The Balance/Catfish and the Bottlemen 感想レビュー

洋楽レビュー:

『The Balance』(2019)Catfish and the Bottlemen

 

英国出身の4ピースの3枚目。今どき珍しいオーソドックスなギター・バンドです。まぁ言ってもイギリスはロックの国ですから、ラップが何だ、ダンスが何だと言われようがギター・バンドは続々と登場するわけで、ってネット情報ですけど、、、まぁそん中から抜きんでるっていうのは、しかも今時ロックは随分と肩身の狭いご時世ですから、それでもこうやってドカンと出てくるのは相当の力量を持ったバンドではないかなと。

てことで、Catfish and the Bottlemen。3枚目ということですが、特に変わらないです。いつものようにガッと勢いのあるロック・チューンを連発してくれます。相変わらずの安定感ですな。プロデューサーがU2とかThe Killersも手掛けたJacknife Leeということですから、そっち方面のどでかいサウンドを目指したってことでしょうが、実際はいつもとそんな変わりません(笑)。

いや、確かに曲想は広がってますよ。例えば#9「Mission」とか#11「Overlap」は途中で転調しますし、特に#9「Mission」はヒップホップ的なアプローチではないかいなと。でも元々勢い重視のサッと始まりサッと終わるみたいな潔いバンドですから、流石にU2みたいに全世界を歌っちゃいます的な壮大なアプローチにはならないわけです。

でもいーんです、いーんです、そこは曲の力で持っていきますから。何が一番大事なのかは本人たちもよーく分かってるし、だから壮大なスケール感でごまかすっていうことではなくて、良い曲を思い切り腕を振って、ギターロックする。彼らの場合はそれでいいのかもしれません。

デビュー時からいいバンドだったんで、いつか化けるだろう、いつか化けるだろうと思って聴き続けてきたのですが、どうやらその辺はあんまり期待しない方がいいのかなと、この3枚目を聴いて私はそう確信しつつあります(笑)。

曲は抜群にいいし、ボーカルも荒々しいし、バンドも安定してるから、つい期待しちゃう。ライブ映像を観るとめちゃくちゃカッコいいけど、アルバムになると何か物足りない(笑)。まあ、これからも彼らはきっとそういうバンドなのでしょう。とか言いつつ、いつかガツーンと壁を破るんじゃないかと、また買い続けるんだろうな、オレは(笑)

 

Tracklist:
1. Longshot
2. Fluctuate
3. 2all
4. Conversation
5. Sidetrack
6. Encore
7. Basically
8. Intermission
9. Mission
10. Coincide
11. Overlap

メイド・イン・ジャパン

ポエトリー:

『メイド・イン・ジャパン』

 

全国展開する理容室に行くと
入口で番号札を渡され
番号を呼ばれて席に着くと
少々伸びた髪でもバリカンで綺麗に刈られる
新しい客が来る度に
威勢の良いいらっしゃいませが浴びせられ
寝ぼけた客はその都度はっきりと目を覚ます
二十分ほどで作業が終わるので
会計を済まし出口へ向かうと
今度はその背中越しに威勢の良いありがとうございましたが投げつけられ
それはまるでベルトコンベアに並んだ工業製品のようだ

 

2017年4月

High Hopes/Bruce Springsteen 感想レビュー

洋楽レビュー:

『High Hopes』 (2014)  Bruce Springsteen

 

14枚目のオリジナル・アルバム。この時点で65歳くらいだと思うけどこの人はホント多作。90年代は創作自体も少なく名前をあまり聞かなくなっていたが、2002年の『ライジング』以降はほぼ2年おきに新作をリリース。それがまたどれも話題作になっちゃうんだから凄い。

このアルバムはライブの定番曲を改めて録音したものや、ツアーの合間にインスピレーションが湧いて録音したもの、そして過去の未発表曲から成る。以前『トラックス』という膨大な未発表曲集をリリースしたけど、そういうのが今も増え続けているということか。で近年のものを集めたところひとつのオリジナル・アルバムとし成立したというような格好だ。

