E-girls PERFECT LIVE 2011-2020 in 三重県営サンアリーナ 2020年2月22日 感想

邦楽レビュー:

E-girls PERFECT LIVE 2011-2020 in 三重県営サンアリーナ 2020年2月22日 感想

 

中3のうちの娘がですね、E-girls の大ファンでして、年中歌ったり曲を流したりしてるんです。でライブに行きたいと、今年で解散するからどうしても行きたいと。まぁ娘の受験もめでたく終わったんでね、じゃあ合格祝いで行こうかということになりまして、で付き添いはママ、ではなく何故か私が行くことになりました(笑)。

ママはね、中学生がそんなん行くもんちゃうなんて言ってたんですけど、私としては行かせてやりたいなと。中3ですから1年間頑張ってきましたし、それに彼女にとって人生初のコンサートになるわけですから、これは心に大きく刻まれるわけです。15才で観た初めてのライブというのは彼女にとってかけがえのない思い出になるんじゃないかなって、それは春からの高校生活への励みになるんじゃないかなって。ですから反対するママを説得してですね(笑)、いつもはそう簡単に説得できないんですけど今回は分かってくれたみたいで、娘を念願のE-girlsライブへ連れていくことができました。

私としても娘と二人でライブなんてこれが最初で最後かもしれないわけですから、おっさんがE-girlsのライブへ行くという気恥しさはあったんですけど、私も基本的に音楽は好きですから。それに娘の本当に喜ぶ顔が見れる、大切な場に一緒に居れるっていうね、そこがやっぱり大きかったですね。

私たちが行ったのは三重県営サンアリーナでのライブです。大阪在住なんで5月の大阪公演に行けばよかったんですが、春からの高校生活がどうなるか分からなかったので今行こうと。はるばるアーバンライナーに乗って三重まで出かけました。

18時開演だったんですけど着いたのは15時前。娘がグッズを買いたいと、なんでもライブ会場限定のグッズがあるとかで、グッズ販売は13時からだったので本当はもっと早く行きたかったみたいですが、そこも色々話し合いをしまして(笑)。結局15時前に着いたんですけど、それでも娘が欲しかったグッズはちゃんと買えたみたいだったので、ほれみぃ、買えたやないか、ということでここは丸く収まりました(笑)。

と前置きが長くなりましたが肝心のライブ。こういうのは私も初めて観たのですが素直に良かったです。ていうかちょっと感動しました(笑)。理由は二つあります。一つはやっぱり娘ですよね、横で見てると大好きなE-girlsのライブということで本当にいい顔をしてるんです。そこに先ず感動してしまいまして、ハイ、親バカですな(笑)。でも彼女がどれだけ好きかっていうのは日常を見て知ってますから本当によかったなって、そこはもう親として胸が熱くなりました。

でもう一つ、これはE-girlsのパフォーマンスですね。彼女たちも本当に精一杯歌って踊っていて、これが解散コンサートということで、私はこれまでの彼女たちの活動は全然知りませんけど、想像するに十代のころからここに青春をかけて頑張ってきたわけですよね。それがこの日の彼女たちの素晴らしいパフォーマンスに繋がっているって考えると、私は全く彼女たちの肉親でもなんでもないんですけどね(笑)、これもやっぱりここまでようやったなぁと、これはやっぱりグッと来ますよ。

あとこれは私独特の楽しさだったかもしれませんが、一応娘が普段歌ったりしているので何となくE-girlsの歌は知っているんですね、まぁ何となくですけど。それが実際に聴いて、あぁこれはこういう曲だったのかとか、はいはいこの曲ね、ということでいちいちストンと腑に落ちていく瞬間が幾度かありまして、それはそれで面白かったですね。あと、娘にこの歌のこのサビの時はこのフレーズで合いの手を入れるんだとかいうのをピンポイントで教わったりしていて、それもまぁ恥ずかしながら楽しかったです(笑)。

