サマーソニック2018 大阪 2018年8月18日 感想 ~チャンス・ザ・ラッパー編~

サマーソニック:

サマーソニック2018 大阪 2018年8月18日 感想 ~チャンス・ザ・ラッパー編~

 

ホワイト・マッシブはモンキー・マジックに続いてサンボマスター。サンボは観たかったんだけど、ガチで観てるとオーシャン・ステージのチャンス・ザ・ラッパーに間に合わない。てことで少し離れたところで3曲だけ聴いて、オーシャンへ移動することにしました。でも遠くから聴いててもサンボは最高やね。ずっと叫んでずっと歌ってる。以前テレビで山口が「俺たちが皆の闇を食いつくしてやる」って言ってたけど、本気なんだもんなぁ。あまりの熱量に通りすがりの人も、なんだなんだって振り返ってたもんね(笑)。

で後ろ髪を引かれつつもメイン・ステージであるオーシャンへ。すでに舞台はセッティング済み。サンボに目を奪われていたから結構ギリギリだったけど、思ったほど混雑していなくて結構前へ行けました。う~、ドキドキするぜ~。同じ楽しみと言えども、ウォーク・ザ・ムーンなんかは素直にただ楽しみなだけなんだけど、ホントに好きな場合ってなんかドキドキしてくる。待ち遠しいんだけど、緊張してドキドキしてしまう。でもそういう気持ちがあるうちはオレも大丈夫かな(笑)。

なんて思っていると、YouTubeで何度も見たチャンスさんが転がるように飛び跳ねて来た!本物だ!スゲーッ!本物のチャンス・ザ・ラッパーだ!もうそれだけでしばらく感動~。いつもの3のキャップに赤のヘンリーネックTシャツ。Championのオーバーオールジャージがめっちゃかわいいぞ!

編成はキーボードの前に1人とクワイアが4名。トランペット1名にドラム1名の布陣。嬉しいね、ちゃんとメンバー揃えて来てくれてる。ドラムがプログラミングじゃなく生なものポイントやね。ライブではこれ結構重要やからね。始まりは『ミックステープ』。おぉ、チャンスさんの生ラップにまた感動(笑)。続いて『ブレッシングス』。やったー、コーラス一緒に出来たぜ!次は『エンジェル』。『エンジェル』は短かったぞ。ショートバージョンかな。中盤は数日前に公開した新曲群を早速披露。念のため予習しといて大正解だ。チャンスさん、しっかり煽ってゲストも登場したけど僕は???でした(笑)。

後半は再び『カラリング・ブック』から。『オール・ウィ・ガット』に『ノー・プロブレム』に『オール・ナイト』(←ノックスでも聴いたから、この日2回目!)のメドレー。ここは思いっ切り盛り上がったぞ(笑)。そろそろ時間かなと思ったら『サマー・フレンズ』。リリックは切ないけど、真夏のこの時間帯に聴くとやっぱ染み入りますな。そう、この次の『セイム・ドラッグス』の前だったか、僕ら観客の後ろに真っ赤な夕陽が沈みかけていてステージのチャンスさんが「後ろ見て」って。で振り返ったらホントに綺麗で。ここは舞洲だから僕たちの後ろはもう海だけ。視界を遮るものは何にもなくて大阪湾に真っ赤な夕陽が浮かんでいる…。その時のチャンスさんがまたいい表情してるんだ。もう全てオーケーだよって。何なんだよ、この肯定感はって(笑)。な訳で『セイム・ドラッグス』の最後のコーラス、「Don’t you color out / Don’t you bleed on out / Stay in the line, stay in the line / Dandelion」のところはかなりグッときました。

それにしてもチャンスさんよう喋りますな。もう喋り過ぎっ!何言ってるか分からん(笑)!でも何ていうのかな、この人はメッセージに溢れている人で言いたいことが山にように溢れてきて、だからいやいやチャンスさん、違う言語圏でそんな喋ってもよう分からんへんよってことではなくって、この人の態度とか表情で気持ちは伝わるし、そりゃ正確には分からないけどやっぱこの人は本気なんだなって。

