Kind/Stereophonics 感想レビュー

洋楽レビュー:

『Kind』(2019)Stereophonics
(カインド/ステレオフォニックス)

11作目のオリジナル・アルバム。今回はいたく地味~なアルバムです。しかしこのいたく地味なアルバムがまたしても全英1位だそうでこれで8作目の全英№1!なんかよう分からんけど相変わらず英国では物凄い人気です。僕もフォニックスは大好きだけど、8回も1位になるかねっていう(笑)。日本で言えばB’zみたいなもんでしょうか。

前回の『Scream Above The Sounds』(2017年)がこれぞフォニックス!というような力作だったのに対し、今回はものすご~く力が抜けています。期待するようなロック・チューンは冒頭の「I Just Wanted the Goods」ぐらいなもんで、あとはもうケリー・ジョーンズが鼻歌まじりにポロ~ンと弾いたような曲ばかり。けどこのポロ~ンと弾いたような曲がちゃんと目鼻立ちがはっきりとしていて簡単には聴き耳を離さない。これがケリーの声であり、ソングライティングであり、バンドの地力なんでしょうな。

落ち着いたテンポの曲が多いとはいえ、ゴスペルもあるし(#3「Make Friends with the Morning」)、カントリー調もあるし(#8「Street of Orange Light)、白黒テレビから流れてくるような古い意匠を纏った曲もあるし(#10「Restless Mind」)、勿論いかにもフォニックスなだんだん盛り上がってくるバラード(#5「Hungover for You」)や泥臭い曲もある(#2「Fly Like an Eagle」)。ちょうど折り返しの6曲目でディスコ調のダンス・ナンバー(#6「Bust This Town」)を入れてくるのも効果的。スロー・ソング主体といえど全く単調にならないのは流石だ。

僕は夜遅くに耳にイヤホンを突っ込んで音楽を聴くことが多いので、日によってはそのままウトウトして、半分寝てしまっていることがある。けどこのアルバムはスロー・ソング主体なのに一気に最後まで聴けてしまう。それはさっき言った全体の流れに動きがあって飽きさせない工夫がしてあるというのもあるけど、リリックがね、やっぱり肩肘張ってないリリックが大きいかも。

生活の延長線上にあるリリックというか、それこそ風が吹いてくように耳にスッと入ってくる。トータル時間42分強。音楽を聴いて特別な時間を過ごすというのではなくて日常の暮らしに溶け込むような音楽。だから時間なんか気にならないのかもしれない。

国内盤には歌詞カードが付いていて、ちゃんと英詞と訳詞を並べてくれているのが嬉しい。ただラーナーノーツというか解説の類は一切ない。他に理由があるんだろうけど、今さら言うことないということなのかと笑ってしまった。

 

Tracklist:
1. I Just Wanted the Goods
2. Fly Like an Eagle
3. Make Friends with the Morning
4. Stitches
5. Hungover for You
6. Bust This Town
7. This Life Ain’t Easy (But It’s the One That We All Got)
8. Street of Orange Light
9. Don’t Let the Devil Take Another Day
10. Restless Mind

Walls/Kings of Leon 感想レビュー

洋楽レビュー:

『Walls』(2016)Kings of Leon
(ウォールズ/キングス・オブ・レオン)

 

思い起こせば、このアルバムが家に届いたのは2016年の年末の押し迫った頃。早速ミニコンポに放り込んで聴いてみたら、笑ってしまった。なんだよ今ごろって。それはまるっきりいい意味で、つまりそろそろ今年のベストはどれにしようかなんて思っているところにこんなキレのいい奴来ちゃったよっていう。そうそうキレがいいんだよなあ。と、調べてみたら2003年デビューで今回が7枚目ということでもう結構なキャリア。それでこれだけ瑞々しい作品を出せるんだから大したもんだ。

そういや前のアルバムは個人的に年間ベストに挙げたぐらいの気に入りようだったんだけど、実はそのアルバムが僕にとっての初キングス・オブ・レオンで、今思えば随分勢い余ってベストにしちゃった感が無きにしも非ずなんだけど、でも近頃じゃ聞かなくなった外連味のいいロック・アルバムだったのは事実で、僕にとってはとても新鮮だったんだな。で一応初めてだったからそういう感覚を得たと思っていたわけなんだけど、今回の新しいアルバムもまた同じように外連味よくて、ああやっぱこの人達はこういう人達なんだなあ、と。