なかにはカバーがあったりするし、勿論新譜もいくつかある。そこで思うのはこの人はとことん音楽が好きなんだなということ。古い曲でも新しい曲でも、思いついたらEストリート・バンドのみんなを集めて録音したくなっちゃう。勿論シリアスな曲も書くけど、基本は「ロックンロールしたい」ってことなんだろう。表題曲の『ハイ・ホープス』なんてほんとそんな感じがする。

経緯もあってか本作は軽い物からシリアスなものまで多種多様。歌詞を見ると深刻なものもあるが、あまりそうした印象は残らない。このアルバムは大きく取り上げられたトム・モレロのギターが影響しているとのことだが、僕にはそのことよりもメロディの良さに目が行ってしまう。#5『ダウン・イン・ザ・ホール』や#9『ハンター・オブ・インヴィジブル・ゲーム』なんかは歌詞だけをみるとかなりヘビーだが、メロディの力とそれに伴うサウンド・デザインが全てを包み込んでいる。中でも『ハンター・オブ・インヴィジブル・ゲーム』の美しさは白眉だ。

これだけの名声があっても根はローカル・ヒーローのままというか、実際ふらりと地元のライブ・ハウスに現れるみたいだし、どれだけ巨大になろうと本質的には近所のロックンロールおやじに過ぎないということ。僕がスプリングスティーンを好きなのもただそれだけのことだ。

そしてその近所のおやじは近所のうまくいかないひとが放っておけないたちで、だけど強引に何かをするっていう人でもなく意外とシャイだったりするし。だから具体的に何かするわけではないんだけど、目線がどうしてもそっちにいっちゃうんだな。政治的な歌を歌う人という捉えられ方をしがちだが、実際は身の回りの人々から目が離れないというだけ。いくら暑苦しく歌おうが、うさん臭くならず皆に支持され続けているというのはそういうことなんだと思う。本作を代表する#3『アメリカン・スキン(41ショット)』が心を打つのも、国に対する異議申し立てではなく、身近な人たちへの深い眼差しがあるからだ。

未発表曲の中には他界したダニー・フェデリーシやクラレンス・クラモンズの演奏も含まれている。そういう理由でセレクトした訳ではないんだろうけど、ここにスプリングスティーンの思いを感じることも出来る。

このアルバムをひと言で言うと、『ハイ・ホープス』で始まり、『ドリーム・ベイビー・ドリーム』で終わるとということ。このこと自体がこのアルバムを象徴している気がする。

追記:初回限定盤には2013年に行われた『ボーン・イン・ザ・USA』の全曲再現ライブのDVDが特典として付いている。ちゃんと字幕付きなのが嬉しい。やっぱりスプリングスティーンの音楽は歌詞も魅力のひとつだから。中身の方は言わずもがな。もう凄いとしか言いようがない。こんなの見ると他のも欲しくなるよなぁ。

 

Tracklist:
1. High Hopes
2. Harry’s Place
3. American Skin (41 Shots)
4. Just Like Fire Would
5. Down in the Hole
6. Heaven’s Wall
7. Frankie Fell in Love
8. This Is Your Sword
9. Hunter of Invisible Game
10. The Ghost of Tom Joad
11. The Wall
12. Dream Baby Dream

詩の読み方

詩について:

詩の読み方

 

日本の現代詩はよく分からない、読むのが困難というイメージがあります。けれどそれは当たり前。日本語で書かれたものだからつい小説やエッセイのようにすっと入ってくるイメージですが、実際は作者があーでもないこーでもないと、人によっては言葉を削って削って抽象化していく訳ですから、やっぱりそんな簡単に読めるものではないんですね。

だから読む方も何だこれはということで何度も何度も読み返す。そうすることで、この詩はどうやらこういう意味ではないかというのがようやく立ち上がってくるのです。中にはパッとすぐに響いてくる場合もありますが、作者は言葉に無いものを言葉で表そうとしている訳ですから、そうそうすぐにピンと来るものではない。というのが僕の詩への向き合い方です。