でそんなこと言いつつも実は途中、僕自身も戸惑っていたところはあって、それはこのステージで起きていることが今まで経験したことがない感覚だったからで、一緒に行ってた友達が言ってたんだけど、これはゴスペルなんだと。「Hands up!」なんてのも要はそういうことで、通常のライブで手を挙げるのとはちょっとニュアンスが違うんだな。僕は教会には行ったことはないけど、そこには神父の話や聖歌や場合によったらゴスペルもあるし、別にフェスとか特別な事じゃなく普段の営みとしてそこにある。勿論この日はライブだからとことん楽しいもので教会とは全く異なるんだけど、単に感動して胸が熱くなるっていうのとは少し違う何かが確かにそこにはあった。勿論チャンスさんだって聖者ではないし、これだけの事をした人だからしたたかなところもあるだろうし、人を傷付けることもあっただろうし、そこはそりゃ当然なことなんだけど、とにかく人に何て言われようがここまで圧倒的なポジティビティや圧倒的な肯定感でやり遂げてきた。その真っ直ぐさを臆面のなさを多分僕はどう処理したらいいのか分からなかったんだな。そんな中、あの夕陽や『セイム・ドラッグス』の最後のコーラスでグッと来たのはもしかしたら僕の中でもある意味一つの了解があったからなのかもしれない。

それにしてもホント、チャンスさんはよく喋った。で喋りながら笑ってはる。気持ちは伝わるけど、やっぱ何言ってたのか知りたいね。誰かチャンスさんの言った事、全部訳してくれないかな(笑)。

しかしまぁ、魅力的な人やね。あんだけ英語で喋っときながら、観客がコーラスしたのが嬉しかったのか、跳び跳ねるように喜ぶんやもん。なんやその天然さは!めっちゃかわいいっちゅうねん!

最後は『ブレッシングス(リプリーズ)』。「あーゆーれーでぃ、ふぉーゆぉーぶれっしん、あゆーれでぃ、ふぉーゆぉーみりこー」のリフレイン。チャンスさんは言ってた。日本での初ライブ、導かれてここに来たって。そうやね、日本での初ライブやもんね。そんな日にここに居れてホント幸せっす!そういやチャンスさん、また来るって言ってたぞ!

 

Chance The Rapper  Setlist:
1. Mixtape
2. Blessings
3. Angels
4. Favorite Song
5. Cocoa Butter Kisses
6. Ultralight Beam (Kanye West cover)
7. 65th & Ingleside
8. Work Out
9. What’s the hook?
10. I’m the One (DJ Khaled cover)
11. All We Got
12. No Problem
13. All Night
14. Summer Friends
15. Same Drugs
16. Blessings (Reprise)

 

以下、ベック編へ続く。。。

サマーソニック2018 大阪 2018年8月18日 ~前半の感想~

サマーソニック:

サマーソニック2018 大阪 2018年8月18日 ~前半の感想~

 

今年も行って参りましたサマーソニック。いや~、やっぱ楽しいっすね~。素晴らしい陽気の中、野外で一日中音楽に浸れるってのは何事にも代えがたい喜びです!今年はラインナップが充実していたから余計に満足度は高かった!ていうか毎年終わった直後はそんな事言ってるような気がするな(笑)。

僕が行ったのは18日(土)、ベックさんの日です。そりゃあもう翌日のノエルも行きたかったのですが、なかなかそうはね。ただ1日だけと言ってもベックにチャンス・ザ・ラッパーですから!こうやって書いてるだけでも眩暈がするようなラインナップですよこれは。後で振り返った時に2018年の大阪初日のサマソニに僕は居ました!って言えるぐらいの本当に貴重な体験だったと思います。

先ず目指したのはマウンテン・ステージ。初っ端はノックス・フォーチュン。チャンスさんの曲に参加しているってことで見に行ったのですが、すっごく良かったです。もう自由で開放的で、チャンスさんDNAが見事に流れているっていうか、せっかくなんだから楽しもうよっていう清々しさを感じました。まだかなり若いと思いますが、パフォーマンスも素晴らしかった。音楽的にはラップもあるしロックもあるし何でも来いって感じで、そういうジャンルに無頓着なところもいいやね。あとドラムが日本語を話せる人で、「アツイデスネ」とか「ミナサン、ロックハスキデスカ?」とか妙な日本語を話すのが可笑しかった。そういうのも含めて本当に楽しいライブでした。

その後は一応お昼ってことで腹ごしらえ。そうなんです。フェスではタイムテーブルを見ながら如何に要領よく食事を摂るかってのも重要なのです。あー、次観たいヤツやのにお腹減ったーとか、トイレ行きたなってきたわーってならないようにちゃんとスケジュール管理をしておくことも大切です。あと休養も。今年は予想に反して丁度良い暑さでしたが、それでも真夏ですから。休む時は休む。これもちろん大事です。