ただ今回は長く一緒にやってきたプロデューサーから離れ、新しい人と組んだとのこと。ということで随分と新しい気持ちが入ったアルバムになっていて、なるほど、このフレッシュさはそういうところからも来ているのかもしれない。ついでに言うと無理しちゃってるアルバム・ジャケットがちょっと恥ずかしいぞ、おい。

取り立ててどうということもないんだけど、この4ピースでガッと行ってしまえる強みはやっぱ特別な何かを持っているということ。ピアノとかストリングスで盛ること無しに一気に聴かせてしまう力技。でもガレージとかパンクの強引さとは違うスムーズな触感。一方でザラザラとしたロック特有のいたたまれなさというのが滲み出てくる。そこにはいいメロディを書くソングライティングとケイレブの喉に何か詰まったようでいて、よく届く声の力が大きい。どこか抜けたような親近感もいい。

前半のキャッチーな曲だけでなく後半のややテンポを落とした曲も聴き耳をそらさないのは流石。兄弟バンドならではの継ぎ目の無さもあるのだろうけど、取り立ててどうということの無いこの4ピースが出すサウンドには何故か説得力がある。欧米各国で1位を獲得したのがその証し。

 

Tracklist:
1. Waste A Moment
2. Reverend
3. Around The World
4. Find Me
5. Over
6. Muchacho
7. Conversation Piece
8. Eyes On You
9. Wild
10. WALLS

Two Hands/Big Thief 感想レビュー

洋楽レビュー:

『Two Hands』(2019)Big Thief
(トゥー・ハンズ/ビッグ・シーフ)

 

前作の『U.F.O.F』であれだけ激しい言葉を放っておきながら、間髪入れずリリースされた本作では自身をまるで空っぽの容器のようだと吐き捨てている。1曲目から「プラグを差して」だの「安定していない」だの挙げ句は「揺れながら歌う」だの、『U.F.O.F』と言った前作以上に地に足が着いていないじゃないか。

ところがサウンドの方はしっかりと地に足が着いているというか、前作が電気的な要素を加味していたのに対し、本作は純然たるフォーク・ロック。ほとんどが一発録りらしく、バンドとしての音像がより鮮明になっている。日本でこういうサウンドはなかなかお目にかかれないなぁ。

リリックの方は相変わらずよく分からない。最初に言ったように激情的な前作からは一変して、寄る辺なさが淡々と綴られている印象。空虚な自分、空っぽの自分に対するやるせなさ、そうしたものが綴られている気はする。と思ったが、本作の核となる#6「Shoulder」では空虚なはずの自分に宿る暴力性への気付きが語られていて、このバンドの持つ、というよりエイドリアン・レンカーの狂気が目に見える形で表に出ている。ので、やっぱ淡々とは言えないな。次の#7「Not」も相当激しいや(笑)。

その「Not」ではアウトロが長く取られていてバンドのグルーヴを堪能できる。けどちょっと長いけど。元々派手さのないバンドなので、そこを聴かせるということではないのだろう。ここは恐らく「~でない」と繰り返す歌の補完と捉えるべき。徐々に盛り上がっていくのがこの手の定番だとして、Big Thief はそういうやり方は採らない。初めから濁流のまま流れきる。

バンドには2つの傾向があるとして、一つは言葉を削っていく方法。最初に言葉ありきなんだけど、言葉を連ねずともバンドの演奏がそれを表現してくれることに気付く。でなるべく言葉で説明しきってしまわないやり方。もう一つはサウンドがなるべく言葉の邪魔をしないように心掛けること。よってバンドの演奏はギリギリまで削っていく。

どちらがどうと言うことではないが、この時点(『U.F.O.F』と『Two Hands』)での Big Thief は間違いなく後者だろう。かといってエイドリアン・レンカ―が突出している印象は受けない。Big Thief からはメンバー4人が連結しているような共同性を感じる。

