洋楽レビュー:
『Keep The Village Alive』(2015) Stereophonics
(キープ・ザ・ヴィレッジ・アライヴ/ステレオフォニックス)
新作が出ると聞くと嬉しくなるバンドが幾つかあって、このステレオフォニックスもそう。真っ先に公開された『セ・ラ・ヴィ』がまた待ってました感満載のアッパー・チューンだったので、すごく楽しみに待っていた。
その『セ・ラ・ヴィ』から始まって、2曲目、3曲目と聴いてゆくとやっぱいいんだなあ、この安定感。どっからどう切ってもステフォなんだけど、前作で取り組んだ陰影の部分がちゃんと出てるし、基本的なスタンスとしちゃ何も変わらないんだけどしっかりバージョン・アップされてて、昔ながらのバンドではなく今まさに旬のバンドとしての音が聴こえてくる。キャリア20年目でまたUKチャート1位に返り咲いたというのがその証しだろう。
僕は音楽的なことはよく分からないけどコード進行も単純な感じがするし、曲そのものもいたってシンプル。それでいてこうもドラマティックで奥行きのあるサウンドに仕上がってくるということは、曲作りにおいてもサウンド・デザインにおいても何がしか秘密がある訳で、ミュージシャンを目指す人にとってはよいお手本になるんじゃないだろうか。
今回もケリーのソングライティングは冴えわたっていて、ストーリーテリングが相変わらず素晴らしい。日本人の僕にだってちゃんと映像が浮かんでくるし、ほんと間口の広いストーリーテリングだ。やっぱそこは語り過ぎないということだろう。ちょっとどうなのか分かりにくいところが所々あって、そこはどっちでもいいよ、って聴き手に委ねられている感じ。不足があるというのではなく、そこのさじ加減が丁度いいのだろう。そしてちょっとグッとくる話には何げにストリングスが絡んできたりして、この扱いがまた絶妙なんだな。
このバンドはケリー・ジョーンズの声とソングライティングなんだけど、それも盤石なバンド演奏があってこそ。やっぱバンド力なんだと思う。キャリア20年目にしての9枚目のオリジナル・アルバム。タワレコ・オンラインで初回限定盤を注文しようとしたらすぐに無くなってて、日本でも根強い人気。勿論僕も大好きだ。
1. セ・ラ・ヴィ
2. ホワイト・ライズ
3. シング・リトル・シスター
4. アイ・ウォナ・ゲット・ロスト・ウィズ・ユー
5. ソング・フォー・ザ・サマー
6. ファイト・オア・フライト
7. マイ・ヒーロー
8. サニー
9. イントゥ・ザ・ワールド
10. ミスター・アンド・ミセス・スミス
(日本盤限定ボーナス・トラック)
11. セ・ラ・ヴィ (ライヴ・フロム・ザ・ロイヤル・アルバート・ホール)
12. マイ・オウン・ワースト・エネミー (ストリップト 2015)