でやっぱり生で聴くと歌もダンスも上手いなぁと、当たり前ですけど。ほら、ここ数年ダンスって流行ってるじゃないですか。だからテレビやなんかで見る機会はあるんですけど、プロのダンスってのは初めて直に見るわけですからこれはやっぱり凄いなと。途中、ソロのダンスコーナーもあったんですけど、ここは相当カッコよかったですね。

歌も抜群にうまかったです。あとラップをするメンバーもいて、すみません、娘に名前を聞きましたが誰か忘れました(笑)、彼女のラップもバッチリ決まってましたね。少ししかなかったんですけど、ここをもう少し押し広げてもいいんじゃないかと思いました。

でまぁ色々と工夫があってね、Youtube風の動画コーナーがあったり、LINEを模した掛け合いがあったり、ここはお客さんも喜んでいましたね。ただちょっと広告的な、彼女たちの所属する事務所の他のグループ云々のところであったり、メンバーの出演する映画の宣伝だったりというのはちょっとね。折角のE-girlsのライブという全体の流れがちょっと阻害されるかなと。野暮だなと大人の私は思いました。

あとこれは言ってもしょうがないのかもしれませんが、トラックですよね。ここがもう少し何とかならんかったのかなと。歌も踊りも相当なレベルにあると思うんですが、それに引き替え音がやっぱり弱いというか。フル・バンドとは言いませんが、せめてドラムだけでもいたらなと。あとホーン・セクションが何人かいるだけでダイナミズムが相当出ると思うんですけど、そう簡単な話ではないのですかね。

というのもやっぱり彼女たちのパフォーマンスが素晴らしかったんですね、他の部分にもう少し力を入れたらエンターテイメントとしてのレベルが更にグッと上がったんじゃないかなと思うんです。なんかこれだけの素材があるのに勿体ないなと思いました。

勿体ないというと解散もね、私はその辺の事情を全く知りませんが、これだけの実力があるのに解散なんてなんか勿体ないなぁって、ただの通りすがりの人間としてそこは素直に思いましたね。

ライブは18時開演で終わったのが21時50分頃でしょうか。最初の30分ほどが若いグループによるオープニング・アクトで、途中動画コーナーもあったり宣伝コーナーもあったりしましたから、実質のライブはそんなにも無かったのかもしれませんが、兎に角で最後まで娘は楽しんでましたし、なんだったらこれだけあっても物足りないくらいに思ってたんじゃないですかね、なにしろ体力が有り余ってますから(笑)。

ただまぁ残念なことに私たちは大阪から来ていますから最終電車の時間が迫っている訳ですよ(笑)。ライブが終わって大勢が一挙に出てきてゾロゾロ歩いていたら帰りの最終特急に乗り遅れてしまう。ということでここは事前に娘と何があっても21時45分になったら会場を出る、という取り決めをしていたんですけどね、娘としちゃそりゃあここにきてのそれは納得いかないですよ(笑)。

とはいえ親として冒険は出来ませんから娘をちゃんと家に帰すべく、だから娘の気が収まるまで険悪な雰囲気になってしまいましたが(笑)、無事に家に帰ることが出来まして、まぁ長い一日でしたけど、娘にとっても私にとっても思い出深い日になりました。

あとですねぇ、お客さんが非常に行儀よかったです。若い子ばっかりだったんですけど、妙にはしゃいでる子やいちびっているような子は全然いませんでした。これは前から思っていたことなんですけど、今の子ってちゃんと教育を受けてるし、色んなことを理解していて、我々の世代とは比べものにならないぐらいちゃんとしてるんです。今やもう圧倒的に年寄りの方がマナー悪いですから。その事も改めて知る機会になりましたね。

最後に新型コロナウイルスの件。2月26日の政府の発表で人が大勢集めるイベントの中止要請が出ました。これ、1週間早く出ていたらE-girlsのライブへ行けなかったわけです。ここは日本政府の対応のノロさに感謝するしかないですが、まぁあの日会場にいたことによって感染した人がいたとすれば、我々も含めてですけどね、感謝とか言ってられないですが、その日を楽しみにして26日以降のイベントに参加出来ない人たちが沢山いるわけですから、とりあえず私たちとしては今は幸運だったということですね。

