コーンスープ

ポエトリー:

『コーンスープ』

 

確かに君の瞼に

降り注ぐ雪

遠い記憶などなく

密かに耳打ち

僅か1デシリットル

先走る感じ

零れ落ちる不思議

 

君の肩に積もったそのゴミ

勢いよく掃除機で吸い込んだ

君の冷えた指先

程よく電子レンジで温めた

 

それが真実

歴史は繰り返さず

言葉はただの現実

コーンスープは泡立てず

よくかき混ぜて

新しさに身もだえる

 

間近に差し迫った

問題にしてひとつ、ふたつ、みっつ

大きな半紙に一面

墨汁にして垂らす

しかし思いのほかデジタル

確かに差し迫った問題あるとして

心当たりあるか先細る感じ

 

その襟元の汚れは

洗濯機の渦に放り込んで撹拌

その胸元のほつれは

ミシン目が二列になって行進

 

それが真実

歴史は繰り返さず

言葉はただの現実

高く積み重ねられたものを注視して

今朝もコーンスープ

幾重もかき回す

 

2017年11月

1 Hopeful RD./Vintage Trouble 感想レビュー

洋楽レビュー:

『1 Hopeful RD.』(2015)Vintage Trouble
(華麗なるトラブル/ヴィンテージ・トラブル)

 

いや~、ジェダイやね。ボーカルのタイ・テイラーさん、フォース出まくり。なんか名前からしてそんな感じやん。ルーク・スカイウォーカー、オビワン・ケノービ、タイ・テイラー、ほら、違和感ないでしょ。マントとか似合いそーやし。すんませんっ、昨日テレビで『スター・ウォーズ フォースの覚醒』見たもんで。

米国人にとって、R&Bとかブルースなんていうのは演歌みたいなもんだというのを誰かが言ってた。いいとか悪いとかではなく単に琴線に触れてしまうんだと。ヴィンテージ・トラブルはロック・バンドだけど、どっちかって言うとそっち系なんじゃないだろうか。ということを踏まえれば、ジャズとかR&B専門のブルーノート・レコードからリリースされた初のロック・バンドというのも別に不思議じゃない。

はっきり言って何ら新しいとこはない。前作の1stと比べてもバンドとしての塊がドッと来る感じやグルーヴ感は更に引き締まった気はするけど、相変わらず景気のいい曲があって、渋いスロー・ソングがあってっていうスタイルは変わりようがない。ただそうは言っても、こういうのは聴き手の耳も肥えてるわけだから、生半可なレベルじゃ満足してもらえないわけでそれ相当の練度が求められてくる。そこをじゃあそれ以上のものをって見せてくれるから嬉しくなってしまうわけで、脳というより体に訴えてくるんだろうな。みんなよく知ってるんだろうけど、じゃあすぐに出来るかっていうとなかなかそうはいかない奥の深さ。そこがほら『スター・ウォーズ』、やっぱフォースなんすよ(強引やな)。

だってまあ凄いんすもん、タイ・テイラーさんのシャウト。#8『ストライク・ユア・ライト』なんかたまらんえ。スロー・ソングも抜群だし、こんだけ幅広く歌えるボーカリストはそうはいない。でもってのっけからライト・セーバー振り回してブワォンブワォン言っちゃってるし、あ、スライド・ギターね。ドラム、ベース、ギター、ボーカルっていうシンプルな編成でこの腹から来るグルーヴ。皆さん、ストーンズばっか崇めてないでこっちを聴きなさい!あかん、オレのダーク・サイド出てもうた…。

前作は3日で録音したそうで、今回も1週間かそこらでの録音だそうだ。もともとライブでやってきた曲ばかりだからそりゃそんなもんかもしれないけど、やっぱそこはこのバンドの地力だろう。ライブがあって、新しい曲が溜まってきたら録音する。そんな昔ながらのスタイルがいかにも様になる。目新しいところは何もないが、このどうということのないソウル・ロックを10年代に何の違和感もなく馴染ませちゃった点にこのバンドの偉大さがある。僕も当然大好きだ。

ルックスもヴィンテージ感たっぷりの手練れ4人衆(アルバム・ジャケット、めっちゃ渋いッス!)。音楽界にもジェダイはいるのです。さあ皆さん、フォースの音楽面へようこそ。「May the Force be with you(フォースと共にあれ)…」 ←これが言いたかってん…。

 

1. Run Like the River
2. From My Arms
3. Doin’ What You Were Doin’
4. Angel City, California
5. Shows What You Know
6. My Heart Won’t Fall Again
7. Another Man’s Words
8. Strike Your Light (featuring Kamilah Marshall)
9. Before the Tear Drops
10.If You Loved Me
11.Another Baby
12.Soul Serenity

(日本盤ボーナス・トラック)
13.Get It
14.Honey Dew

日本盤にはDVDが付属。2014年のサマーソニックです!
こん時ゃ凄かった~。僕も大阪で観ましたよ!

