオールディーズ感満載で面白いね。#11『Pamela』はアルバム唯一のスピード・ナンバー。クライマックスへ向けてここらで一回ギアを上げてこうかって曲。こういう感じはお手の物。テンポ・ダウンしてまた加速していくところなんかも流石のクークスです。

#13『Swing Low』はロッカ・バラード。この曲で終わってもいいぐらいのゆったりとしたいい曲。けど、その流れを引き継いでく#14『Weight of the World』が輪をかけて素晴らしいです。シンプルなのにこの奥行き。ワンフレーズのコーラスなのにものすんごい情感。ポール・マッカートニーかっちゅうぐらいの素晴らしいメロディやね。出だしのピアノといい中盤からのトランペットといい、アレンジも最高だ。

最後の曲は#15『No Pressure』。前曲の余韻から入るイントロのギターがいい感じ。前々曲、全曲で胸がいっぱいになったところで、最後に軽やかな曲を持ってくる構成も抜群だ。まるでミニシアターで観る青春映画のエンドロールみたい。この曲もいいメロディだ。

これぞクークスという意気込みで始まったという創作。その目論みは大成功。クークスのアルバムはどれも好きだけど、これまでの魅力をギュッと恐縮したような本当に集大成のようなアルバムになっていると思います。曲はいいし、バンドはいいし、けど全15曲のボリュームを感じさせない軽やかさ。よいメロディにはノスタルジーが宿るっていうけど、このアルバムにもセピア色の写真を見るようなよいメロディがいっぱい詰まっている。これが売れなきゃどうせいっちゅうような素晴らしいアルバムです。

 

Track List:
1. Intro
2. Kids
3. All the Time
4. Believe
5. Fractured and Dazed
6. Chicken Bone
7. Four Leaf Clover
8. Tesco Disco
9. Honey Bee
10. Initials for Gainsbourg
11. Pamela
12. Picture Frame
13. Swing Low
14. Weight of the World
15. No Pressure

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