あと主催者に苦言を呈すとですね、やっぱりチケット代ですね。1万円越えというのはお客さんが10代20代の子中心ということを考えるとこれはちょっとね、もう少し何とかならないのかなと。あと娘に解散ツアーの詳細を教えてもらったんですけどこれが大都市中心なんですよ。解散コンサートですから地方の子も参加できるようにね、もうちょっときめ細かく回ってあげられないものかなと。それが無理なら開演時間を早めるとかね。一人で帰る女の子もちらほらいましたから、一時間早めるだけで随分と違うのになとは思いました。

Jaime / Brittany Howard 感想レビュー

洋楽レビュー:

『Jaime』(2019)Brittany Howard
(ジェイミー/ブリタニー・ハワード)

 

アラバマ・シェイクスのソングライターでありボーカリストのブリタニー・ハワードの初のソロ・アルバム。彼女はアラバマ・シェイクス以外のサイド・プロジェクトでも活動しており、ようはやりたいことが沢山ある人なんだろう。しかしまぁ進化が止まらない。アラバマ・シェイクスの1st『Boys & Girls』(2012年)からはだいぶ遠いところまで来たぞ。あの素晴らしい2nd『Sound and Color』(2015年)を経て、ハイブリッド感が半端ない。

『ジェイミー』というタイトルは彼女のお姉さんの名前だそうだ。小さい頃に病気で亡くなった姉の名をタイトルにしての自身のセクシャリティーやアイデンティティーにまで踏み込んだ非常にパーソナルなアルバム、というのがもっぱらの情報だ。30才になったのを機にもうここで吐き出さざるを得なくなったということらしいが、なるほどこれだけの重量感はシンプルなバンド・サウンドでは支えきれないわな。

一応そういう大まかな流れはあるとして、アルバム全体の印象としては一つの物語を追うというよりもある特定の場所で起きた個々の出来事を追っていくという展開で、だから彼女の中で土地というのは大きな要素を占めているのかもしれない。彼女のこれまでの人生、というより場所についての歌なのかも。個人的な体験に基づくリリックではあるが、案外そうした印象を受けないのは多分その辺りが原因かも。ていうかこれぐらいの距離感を持てたからこそのアプローチ。

こういうのんって#6「Short And Sweet」みたいにシンプルにポロロ~ンっとやってしまいがちなんだけど、そうじゃなくてガッツリ今風の、それもピコピコした感じじゃなく、それこそ『Sound and Color』で得たバンドなんだけどコズミックな、例えば由緒ある教会に最先端のアートが飾ってあるみたいな、場末の酒場なんだけど最新鋭の器材と音響施設が整っているみたいな、よく分からないけど凄く前を向いているというそんなサウンドでやりきっちゃうという威勢の良さがあって、このアルバムでは#6「Short And Sweet」が最初に出来た曲らしいけど、同じようにポロロ~ンっとやってしまわずにどんどん表現のアプローチが伸びていくっていうのは、それは冒頭で述べたブリタニーさんの個性にも繋がってくんだろうけど、なんにしてもよく分からないエクスペリメンタルという言葉がこのアルバムを聴いて少しは分かったような気はする。でもやっぱりこのリリックはポロロ~ンじゃもたないよな。

 

Tracklist:
1. History Repeats
2. He Loves Me
3. Georgia
4. Stay High
5. Tomorrow
6. Short And Sweet
7. 13th Century Metal
8. Baby
9. Goat Head
10. Presence
11. Run To Me

今、ライブを観に行きたい人シリーズ まとめ

その他雑感​:​
「今、ライブを観に行きたい人シリーズ まとめ」
 
 
今回、 ライブを観に行きたい人シリーズとして3名の方を紹介しましたが、先ず目に付くのはパフォーマーとしての存在感です。それも演出してどうこうというのではなく、自然な振る舞いとして表立ってくるものがある。曲を演奏するという行為がイコール表現になっているんですね。音楽というのは肉体的な動作も相まって表現されるものとすれば、そこを自発的に表現されている、自覚されているのだと思います。
 