えんそく

ポエトリー:

『えんそく』

 

1.おにぎりのぐ

  好きな色

  じゅんばんに

 

  おかあさんの

  お弁当

  どんな色

 

  おしずかに

  おてんとむし

  にげちゃうよ

 

  お弁当の

  お時間が

  はじまるよ

 

2.かえり道

  おともだち

  てをつなぎ

 

  石だんの

  かいだんを

  よっこらしょ

 

  おおさわぎ

  ヒキガエル

  あらわれた

 

  帰ったら

  おかあさんに

  言わなくちゃ

 

  おかあさんに

  言わなくちゃ

 

 

2017年8月

Wonderful Wonderful/The Killers 感想レビュー

洋楽レビュー:

『Wonderful Wonderful』(2017)The Killers
(ワンダフル・ワンダフル/ザ・キラーズ)

 

キラーズの新作が出ました。前作から5年。5年ですよあーた。ブランドンのソロがあったにせよ結構空きましたねぇ~。それでも全英全米共にチャート№1になっちゃうんですから大したもんです。ていうかファンの皆さん、よう待ってたねぇ。あんたはエライッ!

しかし今回は1位も納得の出来栄え。今までのキラーズと新しいキラーズの両方がいい塩梅に混ざ合わさって、5年ぶりとはいえ昔の名前でやってます、ではなくちゃんとバージョン・アップしているところが嬉しいです。そんでもってアルバムに先駆けて公開されたのが新機軸サウンドの『ザ・マン』とキラーズ・サウンド全開の『ラン・フォー・カバー』の2曲っていう礼儀正しさ。相変わらずラスベガス出身のくせに真面目な人たちですなぁ。

その『ザ・マン』。もろ80年代イケイケのディスコ・ナンバーでコーラスはABA。ブランドンさん、ファルセット連発でフィーバーしとります。あと、オープニングの『ワンダフル・ワンダフル』とか9曲目の『ザ・コーリング』といったひねった曲も今までと趣が違っていいアクセント。歌詞の方もかつてなくシリアスになっております。あと所々にゴスペル風味が掛け合わさっていて、キラーズが元々持っている壮大さに厳かな雰囲気が加わったというか。例えば静かな#7『サム・カインド・ラブ』は今までに無かったアプローチ。コールド・プレイかと思いました。

逆にド定番なのが#5『ラン・フォー・カバー』。これはやられます。疾走感たっぷりのもろキラーズ・ナンバーで、ここに来てこの瑞々しさはたまりまへん。#2『ラット』、#4『ライフ・トゥ・カム』といったスロー・ナンバーも安定感ばっちりのキラーズ節。特にニューウェイブ感満載の#8『アウト・オブ・マイ・マインド』は思わず「よっ、待ってました!」と言いたくなるみんな大好き80年代風シンセ・サウンド。ていうかやっぱええ曲書きよんなぁ。

まぁここまではっきりとした目の配りようも嬉しいと言えば嬉しいんだけど、そこまで生真面目にやらんでも、という気がしないでもない。そういえばブランドンはインタビューで「前のアルバムから気付いたらもうこんなに経ってる。そろそろキラーズとしてのアルバムを作らないと!」みたいな感じで始まったと話している。そーなんだよなぁ、すごくいいアルバムなんだけどなんか座りの悪い感じがするのはそこなんだよなぁ。しかもちゃんと4人で作ったみたいだけど、アルバム・ジャケットに写ってるの3人や~ん。ツアーに出んのんボーカルのブランドンとドラムのロニーだけらしいや~ん。

ということでなんか頑張ってキラーズとしてのアルバムを作った感がしないでもなくて、やっぱその一枚岩というかバンドとしてガッと来る感じに私は物足りなさを感じてしまうのです。いやいーんです、いーアルバムなんですよ。でもなんか自由度が狭まってきたような気もするので、次はファンの事は気にせずに思いっ切り自分たちのやりたいようにやって欲しいっす!