ほぼ同時期に制作された『U.F.O.F』と『Two Hands』はそれぞれ天と地をイメージして作られたそうだ。なるほど、天は地に足が着かず両手は天に届かない。寄る辺ないはずだ。いずれにしてもテンションの高さは相変わらず。ソフトな日本盤ボーナス・トラックにホッとするのが正直な気持ち。

 

Tracklist:
1. Rock And Sing
2. Forgotten Eyes
3. The Toy
4. Two Hands
5. Those Girls
6. Shoulders
7. Not
8. Wolf
9. Replaced
10. Cut My Hair

 (日本盤ボーナス・トラック)
11. Love In Mine

 

Why Me? Why Not./Liam Gallagher 感想レビュー

洋楽レビュー:

『Why Me? Why Not.』(2019)Liam Gallagher
(ホワイ・ミー?ホワイ・ノット/リアム・ギャラガー)

 

いや、いいんじゃないですかこのソロ2枚目。いい具合に肩の力が抜けてリアムの声がスゥーッと入ってくる。まぁここに至るまで紆余曲折があったわけで、ソロ1作目の手探りな緊張感もいいですが、ここでようやくリアムも本来の調子を取り戻したってことでしょうか。

肩の力が抜けてホントいい声なんですよ。若き日のあの行ったらんかいボーカルではなく、年相応の声といいますか、いやでも妙に瑞々しいんです。このイノセント感はなんなんですかね?

てことで改めて『Definitely Maybe』と『Morning Glory 』のさわりを聴いてみたんですけど、やっぱ当然ながら若い(笑)。だから声質が全然違う。けど今回の声はそん時とはまた違った意味で若く聞こえるんですね。我々は一時期のあの声が伸びなくなったリアムを知っていますから、これは余計にね、リフレッシュして新しい声を手に入れたなと。ちょっとおおっ!となりますね。

てことで今回のリアムさんは歌うことに徹してます。前回は8曲もあった自作曲は今回は無しです。この辺の潔さ。リアムのソングライティングもそんなに悪くないのですが、もうちょっとトライしてみようとかそういった半端な欲が一切ない!俺は歌うからもういいと(笑)。流石、はっきりしてる!

ではっきりしてるのはソングライターチームも同じでもう方向性が一貫している。前回に引き続きグレッグ・カースティンとアンドリュー・ワイアットの2名を筆頭に多くの制作陣が名を連ねているんですが、皆いい曲を書くことに注力している。少々ベタでも兎に角いい曲を。はっきり言って他のミュージシャンには出せないような、ビートルズ丸出しのキャッチーな曲だって沢山あります(笑)。一部、「リアム、ビートルズを歌う」になってます(笑)。でもいーんです。いーんですというか、言い換えるとそういうあからさまな曲を歌ってもリアムの曲になってしまうぐらい今のリアムの声は絶好調なんです。

ここまで来るともうリアムさん、シナトラですね。なんでも自分のものにしてしまう伝説のシンガーです。つーことでこのアルバムは別名「リアム、ビートルズを歌う」、もしくは「リアム、シナトラになる」でどうでしょうか(笑)。

まぁそれぐらいですね、制作陣も惜しみなくよいメロディを注ぎ込んでいる。その意図がよ~く分かるのがどの曲もアウトロ、めっちゃ短い!リアムの歌が終わったら、スッと引いちゃう。もうちょっと余韻があってもいいなと思うような曲でも歌が終わるとバッサリいっちゃいます(笑)。ここまではっきりしてると逆に気持ちいい!

