われはロボット/アイザック・アシモフ 感想

ブックレビュー:

『われはロボット』  アイザック・アシモフ

あなたが星新一からアシモフを紹介してくれたように、私はアシモフから手塚治虫を連想しました。
生命とは、生物学的に言えば、動物とか植物、微生物なんかもそう。もちろん人間も。
でも全ての生物に心があるとは限らず、人間といえども残虐でひどい人もいたりして。
逆に犬にだって花にだって、そしてロボットにだって、見方によっては暖かい生命がある、つまりは心があるということです。
アシモフも手塚治虫もそんな見方をしている人なんじゃないでしょうか。
心があるから思い通りにならない。
そこに物語が生まれるのです。
あなたにも心当たりがあるでしょう?

夏が過ぎれば

ポエトリー:

『夏過ぎれば』

 

あの人の三歩は君の一歩になるだろう

でも君にくよくよして欲しくない

何故ならあの人の三歩は上手く立ち回っているだけだから

君の一歩は確実な一歩だから

 

あの人の声は君の声より届くだろう

でも君に投げて出して欲しくない

何故ならあの人の声は無駄な拡声器が付いているだけだから

君の声は心から出た声だから

 

あの人は自分勝手な振る舞いは君を悲しませるだろう

でも君に諦めて欲しくない

何故ならあの人は優しさを知らないだけだから

君の振る舞いは誰かの為だから

 

君は決して損などしていない

決して

 

小鳥がひと夏で巣立つように

悲しみが声を枯らすように

営みは続いてくだろう

私たちは共にいるだろう

悲しみを少しづつ拭い去るだろう

 

2017年8月

Something To Tell You/Haim 感想レビュー

洋楽レビュー:

『Something To Tell You』(2017) Haim
(サムシング・テル・ユー/ハイム)

リリックが転がってくのが好きだ。アクセントとかライミングとかメロディが折り重なって、歌詞カードが目で追えないぐらいの勢いで転がっていく。ハイムの新しいアルバムでいうと、リード・トラックの『Want You Back』なんてまさにそんな感じ。サビの最後で「I’ll take the fall and the fault in us / I’ll give you all the love I never gave before I left you…」と転がっていくところなんか最高だ。

ハイム3姉妹の2枚目のアルバムがようやく出た。4年ぶりだそうだ。才能の赴くまま、割とあっけらかんと作ってしまいそうなイメージだけど、意外とそうでもなかったのね。で届けられた新作。素晴らしいのなんのって。僕は勝手にハイムの2枚目は彼女たちの趣味や嗜好に引っ張られた割と重たい感じになるのかなと思っていたが、何のことはない、1stを更にパワー・アップした軽やかなポップ・アルバム。よりがっしりとしたソングライティングに、完成度がぐぐぐいっと高まったサウンド・プロダクション。2枚目のジンクスなんてどこ吹く風だ。

冒頭に述べたように僕はハイムの言葉の転がし方がかなり好きだ。言葉とメロディは一体であるという感覚。この辺り、ハイムはかなり意識的で、ボーカルのダニエルの促音を強く弾く歌い方や、マイケル・ジャクソンばりの「ハッ」とか「アッ」というような合いの手がより音楽としての一体感が生んでいる。そうだな、3人がいつもどこかでリズムを取っているようなイメージもある。ハイムの最大の特徴はそうした言語感覚も含めた独特のリズム感かもしれない。いつも背後に幹のぶっといリズムを有しているという感覚。子供時代、家にあるドラム・セットで3姉妹が競い合っていたというエピソードそのままに、ライヴでもしょっちゅう肩を並べて太鼓を叩いているが、彼女たちの芯はやっぱここにあるのかもしれない。

それと忘れてならないのが今回のサウンド・プロダクション。1stと比べて格段にパワー・アップしている。1stの隙間を活かしたサウンドもあれはあれで良かったんだけど、今回は更にグイッと行きますよという気持ちの表れか、随分とがっしりと作り込まれていて、例えば3曲目の『Little of Your Love』なんて大陸的でアメリカンな大らかさがよく出てる。4曲目の『Ready For You』のプログラミングとかサビのゴスペル風なんかもイカすし、8曲目の『Found It In Silence』のストリングスを効かせたアレンジも凄くかっこいいし、総じて完成度は格段にアップ。プロデューサーのアリエル・レヒトシェイドと元ヴァンパイア・ウェークエンドのロスタム。いい仕事しとります。