曲良しボーカル良しサウンド良し。キラーズ・サウンド全開でホントに最高!でもやっぱちょっともどかしい、そんなアルバムでございます!

 

1. Wonderful Wonderful
2. The Man
3. Rut
4. Life to Come
5. Run For Cover
6. Tyson vs. Douglas
7. Some Kind of Love
8. Out of My Mind
9. The Calling
10. Have All The Songs Been Written?

(ボーナス・トラック)
11. Money on Straight
12. The Man (Jacques Lu Cont Remix)
13. The Man (Duke Dumont Remix)

Star Wars/wilco 感想レビュー

洋楽レビュー:

『Star Wars』(2015)wilco
(スター・ウォーズ/ウィルコ)

 

ウィルコ、通算10枚目のスタジオ・アルバム。前作から4年ぶりということでデビュー以来コンスタントにアルバムをリリースしてきたウィルコにしては随分と長いインターバル。前作の大ボリューム作からは一転してコンパクトなアルバムだけど、これが結構キャッチー。ん?キャッチーか?と疑わしげな方もいらっしゃると思いますが、いやいや、何度も聴いてると確かに派手さは無いですが粒ぞろいの良曲ばかり。僕はウィルコ史上でもかなりポップなアルバムだと思います。

と言っても世間一般で言うポップとはちょっと異なるのがウィルコならではというか。それを端的に表すのがアルバム・タイトルで、ちょうど2015年というと映画『スター・ウォーズ』の新作が久しぶりに公開されるって時期で随分と盛り上がってたんだけど、そこに『スター・ウォーズ』ってアルバム・タイトルを持ってくるこのセンス。冗談か本気かよく分からないこの感じがまたウィルコらしくていいというか、そのくせアルバム・ジャケットがどっかのお金持ちの家に飾ってあるような猫の絵っていう訳の分からなさ(笑)。この人を食ったようなポップネスこそがこのアルバムのポップネスですと言うと、なんとなく分かってもらえるだろうか。

ウィルコが一躍有名になったのは2002年の『ヤンキ-・ホテル・フォックストロット』というアルバムでノイズの混じった実験的なサウンドだったんだけど、今回は割とそれに近いというか、歪んだギターやサイケデリアなどトリッキーなサウンドが展開されている。前作、前々作の(ウィルコにしては)割とオーソドックスなサウンドのアルバムとは違い、変態的なサウンドが復活しているので、早速1曲目からニヤニヤしているウィルコのファンもいるんじゃないでしょうか。

その1曲目『EKG』はネルス・クラインを筆頭にした変則的なギター・サウンドがリードするインストルメンタル。そこに呼応するベースとドラムのリズム隊のうねり具合がまた最高です。3曲目の『ランダム・ネーム・ジェネレイター』でもアップテンポな曲をギターが引っ張っていくし、8曲目の『ウェア・ドゥ・アイ・ビギン』のようにギターとボーカルのみで進んでいく曲もあったりするので、このアルバムはひょっとしてギター・アルバムと言ってもいいのかもしれない。ウィルコはボーカルのジェフ・トゥイーディを含めたギタリスト3人体制だからギター・バンドといえばそうかもしれないけど、ここまでギターがドライブしていくってのも珍しいかも。穏やかなジェフの歌心に鬼才ネルスのおかしなギターが割り込んでくる違和感はいつもながら最高です。そういやレディオヘッドもギタリスト3人で、ジョニー・グリーンウッドっていうぶっ飛んだギタリストがいる。出てくるものは全然違うけど、何か急に近しいものを感じてきたぞ。

今回のアルバムは#5『ユー・サテライト』を除いて全て2、3分で終わる。全体としてサッと始まりサッと終わる印象だ。#3『ランダム・ネーム・ジェネレイター』や#7『ピクルド・ジンジャー』のようなスピード感もカッコイイけど、今回の山場は後半に続くスローな曲群。ジェフのぼそっとした声が穏やかなメロディと上手く溶け合ってて綺麗だ。バンドの演奏がそこに寄せてこないからこそのちょっとしたぎこちなさがかえって心地いい。やっぱ不思議なバンドだ。

 

