アート・シーン:
お正月の仏像巡り~広隆寺から東寺へ~
1月3日、仏様に会いに京都へ参りました。参拝したのは太秦にある広隆寺。お目当ては日本一美しい仏像と言われ、国宝第一号でもある弥勒菩薩半跏思惟像と京都駅を少しばかり西へ歩いた東寺にある空海の曼陀羅を再現した立体曼陀羅です。お正月も3日目ということで、人手もボチボチとちょうどよく、天候にも恵まれとてもよい1日を過ごすことが出来ました。
広隆寺へはJRでも行けるのですが、せっかくなので嵐電で。私は十数年前、西院辺りに住んでいたことがありまして当時何度か利用していたのですが、道路を走ったり住宅地を抜けていく電車はなんとも言えない風情がありますね。生活感があって素敵です。
広隆寺は思ったより人が少なかったですね。1時間ぐらい滞在していたのですが、参拝客は20名ほどでしょうか。人が少なくガチャガチャしてなくて、静かなお正月って感じが心地よかったです。
お目当ての弥勒菩薩半跏思惟像は新霊宝殿に安置されております。入り口には係りの方がいらっしゃって、そうそう、当たり前のことですがお寺ですから境内には僧侶だけでなく、ここで働いている方が何人かいらっしゃいます。だからお務めって言うんですかね、境内は落ち葉ひとつなく綺麗なんです。こういうお正月であっても普段と変わらないお寺の日常感には心が洗われますね。
新霊宝殿は想像以上に広くて魅力的な仏像が数多く並んでいます。中は薄暗いので最初はちょっと見えにくいのですが、目が慣れてくると暗いことは全く気にならなくて、かえってその微妙な暗さ加減が厳かな雰囲気を出していました。
弥勒菩薩半跏思惟像はその中央奥におわします。繊細なイメージを持っていたのですが思ったより大きかったですね。座った姿勢の高さは84.2cmだそうで標準的な日本人とさほど変わらないのですが、見た感じはもっと大きいです。流石と言いますか、迫力がありますね。
弥勒菩薩半跏思惟像の前は畳敷きの小上がりになっているので、そこに座って弥勒菩薩さんをじっくりと眺めることが出来ます。この日は人手がポツポツだったので、僕はしばらくの間座っていましたが、普段はこうはいかないんでしょうね。
で弥勒菩薩さん。実物を見て印象に残ったのはスタイルですね。なんとも上品な佇まいで、胴体もすごくスマート。でも細さを感じなくてちゃんと内臓を感じられる。でもやっぱり細い。でまぁ考えるとですよ、やはり呼吸が細いんでしょう。それに菩薩様は食生活も質素ですから、我々みたいに馬鹿忙しく内臓が立ち働く必要はない訳です。だから内臓も必要最小限しか活動しない。てことで全体のサイズに比べて胴体がスマートなんだと。あぁなるほどなと。僕は小上がりに座ってそんなことを想像しながら一人頷いておりました。
新霊宝殿には他にも魅力的な仏様が沢山いらっしゃいます。印象的だったのを幾つか挙げると、先ずは聖観音立像。失礼ながら、こちらに向けて下に下ろしている掌が艶かしいんですよね。そう考えると衣装も胸元の辺りが2つの円を描いているようでセクシー。てことで僕は勝手にこのお方はエロスなんだと。我々しもじものいやらしい煩悩を始末してくださるエロス仏なのではないかと。そんなことを思いフムフムと一人悦に入っておりました。
あと吉祥天立像。こちらは女性です。毘沙門天の奥様だそうです。吉祥天立像は3体並んでおりまして、僕のイメージでは向かって左がちゃんとした格好をなさっているのでお務め時の吉祥天さん。まん中がラフな格好なので普段着の吉祥天さん。右端が胸元がちょっと開いたお衣装なのでドレスコードかな、よそ行きの吉祥天さんですね。
新霊宝殿を出るとポカポカ陽気。ちょうどお昼過ぎなので、太秦広隆寺駅にある麺処でお正月らしく力うどんをいただきました。年末年始を家人の実家である愛知県で過ごしたので、あぁやっぱ関西風のお出汁はええなぁと舌鼓を打ちつつ、その後は西へ10分程歩きJR太秦駅へ。東寺に向かうべく京都駅まで行きました。しかしJRの車内は凄い人でしたね。外国の方も多くて、行きの嵐電とは大違い。京都駅から歩いて15分程の東寺も結構人がいて、広隆寺界隈との落差を感じました。