腹ごしらえの後はウォーク・ザ・ムーンを観に再びマウンテンへ。その前にENDRECHERIの最後の方を少し観ました。ENDRECHERIって誰?ってことですね、はい。僕も直前まで知りませんでしたが、キンキ・キッズの堂本剛のソロ・プロジェクトのことです。てことで流石の集客力やね。僕はスタンドでのんびり観ていましたがスタンドも結構な人だしアリーナは満員でした。

そして次はいよいよ最初のお目当て、ウォーク・ザ・ムーン。そのままアリーナに降りてがっつり観てきました。もう滅茶苦茶楽しかったです。このバンドもとにかく楽しもうよってバンドで、ボーカリストは上半身裸で体をくねらせながら踊ってるし、ギタリストも目立ちたがりでじゃんじゃん煽ってました(笑)。一応シンセ・ポップってことになるんだろうけど、彼らもそんなこといちいち気にしてないっていうか、場合によっては太鼓を3人で叩いてたり、ハードロック並みにギターをかき鳴らしたり、時と場合に応じて臨機応変に盛り上げていく。バンドの演奏が引き締まっていてホントにいいライブ・バンドやね。

必殺の『シャット・アップ・アンド・ダンス』も、振り付けのあった『タイトロープ』も、これも鉄板の『アンナ・サン』も滅茶苦茶盛り上がった。時間は14時ぐらいだったかな。真夏の一番暑い時間帯にこれ程似合うバンドはなかなかないでしょう。いや~、オレ、サマソニ来たな~って感じを思いっ切り味わえました(笑)。

ところでこのマウンテン・ステージ。休むにはもってこいです。野球場ですから通路は影になってて風通しがいいし、トイレも沢山あるし、自販機も売り切れてない!そうです、確かに室内のソニック・ステージはクーラーが効いていますが、涼みに来た人でごった返してるし、自販機はすぐ売り切れになる。だから皆さん、ひと息入れるなら是非マウンテンへどうぞ。

さて、その後はホワイト・マッシブへ。ここも野外ですけど、テントが張って影があるから心地よい。芝生で小さな椅子も用意されてるから、のんびり聴くにはぴったり。僕はここで足を伸ばしながらモンキー・マジックをゆらゆら聴いていました。このバンドも夏やね。アコースティックなサウンドに流暢な英語詞もあってまるでハワイにでもいるような気分。時々グイッとスピード上げてラップするところもあって、爽やかだけど思わず腰が上がってしまうようなスリリングなバンドでした。結構好きかも。

 

以下、チャンス・ザ・ラッパー編へ続く。。。

詩の状態

ポエトリー:

『詩の状態』

 

詩はおそらく液体 もしくは気体 固体となっては届かない
例えば液体のようにゆっくりと 地面や皮膚に吸い込まれていきます
例えば気体のようにぱっと霧散する 大気中に紛れてしまいます
詩はそのままの形では届かない

指の間をすり抜けて わずか1ミクロン
その届かないところを聞き手は補完します
経験や理知や想像力で
詩はそのままの形では届かない
だからいつしか聞き手のものになる

 

嬉しい時に掛ける言葉はたくさんあるからいい
おめでとうとか よかったねとか ありがとうとか
こういう時の言葉はおそらく固体 言葉のかたまりを笑って相手に手渡しできる

では悲しい時は?
何も言わずただそばにいてあげる それがいいのだとは思います
いいのだとは思うけど 少しでも元気になって欲しいから ついとんちんかんなことを言ってしまう
何も言わずただそばにいることが 実は一番難しいことなのです

悲しい時 一番役に立つのは詩かもしれません
詩は余計なことは言いません(多分)
どちらかというと少し足りないくらいです(多分)

それに
なにしろ液体ですから あなたのもとに辿り着くころには流れ落ちてしまいます
なにしろ気体ですから あなたのもとに辿り着くころには流れ去ってしまいます
届くのはほんの1ミクロン
1ミクロンだからいいのだと思います

なぜなら悲しみはその人だけのものなのですから
人は1ミクロンを頼りに自ら処方してゆくより他はないのです
固体にしてハイって渡しても
それはやっぱりとんちんかんになってしまうのです