1. EKG
2. More…
3. Random Name Generator
4. The Joke Explained
5. You Satellite
6. Taste the Ceiling
7. Pickled Ginger
8. Where Do I Begin
9. Cold Slope
10.King Of You
11.Magnetized

Wrecking Ball/Bruce Springsteen 感想レビュー

洋楽レビュー:

『Wrecking Ball』(2012)Bruce Springsteen
(レッキング・ボール/ブルース・スプリングスティーン)

 

僕は十代の頃からブルース・スプリングスティーンの音楽を聴いている。以来、色々なジャンルの音楽を聴いているがここに来てやっぱ思う。スプリングスティーンの音楽はやっぱすげえ。

詩、メロディ、サウンド、ボーカル、どれをとっても超一流である。一時期、若干のスランプがあったものの、ほぼ40年間ずっとメイン・ストリームで活躍しているのは、彼が労働者階級の代弁者だとか、米国の良心だからなんていう生ぬるい感情からではない。間違いなく、他を圧倒する無尽蔵の音楽的才能が備わっているからだ。

本作においても、その音楽的才能は如何なく発揮されており、十八番の大編成バンド・サウンドからゴスペル、民族音楽、はたしてラップまで(こちらは本人ではないが)、多岐に渡る音楽性を見せており、しかもニクイことに、どこをどう切ってもスプリングスティーンとしか言いようがないサウンドとなっているのだ。

この人の場合、常に政治への異議申し立てだとか社会の闇を切り取るだとか、妙にメッセージ色の強い言われ方をするが、そんなことは芸術家と呼ばれる人たちなら当たり前で、言いたいことがあるから何かを創るわけで、スプリングスティーンにしても政治の歌だけじゃなく、実に他愛のないラブ・ソングだってたくさんある。米国の世相を反映してなんて言われても、芸術家なんだから時代と関わってくるのは当たり前なんじゃないかな。それに昔から、『ネブラスカ』みたいのを作ったり、スタイルとしてはなんら変わっちゃいないと思うのだけど、どうもこのアルバムのレビューを見ていると、怒りだとかなんとかそんな形容がやたら目に付き、世相とやたら結び付けられるので、僕なんかは、ちょっと待ってよ、こんな素晴らしいサウンドがあるのに!なんて思ってしまう。

もう純粋に音楽として素晴らしくて、長くやってるのに回顧趣味なんて一切ない一級品のロック音楽。『ウィ・シャル・オーバーカム』で取り組んだアイリッシュ・サウンドが新たな風合いを加えており、実に表情豊かなサウンドに仕上がっている。また、今回はソロ名義ということでE・ストリート・バンドだけではなく非常に多くのミュージシャンが参加しているのも特徴で、そのこともこのアルバムの印象に幅を持たせている一因だろう。

で、やっぱりスプリングスティーンのボーカル。これが実に素晴らしい。どんな素晴らしいバンドがどんな素晴らしい演奏を奏でようとも全てを統べてしまう。改めて素晴らしいロック・ボーカリストだなとしみじみ思った。

とにかく、詩の内容は横に置いといて(勿論、素晴らしいのだけど)、サウンド的にここ数年の活動を総括するような、一点の曇りもない素晴らしいロック・アルバムだ。特に表題曲の#7『Wrecking Ball』と#10『Land of Hope and Dreams』は必須です!

 

追悼:
このアルバムがリリースされる前、クラレンス・クラモンズが他界した。僕はきっとクラレンス・クレモンズ(通称ビッグ・マン)がいなければ、スプリングティーンの音楽にこれほど夢中にならなかっただろう。もちろん、ダニー・フェデリーシのオルガンだってそう。とにかくE・ストリート・バンドと共にステージを縦横無尽に駆け回る若き日のスプリングティーンに僕は心を奪われた。いつも最後にビッグ・マンを嬉しそうに紹介するスプリングティーンを見て、この人達はなんて素敵な人達だろうって、そう思った。
20才くらいのときに『明日なき暴走』のジャケットを部屋に飾りたくて、大学の図書館で拡大コピーしようとしてうまくいかなかったことがある。今回のアルバムのインナー・スリーブの最後の方にスプリングティーンとビッグ・マンのバック・ショットがあるが、1975年の『明日なき暴走』のジャケットと長い年月を経たこのバック・ショットを見て、僕は改めて素敵だな、って思った。
今回のアルバムに収められた『ランド・オブ・ホープ・アンド・ドリーム』。ここ何年か見た目にも分かるほど衰弱していたが、長年ファンの間で親しまれてきたE・ストリート・バンドそのものとも言えるこの曲では、ビッグ・マンの昔と変わらぬ素晴らしいソロ・パートを聴くことができる。今回の録音がいつのもので、どのような形でなされたのかは知らないが、とにかくあの力強く鼓舞するような、そして温かくて全てを包み込むようなビッグ・マンのサキソフォンがいつもと同じように聴こえてくる。だからこの曲が最後だからだとかそんな余計な感傷など一切持たずに聴くことができるし、きっとこれからも同じようにこの曲を聴くことができるだろう。
ビッグ・マン、たくさんの素晴らしい音楽をありがとう。僕はあなたの音楽に随分励まされました。遠い極東の島国からお礼を言います。