なんだメンドクサイなと思われるかもしれませんが、歌だってそうですよね。何度も聴いているうちに、あぁこれはこういうことかって別の側面が立ち上がってくるときがある。詩も音楽も芸術作品であるならば、そうやって時間をかけて楽しむものとして捉えていいんじゃないでしょうか。指でスクロールしてハイ終わり、というものではなく、カバンの中にお気に入りの詩集を入れて、或いはスマホの中にこれは何だろうと思った詩をコピーしておいて、思いついた時にまた見てみる。そういった付き合い方、電車の中でイヤホンを耳に差すようなノリで気軽にパラパラと読むのがいいんだと思います。

あと現代詩が困難というイメージは小学校の国語の授業で付いてしまったという部分もあるような気がします。詩は本来自由に読めばいいんですね。作者の意図はあるにせよ、読み手は自分の解釈で自由に読めばいい、100人いれば100通りの理解があっていいわけです。

ところが学校の授業では、ハイここはどういう意味だと思いますか?とかここで作者はこういう心境を歌っていますね、なんて言われるものだから、生徒たちはちんぷんかんぷん、多分小学校時代の僕も頭の上にも?マークが出ていたんだと思います(笑)。本来答え何かないものに答えを与えようとしたもんだから、詩はなんだかよく分からないもの、というイメージが付いちゃったような気もします。中原中也の「ゆあーん ゆよーん」なんて先生に説明されても何のこっちゃですよね(笑)。「ゆあーん ゆよーん」って変なのって、言葉で遊べばいいんだと思います。

先のブログで身の程知らずにも萩原朔太郎の「鶏」を解説しましたが、あれもあくまでも僕の解釈ですし、それも明日また読み直したら変わってくるかもしれない。詩というものは大雑把でも強引でも何でもいいから、想像力を働かせて自分勝手に面白がればいいんだと思います。

専門家から見たら、なんだその浅い見方はなんて言われようが、結局は個人的な楽しみ、作者と読み手との一対一のコミュニケーションなんですから、自分なりに解釈して勝手に面白がってればいいんだと思います。批評家の評論なんてクソ食らえ!ですね(笑)。あ、評論家の評論も面白いですよ。

話が逸れましたが、そうやって詩を読んでるうちに自分では気付かなかった心の中の何かと合致する、自分にそぐう言葉が見つかる、自分の身の丈に合った詩がすっぽり収まるときがあるんです。それが楽しいっちゃあ楽しいのかもしれませんが、ま、結局は分かりません(笑)。

どっちにしても詩は高尚でも難解なものでもなく、身近なもの、生活に根差したもの、ともう少し自分の側に引き寄せればいいじゃないでしょうか。

分かったと思いきや、やっぱ分からん、そういう息の長い魅力が詩にはあるのだと思います。

鶏/萩原朔太郎

詩について:

鶏/萩原朔太郎

 

萩原朔太郎。北原白秋や室生犀星らとともに日本の近代詩の可動域を広げた大正期の詩人です。大正期の詩人ではあるけれど、非常に身近な詩人といいますか、扱っている題材がほぼ‘憂鬱’ですから(笑)、非常に現代的な詩人ですね。

僕なんかは彼のことを‘憂鬱の詩人’なんて言ったりしていますが、まぁでもそれは愛情を込めてと言いますか、というのも彼の詩は憂鬱でありながらも愛嬌があるんですね。僕がある程度年を重ねているせいもあるとは思いますが、憂鬱と言いながらも憂鬱と遊んでいるような気さえする、そこはかとないユーモアを感じる。つまり憂鬱と付き合うのが上手な詩人、というイメージでしょうか。

イメージと言えば、情景描写に長けた詩人とも言えます。読み手にいつも情景を喚起させる。直接的に憂鬱を語るのではなく、情景を通して憂鬱を語る。そういう手法でしょうか。

 