詩を道具などと言うと怒られるかもしれませんが 僕の詩は誰かの道具になって欲しいと思います
僕の詩の僅か1ミクロンが どこか知らない誰かが作る処方箋の手助けとなってくれたら
だから僕は固体ではなく うすぼんやりとした言葉を今日も紡ぎます
今日も空に投げ出して 道端にばらまくのです 

 

2017年10月

供養

ポエトリー:

『供養』

 

目玉焼きを焼いて皿に載せた
一晩冷蔵庫に寝かせた後電子レンジで温め直し
ホイルに載せてオーブントースターで表面を少しだけ焦がした
窓を開け放し、ホイルはそのままにしてそれを置いた

人は死ぬと月の引力に導かれていくのだと聞いたことがある
ならば今、月はひとかたまりでごった返しているはず
どおりで月はかように重たいイメージなのだ

あいにく今夜は新月
だからこんな風に窓際に添える
白身が薄い雲のようにかかったホイルのそれを
今夜、表面も香しくよい塩梅に煙を吹かせているであろうそれに乗って
私の家からもまた
ひとかたまりが薄い白身の隙間から這うように外へ出て行く

私はかえってこの方が
本当の月へ向かえるような気がして
私もその時には新月がいいと夜もすがら
窓際でそんなことを考えているのです

 

2018年5月

The Now Now/Gorillaz 感想レビュー

洋楽レビュー:

『The Now Now』(2018)Gorillaz
(ザ・ナウ・ナウ/ゴリラズ)

 

通勤中にボーっと音楽を聴くのが日課になっているのだが、このアルバムは寝不足の耳には丁度いい。特に朝っぱらからクソ暑い2018年の日本の夏にはこの気だるさがぴったりだ。そんな訳でかなり聴く頻度は増えている。ただ増えてはいるんだけど、さあ何書こうかと思えば何を書こうか上手く出てこない。簡単に言うと、そんなアルバムだ。

今さら説明するまでもないんだけど、ゴリラズってのはブラーのデーモン・アルバーンのサイド・プロジェクトで、架空のカトゥーン・キャラクターによるヴァーチャル・バンド。デーモンは現在、別プロジェクトの何とかっていうバンドでも新作を控えているらしいし、勿論ソロ・アルバムも出している。僕はよく知らないけどそれ以外の活動だってあるらしい。今はゴリラズがその中でも中核を占めていて、今やデーモン・アルバーンと言えばブラーではなくゴリラズなのかもしれない。

気だるい。特に1曲目の『Humility (featuring George Benson)』なんてホント今年の馬鹿みたいに暑い夏にぴったりだ。ほら、こう暑いと夏なのに何かいいことが起きそうな雰囲気ってないでしょ?実際大きな災害も沢山起きてるし、日本だって世界だってロクなニュースはない。だからと言って悲壮感なんてないんだけど、ただなんかねぇって。曲調もさることながら僕の頼りない英語力で聴いても気だるくって、あーなんだかなぁって歌詞だ。

前作の『Humanz』はトランプやブレグジットのことに言及して作ったアルバムで(アルバム制作中はまだトランプが大統領になる前で、仮になったとしたらみたいなノリで作ったらホントになったっていうエピソードも)、ゲストもふんだんにかなり熱量の高いアルバム。今回はそのツアーの合間に製作されたってんで、そのテンションの延長線上にあるのかなと思っていたら、実は全くの逆で高いテンションの合間のふとした一人の時間みたいな雰囲気。実際このアルバムの方向性としてはだんだん2-D(=デーモン)のソロ・アルバムにしようってなってきたようだし、そういう一人の人物の佇まいが色濃く出ているような気はする。

ゴリラズはバーチャル・バンドなわけだから、2-Dはデーモンではないし、2-Dというキャラの佇まいってことになるんだろうけど、この気だるさはやっぱデーモンの気だるさと理解してもいいんじゃないだろうか。だからゴリラズ史上、2-Dとデーモンが最も近づいたアルバムと言ってもいいのかもしれない。なんだかなぁっていう歌詞が続く中で、最終曲の『Souk Eye』で「I will always think about you」と繰り返してしまうところなんかはもうバーチャルではないのかも。

聴く方のこちらの気分としても、ちっくしょう、クソ暑いなぁ、全くしょうがねぇなぁ、ロクなことねぇなぁなんて言いながら聴くのがやっぱ正しいのだろう。あぁ、だから『The Now Now』なのか。