 

1. We Take Care of Our Own
2. Easy Money
3. Shackled And Drawn
4. Jack Of All Trades
5. Death To My Hometown
6. This Depression
7. Wrecking Ball
8. You’ve Got It
9. Rocky Ground
10.Land of Hope and Dreams
11.We Are Alive

おやつ一個食べちゃう隊

 

お話:

 

『おやつ一個食べちゃう隊』

 

ピンポーン!

「あら、となりの奥さん、どうしたの?」

「今度うちの壁塗り替えることにしちゃって。うちももう二十年でしょ。壁もボロボロだしいいかげんね。で一週間ほど迷惑かけちゃうからさ。これお菓子、うん、いいのいいの、子供たちと食べて。」

「ありがとう、みんなよろこぶわ。」

 

わぁ♪ケーキだぁ!
う~ん。でも困ったな~、五個かぁ。
お姉ちゃんとボクと私とパパでしょ。一個あまるわねぇ。
あまってもいいんだけど、子供たちうるさいのよねぇ。切ったら切ったでおっきいとかちっさいとか文句言うし。食い意地張ってんだから。
どーしよー。誰か食べてくんないかなぁ。

 

 

むむっ!ピーッ!!『団子食べる隊』、集まれいっ!

 

  へーい、へーい

  スタッ、スタッ、タッ

 

よし、点呼!

 

  壱、弐、参、、、、五

 

おいっ、四番はどうした

 

  四番は、えーと、どこだろう?

 

よし、五番、お前呼んで来い!

 

  えっ、俺がですかぁ

  しょうがねえなあ。ちぇっ、四番の野郎

 

 

おーい四番、どこだぁ?

いねえのか~

 

なあにぃ?どうしたの?

 

どうしたのって、おめえ、聞こえなかったのか

『団子食べる隊』は集まれだってよ

 

へぇー、なんだろ?

 

どーせまた冷蔵庫のチョコとか棚のグミ食ったのは誰だってやつだろ

 

あー、また勝手に食ったの?

 

ちげーよっ、ちげーよっ

あれはたまたま目に入ったからさぁ

 

でも食べたんでしょ?

それって泥棒だよ

 

う、うん、ゴメン…、もうしないよ

ま、まあ、とりあえず行こうぜ

ホントにうめぇもん出てくるかもしんないぜ

 

 

よーし、全員集合だな

今回のターゲットは洋風団子!パテシエ・タテカワの洋風団子であるっ!

 

  おーっ、すげー、すげー

  って、ケーキじゃねーか

  隊長なんでも江戸言葉にしたがるんだから

  『ケーキ一個食べちゃう隊』でいーじゃねーか

 

まあ待て

拙者が洋風団子とつい申してしまうのにはわけがあってな

あれは文久三年のこと、

 

  あー、オレあのイチゴんとこな

  じゃあオレ背中のクリームたっぷりのとこ

  わー、ずりー、そこオレも食いてー

 

おいっ、聞いてんのかっ

 

  知ってるよぉ

  あの茶団子の話でしょ

 

そうじゃ、あれは文久三年のこと、

 

  おい、中にもいちご入ってんじゃねーか

  ほんとだ、すげー

  おいこれ見ろよ、なんかで優勝したケーキらしいぞ

  おおおぉーっ

 

話を聞けぇっ!

