Listen/The Kooks 感想レビュー

洋楽レビュー:

『Listen』(2014) The Kooks
(リッスン/ザ・クークス)

クークス、3年ぶりの4thアルバム。アルバム毎に違った側面を見せる彼ら。今回は主にヒップ・ホップを手掛けるinfloをプロデューサーに迎え、そっち寄りのサウンドを指向している。一部中途半端な曲もあったりするが、元々ファンキーなルーク・プリチャードのボーカルが全面に出た、活きのいい作品だ。以下、順を追って見ていきたい。

1. Around Town/アラウンド・タウン
出だしの「コネクティーーイッ!」が最高。本作を特徴付けるドタドタドラムと手拍子のコンビネーション。これを見つけたことで本作は決まったのではないか。

2. Forgive And Forget/フォーギヴ・アンド・フォーゲット
アルバム中、最もファンキーな曲。彼らの持ち味であるギター・サウンドと本作の方向性が見事にマッチング。躍動感溢れるリズムが最高で、本アルバムのベスト・ソング。

3. Westside/ウエストサイド
前作『ジャンク・オブ・ハート』に通じるメロウなナンバー。派手な1曲目、2曲目ときて、ここでひとまずクールダウン。

4. See Me Now/シー・ミー・ナウ
本作のハイライトの一つ。ストリングスを配したスロー・ソングは初めてじゃないかな。冗長にならず、シンプルにまとめ上げられているのがいい。

5. It Was London/イット・ワズ・ロンドン
パンク調のナンバー。「ロンドン」というのはそういうことか。合間に鳴らされるギター・フレーズにはしびれる。この辺りは流石にカッコイイ。

6. Bad Habit/バッド・ハビット
ここからは再びファンク・ナンバーが2曲続く。この曲はまだ振り切っておらず、逆に言うと一番馴染みやすいかも。

7. Down/ダウン
リード・シングル。明らかにこれまでとソングライティングの手法が変わったことを確信させる曲。昨今珍しいこういうシャウトが聴けるのもルークならでは。

8. Dreems/ドリームス
基本、ルークの弾き語り。アンビエントなナンバー。時折、こういうのも入れたくなるのだろうけど、ちょっと退屈。

9. We Are Electric/ウィ・アー・エレクトリック
近頃流行のシンセ・ポップ。ただいかにも付け焼刃的な感じで中途半端。前作の後半に置かれた『Is it me』のような役割を果たせればよかったんだけど。ちょっと残念な曲。

10. Sunrise/サンライズ
細かいカッティングの小気味よいファンク・ナンバー。ルークの鼻歌で出来たような小品。アレンジも敢えてシンプルにしているのかな。

11. Sweet Emotion/スウィート・エモーション
これも本作での志向が反映された曲。ただこの曲はリズム主体ではなく、メロディ重視。アウトロのピアノ・ソロがとてもいい。

ここにきてこの方向性は、よくぞ、といった感じ。ボーカルの歌い方にとても合ってるし、遂にクークスのオリジナルが開花かとも思わせる。でも僕はまだまだ物足りない。エレクトリカルも中途半端だし、ゴスペル風コーラスを多用しているがこれもまだ掴みきれていない感じは否めない。#2『フォーギヴ・アンド・フォーゲット』のように彼ら本来の魅力である滑らかなメロディ・ラインとギター・サウンドが、今回取り入れられたブラック・ミュージックの要素とスパークした時は躍動感があってホントに素晴らしいグルーヴを出している。これはこれでいいアルバムだし僕は大好きだけど、クークスはもっともっと凄い領域にまでいけるんじゃないかと僕は思っている。彼らの持ち味と新しいサウンドの融合。素晴らしいアルバムだけど、もっと誰も手が届かない領域まで突き抜けてほしい。彼らならそれが出来ると思う。

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