それにしてもリアムがこんな普通の素晴らしい歌のアルバムを出してくるとは思わなかったですね。でもって唯一無二の声の持ち主ながらここに来て、相反する誰の所有物でもない普遍的な声になっている。やっぱそこですよね、このアルバムは。

音楽的に新しい訳でもないし、批評家たちからは相変わらず評価されないけだろうけど、色んな音楽ジャンルがごちゃ混ぜになって益々細分化されていく時代に、ただいい歌をいい声が歌うっていう。そういう埃をかぶった価値観を図らずも改めてここで提示した。ちょっとおおげさかもしれないですけどね、そういう意味では新しくないけど新しいと言える、新鮮な空気を運んでくれるアルバムだと言えるんじゃないでしょうか。

 

Tracklist:
1. Shockwave
2. One of Us
3. Once
4. Now That I’ve Found You
5. Halo
6. Why Me? Why Not.
7. Be Still
8. Alright Now
9. Meadow
10. The River
11. Gone

(Deluxe edition bonus tracks)
12. Invisible Sun
13. Misunderstood
14. Glimmer

 

i,i / Bon Iver 感想レビュー

洋楽レビュー:

『i,i』(2019)Bon Iver
(アイ、アイ/ボン・イヴェール)

 

4枚目。なんでも、デビューアルバムが‘冬’で2枚目が‘春’。3枚目は‘夏’で今回は‘秋’をイメージしているそうだ。言われてみるとそんな気はする。

ボン・イヴェールことジャスティン・ヴァーノンは不思議な人で、自分たちのコミュニティを大事にする所謂やりたいことをする音楽家という立ち位置ではあるけど、実際はローカルな感じはしないし、メジャー・アーティストともコラボしたりする。要するにどちらがどうということではなく、自身の要求に忠実ということだろう。最初は変なところから変な音楽を発表していたボン・イヴェールも今や2010年代を代表するアーティスト。今やこういう人が主流、当たり前なのだから面白い。

肝心の音楽の方も最初は何じゃこれ感があって、これオレにも聴けるかなぁという敷居の高さがあったのだが、段々と馴染んで来て今はもうこれが普通になっているから不思議。というかむしろこれ、すご~くしっくりくる。というのは時代の為せるわざか。

相変わらず詩は分かるような分からないようなヘンテコなものだが、そのヘンテコさがもうそういうもんじゃん、って。このヘンテコなものが違和感なく溶け込む感じはウィルコと同質かもしれないが、ただウィルコと違うのはそうは言ってもそのうちまた付いていけなくなってしまうかもしれない可能性があるということで、それがいい方向ならいいけど、そうじゃない場合も含めてまだ不安定さは含まれている。それこそまさに2019年的か。

傷心のジャスティン・ヴァーノンが一人片田舎で音楽を作って、やがてそれが大きなうねりとなって一つのコミュニティを生む。そして仲間との祝祭のような音楽があって、今回は秋の収穫。それが終わればまた皆それぞれ場所に帰っていく。けどそれはまた一人になるということを意味するのではなく、ただ生活という営みに過ぎない。

このアルバムは個という視点が再び強くなっているけど、それはかつてのそれとは性質が異なるもので、言ってみれば内から外へ向けられたものではなく、外から内に向けての優しい視線。ここにあるのは孤立とはかけ離れた、開かれた孤独だ。i,i と小さく並んだ小文字が可愛らしい。

 

Tracklist:
1. Yi
2. iMi
3. We
4. Holyfields,
5. Hey, Ma
6. U (Man Like)
7. Naeem
8. Jelmore
9. Faith
10. Marion
11. Salem
12. Sh’Diah
13. RABi

Goldrushed/The Royal Concept 感想レビュー

洋楽レビュー:

『Goldrushed』(2014)The Royal Concept
(ゴールドラッシュ/ザ・ロイヤル・コンセプト)

 

タワーレコードの試聴機で「いかにも欧州なひねくれポップ」、でもって「フェニックス+ストロークス」なんて書かれていたもんだから、早速聴いてみたらひっくり返りそうになった。これはもうフェニックスそのものじゃないかと。その物凄くキャッチーなEP盤の2年後に満を持してリリースされたのがこのデビューアルバムだ。

この初のフル・アルバムも期待に違わぬ、というかそれ以上の素晴らしい作品。無駄な説明は一切不要。これは聴いてもらうしかない。若さに任せたエネルギーに満ち溢れている。

驚くことにEP盤で見せた強烈なポップ・ナンバーがまだまだ出てくるし、スロー・ソングだって素晴らしい。演奏力も確かでアレンジもアイデアに溢れている。しかしこれは極めて特殊なデビュー・アルバムと認識すべきもの。つい次回作もと期待してしまうが、それは酷ってもんだ。このテンションは2枚、3枚と続けられるものではない。