プラス知的要素。それも色々あるでしょうが僕の場合は言葉がついつい気になりますから言葉に目が行きます。その点、折坂さんも中村さんもカネコさんも自分の体を通して出てきた言葉を持っているから聴き耳を立てさせるんですね、なんだなんだと。で言葉が強いから自然声も強くなる。言葉が前面に立つ、矢面に立っても負けないんです。
 
つまりそれはソングライティングに長けているということだと思います。 ライブを観に行きたい人シリーズとして話をしているので、ライブ表現の話が多くなりましたが、やっぱり最初に来るのは単純に曲がいいってことですね。
 
勿論音楽を作る時は慎重になるだろし、細かいところまで丁寧に作るというのはあると思うんですけど、ライブで表現する時っていうのはもうそこは無頓着なんですね多分。何も音源どおりにする必要はない。たった一度しかないその日の公演はその日の流れに任せてしまえばいいんだと。3人ともそういうスタイルなのではないかなと。
 
それが出来るってことはさっきの曲の話に戻りますけど、自分はこうなんだというオリジナルの表現を持っているからなんだと思います。借り物の表現ではなく、もちろんすべてがオリジナルということはあり得ないんですけど、自分はこうしたいというのがある。まぁ本来はそうでないと歌う必要ないわけですけど(笑)、そして今回ご紹介した方々はそれを表現出来る力量を持っているということなんだと思います。
 
ちなみに今回ご紹介した折坂さん、中村さん、カネコさんを僕が知ったのは、それぞれ紙媒体にYoutubeにラジオでした。それっぽい経路なのが面白いです。

今、ライブを観に行きたい人シリーズその③ カネコアヤノ

その他雑感:
「今、ライブを観に行きたい人シリーズその③ カネコアヤノ」  
 
カネコさんを知ったのはラジオです。たまたまですけど弾き語りで「かみつきたい」という曲を歌ってらっしゃるのを聞いて、弾き語りですから言葉がダイレクトに響いてきたんですね。そうすると、いい曲を歌おうとか人を励まそうとかそういった外側の部分が何ひとつ感じられなくて、あぁこの人は歌いたいことがあるんだなぁとそれだけが全面に来たんです。で、その潔さになんだなんだと興味を引かれたわけです。ですので僕がカネコさんを好きになったのは見た目からではありません。ラジオです。一応言っときます(笑)。
 
前述の折坂さんや中村佳穂さんは何と形容すればよいか分からない人たちでしたけど、カネコさんはもう完全にロックの人ですね。サウンドがどうとか以前の段階として立ち居振る舞いが完全にロックです。めちゃくちゃ格好いいです。チャーミングなルックスに目が行きがちですが野性的です。どんな感じかというと、とりあえずこちらをご覧ください。
 
 
普段はどんな方が知りませんが、インタビューなんかを聞いてると物静かな印象ですね。それがステージに立つと、ていうかギターを抱えるとスパークするんです。これですよこれ。逆に普段カッコつけてるくせに歌い出すとからっきしカッコ悪い人いるじゃないですか(笑)。でもカネコさんは恰好つけようとか演出云々ではなくナチュラルにスパークしちゃうんです。これはもうロック以外の何物でもないでしょ。
 
あとやっぱりバンドがいいです。スタジオで録音されたオリジナル・バージョンよりライブ・バージョンの方が圧倒的にいいです。多分同じメンツだと思うんですけど、こんなに違うかっていうぐらいダイナミズムが全然違います。ここは課題なのかもしれませんが、彼女の場合は2パターンあるってことで、これはこれでいいような気もします。
 