 

 

まあよい

早く食いたいんじゃろ

ではさっそく拙者がこの刀にて成敗いたす

 

  ちょ、ちょっと、隊長、そこのイチゴは半分にしないでね

 

 

さて、どこからどう成敗するか

ん~、これは思案のしどころじゃ

 

  早くー、隊長~

  早くー、オレも腹ペコペコ

  オレもガマンできねー

 

うるさいやつらじゃ

ではさっそく

とその前に

なぜ拙者がなんでもかんでも団子と申すか、それをやはり話しておかなくては

 

  あ~あ、あれ、やっぱ話すんだ

  隊長のあれ、なげーんだよなぁ

 

 

あれは文久三年のこと…

ある日の道中、街道の茶屋で休んでおってな

 

拙者は茶団子が大好物でそれを注文して待っておったのじゃ

その時にちょっとした騒ぎがあってな

 

 

 「見つけたぞっ!父の仇!」

 

「ぬわ~にぃ~、ワシがおぬしのカタキじゃと。おぬしのような小娘に何ができる」

 

 「ぐっ、ち、ちくしょー。はっ、そこのお侍さんっ、お侍さんっ、お助け下さいましっ!」

 

とまあ拙者に加勢を頼んできたのじゃが、拙者は待っておった茶団子がやっと来たとこでのう。それで、

 

「よしっ、心得た!」と茶団子を二個、一気に口に放り込んだのだが…

ううっ、ぐえっ、ぐえっ、団子が喉に、ううっ

とまあ団子を喉に詰まらせて死んでしまったというわけじゃ

 

 

ということでケーキであろうとドーナツであろうと、そういうもんを見た時にはだな

 

  はい、はい、わかりました、わかりました

  どーぞ、たっぷり時間をかけて成敗しておくんなまし。

 

わかればよい。

ふむふむ、さてどうしてくれよう。よし、見えたぞ。

では、いざっ、成敗!

 

 

シャキーン!

 

スパッ、スパッ

スパパパッ!

 

  おー、うめーうめー、さすがタテカワのケーキだぜー

  おいっ、スポンジふわふわだぜ

  うめーっ、うめーっ!

 

 

 

「ただいまー」

「ただいまー」

 

あっ、子供たち、帰って来たわね。
どーしよー、困ったわ。
あれっ、ケーキ四個になってる。ていうか四個だったっけ?
まあいいわ。これで問題なしっ。

 

「やったー、ケーキだケーキだー!」

「やったー、やったー!」

「これどうしたの?」

 

「となりのおばちゃんがね。壁を塗り替えるからってケーキをくれたの。今度会ったら、お礼を言っておきなさいよ。」

 

「ハーイ」

「ハーイ」

 

 

皆さんのおうちでもこんなこと、ありませんか?
あるはずなのに、どこにもない。
ないはずなのに、ちゃんとある。
これらは全ておっちょこちょいママの勘違いではないのです。
実は家には『おやつ1個食べちゃう隊』なる秘密結社がいるのです。
あと、『家のカギ閉めた隊』とか、はたまた『お風呂フタした隊』なんかも。

 

「ん?何これ?こんなとこにいちごのヘタが…。」

 

 

2017年6月

 

『The Covers』 NHK BSプレミアム 2017.11.4 放送(ゲスト:矢野顕子) 感想

TV program:

『The Covers』 NHK BSプレミアム 2017.11.4 放送(ゲスト:矢野顕子)

 

NHK BSプレミアムで放送されているこの番組。番組H.Pには「歌は、歌い継がれることでスタンダードとなり、永遠の命を授けられます。ジャンルや世代を超えたアーティスト達が、影響を受けた曲や、思い出深い一曲を魅力的なアレンジでカバー。名曲達を新鮮な感動と共にお届けします。」とあります。司会はリリー・フランキーさんと仲里依紗さんです。月1回の放送なのかな。 11月のゲストは矢野顕子さんということを知り、慌てて録画しました。

この日矢野さんがカバーしたのは、佐野元春「SOMEDAY」(1981年)、フジファブリック「Bye Bye」(2010年)、そして自身のヒット曲「春咲小紅」とこの曲と同じコンビ(詞:糸井重里 曲:矢野顕子)で今年新たに作られた 「SUPER FOLK SONG RETURNED」(2017年)の4曲。