このアルバムを一言で言うと、#9『Shut The World』での「we’re gonna live and die young 」というフレーズに尽きる。その破壊力を存分に味わえ。

落ち着いたかなと思ったら、再度スピードが上がる#7『Busy Busy』、#8『Girls Girls Girls』のメドレーがまたいい。

~I’d rather be a ticking bomb than a fading light ~by『Shut The World』

 

Tracklist:
1. World On Fire
2. On Our Way
3. D-D-Dance
4. Radio
5. Cabin Down Below
6. In The End
7. Busy Busy
8. Girls Girls Girls
9. Shut The World
10. Tonight
11. Goldrushed

国内盤ボーナス・トラック
12. Damn
13. Naked and Dumb
14. Gimme Twice
15. Knocked Up
16 Someday

#14『Gimme Twice』の入った国内盤を聴くべし!

The Man Without Qualities/The Royal Concept 感想レビュー

洋楽レビュー:

『The Man Without Qualities』(2019)The Royal Concept
(ザ・マン・ウィザウト・クウォリティーズ/ザ・ロイヤル・コンセプト)

 

5年ぶりだそうで。あの鮮烈なデビュー作からもうそんなに経ったのかと。当時はラジオでかかりまくるわ、USJのCMソングとしてテレビでかかりまくるわでエライ勢いでしたが、その後は音沙汰なし。途中、EP盤が出ましたがそれもパッとせず、やっぱあれは初期衝動、もうエンジン尽きちゃったのかなと。まぁでもそれも良し、それぐらいあのアルバムは鮮烈でしたから、中にはそういうバンドもいるのですと、もうそういうもんとして認識していたのですが、出ましたよ遂に2ndアルバムが。アルバムっつっても8曲入りでフィジカル盤は無しというなんとも微妙な感じですがそれでもいーんです。The Royal Concept の新譜が出たってことで取りあえず喜んでおきましょう(笑)。

肝心の中身の方ですがいいですよこれは。あぁ、1stと比べて云々かんぬんと言う人がいるかもしれませんが、野暮な話はやめましょう(笑)。あれはあれ、青春の為せるわざですから、そういう幻影に惑わされなければこのアルバムもかなりいい!

ゆったりとした「Wake Up」で始まるのもいいですね。新しいThe Royal Concept で行くんだという決意表明のようなおおらかなサウンド。でそれを受けて始まる表題曲「The Man Without Qualities」が効いてます。曲の後半で別の展開を見せる表情もよし。なんじゃこれ、というぐらいもっともっと思いっ切りやってもらってもいいぐらいです。

そして表題曲で新たな側面を見せた後の「Wild Thing」。皆が期待する踊れるThe Royal Concept です。こーいうのやるとやっぱハマりますな。サビの後に来る「わ~ぃ、しんぐ」のコーラスがしびれます。最後のコーラスではゲストでしょうか、R&Bなボーカル・ソロも入って、ピアノも畳み掛けてくる、ギター・ソロも絡んでくる、ここでグッと気持ちがアガルこと請け合いです。

続く「Need To Know」はメロウなラブ・ソングです。大人ですな。こういう雰囲気は1stでは出せなかったであろうと。次の「Why Why Not」もそうですね。ちゃんと陰がある。この辺り、確実に成長の跡が窺えます。

6曲目の「Kick It」で再びスピード・ナンバー。完全に初期アークティック・モンキーズやね(笑)。でもこの手のスピード・ナンバーってなかなか出来ないもんです。単純にカッコイイ。そういう曲が一番難しい。彼らにはそれをサラッとやってのける地力があるってことです。

次の曲「Silver Lining」。これは完全にPhoenixです。Phoenixの新曲と言っても差し支えありません(笑)。もうね、なんなんでしょ、声そっくりです。メロディ・ラインも優雅でロマンティック。サウンドをちょこちょとっといじれば完全にPhoenixです。でもね、この曲がいいんですよ。ちゃんと憂いがあるっていうか、起承転結があってホントよくできた曲ですよ。このアルバムでは一番好きですね。