 

Track List:
1. Humility (featuring George Benson)
2. Tranz
3. Hollywood (featuring Snoop Dogg and Jamie Principle)
4. Kansas
5. Sorcererz
6. Idaho
7. Lake Zurich
8. Magic City
9. Fire Flies
10. One Percent
11. Souk Eye

C言語

ポエトリー:

『C言語』

 

皮膚の下で順序良く配列されたC言語がカタカタと音を立てているのをまだ誰も聞いたことはない 生命は 毎日必ず更新される

それは酸性雨であったりあの人が投げつけた言葉であったり
脱衣場の珪藻土のようにじーっと皮膚下に吸い込まれ
毎日必ずカタカタと音を立ててはいるが
今日もまだ誰も聞いたことはない

それは大きくのけぞる君の胸の上に落ちる僕の汗も同じで
CPUは書き込まれ、食い潰され、消費され、
普段と同じ方法で熱を放射し始めている
表に現れるのはずっと後になってから
後になってからだ

だから心配には及ばないよ
持ち場は正確に義務をこなし
無駄なものを精一杯溜め込み
大事なものを放射する
いたってシンプル、そんな仕組みなのだから

今朝もまた
36.5分の皮膚の下
C言語は手短に書き込まれ
3才年下の心が遅れてやって来る

 

2018年5月

雨の日のリオデジャネイロ

ポエトリー:

『雨の日のリオデジャネイロ』

 

世界の理(ことわり)を
通り抜けるリオ
雨の日の
友達の泣き顔は冷たい

おおらかな窓を開け放つリオ
普段の行いは鮮やかに晴れ
けれど雨の日のリオ
友達は泣きはらす

揺さぶる手に
先代に拾われてきた貝殻
耳に当て
覗きこむフリを

大好きなのは波打ち際
羽目を外し戯れの貝殻
沈み混む時を
待ちきれない

だからじゃない
黙って去ったのはだからじゃない

上目遣いで
砂から出て来れない時よ
雨はもうしばらく続くから
そっとしてやれよ

雨の日のリオ
冷たいよ
もっと祈りを
雲を振りほどく
朝の光を

 

2018年6月

新版画展 美しき日本の風景 美術館「えき」KYOTO 感想その②

アート・シーン:

新版画展 美しき日本の風景 美術館「えき」KYOTO 感想その②

 

展覧会に入ってすぐに現れるのは瀬川巴水の作品。「東京二十景」と題された作品が続きます。「桜田門(昭和3年)」、「井の頭の春の夜(昭和6年)」、夜の表現が凄いです。吸い込まれていきそうです。「東京二十景」の中で僕が一番気に入ったのは「池上市之倉(昭和3年)」です。何もない街道が画面の下4分の1ぐらいに真横にスーッと伸びていてそこに林が並んで立っている。その街道の暗さと奥から覗く夕陽のオレンジの鮮やかさ、その対比が素晴らしいです。

もうこの辺りで新版画の魅力に打ちのめされます。小さい絵、渡邊庄三郎さんの意向なのか版画はそういうものなのか、B4サイズぐらいに統一されているので、そんなに大きな絵ではないのですが、だからこそそこに広がる宇宙に感動して胸が熱くなる。新版画が大体どういうものかは知っていたので、最初はその精緻さに驚くんだろうなとは思っていたんだけど、ちょっとグッとこみ上げるような感動がありましたね。それはやっぱりそこに広がる宇宙だと思います。

瀬川巴水に続いて、吉田博の作品が並びます。個人的にずっと見たかった作品。念願が叶いました(笑)。やっぱ違いますね、瀬川巴水とは。もう全然違う。なんていうか独創的!勿論、巴水の作品も素晴らしいのですが、同じ新版画といえども全くキャラが違ってて面白いです。なんか吉田博の作品は壮大ですね。画面のサイズは変わらないのですが、躍動感というか、分かりやすく言えば巴水が静で吉田が動といった感じでしょうか。吉田は登山家でもありましたから、山の絵が多いのですが、そうした移動感とでも言うか、止まっている絵でも、静かな湖面を描いた絵でも移動感が仄かに立ち上がるのです。