鶏  萩原朔太郎

しののめきたるまへ
家家の戸の外で鳴いてゐるのは鶏(にわとり)です
声をばながくふるはして
さむしい田舎の自然からよびあげる母の声です
とをてくう とをるもう、とをるもう。

朝のつめたい臥床の中で
私のたましひは羽ばたきする
この雨戸の隙間からみれば
よもの景色はあかるくかがやいてゐるやうです
されどもしののめきたるまへ
私の臥床にしのびこむひとつの憂愁
けぶれる木木の梢をこえ
遠い田舎の自然から呼びあげる鶏(とり)のこゑです
とをてくう とをるもう、とをるもう。

恋びとよ
恋びとよ
有明のつめたい障子のかげに
私はかぐ、ほのかなる菊のにほひを
病みたる心霊のにほひのやうに
かすかにくされてゆく白菊のはなのにほいを
恋びとよ
恋ひどよ
しののめきたるまへ
私の心は墓場のかげをさまよひあるく
ああ なにものか私をよぶ苦しきひとつの焦燥

このうすい紅いろの空気にはたへられない
恋びとよ
母上よ
早くきてともしびの光を消してよ
私はきく遠い地角のはてを吹く大風のひびきを
とをてくう とをるもう、とをるもう。

 

「しののめ」とは東雲と書きます。東の空がわずかに明るくなるころ。ここで読み手は夜明け前のそれも随分と早い頃合いを想像します。

その「しののめきたるまへ」に聞こえてくるのは戸外の鶏の声。「声をばながくふるわして」ですから、あまり良いイメージではないですね。そしてそれは例えれば「母の声」だと。ここでは決して見晴らしのよいものではない、自分を引き留める者、煩わしいもの、ということでしょうか。

ここで謎のオノマトペ(擬声音)。「とをてくう、とをるもう、とをるもう」。ここは声に出して読むとニュアンスが膨らみます。僕の場合は「を」を「wo」と読みます。

「朝のつめたい臥床の中」で、作者の若い精神は羽ばたかんとする。きっと外の世界は輝いていると。けれど「しののめきたるまへ」に臥床に忍び込んでくるのは憂鬱な田舎からの沈んだ声、「とをてくう、とをるもう、とをるもう」だと。

しかし主人公はその憂鬱なるものを憎んではいない。ある意味魅力あるものとして捉えている。そしてそこには死の匂いを感ずると。その素直な気持を「恋びと」に呼び掛けます。ここでの「恋びと」は具体的な姿形を持つものとは限らない。それは主人公の愛すべきイメージ。或いは実在かもしれませんが、そこはさして重要ではない。透明なる母性かもしれません。

証拠に第4連ではその憂鬱を「うすい紅いろ」と例えています。「たえられない」といいながら、魅力ある「うすい紅色」ですから、ここが萩原朔太郎の面白いところですね。

そして「恋びと」、「母上」へ呼びかけます。「早くきてともしびの光を消してよ」と。「ともしび」は要らないと。結局は「私のたましひは羽ばたきする」とか言いながら、布団の中に潜り込んでしまう姿が想像されます。潜り込んで出てこない。臥床の中で「とをてくう、とをるもう、とをるもう」という「大風のひびき」を聞くわけです。

やっぱり苦しんでいるというより、憂鬱と遊んでいるような、いや実際は本当に苦しんでいたかもしれませんが、そういう風に感じられる風通しのよさ、抜けの良さがある詩だと思います。

僕が落ち込んで憂鬱なときに詩を書いたら、こんな風にならない、暗くてすご~くやな感じの詩になると思います(笑)。ま、普通はそうなんでしょうが、そうならないところが萩原朔太郎の魅力ということでしょうか。

映画『最強のふたり』 感想

フィルム・レビュー:

「最強のふたり」 2011年公開 感想

 

人間の価値って何だろう?
勉強が出来ることや仕事が出来ること?
頭がいいことや力を持っていること?
育ちがいいとかお金を持っているってのはどうだろう?
上手く立ち回れるってのは?

