フェルメール展 大阪市立美術館 感想

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フェルメール展 大阪市立美術館 感想

 

天王寺にある大阪市立美術館で2019年2月16日から5月12日の間に開催されるフェルメール展へ行きました。私が行ったのは平日、雨の日の訪問です。実は十数年に同じく大阪市立美術館で行われたフェルメール展でなんと4時間待ち!というのを経験しておりまして(その時は諦めてそそくさと帰りました…)、もうすぐ春休みで学生さんも増えるだろうし、行くなら今のうちだなと。ちょうど行く予定にしていた日が雨の予報。こ、これはまさしく神のご加護!客足も鈍るだろうと勇んで参りました。

着いたのは9時半オープンの20分ほど前でしょうか。予想通り、既に並んでいる方が沢山いらっしゃいます。といっても100名もいなかったんじゃないかな。傘をさして並びつつ、ほぼオープンと同時に中に入ることが出来ました。

今回のフェルメール展は6章仕立てになっています。第1章は「オランダ人との出会い:肖像画」。2章は「遠い昔の物語:神話画と宗教画」。3章は「戸外の画家たち:風景画」。4章は「命なきものの美:静物画」。5章は「日々の生活:風俗画」。そして最後の6章が「光と影:フェルメール」となっています。大阪会場で展示されているフェルメールは6点。主催者には申し訳ないのですが、4時間待ちの記憶が頭から離れない私は真っ先に第6章の部屋へ向かい、フェルメールの作品から観ることにしました。

先ず現れるのは「マルタとマリアの家のキリスト」。初期の作品で宗教画です。サイズも結構大きいです。まだ我々がよく知っているフェルメールぽさは無いのですが、色使いはフェルメールですね。上に黄色、左下に赤、右下に青と三角形に配色されたコントラストが美しいです。

同じ部屋にある「取り持ち女」。これも見どころは色ですね。男が持つコインがキャンバスの中心にあって、登場人物の視線もそこに集まっている。そしてそのコインを中心にこれも赤、黄色、青が三角形に配置されています。

フェルメール作品で最も有名な登場人物はあの青いターバンの「真珠の耳飾りの少女」ですが、次いで有名なのは「手紙を書く女」や「リュートを調弦する女」の黄色い衣装の女性ではないでしょうか。今回「真珠の~」は来日していないのですが、今述べた黄色い衣装の女性の2作品は展示されています。私が印象に残ったのは「リュートをを調弦する女」ですね。観てると女性の衣装の黄色と左の窓から射す光が薄ぼんやりと描かれているのですが、画面の右半分はほぼ暗い状態、影になっています。光の状態だけに主眼が置かれているんですね。だからか女性の衣装も淡い黄色。光と影はフェルメールの代名詞ですが、この作品はそれに特化したような作品で、ある意味フェルメール自身も試していたのかもしれない。そんな印象を受ける作品でした。

部屋の手前からまるで中を覗き込むように描かれていて、中が明るい「恋文」もいいですね。登場人物は二人の女性。主人とお手伝いでしょうか。主人が腰かけて手紙を持ち、お手伝いに不安げな表情を見せている。それに対しお手伝いは笑っています。女主人「この手紙、どういう意味かしら?」。お手伝い「いい知らせじゃない?」。女主人「そうかしら(まだ不安げ)」。そんな会話が聞こえてきます(笑)。

そうですね。フェルメールの絵は動きが見えるんですね。前後の動きが。生命を感じる、動作を感じます。ほら、あの「真珠の~」だって目が訴えてるでしょ(笑)。やっぱり生命を感じる訳です。だから登場人物が2人以上いたら会話が聞こえてくるし、想像力をかき立てるんですね。これはやっぱり優れた絵画の条件の一つではないでしょうか。そういう意味では「手紙を書く婦人と召し使い」もその典型。女主人と召し使いの‘それ以上でもそれ以下でもない’関係が如実に表れていて、もの凄く面白い。二人の心の声が聞こえてきそうな距離感です。

フェルメールの作品を堪能した後は、順路とは逆に辿って観覧しました。こうして観ると、フェルメールの偉大さが分かりますね。1章から5章はフェルメールより4、50年ほど前の時代。フェルメールに影響を与えたであろう作品が並びますが、もう全然違いますね。バイアスが掛かっているのかもしれないですけど、デッサン、配色、構成、要するに画力が全然違う。残念ながら生きている間は評価が芳しくなかったようですが、こうして並べてみるとフェルメールの絵はもう圧倒的というか見事に生きた絵。単に描写が写実的というのではなく、心象風景がザワザワと立ち上がってくるのです。

大阪市立美術館に赴いたのは今回で2度目です。ここは展示数も恐らく意図的に抑えてるのでしょうか、ゆったり観れるのがいいですね。壁面は濃紺のイメージでカーテンも濃紺。ちゃんとフェルメール仕立てです。休日にはどのぐらいの人手になるのか分かりませんが、なにしろオープン初日には700人が行列をなしたということですから、やはり可能であれば平日がいいですね。それも雨の日!雨の日がお薦めです。雨の日のフェルメール、、、なんかいい響きです。

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