The Sea/Corinne Bailey Lae 感想レビュー

洋楽レビュー:

『The Sea』(2009)Corinne Bailey Lae
(あの日の海/コリーヌ・ベイリー・レイ)

 

2016年に出たアルバム『The Heart Speaks in Whispers』を僕はかなり気に入っていてよく聴いたものだからそのアルバムのイメージが随分強くなってしまっていたけど、あれはコリーヌさんとしてはかなり新しいサウンドに舵を切った異質なもので、久しぶりに2ndアルバムの『THE SEA(あの日の海)』(2009年)を聴いたら、あぁコリーヌさんは元々こっちだったんだなぁと改めて思った次第。

1曲目のけだるい感じに早速「そうそう、これこれ」ってなって、2曲目の『All Again』で切なく盛り上がった日にゃ僕はもうとろけそうになりました(笑)。で続けて聴いてると、やっぱ声もいいんだけど、曲の素晴らしさに目が行って、そういや彼女は生粋のソングライターなんだなと。

感情の起伏に沿うというか、彼女の体に沿っていくようなメロディが彼女自身のパーソナリティを感じさせるんだけど、同時に彼女だけじゃなくみんなのメロディに溶けていくような柔らかさを宿していて、それは要するに普遍性ということになるんだろうけど、このメロディ・センスには改めて驚かされてしまいました。

エレクトリカルもふんだんにそっち寄りのサウンドを指向した『The Heart Speaks in Whispers』を経てこのアルバムを聴いてみるとメロディがギター主体だなぁと。実際、ライブ映像を見ているとギターを抱えている姿(←これがまた華奢な体にギターがよく似合うのです!)が結構あって、割とロック寄りというか、ライブでは弾き語りもしちゃうタイプ。そうそう、このメロディの感じはギターで作った曲なんだよなぁと、ギターも弾けないくせに妙に納得してしてしまいました(笑)。てことで、やっぱりコリーヌさんにはオーガニックなサウンドがよく似合います。

それとやっぱ声。『The Heart Speaks in Whispers』では曲調の変化に伴って、割と元気よくというか前を向いた声なんだけど、このアルバムでは少し口ごもるというか、色っぽく言えば恋人に遠まわしに話すような感じで、だから時折本音が出てグイグイッとボルテージが上がる時なんかはドキッとしちゃうし、それでもスッと引く時はすぐに引いちゃうみたいな。そんなコリーヌ節が縦横無尽のやっぱこれも相当な熱量のアルバムですね。

音楽はと言うと、メロディであったり言葉であったりサウンドであったりということになるんだろうけど、彼女の場合は声に集約されていくというか、勿論言葉も含めた曲自体の魅力も大きいんだけど、全てがこの声に集約されて着地する感覚があって、それは多量な感情を込めつつも、聞き手の心の中にすっと落ちてくるような、さっきも言ったように個人の思いを普遍的なものに変えていく力、それを癒しという言葉で簡単に片づけたくは無いけど、聴く人の心を優しく慰撫する、或いは鼓舞するのは儚くも力強いこの声なのだと思います。

天才的な声で有無を言わさずっていうんじゃなくて、身近にあってスッと距離が縮まるみたいな感じで僕にはなんか友達みたいな、隣で歌ってくれているみたいな親近感を感じてしまいます。YouTubeで沢山映像を見たけど、飾り気が無くてほんとチャーミング。素敵な方です。

 

1. Are You Here
2. I’d Do It All Again
3. Feels Like the First Time
4. The Blackest Lily
5. Closer
6. Love’s on Its Way
7. I Would Like to Call It Beauty
8. Paris Nights/New York Mornings
9. Paper Dolls
10. Diving for Hearts
11. The Sea

 (日本盤ボーナス・トラック)
12. Little Wing
13. It Be’s That Way Sometime

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