あと吉田博にも「東京十二題」という連作があるんですが、そのうちの「平川橋(昭和4年)」ていうのが夜を描いていてこれがやっぱいいんです。版画の魅力は彩色にもあるわけで、吉田の作品には「陽明門(昭和12年)」ってのがあってこれは96度摺りっていうとんでもない執念の作品で、立体感とか質感が素晴らしいのですが、逆にトーンを落とした夜の場面てのも新版画の見どころなんですね。深い闇を摺り重ねた向こう側に見えてくるもの、抒情感とでも言えばいいのか、新版画の夜、これも必見ですね。

新版画に続いていくつか江戸時代の浮世絵も展示されていて、この展示の仕方もその違いが浮き彫りになって良かったです。勿論、独創的な江戸時代のものもいいのですが、やっぱ細かさとか技術は進化してるんですね。どちらがいいとか言うのではなく感触が全く異なります。こういうのを見ると、じゃあ現代の作家の版画はどうなのか。これも気になるところです。

あと気付いたことに構図の妙がありますね。さっきも書いたようにサイズが小さいですから、油絵のようにキャンバスに大きく描くっていうのとは違うんです。スケッチブックを持って写生に行ってある部分だけを切り取る。だから構図が自由なんですね。ただ浮世絵の場合は実際にはあり得ないような独創的な構図に持っていく。新版画は最初から構図自体を印象的、特徴的なものにして選んでいく。勿論全てではないですが、そんな印象は受けました。

他にも新版画の旗手たちの作品があるのですが、個人的には瀬川巴水と吉田博、この2名が突出していましたね。巴水は渡邊庄三郎が見出した人ですから、二人で意見を出し合っていい作品を、売れる作品をと頑張るわけです。一方の吉田は版画を始めたのが40代後半でその頃は既に油絵の大家として有名で、だから版元といえども庄三郎さんは何も言えない(笑)。だからその違いがやっぱり絵にも出てて面白いんです。音楽で言えば、売れっ子プロデューサーとタッグを組んでポップでコマーシャルなものを作ろうとするタイプと、遮二無二作家性を追求していくタイプ。例えば人気があった3点セットが、雪と赤(神社とか楼門とか)と女性で、これらが含まれていると売れると(笑)。だから巴水の作品にはそういう絵がよく出てくるわけです。でもそうは言ってもこれがいいんですね。やっぱりその表現を突き詰めている訳ですから完成度が恐ろしく高い。

逆に吉田は色んなタイプの作品を残しているし、やっぱ執念の人っていうイメージ。とにかく細かさというのかな、リアリズムの追及 さっき書いた96度の摺りだってそうだし、徹底した精緻さ、色の細かさ、指示の細かさ、それに付いて行った刷師の人たちも凄いけど、これでいいがないような、そんな執念を感じますね。

あと気になったのが吉田の絵には余白に「自摺」って書いてあるのが結構あったけど、あれはそういう意味だったんだろか。以前テレビで見た吉田博の特集では本人が彫ってるって言ってたけど、摺りも自分でやったのかな。どっちにしろ、人任せには出来ずに、あーでもないこーでもないと最後まで口うるさく言っていたイメージはやっぱあるなぁ(笑)。

だから版画は画家と彫師と刷師の共同作業ですから、巴水とか吉田博って名前が前面に出ては来ますが、実は名もない職人の技や戦いがその裏にあるわけです。そういう部分に思いを馳せるとまた見え方も違ってくるかもしれません。やっぱプロジェクトXですなぁ。

新版画展 美しき日本の風景 美術館「えき」KYOTO 感想その①

アート・シーン:

新版画展 美しき日本の風景 美術館「えき」KYOTO 感想その①

 

JR京都伊勢丹にある美術館「えき」で開催されていた展覧会、「新版画展 美しき日本の風景」に行って参りました。新版画と言われてもピンと来ないかもしれませんが、要するに新しい版画のことです。ハイ、そのまんまですね(笑)。

版画と聞いて思い浮かぶのは浮世絵。浮世絵は江戸時代に盛隆を迎える訳ですが、明治になる頃には写真の登場や印刷技術の進歩もあって衰退してしまいます。しかしその頃、横浜で貿易に携わっていた渡邊庄三郎という方が海外向けに浮世絵がジャンジャン輸出される様子を見て、こりゃ商売になるんじゃねぇかって独立します。そうです、当時はヨーロッパでジャポニズムが一大ブームにだったんですね。で、渡邊庄三郎は版元になるわけです。

