ポエトリー:
「優しくない人の言葉」
優しくない人の言葉小脇に抱え
冷たい雨
そんなの駅のベンチに捨て置き
早く次の電車に乗りなよ
君の両腕はもっと大事な事
抱えるべきだよ
2022年10月
ポエトリー:
「優しくない人の言葉」
優しくない人の言葉小脇に抱え
冷たい雨
そんなの駅のベンチに捨て置き
早く次の電車に乗りなよ
君の両腕はもっと大事な事
抱えるべきだよ
2022年10月
ポエトリー:
「大いなる一本道」
月が声に出している大いなる一本道は
人々の罪を暴いたりはしないし
見ず知らずの人を小突いたりもしない
だからこそ今日も私たちの胸は濡れているし
健康的に今朝も寝坊をしたりする
昨日にしても今日にしても
私たちに場違いなことはなく
問題を先伸ばしにしたって傘は
雨が降れば必要になるし傘は
人が思うほど色ちがいではないってこと
隠し立てをしたって糸のほつれからは
何をしたかったかや何ができなかったかが
ありとあらゆる角度から想像できるし
それでも上下左右に連動する体の動きは
以前よりにも増して糸を吐き続けるだろうし
何がしたかったかや何ができなかったということよりも
些細な毎日の流れの細やかなことであったり
そうやって生き抜くこと自体を体全体で表明しようとする私たちの手足は健康的で
だからこそ太陽や月の光は毎日新しい角度で人々の体に射し込むのだろう
今に至っては
正面に回って受け止めることだけが正しいとは限らないし
むしろ太陽や月の光が斜めに走る瞬間こそ大切に
そのことをよくよく心に留め置き
なまじよく動く体を持っていようとも
端から端まで歩みを進める必要はないし
半身に構えようが何しようが
昔馴染みの人に会った時のような柔らかな面持ちで
少しでも多くの時間がほどける時を待ち
昨日あったことや今日あったことを
半年先にはよい意味で忘れるような
それでいて嘘はつかない体
健康的な体であることを願いつつ
今や外は雨あがり
太陽や月の光は熱を帯び
傘立てからは雨がしたたっている
【概要】
月は血を流している
君は罪を犯している
大いなる道は一本の道
私たちの胸は濡れている
特別大きな知らせはなくても
それでも枕元に忍び寄る
そういう噂を耳にして
友達はジャムの蓋をきつく締めた
様々なコンテンツから取り出す
簡易的な欠片は
いかようにも形を変えて
胸に留まり山となる
近代の桃源郷をそれと知るなら
面倒臭いなどと言わず
湿った手を拭うのがよい
その方がよほど健康的だ
そこに点はなく線がある
私たちの心はいつもある程度
湿り気を帯びている
それはとても健康的だ
2023年1月
『SWEET16 30th Anniversary Edition』のリリースに寄せて
1992年に発表された『SWEET16』アルバムの30周年記念盤がリリースされた。『SWEET16』は第2期のピークを迎える佐野元春の復活作として記述されることが多い。実際は前作アルバム『TIME OUT!』(1990年)から2年しか経っていないのだが、『TIME OUT!』が80年代のラジカルな佐野元春像からは少しばかり距離のある控えめで地味な作品であり、また、実際に『TIME OUT!』以降は家族のことで1年間ほど音楽活動自体を休んでいたというのもあって、キャリア的には初の空白期間としてあげられている。僕はその頃、まだ佐野の音楽に触れていなかったので、実際の印象は分からない。
そして僕が佐野の音楽にのめり込むきっかけとなったのが正にこの1992年。ドラマ主題歌となった『約束の橋』のヒット、快活なアルバム『SWEET16』のリリース、ベスト・アルバム『NO DAMEGE Ⅱ』のリリース。これらに伴う積極的なメディアへの露出によって、十代最後の年に僕は佐野元春を知るようになった。
30周年記念盤の価格は22,000円。もう少しなんとかならなかったのかとは思うが、勿論それに見合うだけのボリュームはあって、オリジナルのリマスターCDが1枚。アウトテイク集がCD1枚。当時のライブの完全収録を2公演分CD4枚。映像としてBlu-rayが1枚。計7枚プラスずっしり140ページのブックレットに当時の広告用ポスター付きという豪華さ。