今回のアルバムでは彼女たちの持ち味である米国ウェスト・コースト風のノリに80年代の色味が1stよりも濃く反映されている。きっと彼女たちが家で聴いていた音楽の影響をより素直に表したのだろう。先ほどのドラムの話もそうだが、彼女たちにとってホームはとても大事なもので、その辺りがこのアルバムから感じられる懐かしさにも繋がってくるのかもしれない。やっぱり姉妹というのは大きい。あうんの呼吸というか、気付いたらハーモニーになっているみたいなところもやっぱ凄いなと思う。

最後にもう一つ付け加えたいのは同時期デビューのTHE1975との類似性だ。キャラ的には対照的な両者だが、昨年出たTHE1975の2枚目とこのハイムの2枚目はなんだかだぶって聴こえてしまう。確か1stの時もそんな印象を受けたけど、そういうコメントは聞いたことが無いのでそう思ってんのは僕だけかもですが…。スタイルは違うけど、80’Sへの接近とか言葉の転がし方が似てると思うんだけどな。

ちなみに真っ先に公開された、映画監督のポール・トーマス・アンダーソンが録った#10『Right Now』のスタジオ・ライブ版が素晴らしい。彼女たちのライヴはカッコイイもんな。一度見てみたいぞ!

 

1. Want You Back
2. Nothing’s Wrong
3. Little of Your Love
4. Ready For You
5. Something To Tell You
6. You Never Knew
7. Kept Me Crying
8. Found It In Silence
9. Walking Away
10. Right Now
11. Night So Long

サマーソニック2017 in 大阪 2日目 感想

サマーソニック2017 in 大阪 2日目 感想    2017年8月20日

いや~、今年も暑かった。少し前の週間予報では曇りがちだったので雨の心配をしていたのだが、蓋を開けてみると何のことはない、去年同様の猛暑。ちょっとぐらいは曇って欲しいななどと勝手なことを思いつつも、そんな都合よくはいくわけがなく、暑さ対策を万全にして、今年も行ってまいりましたサマーソニック大阪。今年はなんとリアム・ギャラガーの登場だ。しかもフェニックスが来るともなれば参加しないわけにはいかない。ということでサマソニ2017、たっぷり汗を流した1日の最後にまたしても1日分の汗をかくというちょっとびっくりの体験もありつつの大阪2日目の感想です。ちょっと長いですが、お付き合いのほど。

10時過ぎに会場着。ユニバーサルシティ駅からだと、ちょうどいいとこにバスが着く。会場のほぼ真ん中。これはいい。けど、コスモスクエア駅からのバスに乗った友人に聞くとそっちのバス着場はだいぶ遠かったらしい。ラッキー。ぶらぶらして、マウンテン・ステージへ行き、11時からのサンドラ・カルマをアリーナで見る。若いね。みんなロン毛でまだ学生さんみたいな雰囲気。動きもぎこちなくって初々しいパフォーマンス。シャイで遠慮がちな連中やね。肝心の音楽の方もまだまだこれからって感じかな。演奏時間は30分ぐらいだったか。続いて同じマウンテン、今度はスタンド席でハイ・タイドを見る。こちらは打って変わって元気なロック・キッズ。パフォーマンスも板についていてなかなかのもん。シャウトも決まってる。僕の好みはこっちかな。こちらもおよそ30分程のステージだった。

サンドラ・カルマもハイ・タイドもUK出身。今時珍しいオーソドックスなギター・バンドだ。2017年にもなっていまだにキッズがギターに手を伸ばすというところがやっぱUK。なんつってもロック・バンドの本場だもんな。それにしても暑い。この時点で12時過ぎだったか。スタンド席のシートが熱くってしょうがない。わたしはタオルを敷いて座りました。タンクトップでもたれてる連中や短パンで足をシートに乗っけてる連中が信じられねぇ!あんたらどんな皮膚してんだ!? で、この後ちょっと腹ごしらえ。ホワイト・マッシヴの後ろの売店でカツカレーを購入。日陰へ移動しのんびりと昼食タイム。ところでホワイト・マッシヴ。ここは邦楽勢メインのステージだけど、頭上のテントが程よい影となってなかなか良さげ。後ろの方では芝生にのんびり座っている人もちらほら見える。今回はスルーしちゃったけど、来年はどっかで目星を付けてもいいかもね。ゆっくり食べた後は、ゲスの極み乙女を見るために再びマウンテンへ向かいました。