男だろうが女だろうが立ち居振る舞いが格好いいミュージシャンてそんなにいません。曲が格好いいってのはありますよ。単純にルックスがいいってのはありますよ。でも歌ってる姿が格好いいってあんまりいないんです。しかもちょっと意識してっていうのではなく、本人にその気がなくても、いや多分むしろそんなこと無頓着なのに自然と格好よくなってしまうっていう、そういうお方なのだと思います。
 
てことで僕がライブを観に行きたい人シリーズの最後を飾るにはネコアヤノさんです。

今、ライブを観に行きたい人シリーズその② 中村佳穂

その他雑感:

「今、ライブを観に行きたい人シリーズその② 中村佳穂」

中村佳穂さんを知ったのは昨年のフジロックでのYoutube中継で、中継と言ってもずっとは見てられませんから空いた時間にちょいちょい見る程度だったのですが、たまたま覗いて見た時に演奏されていたのが中村佳穂さんでした。

スマホの小さな画面だったのですが、一気に中村さんの世界に引き込まれまして、フジロックと言っても大体はながら見になるのですけど、もうこの時ばかりは食い入るように見て、勿論演奏も素晴らしかったんですけど、この方のパーソナリティーですね、ホントに開放的でフジロックの森の中のステージとの組み合わせとも相まってドンと心に響いたんです。

じゃあ中村さんのステージはどんなのかっていうと下にリンク貼っときます。この映像では太鼓を叩いていますが、本来はピアノを弾く人です。最近見た映像でこれが凄くよかったので先ずはこちらを。ちょっと長いですけど凄い展開になってますんで、最後まで見ていただけたらと。

偶然聴いたラジオでこの時のステージの話をされていて、今年はなんだ色んな楽器に挑戦する年にしたいんだとか。それでこういうことになったらしいです。途中、「最後やだな」とか「助けて」とかアドリブが入るのがいいでしょ?

ピアノの方は凄いスキルをお持ちです。もう体の一部って感じでして、イメージとしては自由奔放ですからジャズってことですかね。ただそこに至るまでに物凄く準備を整えていそうで、これは完全に僕の想像なのですが、完璧に近い準備をしてステージに立てばあとはもうその場次第。準備したものに囚われない。そんなイメージですね。

ですので例えて言うと矢野顕子さんということになるのでしょうが、そこは最近の方ですから、エレクトリカルとかヒップホップとかさっきの太鼓とか、もう色々な要素がごちゃ混ぜでフリー、ボーダレスです歌い方も含めて自由なんです。

てことでこの方のライブもやはり一度は観てみたいなと。むしろ観たいというより体験したいという言い方の方が近いような気はしますが、とはいえこの方もですね、もうすぐ来阪されるのですが、チケットはとっくにございません(笑)。やっぱり、大々的にブレイクしていなくても凄い人は人気があるのです。

今、ライブを観に行きたい人シリーズその① 折坂悠太

その他雑感:

「今、ライブを観に行きたい人シリーズその① 折坂悠太」

折坂さんのことはこのブログでも何回か取り上げたことがあるのですが、きっかけは某音楽誌の2018年邦楽部門の年間ベスト1に選ばれたことですね。気になってYoutubeを見たらもうたまげたのなんのって、早速そのアルバム『平成』を購入。世の中にはまだまだスゴイ才能をお持ちの方がいらっしゃいます

やっぱりこの方はですね、生で観ないと本当の素晴らしさは分からないのではないかなと。Youtubeでしか見たことがないので偉そうなことは言えませんが、ライブが圧倒的に素晴らしいんです。ちょうど僕が『平成』アルバムを買った頃にライブがありましたので、チケットを買おうとしたのですが、まぁほぼ即売に近い感じでして見事に撃沈しました(笑)。

昨年はテレビドラマの主題歌を歌っていましたから、現状、更にチケット入手が難しくなっているとは思うのですが、この春、3月23日大阪にお立ち寄りのこと。懲りずにチケットゲットにチャレンジしたところ見事にゲットできましてもう思いっ切り満喫しようかなと、今から楽しみでどうしようもございません。