オリジナルのリマスター盤と既発がほとんどであまりレア感はないアウトテイク集はまあよいとして、今回の目玉はなんと言っても再始動の端緒となったツアー『See Far Miles Tour Part Ⅰ』(神奈川県民ホール)と、続くアルバム『SWEET16』をフォローするツアー『See Far Miles Tour Part Ⅱ』(横浜アリーナ)の2公演完全収録。とりわけ目を引くのは、ステージアクションを含めた当時36才のキレキレの佐野元春を映像で見れるBlu-rayだろう。佐野のデビュー以来のバック・バンドであるザ・ハートランドはこの後のアルバム『THE CIRCLE』(1994年)で解散をするが、その前の佐野元春 with ザ・ハートランドの最も脂の乗り切った時期がこの『See Far Miles Tour Part Ⅱ』。ていうか佐野の全キャリアのライブ活動においての最大のピークはここなんじゃないかと個人的には思っている。
この時の模様は当時、映像作品として『PartⅠ』が30分ほど、『PartⅡ』が60分ほどのビデオソフトになっていて、佐野の音楽のファンになったばかりの僕はそれこそ擦り切れる程何十回と見た。それが未発表の映像が10曲も追加されて映像化されるなんてあの頃の僕に教えてやりたい。
当時、僕はこの時に佐野が着ていたのと同じような薄いブルーのシャツをミナミのアメ村で探し回った。僕にとって1992年の佐野の活動がこうしてまとまった形でパッケージ化されることの意味は大きい。なにしろ僕の佐野元春はこの時に始まったのだから。
ポエトリー:
「つまみ食い」
つまみ食いをして
あなたの詩をのぞきこむのが
野暮なわたしのすることです
そうやってできた
いささか単調なわたしの詩を
(と呼べるかどうかは別にして)
この際あなたにご覧せしむる
なんて大層なことはどこにもなく
軽はずみな言の葉
夏休みの子供のお手伝いのように
落ち葉もろともそそそと掃いてください
そしたらわたしは音もなく
さささと退散するでしょう
2023年2月
ポエトリー:
「冬瓜」
冷たい雨
降るねこの先
なのにじっとしているだけで
汗かくね
こんな日はゆっくり冬瓜
冬なのに秋の季語っていいよね
うっかりしてわたしたちまで
冬まで持つ瓜になればいいね
冬は冬瓜
無慈悲な言葉にも
水分を奪われることなく
簡単に心盗まれることなく
ひと冬ぐらいどうってことなく
冬は冬瓜
待つのが仕事
冷たい雨はもうしばらく続きますが
今はただ身を固くして
佳き日を待つのみです
2023年1月
WBC優勝に際して
日本が優勝した。そうなるかもしれないとの気持ちもあったが、まさか本当に優勝するとは。選手たちはさぞ疲れたろう。普段とは異なり、3月から異様な緊張感の下で全力プレイしたのだ。心身の疲労は大きい。今は気持ちが張っていると思うけど、間違いなく疲労はあり、疲労は故障の元でもある。間もなくペナントレースは始まるが、所属チームの監督はその辺りを十分考えてほしい。
一方でMVPの大谷は試合後のインタビューで早速すぐに始まるペナントレースに向けての心構えを話していた。ついさっき優勝したばかりなのにもう気持ちは入れ替わっている。本当に通常の物差しでは測れない人だなぁと改めて思った。ただ優勝した瞬間のグローブ投げは残念。子供たちは真似したがるかもしれないが、あれはやめてほしい。大谷からも言ってくれないかな。
昭和の時代であれば、子供たちは「オレ大谷な」とか言いながら、さっそく野球遊びに興じたのだろうが、今はそうはいかない。子供たちは忙しいし、まず野球遊びであってもする場所がない。世界一になることも大事だが、やりたい時に気軽にスポーツができる環境づくりの方も大事。というかこちらの方が大事な気がする。
今回の代表チームの価値観はその辺りとも通底する。彼らは野球のみならず、日本のスポーツに対する新しい価値観をもたらした。分かりやすく言えば昭和の野球との決別。楽しむ事。成長する事。相手チームへの敬意。メディアは日本が日本がと大騒ぎしていたが、選手たちの視野はもっと大きなものだった。
まるで戦争へでも行くかのような緊張感。相手もなくただ自分たちだけが存在しているかのような狭隘さ。絶対的な上下関係。いわゆる昭和の時代の体育会系のような息苦しさはそこになかった。