結構早めに行ったのだが、すでに沢山の人が詰めかけていた。最終的には満員に近い状態になったんじゃないかな。なかには興味本位という人もいただろうけど、多分、純粋に彼らの音楽を楽しみたいという人がほとんどだったんじゃないかな。もうそれくらいのバンドになったんだと思う。その期待に違わぬ見事なステージ。やっぱみんな上手いね。知ってる曲は少ししか無かったけど、十分楽しめた。バンドとしての塊がドッと来る感じというか、もう確固たるスタンスが出来上がっている感じ。やっぱ大したバンドだなと再確認しました。

ゲスの極みの後は、涼む意味もあり、クーラーの効いた室内のソニック・ステージへ移動。しかしこれが大誤算。みんなも同じように考えていたのか人、人、人のごった煮状態。去年も同じような時間帯にここへ涼みに来たけどこれ程ではなかった。なんでだ?今年の方が暑いのか?やっとこさスタンド席へ入れたと思いきや空席ねー。てことでアリーナへ。ようやく後ろのちょっとしたスペースにちょこんと座り込む、のも束の間、すぐに「立ってください」と会場スタッフの声が。えー、立ってなあかんのー、ってブーブー言いつつも素知らぬ顔で座っていたのだが、流石に音楽が流れるとついつい勢いで立ってしまいました。電気グルーヴの登場だ!

しかし電気グルーブ、やるね~、長いね~、しんどいね~。僕みたいに名前しか知らないけど何か凄そおってことでついつい引き寄せられたミーハーなド素人に、電子音がループ、ループ。想像力がスパークしっちゃってる映像と共にめくるめく電気グルーヴの世界。ごめんなさい、わたしゃついていけません…。そんなわたしらを見透かすように卓球さん、「もうちょっとで終わるからね~」、でちょっと爆笑。でもってご褒美とばかりに皆が知ってる『N.O.』の大サービス。ここは楽しかった(笑)。はい、わたくし思う壺でございます。でもなかなか終わらんぞ~。卓球さん、もうちょっとって言ったや~ん。

電気グルーヴの後はきゃりーぱみゅぱみゅ。普通にかわいい。聴いたことがある曲があるのはやっぱ楽しいね。うちの子に見せよーってことで思わずスマホをかざしてしまいました。しかしぱみゅぱみゅさん、なかなかのパフォーマンス。若いのに場馴れしているというか、流石に海外公演をしているだけのことはある。ちょっと見直しました。今回はサマソニ仕様ということで途中、中田ヤスタカが登場。で、ヤスタカ氏のDJタイム。爆音のダンス・フロアと化しました。わたしにはよく分かりませんが、こーゆーのをいわゆるパキパキEDMって言うんでしょうか?なんだかよく分かりません(笑)。ていうか音デカすぎ。アクセント程度ならよかったんだけどなぁ。ぱみゅぱみゅさん目当ての子供たちが何人か目に付いたけど、あの子たち、大丈夫だったかなぁー。一応最後はまたぱみゅぱみゅさんの歌でホッと一息。ということで分かりました。わたしはやはり歌が無いと駄目のようです。ま、電気グル―ヴとぱみゅぱみゅ&ヤスタカの2連チャンもこれはこれでいい体験だったけどね。ただソニック・ステージを出た後もしばらくは耳がおかしかったぞ。

その後はマウンテンへ。途中アルコールの誘惑が…。ここはそこらじゅうで売ってんねんなぁ。この暑さの中で飲みゃあ旨いだろうけど、ガマンガマン。慎重にいかなくては。マウンテンでエレファントカシマシをちょっと覗こうなんて思っていたのだが、ここはちょっと一息。次の大イベント、フェニックスに備えしばし休息を。ところでこのマウンテン・ステージ、去年まであんまり来たことが無かったんだけど、なかなか良い場所。何がいいって通路にゃ日陰がいっぱいあるし、トイレもいっぱいあって、自動販売機もいっぱいあって、ひと休みするにはうってつけ。ちょっとワンクッションおくにはちょうどいい場所ではないでしょうか。ということで、着替えも済ましてリフレッシュ。いざフェニックスだ!

