High Hopes/Bruce Springsteen 感想レビュー

洋楽レビュー:

『High Hopes』 (2014)  Bruce Springsteen

 

14枚目のオリジナル・アルバム。この時点で65歳くらいだと思うけどこの人はホント多作。90年代は創作自体も少なく名前をあまり聞かなくなっていたが、2002年の『ライジング』以降はほぼ2年おきに新作をリリース。それがまたどれも話題作になっちゃうんだから凄い。

このアルバムはライブの定番曲を改めて録音したものや、ツアーの合間にインスピレーションが湧いて録音したもの、そして過去の未発表曲から成る。以前『トラックス』という膨大な未発表曲集をリリースしたけど、そういうのが今も増え続けているということか。で近年のものを集めたところひとつのオリジナル・アルバムとし成立したというような格好だ。

なかにはカバーがあったりするし、勿論新譜もいくつかある。そこで思うのはこの人はとことん音楽が好きなんだなということ。古い曲でも新しい曲でも、思いついたらEストリート・バンドのみんなを集めて録音したくなっちゃう。勿論シリアスな曲も書くけど、基本は「ロックンロールしたい」ってことなんだろう。表題曲の『ハイ・ホープス』なんてほんとそんな感じがする。

経緯もあってか本作は軽い物からシリアスなものまで多種多様。歌詞を見ると深刻なものもあるが、あまりそうした印象は残らない。このアルバムは大きく取り上げられたトム・モレロのギターが影響しているとのことだが、僕にはそのことよりもメロディの良さに目が行ってしまう。#5『ダウン・イン・ザ・ホール』や#9『ハンター・オブ・インヴィジブル・ゲーム』なんかは歌詞だけをみるとかなりヘビーだが、メロディの力とそれに伴うサウンド・デザインが全てを包み込んでいる。中でも『ハンター・オブ・インヴィジブル・ゲーム』の美しさは白眉だ。

これだけの名声があっても根はローカル・ヒーローのままというか、実際ふらりと地元のライブ・ハウスに現れるみたいだし、どれだけ巨大になろうと本質的には近所のロックンロールおやじに過ぎないということ。僕がスプリングスティーンを好きなのもただそれだけのことだ。

そしてその近所のおやじは近所のうまくいかないひとが放っておけないたちで、だけど強引に何かをするっていう人でもなく意外とシャイだったりするし。だから具体的に何かするわけではないんだけど、目線がどうしてもそっちにいっちゃうんだな。政治的な歌を歌う人という捉えられ方をしがちだが、実際は身の回りの人々から目が離れないというだけ。いくら暑苦しく歌おうが、うさん臭くならず皆に支持され続けているというのはそういうことなんだと思う。本作を代表する#3『アメリカン・スキン(41ショット)』が心を打つのも、国に対する異議申し立てではなく、身近な人たちへの深い眼差しがあるからだ。

未発表曲の中には他界したダニー・フェデリーシやクラレンス・クラモンズの演奏も含まれている。そういう理由でセレクトした訳ではないんだろうけど、ここにスプリングスティーンの思いを感じることも出来る。

このアルバムをひと言で言うと、『ハイ・ホープス』で始まり、『ドリーム・ベイビー・ドリーム』で終わるとということ。このこと自体がこのアルバムを象徴している気がする。

追記:初回限定盤には2013年に行われた『ボーン・イン・ザ・USA』の全曲再現ライブのDVDが特典として付いている。ちゃんと字幕付きなのが嬉しい。やっぱりスプリングスティーンの音楽は歌詞も魅力のひとつだから。中身の方は言わずもがな。もう凄いとしか言いようがない。こんなの見ると他のも欲しくなるよなぁ。

 

Tracklist:
1. High Hopes
2. Harry’s Place
3. American Skin (41 Shots)
4. Just Like Fire Would
5. Down in the Hole
6. Heaven’s Wall
7. Frankie Fell in Love
8. This Is Your Sword
9. Hunter of Invisible Game
10. The Ghost of Tom Joad
11. The Wall
12. Dream Baby Dream

Leave a Reply

Your email address will not be published. Required fields are marked *

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)