 
折坂さんは弾き語りでも抜群に素晴らしいのですが、バンドも魅力ですね。ドラムというか太鼓の響きが結構独特で、パーカッションも入ってるんですかね。キーボード関係も特徴的で、なんていうか大正昭和期の日本歌謡とでもいうような感じですかね
 
極端にいうとチンドン屋さんみたいな、ま、実際そういう楽器編成ではないんですけど、イメージとしてね、日本のポップ音楽をJ-POPなんて言いますがそっちじゃなくて、どっちかって言うと戦前戦後の大衆歌謡の系譜のような、日本人の琴線に触れる音楽とは実はこういう感じじゃないかとでも言うようなイメージと言いますか、そういう和洋折衷なごちゃ混ぜ感がごちゃごちゃしたまんま提示される面白さがあるような気はします。
 
てことで今、僕がライブで観てみたい人と言えば先ずこの方折坂悠太さんですね

Eテレ 日曜美術館「写真家ソール・ライター いつもの毎日でみつけた宝物」感想

アート・シーン:

Eテレ 日曜美術館「写真家ソール・ライター いつもの毎日でみつけた宝物」感想

今、一部の若い人たちの間でソール・ライター風の写真をSNSに上げることが流行っているとのこと。確かに、お洒落で且つ誰にも撮れそうな写真だ。誰にでも手が届きそうな距離感。つまりそれがポップ・アートということ。

ソール・ライターは有名ファッション誌の一流カメラマンとして名を馳せるが、ある撮影現場での外野の、すなわちスポンサーの「あー撮れ」「こー撮れ」という声にうんざりして、カメラを置きその場を立ち去った。

その後は一転、安定した収入もなく、友人に助けられながらの生計。セレブなステータスを得ながらも自分のやりたいことを貫いたソール・ライターの生き方。若い人たちはそこにも大きな魅力を感じているらしい。

ゲストの俳優、須藤蓮さんはその若い人々の気持ちを代弁するようにソール・ライターの魅力を論じていた。その気持ちは分かる。けれど一方でそれが先に来てはいけないよ、という軽い気持ちがないでもない。

須藤さんの興奮をクール・ダウンするように写真評論家の飯沢耕太郎さんは、「それもあるけど、先ず作品として素晴らしい」といったような趣旨の発言をされていた。

作家の個性、その人となりを愛することも良し。けれど作品そのものの評価は別個として考えたい。それが作家への、或いは作品への敬意だと思います。場合によってはこれはちょっと好きじゃないなって言える視点は持っておきたい。

そんなつまらない理屈をこねているから中年は駄目なのかもしれないですけど(笑)。

ソール・ライター展は東京で開催された後、春には京都へやって来ます。分かったようなことをぬかしておりますが、実物を見て素直に撃たれたいと思います(笑)。

Eテレ100de名著『力なき者たちの力~ヴァーツラフ・ハヴェル』第1回目 感想

TV program :

Eテレ100de名著『力なき者たちの力~ヴァーツラフ・ハヴェル』第1回目 感想

第1回目はイデオロギーの話。何気ないスローガンを何気ないものとして掲げているうちに、それがさも大事な事のようになっていく。そして人々はスローガンを受け入れることを互いに牽制し合うようになる。

ハヴェルはポスト全体主義には消費社会の特性があるとも指摘。我々は良心とか責任といった倫理的なものと引き換えに物質的な安定を優先してしまう。同調圧力。本当のことがあったとしても言えなくなってしまい、それは連鎖していくとのこと。

これ、僕としても一企業に勤める会社員として身につまされる言葉だ。

第1回目の放送を見ていてふと思ったのが東京オリンピック。そうしたら司会の伊集院光が言いずらそうに「東京オリンピックってホントにいるのかなってまだ思ってる」と発言した。

ハヴェルが本の中で訴えていることが今の日本にも、もちろん日本だけではないけれど、今現在も進行中だということを忘れてはいけない。

「アキノイサム展」御殿山生涯学習センター 感想

アート・シーン:

「アキノイサム展」御殿山生涯学習センター 感想

大阪は枚方市にある御殿山生涯学習センターで「アキノイサム展(2020年2月2日~2月16日)」が開催されています。京阪電車は枚方市駅を東へ5分程。急な坂道を登った先に御殿山生涯学習センターはあります。

先ず最初に展示されているのは絵本「プンクマインチャ」の原画です。傍らに絵本が置いてあるのでそれも読んだのですが、やはり原画は違いますね。生き生きとしていて絵に生命力を感じます。

「プンクマインチャ」には秋野亥左牟の特徴である独特の線が特に目を引く作品です。一筆描きのような線が立体感を出しています。髪の毛だけではなく、表情や体のラインが毛糸を這わせたような幾つかの線で表現されています。これはやっぱり魅力的ですね。

「プンクマインチャ」は絵本ですからストーリーがあって当たり前ですが絵のタッチも同じです。秋野亥左牟の特徴も凄く出ていますから、こういう絵を描く人なんだなと思ってしまいますが、彼の絵はひとつのスタイルにはとどまりません。

それがよく分かるのは絵巻物。秋野亥左牟は旅をする絵描きです。いやむしろ絵を描く旅人と言った方が正しいのかもしれません。旅をする際に携行しやすいということで障子紙を巻物にして世界のあちこちで絵を描きました。

その絵巻物。展示されていたのは二巻だけだったのですが、さっきの「プンクマインチャ」とは全く雰囲気が異なります。一枚目はロシア・ヨーロッパの旅の時のものだそうで、なるほど言われるとそんな雰囲気があります。二枚目はインドということでそれっぽい建物が沢山描かれています。そして実物がどうかは別にしてとても綺麗な色使いですね。それぞれの雰囲気は全く異なります。

旅には障子紙の巻物と12色の水彩絵具のみの携行だったとのことですが、色数が限られていることがかえってよい効果をもたらしているような気はします。とっても明るくて綺麗ですね。二巻のみの展示なのではっきりとは言えませんが、秋野亥左牟が旅をどのように捉えていたのかが分かるようなそんな絵巻物だと思います。

三つ目のフロアにはろうけつ染めや版画などが展示されていました。一つところにとどまらすあらゆる手法を試していたんですね。秋野亥左牟の自由な手さばきを感じることが出来ます。ここでは頭が眼だけの目人間というようなキャラクターがそこかしこに登場します。この人物は秋野自身ということでしょうか。よく見るということ。若い頃から旅に生きてきた秋野亥左牟の思想をそこに見るような気がします。

僕はやっぱり秋野亥左牟の絵が好きですね。もう手が勝手に動いてしょうがないというような、描いてる先からもう次のイメージが沸いてくるようなイメージの連続性と言いますか、そしてそこに恐らく他意はないんですね。もちろん彼にも主義主張はあったんだと思いますが、描いてるのが楽しいから描いてるんだという、誰もが最初期には持つけどなかなか持続して持ち得ない初期衝動を稀有にも最後まで持つ続けられた、そんな幸福な絵描きだったのではないかなと、僕は勝手にそんなことを思いました。

見慣れない絵だし沢山のイメージがごった返して忙しい絵のはずなのに観ていて全く疲れない。それは多分彼の世界に対する肯定的なものの見方、その精神性から来るものなのかもしれません。

上京

ポエトリー:

「上京」

 

上等の卵のような満月を
飲み込んだから君よ

ついて行くよ
見知らぬ街でも
上等の月を飲み込んだ今
消化不良を起こして
かえって心は落ち着かぬ
見知らぬ街でも乱されず歩く方法を
訪ねて歩く咆哮を

背伸びをするための
角張った厚底のスニーカー
ダッシュを決めて
ニヤリとしたまではいいが
足跡を見返して
戦慄するわたくし

媚びることすら
太陽の欠片と知った
罪悪感の渦の
上京物語

ペンライトでかざす足下の
光は濡れて
上等の卵のような満月を飲み込んだ君よ
今夜の雨
どうしてくれよう

 

2020年1月