エレカシ終わりを見計らい、アリーナへ。前へ行くつもりがもうすでに結構な人。それでもちゃんと表情が見える場所を確保して待機。そういや2014年のサマソニ。あの時、ソニック・ステージのトリで登場したフェニックスは凄かった。当時からめちゃくちゃ好きで何度もCDを聴いていたけど、生で見るとびっくりするぐらい怒涛のライブ・バンドで、あの時の印象が鮮烈に残っている。なので期待しつつも過剰な期待を抑えつつ、あの時ほどではないだろうと出来るだけ平静を務め、一方でドキドキは抑えきれないという、とっても不思議な気持ちで待っておりました。ステージ上ではセッティングに時間を要している模様、恐らくライティングかな、何度も入念な準備。もうちょっと掛かるのかなぁと思っているとフェニックスの面々、急に登場してきました。おーっ、トーマだ!YOUTUBEで観た不思議な柄シャツを着ているぞっ!

てことで始まりましたフェニックス。1曲目は『J-Boy』。新しいアルバムのオープニング・ナンバーだ。続いてドンタッ、ドンタッ、で始まるイントロは『Lasso』。出た!いきなり好きなやつやー。続けて『Entertainment』、『Lisztomania』と怒涛のポップ・ナンバーにもう顔がほころびっぱなし。『Lisztomania』ではテキトーな英語で合唱しちゃいました。ステージのメンバーも笑顔で楽しそう。やっぱフェニックスは間違いないね!新しいアルバムからの曲も幾つか聴けて、僕の好きな『Fior di Latte』も聴けた。この曲を一緒に歌う多幸感といったらもうたまらんっ。ラスト近くに鉄板の『1901』もあって、こちらの期待を裏切らない見事な構成。こりゃ盛り上がらんわけないでしょう。ライティングも凝ってて、PHOENIXの文字が虹色に電飾されて、新しいアルバムのイメージそのまま、流石の演出だ。最後は例の柄シャツをマイク・スタンドに掛けて終わったと思いきや『Ti Amo』のリプライズ。ここでトーマはアリーナに下りてきた。僕は何とかそっちへ行こうとしたけど、残念、あともう少しで届かなかった。もうスゴイね。サービス精神に溢れている。せっかくなんだし、みんな楽しもうよ、っていう陽気なエネルギー。今回もやっぱすげー楽しかった!彼らのアルバムはどれも丁寧で凝った作り、イメージとしちゃクールなオシャレバンドなんだけど、いざライヴになるとイケイケのギター・バンドに豹変する。このギャップもまた魅力だ。もう一度言わせて下さい、、、フェニックスのライヴは最高っ!この多幸感は格別だぁ!僕は調子に乗って、「ティ・アーモ!」だの、「メルシー・ボク!」だの叫んじゃいました。

あー、次のアルバムはまた3~4年後だろうなぁ。そん時にまた来てくんないかなぁ。その前に単独で来ないかなぁ~、などと思いながら大満足で次へ備えトイレでも行こうかと思ったんだけど、あれ、誰も動かないぞ?ていうか逆にちょっとずつ後ろから人のプレッシャーが。えっ?もしかしてもうみんなリアム待ちぃ!?

そうです、最後はこの日の大イベント、リアム・ギャラガーです。しかしまあ皆始まる前から凄いね。まだ30分以上も前だというのに人の圧力がスゴイ…。ちょっとこの状態で30分以上も待つの?だけどこうなりゃオレもここから動けねえって感じ(笑) ビール飲んでなくてよかった(笑) 周りを見渡すと若い子が結構いる。こういうのを見ると嬉しくなる。みんなリアムに会うのを楽しみにしている。オアシスが解散してもう何年も経っているけど、やっぱこの人は特別なのだ。近頃のソロ・ワークの充実ぶりからもみんなの期待値は上がっている。今のリアムなら僕たちの期待感に応えてくれそうな気がする。そんな感じだろうか。「リーアム!リーアム!」という声が散発的に上がる。僕は何度も腕時計を見た。