とっても面白かった。僕は矢野さんのアルバムを一枚も持っていませんが、テレビで彼女が出ているとついつい見てしまいます。で見た時の感想はいつも同じ、「すげ~」。今回で言うと、笑っちゃうぐらいもう原型を留めてないです(笑)。でまあそれがいいのです。なんでメロディを解体しちゃうのか、歌詞までも変えてしまうのか。それに対する矢野さんの答えがまた面白くて、例えば「SOMEDAY」で言うと、これは男の人が作った曲だから自分が歌う時には女のひと目線に変えちゃうとか、好きだからその曲をカバーするんだけど、ここはちょっと違うかな、私だったらこうだな、っていうところは言葉を変えてしまうっていう。だってそうでしょ、っていうような顔でさらっと言ってしまうところがやっぱそうだよな、表現するってそういうことだよなってすごく合点がいきました。

でそれは矢野さん自身が語っていたように元々ジャズが好きで、ジャズと言うのはスタンダード曲があって、それを各人の解釈で自由に演奏するっていうものなんだけど、矢野さんにそういう下地があるというのもあるにせよ、彼女自身にやっぱ批評精神というものが宿っているからで。批評精神なんて言うと一般的には批判したり文句を言ったりというようなマイナスの意味に誤解されている節があるけど、批評と言うのはその人独自のものの見方であったり、解釈だったりするわけだから、逆に言えばアーティストというのは、全てそうだとは限りませんが、批評性を持っているか否かということにもなるのだと思います。

加えて言うと、演奏と言うのは元々はワン・アンド・オンリーというか、それこそモーツァルトとかベートーベンがその場その時にしかない音楽をライブで披露して、観客は二度と再現されないその唯一の演奏に耳を傾けるっていうのが始まりだったわけで、それをレコードというものが登場して録音できるようになった、再現できるようになったというのは後から出来るようになったことに過ぎないわけであって、始まりの音楽はその夜一度きりのものを楽しむというものだったのです。ちょっと理屈っぽくなりましたが、矢野さんがテレビに出ているとつい見てしまうのは、矢野さんの音楽にはそういう原初的な魅力が沢山あるからなんだと思います。

歌以外のトークも凄く面白かったです。「春咲小紅」を始め、幾つかの曲でコンビを組んでいた糸井重里さんが途中からゲストとして登場しました。糸井さんの詞をどう感じているかという話の中で、矢野さんはこんなようなことを言っていました。「初対面の人同士がお互いが好きな共通の話題で盛り上がるっていうのはあるけど、逆にこれって嫌だよねとか、ちょっと違うんじゃない、っていう部分を共有している方がもっと深いとこで繋がりあうような気がする」。あぁ、そうか、そういや僕も長く付き合っている友達とはみんなそんな感じだなぁって、なるほどなぁって思いました。

あと面白かったのは、矢野さんは「車に乗っている時のBGMにならない」ってよく言われると言って笑っていたところ。確かに矢野さんの歌を聴いているとついつい自由な拍子にこっちも巻き込まれちゃって変なところで変な操作してしまいそうな気がする(笑)。

次回は12月22日放送とのこと。1966年生まれのミュージシャンが集まるのだそうだ。トータス松本さんとか、大槻ケンヂさんとか僕にとっちゃ懐かしのレピッシュ/tatsuの名前もあるぞ。今回この番組を初めて見たけどなかなか面白いぞ。これも見なくては。

百獣の王

ポエトリー:

『百獣の王』

 

お前の洞窟は

風邪をひいたライオン

髪の毛はクシャミをして

逆立っている

オレは今

怠惰という感情を

お前のそのなだらかな曲線に向けて

ゆっくりと

充てがう

 

百から一を取り出して

ちぎっては投げ

投げては一定の間隔で

十分に休みを取り

十二分に睡眠を摂り

暗いうちから働き出した農夫のように

麦わらを傾げながら

リンドウの実をひとちぎり

お前の白いシーツに押し付けて

満足している

 

さぁ今日もいい天気だなどと

新しい文字を見つけ

さも誇らしげに

人に話したくってしょうがない気持ちになる朝

いつだってこの感じ

やめられない

 

 

リヤカーを引いたお前の背中みたいな

ガタイのいい四角を

三角の肩でかしぐのには

無理がある

無理があるけれども

言ってみても始まらない生活の咎を

全部台無しにしてしまえるだけの

重量が何処にあるのですか?