東寺ではお正月の三が日のみ、五重塔の四面の扉が開帳されていて中の四仏坐像を見ることができました。金堂では薬師如来と両サイドに日光菩薩と月光菩薩。薬師如来の台座の下には十二神将がぐるりと配されています。
てことで十二神将はサイズがかなり小さいんですね。つまりは想像すると十二神将はサイズが自由自在なんじゃないかと。ほら確かウルトラマンだって怪獣相手だとでっかいけど、相手に応じて小さくなれたはず。十二神将もあれと同じで、戦う相手や場所に応じて体長を変えられるということではないかと。そーかそーかなるほどね、戦う神さんだからそりゃそーだよねと、一人納得して講堂へ向かいました。
そしていよいよ講堂の立体曼陀羅。これも思っていたより大きくて迫力満点でした。なんといっても如来像5体(五智如来)、菩薩像5体、明王像5体、天部2体、四天王像4体の計21体ってことですから、仏像好きにはたまりませんな。立体ですから角度を変えないと見えない仏様もいて、あっちから眺めこっちから眺めと、多種多様な仏様を拝見出来るんですから、食べ物で例えると蟹とかフグとか焼き肉とかが一つのテーブルに並んだ満漢全席と言いますか、贅の限りを尽くした立体曼陀羅といった感じでしょうか。
ですので人それぞれ、好みに応じて見所満載でして、僕が最初に見入ったのは入ってすぐの梵天。チケット売り場でもらえる栞の表紙にもなっています。なんつっても4匹のガチョウの上に単座されてる姿がいいじゃないですか。想像力がスパークしてますよね。用事がある時は梵天さん、「行けっ、ガチョウ」なんつって、この4匹のガチョウが羽ばたくんでしょうなぁ。くぅ~、飛ぶとこ見たいぜぇ。
立体曼陀羅の中心部は5体の如来様がおわします。如来様ですから華美な装飾はないのですが、それでもそれぞれに個性があってじっくり見比べるのもよいです。しかしまぁ悟りを開かれた如来様ですから5体とも静かで落ち着いた佇まいですね。やっぱ如来様はちゃうなぁ。
その隣は明王様たち。先ずは隆三世明王、カッコええ。胸の前で組んだ印て言うんですか、指どうなってんねんっていう。この魔術を使いそうな指の絡ませ方と足を踏み出したポーズがいかにも戦いまっせという感じでカッコいいです。
あと不動明王。不動明王は大体どこで見ても光背が赤く色付けされていて、なんか特別感が出ております。よう分からんけど怒ってはんねんなと。学校にもいたでしょ怖い先生。ま、仏像界でもそういうポジションなんでしょうな。
天部では梵天と並び称される帝釈天。流石、仏像界No.1と言われるイケメン。キリリとして男前ですな。象の上で半跏思惟の座り方です。象がどういう意味を持つのか分かりませんが、片足を組む半跏思惟の姿勢ですよ。ハイ、最後に戻りましたね、足を組んで思索にふける半跏思惟像に。そーです、最初に見た広隆寺の弥勒菩薩半跏思惟像と同じ座り方です。こりゃなんか今年はよーく考えて行動しなさいよってことでしょうか、弥勒菩薩様。
午前に広隆寺を訪れ、昼食を挟み午後からは東寺へ。時間的にも余裕もあり、我ながらなかなかよいチョイスではないかなと。もうちょい駆け足で行けばもう一件ぐらいお寺を回れたかもしれませんが、あんまり急いでもねぇ。折角の仏像巡りですから、ゆったり見て回るには広隆寺~東寺はちょうどよいルートではないでしょうか。
旅のおまけ:
帰りに京都駅で食パンを買いました。京都駅近鉄名店街にある「ORENO PAN」(←俺のフレンチとは関係なしです)。名物は柚子ピール食パンらしいのですが家人がピール系は好みではないので、普通の食パンを買いました。4枚切り。モチモチしてかなり美味しかったです。また京都駅に行ったら多分買いますなこりゃ。