多分、
人の価値というのはそういうことではなくて
例えば音楽
例えば絵画
いや、そういうのが出来るとか出来ないとかじゃなく、要は心の有り様
‘正しく人と向き合えること’

頭が良くてお金持ちになっていい暮らしをするっていうのは
そりゃそっちの方がいいと思うけどただ実際は
そういうことだけで心の隙間や空白は埋まらないということを
薄っぺらに感じながらも
毎日、知っている人やあんまり知らない人に会って
おはようだのこんにちはだの言いながら
誰かの手助けをしたりされたり
ちょっかいを出したり怒られたり

そうやって心の隙間や空白は小さくなっていくものだと
これもまた薄ぼんやりと知りつつも
やっぱり大事なことは忘れがちになるから
なるべく意識しておはようだのこんにちはだの言いながら
困っている人がいたら考えずに手を出して
それで間違って恥をかいても構わないし
買い物行ったらレジの人とお話したりなんかして
自分なりのやり方で毎日人と向き合いながら
今日もじゃあ行ってくるわっていう

時にはそれで諍いもあって
でも本来人と人は分かり合えないものだから
だからなんていうか
個人が個人として立って
個人として接していく
そうやって日々の浮き沈みを過ごしていく
特別に誰かと繋がろうとかではなく
自分なりに人と向き合える毎日がいいし
そこにユーモアがあれば尚いいし

だからここで強引に言えば、
この映画の主役二人は「最強のふたり」だなと思うわけです(笑)

ということで、
この映画を観て最初にぼんやりと思ったのは
人間の価値って何だろう?
そういう問いでした

 

映画『最強のふたり』(原題: Intouchables):
2011年のフランス映画。頸髄損傷で体が不自由な富豪と、その介護人となった貧困層の移民の若者との交流を、ときにコミカルに描いたドラマ。そんなことまで言う!?っていう若者ドリスと堅苦しそうで実は柔らかなフィリップとの掛け合いにゲラゲラと笑うこと請け合いです。

光合成

ポエトリー:

『光合成』

 

普段通り
あなたの瞼に光が射して
涙は瞳の奥で対流す

目頭がこそばゆくなったら
お気に入りのハンカチ
そっと押し当てて
ミトコンドリアの囁き広がる
刺繍になって現れる

つまり涙の成分は
光によって作られた
君の瞳の光合成
大いに育てば大いに溢れるものなのです

やがてこの命枯れ
人と植物は薄く重なり溶けてゆく
太古の地層のように幾重も重なる光合成
わたしたちもその一員です

わたしたちの希望の光は
あなたの瞳の遥か上
太陽の行き着く先は
子どもたちが吹くオーボエの音

 

2019年5月

耐えきれなくなるなんてこと

ポエトリー:

『耐えきれなくなるなんてこと』

 

かさねた時の重さに
耐えきれなくなるなんてことは
僕に限ってない

目覚ましく回転する
この心臓の撹拌は
一昨日(おとつい)のことも忘れがち

友達がいなかったからではなく
時に多くの言葉を纏い
見晴らしのよい悲しみを
あっさりと

ずぶ濡れに暮れた夕焼け
身近な恋人たちが泣きわめき
狭い通路に置き去りし
古ぼけた雨傘

道草の、薬草煎じて(約束信じて)
缶切りで傷口抉じ開けるお手伝い
そんな真似
しているのだお前

重ねた時の重さに
押し潰されるなんてこと
世話はない
嵩張った秒針が
何べんも食事を与え
腹帯を弛める

世話もねぇ
世話もねぇや

僕に限って
耐えきれなくなるなんてこと
これからもない

 

2019年2月

「いだてん 第2部~田畑政治編~」、スタート!

TV Program:

「いだてん 第2部~田畑政治編~」、スタート!

