Eテレ 日曜美術館「熱烈! 傑作ダンギ アンリ・ルソー」 感想

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Eテレ 日曜美術館「熱烈! 傑作ダンギ アンリ・ルソー」 2018.7.2放送 感想

 

教科書に載っていたのかな。何かの媒体で目にしたことがあるのかな。どこかで見たことがあるような気はするけど、実際そんな身近な絵とでもいうか、決して画壇のお偉いさんや巨匠が描いた絵ではなく、一見シュールな絵なんだけど手が届きそうな親しみ。僕たちの側にある絵。それは独学で学んだということにも関係してくるのかもしれないけど、自由で明るく前向きな彼の姿勢が強く関係しているのかもしれない。そんな風に思いました。

アンリ・ルソーが本格的に絵を描き始めたのは40才を過ぎてから。パリの税関で働きながら休みの日に絵を描くという日曜画家。な~んだ、サラリーマンだったのかって余計に親しみを覚えてしまいました。ただ彼は日曜の休み毎にのんびりと描いていたわけではなく、展覧会に出す絵はことごとく酷評。私生活でも一人目の妻、二人目の妻を病気で亡くし、更には5人の子供のうち4人までをも病気でなくしている。そんな絵などもう描きたくなくなるような試練の中、彼は強い心で絵を描き続けた。

少しづつ世間に認められつつあったルソーは絵の先生として地域の人々に絵を教え始める。自身の肖像画にはその資格を認められたバッジを胸にした姿が誇らしく描かれている。見ているこちらにまでその喜びが伝わるような絵だが、そこに描かれたパレットには亡くした二人の妻の名前が書き込まれている。全体としてはまるでどこかの万博ポスターのような明るい絵だけど、彼はそういう人なんだな。

今回、番組で談義を繰り広げるのは、世田谷美術館学芸員の遠藤望さん。ミュージシャンのグローバーさん。女優の鶴田真由さん。ルソーの研究家でもある遠藤さんでさえルソーの絵はよく分からないという不思議な世界。けれど彼はあきらめない人、めげない人だと、そこは何度も強く強調していた。結局はそこがいつまでも掴んで離さない彼の絵の魅力なのかもしれない。

ミュージシャンのグローバーさんの言葉も印象的だった。影を描かなかったり、朝陽なのか夕陽なのか分からない描き方をする時間の概念を無視したルソーに対し、時制に囚われたくなかったのかも、との気付きを話していた。あぁ、確かにそうだ。時間の概念よりも大切なものがルソーにはあったんだ。それに対し鶴田真由さんはこういう見方をしていた。彼は興味あるものにしか目が向かない人なんじゃないかって(笑)。それもそうかもしれない。男の子にはそういうところがあるからな。ルソーは男の子の部分を大きく残していた人のような気もするし、うん、確かにそうかもしれない(笑)。

死の半年前に描かれた「夢」という作品はルソーの総括。この世の生命力を象徴するような絵だ。ルソー自身の諦めない、めげない精神を象徴する絵。遠藤望さんは彼の絵は晩年になればなるほど良くなっていくと言っていたけど、死の半年前に書かれた絵が最高傑作だなんて。もしルソー自身もそう思っていたとしたら、絵描きにとってこんな嬉しいことはないのかもしれない。

苦労してきたのに暗い感じで絵に出ていない、そこが酷評されてもくじけないところとリンクする、と言った鶴田真由さんの言葉が強く心に残りました。人生はつらいことの方が多いけど、出来るだけ前を向いていたい。そんな風に考えている人はきっと、アンリ・ルソーの絵に何かを感じるのかもしれません。勿論僕もそんなひとりです(笑)。

幼い頃からの夢を持ち続け、40才を過ぎてから筆を取り始め、妻や子供を失くしながらも、世間に酷評されながらも描き続けたルソー。そんな彼の絵を僕はいつか直に見てみたいと思いました。

ちなみに、、、。感性で話すいつまでもロマンチストなグローバーさんと、論理的でいつまでもクールな鶴田さんの対比が可笑しかった。やっぱ女性にはかなわないや(笑)。