選手たちは伸び伸びとプレーし、極度の緊張感の中でも楽しむことを忘れなかった。勝っていたこともあっただろうがベンチでの選手たちの表情のなんと明るかったこと。不振にあえいだ村上の復活などはこれまでの代表チームではありえなかったのではないか。
その雰囲気づくりに最も貢献したのはダルビッシュだった。あのやんちゃで自意識過剰な青年がこれほどまでに成長するとは思いもよらなかった。報道されているだけでも「戦争に行くわけじゃない」とか「野球よりも家族が大事」といった言葉が伝わっている。彼は自分たちの代で昭和の野球は終わりにしたいと語っていたという。今大会で彼が最も身を砕いたのもそのことをチーム内に浸透させることではなかったか。
大谷にしても常に「先ずは楽しんで。そして勝つための準備をする」と発言していたし、また、日本日本と騒ぐメディアに対しては、韓国や中国などと一緒にアジアの野球を盛り上げていきたいと語っていた。やはり新しい時代を作るのは若者なのだ。
ただひとつ残念だったのは右手小指を骨折した源田の強行出場。新しい時代を体現する代表チームだっただけに、たとえ世界一を決める大会であったとしても今後の選手生命を優先してほしかった。少なからず影響はあると思う。これが大谷だったら、首脳陣は出場はさせていないはずだ。源田だったらよかったのかということではあるまい。漫画では桜木花道の「俺は今なんだよ」に感動してもいいが、現実は感動してはいけないと思う。
洋楽レビュー:
『Cuts & Bruises』(2023年)Inhaler
(カッツ&ブルーゼス/インヘイラー)
1stアルバムが全英1位になって、この2ndもとてもよい評判。何の変哲もなくグッド・メロディで聴かせる王道ギター・ロックがこれだけ売れてこれだけ注目されるのもホント久しぶりな気がする。フロントマンはU2のボノの息子という派手な出自ですが、音楽の方は実直そのもの。このまますくすく伸びてほしい。
耳目を集めるような強烈な個性はないですが、よいメロディとよいボーカルとよい演奏。これに勝るものはなし。それでいて押さえるところはきちっと押さえる。#1『Just to Keep You Satisfied』の間奏で聴けるギターの鳴りとか、#4『These Are the Days』のラスト近くで畳みかけるところなんて王道そのもの。
ボノの息子ではあるが、雰囲気はU2というよりブルース・スプリングスティーン寄り。#7『Dublin in Ecstasy』なんて若々しくてフレッシュなウォー・オン・ドラッグスみたいな感じ(笑)。というところでキーボードだとは思うが、ピアノやオルガン、シンセのフレーズを効果的に使う柔軟性もあり、今後まだまだ良くなっていく予感大である。
一方でシンプルな#8『When I Have Her on My Mind』も最高にカッコよく、いわゆる誰にもできそうで誰にもできないリフで最後まで押し切れてしまえるのはセンス以外の何ものでもない。ソングライティングは誰かメインの人がいるのだろうが、クレジット的には全員となっていて、この辺りの実直さも好感度は大きい。プロデュースは外部ではなく、バンドのドラマーのようだし、これからもバンド全体でいろいろ学んで着実に成長していきそう。
レディオヘッドやアークティックモンキーズみたいな独自路線へ向かうわけでもなさそうだし、The1975のように派手なところへ振れるわけでもない。アイルランド出身ということですが、同じ英国という括りで見れば、英国ならではの少しの湿り気とグッド・メロディが持ち味の、ウェールズ出身の国民的バンド、こちらも実直なステレオフォニックスに近いのかなと思います。フォニックスのように息の長い活躍を期待したい。
PHOENIX Live In Concert 2023 3月14日 Zepp Osaka Bayside 感想
昨年リリースされたアルバム『Alpha Zulu』をフォローするツアー。3月はアジアです。香港、シンガポール、フィリピン、タイ、そして日本では大阪と東京の2公演です。僕は3月14日に行われた大阪公演へ行ってまいりました。前回の来日は2018年4月でしたから丁度5年ぶりです。彼らももう結構な年齢になっているとは思いますが、全く変わりませんね。当代一のオシャレバンドは健在でした!
