ポエトリー:
『供養』
目玉焼きを焼いて皿に載せた
一晩冷蔵庫に寝かせた後電子レンジで温め直し
ホイルに載せてオーブントースターで表面を少しだけ焦がした
窓を開け放し、ホイルはそのままにしてそれを置いた
人は死ぬと月の引力に導かれていくのだと聞いたことがある
ならば今、月はひとかたまりでごった返しているはず
どおりで月はかように重たいイメージなのだ
あいにく今夜は新月
だからこんな風に窓際に添える
白身が薄い雲のようにかかったホイルのそれを
今夜、表面も香しくよい塩梅に煙を吹かせているであろうそれに乗って
私の家からもまた
ひとかたまりが薄い白身の隙間から這うように外へ出て行く
私はかえってこの方が
本当の月へ向かえるような気がして
私もその時には新月がいいと夜もすがら
窓際でそんなことを考えているのです
2018年5月