最後の曲は「Up All Night」。EDMみたいなタイトルですがこれも落ち着いた曲です。踊ってる側ではなくその余韻、若しくは外側にいる人間の歌。1stとは立ち位置が明らかに違うっていうのがこの曲ではっきりと分かりますね。

全8曲。久々の割に曲数は少ないですが、彼ららしさと新しい側面が混ぜ合わさっていいアルバムだと思います。確かにサウンド的にはまだまだ物足りないし、バンドとしての力量も抜群だとは言えないですが、そこは経験を積むなり何なりしてこれから幾らでも補えるところ。それよりも大事なのはソングライティング。やっぱこの人達は曲ですよ。圧倒的にクリアで分かり易いメロディ、それにあの甘い声。人がうらやむこの二つがある訳ですからこれからも安心なんじゃないでしょうか。

でまぁ久しぶりなんで来日すんのかな~って調べたら、既にこの9月に来日しとるやないかい!しまった、全然知らなんだ…。

 

Tracklist:
1. Wake Up
2. The Man Without Qualities
3. Wild Things
4. Need To Know
5. Why Why Not
6. Kick It
7. Silver Lining
8. Up All Night

U.F.O.F./Big Thief 感想レビュー

洋楽レビュー:

『U.F.O.F.』(2019)Big Thief
(U.F.O.F/ビッグ・シーフ)

 

海外詩を読むのが好きなので、時々思い出したように手に取るのだが、思い出したように手に取ったところで、分からないものが分かるようになるわけでもない。相変わらずあの独特な表現は理解し難いのだが、その理解し難さこそが海外詩の魅力でもあるので、性懲りも無く忘れた頃にまた手を伸ばすということを繰り返している。ということで、文学的に言えば私はMかもしれない。

なんでそういう話をしたかというと、Big Thief のアルバムを今回初めて聴いたのだが、印象としては全く海外の詩集を読んだ時の感覚に非常に近しいもので、何だかよく分からないけど分からない故の魅力というか、加えてタイトルのU.F.Oの如く地に足の着かなさ、ふわふわとした所在なさ、そうしたものが何度聴いても拭えない。が、それがいい。これは怖いもの見たさだろうか。

U.F.O.Fというのはソングライターでありフロントウーマンのエイドリアン・レンカーがこさえた造語らしい。U.F.O.Friends という意味だそうだ。要するに未知なる友達。見知らぬ誰かとの出会い、またそれは自分の中にあるもう一人の自分でもあるとの意味も込められているらしいが、果たしてそうか。私にはこのアルバムは強烈な性愛への希求、心の中に激しく燃え盛る情愛の叫びにしか聴こえない。

その前に。このところほぼ毎日このアルバムを聴いているが、聴き方としてはどうやら4曲ごとに3つのパートに分けて聴くのがよいことに気が付いた。4曲でちゃんと起承転結がついているからだ。

先ず冒頭から4曲目までは自己紹介の意味もある。1曲目「Contact」の金切声で既にヤバい感じはあるが、まだ平静を保っていて、客観的な視点が保ている気はする。その結となる4曲目、「From」では「誰も私の男になれない」「誰も私の女になれない」と歌うが実のところは「私は誰の男にも誰の女にもなれない」という自己拒絶。ここでこの人物像が揺るぎなく明確に立ち上がってくる。

次のパート、5曲目から8曲目はそうした自分がなんとか実人生を歩む様が捉えられている。「From」で一瞬我を失いかけた自我が「Open Desert」では落ち着きを取り戻している(ちなみにこの曲のメロディはとても美しい)。このパートの4曲は弾き語りがあったりジャズっぽかったりウィルコばりのユーモアを忍ばせたりと曲想も豊か。しかし詩の内容を追っていくと、「Orange」では「lies,lies,lies / lies in her eyes」と言う癖に次の「Century」では「we have same power」と歌っており、他者との距離感、接近しては離れる揺れ動き、曲想がそうであるように心が大きく揺れ動く様が描かれている。