 

土踏まずの辺りにうっすら

炙り出す塊

重くなって

ボロボロと崩れていく

 

オレが百から一を取って投げつけた怠惰の葉一枚が

日照りの隙間にハラハラと

身を落ち着かせる

慰めて雨がところどころ

心が沁み渡り

タテガミはクシャクシャでホコリにまみれたまま

王は口を開けて待っている

 

2017年10月

Sound and Color/Alabama Shakes 感想レビュー

洋楽レビュー:

『Sound and Color』(2015)Alabama Shakes
(サウンド・アンド・カラー/アラバマ・シェイクス)

 

デビュー作だった前作は古く良きアメリカ、場末の酒場が似合いそうなヴィンテージ・ロック。僕もそういうのは好きだし、彼らはこれからも変わらずそんな渋い音楽をやってくんだろうなって勝手に思っていたけど、それはとんだ見込み違いだった。変わらないどころか物凄い進化を遂げてしまっている。それも何がどうというより全部まるっと進化しちゃってて、2枚目でこんなになっちゃうなんて全然想像できなかった。ヴィンテージはヴィンテージでも最新鋭、ハイブリット感満載のスーパー・ヴィンテージ・ロック・アルバムだ。

とりあえずギターの音がすんごくて、ビンビンと弦の振動が伝わってきそうな臨場感。それでいて音はクリアーで聴きやすいし、要するに分かる人にだけ分かりゃいいというのではなく、誰が聴いてもこりゃ凄いやって音になってる。僕んとこのミニ・コンポでこれだから、いいオーディオだとどんなことになるのやら。くうぅ~、立派なオーディオで聴きてぇ~。

ドラムとベースもよくて、何がいいって手数はうんと少ないのにここぞの時にはグイグイッとたまらんフレーズを持ってくる。こういう感じはちょっと初めて。で、さらに記名性を高めているのがキーボードとビブラフォン。1曲目からビブラフォンで始まっちゃうし、こりゃなんか雰囲気違うぞ感が満載。1曲目だけじゃなく、全編に渡ってキーボードとビブラフォンがいいアクセントになっていて、最後の曲のキーボードなんてホント最高である。

さらにもう一つ忘れてならないのが、ストリングスだ。でもよくあるそれっぽい大げさなやつじゃなくて、なんかギターとかキーボードとか他の楽器と同じ扱いで、でもこれがギターです、これがストリングスですってわけじゃなく、最初からそこにあったみたいな馴染みのよさ。#7『Guess Who』なんてこれしかないという感じですんごいことになってる。名曲です!

名曲といやぁさっき言った1曲目『Sound & Color』だってビブラフォンで静かに始まったかと思いきや後半は宇宙ぽく広がっちゃうし、2曲目の『Don’t Wanna Fight』はブリタニーさんの祈るようなボーカルが素晴らしくて、4曲目『Future People』もボーカルとバンドの掛け合いがめちゃくちゃカッコイイ!ほんでもって続く5曲目『Gimme All Your Love』も後半に凄い山場が待ってるし、アルバム後半にもさっきの『Guess Who』を始め、『The Greatest』に『Shoegaze』に『Miss You』に『Gemini』にエレピぴろろ~ん♫の『Over My Head』に(って全部やん!)名曲盛りだくさんで、いや、大げさじゃなくてホントに全編すごいっす!

で、最後にこれは絶対触れておきたいブリタニーさんのボーカル。前作もジャニス・ジョプリンみたいで凄かった。勿論それだけでも凄いのに今回はしっとりとなっちゃたり、裏声使っちゃったり、シャウト一辺倒だったのがこんなに変わるかってぐらい表現の幅を広げている。ほんと素敵なボーカリストになったもんだ。

とにかく最初に言ったように全部がまるっと凄いことになっててびっくり。さらに凄いのはこれが全米チャートで№1になったってこと。そりゃこんだけ凄いアルバムだから、評価されるのは分かるけど、だからと言って全米№1になるかって話。アラバマ・シェイクスも凄いけど、これをちゃんと聴き分けるアメリカのリスナーも同じように凄い。ちなみに僕の個人的な2015年ベスト・アルバムはこれですっ!

 

1. Sound & Color
2. Don’t Wanna Fight
3. Dunes
4. Future People
5. Gimme All Your Love
6. This Feeling
7. Guess Who
8. The Greatest
9. Shoegaze
10. Miss You
11. Gemini
12. Over My Head