 

「いだてん 第2部~田畑政治編~」が始まりまして、ま~観てるとですね、今までの金栗四三や嘉納治五郎の奮闘は何だったのかと(笑)。何だあんなものとコケにしまくるマーちゃんこと田畑政治がキレキレですな。先週の感動の第一部最終回もあれはあれ、と感動の余韻を期待するこちらを見透かすように、四三だろうが治五郎だろうがベリベリとひっぺ返していく外連味の無さ。こーゆーの、いいですねぇ~。

もう丸っきりマーちゃんこと阿部サダヲの独壇場でして、まぁ僕みたいなクドカン×阿部サダヲ好きにはこれはこれでアリなんですが、これは完全に好き嫌いに分かれるでしょと(笑)。ただでさえ視聴率悪いのに、こりゃまた離れる人続出だなと(笑)。ま、そーゆー何かに慮るところが一切無しっていうのがいいとこなんですけど、流石にちょっと心配になってきたな(笑)。

第一部で積上げてきた登場人物の人となりもあれはあれというか、角度を変えればこうなるというか、そりゃ人間なんてそんなもんですから、どっからどう見ても素晴らしい人なんていないわけで、そんな風にこちらの思い込みをサラッとひっくり返すところは、人のことをどうこう言いながら、じゃあ自分はどうなんだいと、人の一面を見ただけであの人はどうとかこの人はどうとか分けちゃってるんじゃないのと、自分こそ物事を二極化してるんじゃないのっていう、己を顧みるというか、第二部初回を観た私にはそこのところがズキッとした感覚として残りましたね。

いや~、やっぱり「いだてん」はオモロイ!!

When We All Fall Asleep, Where Do We Go?/Billie Eilish 感想レビュー

洋楽レビュー:

『When We All Fall Asleep, Where Do We Go?』(2019)Billie Eilish
(ホエン・ウィ・オール・フォール・ア・スリープ、ホエア・ドゥ・ウィ・ゴー/ビリー・アイリッシュ)

 

驚くほどシンプルでエレガントなメロディは、両親の影響でビートルズを聴きまくったというところに由来するのかと老人はつい言いたくなってしまうが、2019年にもなってそれはないだろう。勿論、その影響はアリにせよ。

元来作為的なものを排除する性質なのか。作為の無い始めからそこにあったかのようなメロディは、ソングライター・チームのあの手この手の入ったメロディには無い自然美がある。と思うのはビリーと兄フィネアス・オコネルに関するバイアスがかかっているせいか。それにしても兄妹が生み出すメロディのエレガントなこと。まるでアレックス・ターナーのようだ。

そこに被さる、声を張らない歌唱力が魅力のビリー・アイリッシュの声との親和性は見事。しかも「私は王になる」と言いながらもまるで他人事のようなリリック!!

そしてビリーの囁く声がロックの様相を帯びているのはシンプルでキャッチーなメロディ故という円環。兄妹が作り出すサウンドとボーカルはバンド・サウンドでドカンとやってしまえる精度だ。エレクトリカルなサウンドでありながら、デイヴ・クロールやトム・ヨークがこぞって称賛する理由はそこにあるのではないか。兄妹にとってはどうでもいいことだろうけど。

しかしそのトラックとビリーの声の近さは宅録故の成果。大掛かりになればなるほど手元から遠ざかるのは恐怖そのもの。真実と言い切れるものはやはり手の届く範囲でしかない。しかしビリーはこの時17歳。囁くようなボーカルもミニマルなサウンドもこれから幾らでも変わり続けるだろう。

勿論彼女は降って沸いた天才ではないが、自らをBad Guyと言いながら、ドラッグもタトゥーも要らないと言う意志の強さは眩しいったらありゃしない。この正しさには抗えない。

 

Tracklist:
1. !!!!!!!
2. Bad Guy
3. Xanny
4. You Should See Me in a Crown
5. All the Good Girls Go to Hell
6. Wish You Were Gay
7. When the Party’s Over
8. 8
9. My Strange Addiction
10. Bury a Friend
11. Ilomilo
12.
Listen Before I Go
13. I Love You
14. Goodbye

 (日本盤ボーナス・トラック)
15. Come Out and Play
16. When I Was Older