そして最後、情念が渦巻くのは9曲目から。「Betsy」では心が完全に特定の人に持って行かれる様を追い、「Terminal Paradise」は愛の告白だ。圧巻は「Jenni」。「Jenni in my bedroom」と繰り返すサウンドはシューゲイズ故に尚の事その情念が立ち上がる。「Jenni in my bedroom」と心の中で繰り返し続ける主人公。これは怖い話か何かか。とか言いつつ、これは誰にもある普遍的な情念でもある。そして最終曲、「Magic Dealer」で何事も無かったように終わる。

なんでもなく見える人でも心の中は色々と渦巻いているもの。私だって心の中なんて人に言えたものじゃない。そういうアルバムではないだろうか。それにしても、1曲目の「Contact」の最後に繰り返される金切声は怖い。

 

Tracklist:
1. Contact
2. UFOF
3. Cattails
4. From
5. Open Desert
6. Orange
7. Century
8. Strange
9. Betsy
10. Terminal Paradise
11. Jenni
12. Magic Dealer

Western Stars/Bruce Springsteen 感想レビュー

洋楽レビュー:

『Western Stars』(2019)Bruce Springsteen
(ウェスタン・スターズ/ブルース・スプリングスティーン)

 

13のちょっとした、けれども大切な物語の中で僕が最も心を奪われたのは最後に収められた「Moonlight Motel」だ。主人公はかつて恋人と過ごした古びたモーテルを一人で訪れる。その愛すべき人はもういない。すれ違いによるものなのか、或いは永遠の別れがあったのか。いずれにせよもう若くない男は昔よく停めた駐車場の同じ場所に車を停め、自分自身に、愛した人に、そしてこの場所そのものに祝杯を上げる。

こう書くとなんかチープなストーリーだが、これがブルースの情景描写とスティール・ギターに奏でられた優しいメロディにより何とも言えない風景が目の前に立ち上がる。まるで自分がかつて経験したかのように切ない気持ちが蜃気楼のような立ち現われるのだ。

この曲は時系列が複雑で訳すのが難しかったとの訳者の弁がライナーノーツには記されている。前半の昔の出来事は現在形で、後半の今現在は過去形で書かれているそうだ。こういう書き方をすることによってかえってリアリティは立ち上がるのかもしれない。あまり語られないがブルースの音楽表現の確かさを見て取ることが出来る。

音楽表現と言えばライミングも見事で、内容もさることながらライムやアクセントの強弱でリリック自体にリズムを持たせているところは流石。個人的には「The Wayfarer」での言葉の転がり方が好きだ。

「The Wayfarer」は曲構成も素晴らしく、ブルースの真骨頂であるウォール・オブ・サウンドな曲で、時折聴こえてくるビブラフォンも効果的だ。最後のコーラス部分でいかにもダニー・フェデリーシなEストリート・バンド的オルガンの音色が聞こえてくるのが嬉しい。このアルバムはEストリート・バンドによるものではないが、ライナーノーツによると初代Eストリート・バンドのキーボーディスト、デイヴィッド・サンシャスが参加しているらしいので、そういうことなのかもしれない。ついでに言うと「The Wayfarer」の次に収められた「Tucson Train」にはいかにもロイ・ビタンなピアノのフレーズも出てくる。

ブルースの言によるとこのアルバムは「宝石箱のようなサウンド」だそうで、60年代~70年代の良質なポップ・ミュージックにオマージュを捧げたものになっているらしい。僕にはどのあたりがそうなのかよく分からないが、大掛かりなストリングスとホーン・セクションを配したサウンドは、ブルースの横に広がるソングライティングに奥行きを与え、情景をより立体的なものにしているが、何より手を添える感じのさりげなさがよい。陰影の濃いリリックと対照的なポップなサウンド。これもブルースが意図してのことだろう。

ブルース・スプリングスティーンは世間的には世界へ向けて力強いメッセージを歌うマッチョな人というイメージかもしれないが、実際はその真逆で名も無い人々の暮らしを綴るストーリー・テラーというのが本当のところ。僕にとっても初期のころからずっと変わらないブルースの大きな魅力のひとつだ。

ブルース自身もどれだけ巨大になろうと自分は1949年生まれの労働者階級の端くれで、自分もいつどうなるか分からないという漠とした不安を抱えたどこにでもいる一人の男という認識を持ち続けているようにも思う。