基本的に版画というのは画家と彫師と刷師による分業です。それらの版元ということは要するに今で言う総合プロデューサーですね。画家達を集めて工房を立ち上げる。資金繰りもして販売もする。と言っても版画は衰退していたわけですから、手を挙げてくれる人なんてそうはいません。そこを駆け回って版画をもう一度再興させたのですから余り知られてはいないですが、庄三郎さんて方、実は大層凄い方なのです。なんて偉そうに言ってますが、僕もこの展覧会を通じて初めて知った口です(笑)。ちなみにその庄三郎さんの生涯を追った書籍に「最後の版元」というものがあるそうです。一度読んでみたいですね。

で、庄三郎さん、どうせやるなら新しい版画を目指そうじゃないかって、江戸時代の浮世絵を進化させた版画を目指します。それが新版画です。その新版画、展覧会を見た僕の印象では、まず写実ですね。浮世絵ってほら、美人画とか役者絵ってバランス悪いじゃないですか、目や鼻がちょんちょんで。手、ちっちゃいし(笑)。

それと遠近感。広重の東海道五十三次を思い浮かべてもらえば分かると思いますが、浮世絵の遠近感って凄く独創的ですよね。それが海外の人には斬新だ!って受けた訳だけど、新版画はそうじゃなくて西洋の印象派のように実際に見た風景を写真のように切り取ろうとします。します、って言ってますけど版画ですからね(笑)。相当無茶なわけです。それをやろうとしたんですから、もう笑うしかない。プロジェクトXです(笑)。だから見ていると熱量がね、半端なく伝わってきます。中には96回も色を摺った作品もあって、それはもう画家と彫師と刷師の熱意を思わずにはいられないのです。

~感想その②へ続く~

もうすぐサマソニ!!

もうすぐサマソニ!!

 

タイム・テーブルも発表されて、いよいよ1ヶ月を切ったサマーソニック。と、その前に先週末、フジロック・フェステバルが行われた。今年はボブ・ディランにケンドリック・ラマーっていうおしっこチビリそうな大物がいて、僕も一度ぐらいフジロックに行ってみたいと思うけど、ちょっと苗場は遠すぎっ!とか言いつつYouTubeの生中継をちょくちょく見てました。やっぱいいもんですな。一度は行ってみたいものです。

さてサマソニ。ようやくチケットも買って一安心。まだ心配事はありますが、とりあえずほぼ行けるんじゃないかなと。僕が買ったのは18日(土)。ベックとチャンス・ザ・ラッパーの日。翌日のノエル・ギャラガーも見たいんだけど、流石にそこまで無理は効かないので。ノエルはこれからもまた来るやろしね。それより今回はベックさんにチャンスさんっていう流れが強烈だ。特にチャンスさんは来日自体がレア感満載で、これを見逃す手はないでしょう。と言いつつ最近はベック熱の方が高まってきておりますが(笑)。

そーなんです。僕はベックさんをこれまでちゃんと聴いたことが無く、昨年の『カラーズ』アルバムでようやくベック・デビューをした不届きもの。ベックって何かつかみどころが無いし、アート系な匂いがどーもねって先入観があったんだけど、その『カラーズ』がとっても素晴らしくて、そんでもってサマソニに来るってんで、旧譜を聴いてみたらこれがまた良くって、なんていうのかな、肌合いが合うっていうか、なんか言葉への向き合い方とかアウトプットの仕方がなんかぴったり僕にそぐう感じがして。いやいやそりゃ全然僕なんかとは違いますよ。向こうは偉大なすんごい方ですからそりゃーもー全然っ。でもなんか、近しいものを感じてしまったというか、ま、今さらね、今さらですけど、ベックっていいな~と思う訳です。で今、一生懸命ベックさんの旧譜を聴きまくっているところでございます、ハイ。

ところでここで一つ、ちょっとした問題が。そーです。タイム・テーブルです。メイン・ステージのベックさんとソニック・ステージのパラモアが丸被りなんですねー。さぁどうしましょってことで、途中で抜けてソニックへ走るか(←2年前はレディオヘッドのアンコールを諦めて、ソニックのThe1975へ走りました)、いやいや移動時間自体が勿体ないっ、どうせ最後チラッとだけでしょってことでパラモアは諦めるか。こりゃあなかなか難しいところです。あー、もう無理っ!て判断を当日の気持ちに委ねようなんて思っていると一番アカン選択をしてしまいそうなので、ちゃんと冷静に考えて準備をしておくべし!さて、どうしますかな。