19時開演でしたが、先ずはサポートアクトからです。3兄弟からなるバンド、Gliiico だそうです。アジア系のバンドのようですが、時おり流ちょうな日本語でもMCをしていました。いわゆるインディー・ロックですね。熱気溢れる演奏でしたけど、ちょっと長すぎたような。。。40分以上はやってましたね(笑)。なので、フェニックスの登場は20時頃。待ちくたびれたせいもあって、初っ端から会場大爆発でした。
なんてったっていきなり怒涛の展開、『Lisztomania』『Entertainment』『Lasso』『Too Young』『Girlfriend』と続く人気曲の連発ですから、そりゃあ盛り上がります。特に『Lasso』までの冒頭3曲ですね。みんな飛び跳ねての大騒ぎ。僕も年甲斐もなくはしゃぎすぎて、既にこの時点でへとへとになりました(笑)。
新しいアルバムからは5曲披露されました。どれも昨年から行っているツアーでだいぶこなれたようで、全部かっこよかったです。印象深かったのは『Winter Solstice』ですね。キーも含め強弱のハッキリとした曲ですし世界観が際立っていました。一方、定番の『If I Ever Feel Better』では仮面にマントの謎の人物が登場しトーマが跪いて歌う新しい演出も。あれはなんのメタファーだったのかな。
あと今回は映像表現が凝っていて、曲ごとにステージ後方の画面にいろいろと映し出されていました。中でもインスト曲の『Love Like a Sunset Part I / Love Like a Sunset Part II』は見応えありました。なんか『2001年宇宙の旅』というかキューブリックの映画みたいな感じでとても興味深かったです。インスト曲だからこそ出来た観客の視線を釘づけにする演出ですね。この辺の展開は流石です。映像と言えば、トーマがのぞいた双眼鏡に映る観客の様子がステージ後方の画面にそのまま映し出されるという楽しい演出もあって、そこに自分が移るわけですから当然お客さんは盛り上がりますね。
本編は1時間ちょいでしたか。短いですけど濃密でした。アンコールはキーボードのみでの弾き語りでスタート。『Telefono』から『Fior Di Latte』へ続くラブ・ソング。なんともあま~いトーマの声にうっとりしますね。バンド編成に戻っていくつかやったあとラストは『Identical』のリプレイズ。今回のトーマが下に降りてくるための曲はこれですね(笑)。当代一のオシャレバンドですから相変わらず女子率高め。なので多くの女子がトーマめがけてワァ~って寄っていきました(笑)。
しかしまぁ相変わらずnイケメンですな。頭ちっちゃくてスラッとした体系も全く変わりませんね。見かけだけじゃなく高音もきれいなままだし、実はもう以前のような元気なステージングはないかなとも思っていたのですが、失礼しました、全く衰えてませんね。ギターの位置が妙に高いあの人もいつも通りチャーミングでした。時折、面白いフレーズを弾いてましたしね。しかしいつも大活躍のドラムの人。バンド・メンバーにはならんのやね(笑)。
アンコール含め、トータル1時間半ちょいぐらいだったのかな。でも強弱あってのよく練られたステージングでエンターテイメントとしての完成度は流石です。ライブによっていろいろ感想はあるけれど、単純に一番楽しいライブと言えばフェニックス!この認識は今回観ても変わりませんでした。
実は翌日が同じ会場でアークティック・モンキーズだったんですね。どっちも行くわけにはいかず非常に迷ったんですけど、フェニックスはもうベテランの域ですから元気なうちにとこちらを選びました。アークティックはまだ若いからね。あ~でもアークティックも観たかった。やっぱロックのライブは最高です。僕は今回が初のコロナ後の洋楽単独ライブでしたけど、そのことを再確認しました。