その年配の白人労働者階級というとトランプ大統領の支持層ということになるのだが、当然ブルースはトランプの支持者ではない。ブルースはただ自分とよく似た人々の生活を描いただけで、自分がたまたま白人労働者階級の出だったというだけだ。つまりブルースはそこを分け隔てていないのだ。

今トランプを糾弾するのは容易いかもしれない。ブルースにそれを期待する人も大勢いるかと思う。しかしブルースは一人のアメリカ人としての視点で言葉を紡いでいるだけだ。そこに他意はないと思う。

我々は何処から来て何処へ向かうのか。多くの人と同じく一人の孤独な男として、トランプ支持者であろうがなかろうが、白人であろうが黒人であろうが、若者であろうが年寄りであろうが、移民であろうがなかろうが、お前はそうだお前は違うではなく、一人一人にゆっくりと語りかけている。

このアルバムは僕の心を打ってやまない。それは他ならぬ僕たち自身も漠とした不安を抱える孤独な人間だから。いくら巨大になろうと、ブルースが僕たちから離れていかないのはブルースも同じだからなのかもしれない。

 

Tracklist:
1. Hitch Hikin’
2. The Wayfarer
3. Tucson Train
4. Western Stars
5. Sleepy Joe’s Café
6. Drive Fast (The Stuntman)
7. Chasin’ Wild Horses
8. Sundown
9. Somewhere North of Nashville
10. Stones
11. There Goes My Miracle
12. Hello Sunshine
13. Moonlight Motel

The Balance/Catfish and the Bottlemen 感想レビュー

洋楽レビュー:

『The Balance』(2019)Catfish and the Bottlemen

 

英国出身の4ピースの3枚目。今どき珍しいオーソドックスなギター・バンドです。まぁ言ってもイギリスはロックの国ですから、ラップが何だ、ダンスが何だと言われようがギター・バンドは続々と登場するわけで、ってネット情報ですけど、、、まぁそん中から抜きんでるっていうのは、しかも今時ロックは随分と肩身の狭いご時世ですから、それでもこうやってドカンと出てくるのは相当の力量を持ったバンドではないかなと。

てことで、Catfish and the Bottlemen。3枚目ということですが、特に変わらないです。いつものようにガッと勢いのあるロック・チューンを連発してくれます。相変わらずの安定感ですな。プロデューサーがU2とかThe Killersも手掛けたJacknife Leeということですから、そっち方面のどでかいサウンドを目指したってことでしょうが、実際はいつもとそんな変わりません(笑)。

いや、確かに曲想は広がってますよ。例えば#9「Mission」とか#11「Overlap」は途中で転調しますし、特に#9「Mission」はヒップホップ的なアプローチではないかいなと。でも元々勢い重視のサッと始まりサッと終わるみたいな潔いバンドですから、流石にU2みたいに全世界を歌っちゃいます的な壮大なアプローチにはならないわけです。

でもいーんです、いーんです、そこは曲の力で持っていきますから。何が一番大事なのかは本人たちもよーく分かってるし、だから壮大なスケール感でごまかすっていうことではなくて、良い曲を思い切り腕を振って、ギターロックする。彼らの場合はそれでいいのかもしれません。

デビュー時からいいバンドだったんで、いつか化けるだろう、いつか化けるだろうと思って聴き続けてきたのですが、どうやらその辺はあんまり期待しない方がいいのかなと、この3枚目を聴いて私はそう確信しつつあります(笑)。

曲は抜群にいいし、ボーカルも荒々しいし、バンドも安定してるから、つい期待しちゃう。ライブ映像を観るとめちゃくちゃカッコいいけど、アルバムになると何か物足りない(笑)。まあ、これからも彼らはきっとそういうバンドなのでしょう。とか言いつつ、いつかガツーンと壁を破るんじゃないかと、また買い続けるんだろうな、オレは(笑)

 

Tracklist:
1. Longshot
2. Fluctuate
3. 2all
4. Conversation
5. Sidetrack
6. Encore
7. Basically
8. Intermission
9. Mission
10. Coincide
11. Overlap