ほぼ時間通り、オアシス後期ライブの定番オープニング・ナンバー、『Fuckin’ In The Bushes』のSEが流れ始めた。情報は入っていたけど、やっぱりやる。オアシス時代も含めた今のリアムのライブをやるんだ。観客のテンションは上がる。そこへバンド・メンバーと共にリアムの登場だ。あのふてぶてしい歩き方のまま、ついに本当にリアム・ギャラガーが僕たちの前に現れた!みんなもう抑えきれない。後ろから物凄い圧力だ。ぐいぐいと前に押される。前後左右なく、僕の意志ではどうしようもない人波の力に巻き込まれていく。ヤバい。押しつぶされそうだ。そこへ忘れようにも忘れられないあのギター・フレーズ。戸惑っていた僕は目が覚めた。よし、歌うぞ!楽しむぞ!僕は右に左に揉みくちゃになりながら、リアムに向かって皆と一緒に大声で歌った。

曲は『Rock ‘n’ Roll Star』、『Morning Glory』と続き、新曲『Wall of Glass』へ。騒ぎは次のこれまた新曲『Greedy Soul』辺りでだいぶ落ち着き、余裕をもって見れるようになってきた。それでも周りと密着してるけどね(笑) そうそう、リアムは今年定番の恰好で上下黒。マウンテン・パーカーにハーフ・パンツ。このくそ暑い日に黒の長袖パーカーって(笑) しかも途中でパーカー被ったりしてました。流石ロックンロール・スターっす。この日は来日して3回目のライヴということで喉の心配をしていたけど、調子はいいみたい。『Slide Away』のサビ頭は原曲のキーだ!すぐに「♫We’ll find a way~」で下がったけどね(笑) それでもオアシス後期の頃に比べりゃ全然いい!デカい声で伸ばすとこはちゃんと伸びてる。僕も一緒に大声で歌ったけど、そう何曲も続かない。息も喉もしんどくなってくる。そりゃ素人だから当たり前だけど、なんだかんだ言ってもやっぱリアムはスゲエやと実感。最近のロラパルーザでのライブでは喉の調子悪くて4曲で帰っちゃったらしいので、途中、袖の方へ引っ込むような感じ歩いていく時にはちょっと焦ったけど、こういうヒヤヒヤさせるところもリアムの持ち味(笑) しかしまあ、40半ばのおっさんが偉そうに歩いてるだけで、絵になるのなんのって。なんなんだこのカッコよさは。昔と違って今は節制してトレーニングに励んでいるそうだが、ステージに立てばそんな生真面目さは一切感じられず、ふてぶてしいロックンロール・スターのまま。ちゃんと歌ってるんだろうけど、これぐらい余裕だぜ、みたいな佇まいは流石です。そういや曲前にいちいち曲名を言うところが面白かった。それとマスカラみたいなのを丁寧に振ってました(笑)

興奮してしまったけど、冷静に見てもこの日のライヴはとても良かった。新曲群も今のリアムのムードが良く分かるもので素直に良かったし、それに応えるように引き締まったシンプルな演奏をするバンドも良かった。勿論、ソロ・ワークは始まったばかりでバンドとしてはまだまだこれからだけど、リ・スタートとしては最高なんじゃないか。これからツアーを重ねて、アルバムを2枚、3枚と続けていく中でよい化学反応が起きていくことに期待したい。そうだな、そりゃ勿論ギャラガー兄弟が揃ったら嬉しいけど、それよりも僕はリアムにいい歌を歌って欲しい。それがリアムによるものなのか、ノエルによるものなのか、また別の人によるものなのか、それは分からないけど、そんなことよりいい歌を歌って欲しい、それだけなのだ。

しかし観客の熱狂は凄かった。僕は割と前の方にいてぐちゃぐちゃになっていたからよく分からなかったが全体的にはどのぐらいの入りだったのだろうか。まあ何にしても世界中どこ行ってもこんぐらい熱狂されるんだから、そりゃリアムもやる気が出るでしょう。そういや去年は確かフジ・ロックにノエルが来たたけど、同じように観客は熱狂してたのかな。ノエルの場合はそこまではしゃがないような気がしないでもないけど、この辺がオアシスをもう一回やりたいリアムとあんまり興味がないノエルと、ファンの対応もそれぞれそんな感じになってしまうようで面白い。とにかくこの日は最後に感動の『Wonder Wall』の大合唱で締め。当初は時間がありゃ、まだやってるソニックを覗こうなんて思っていたけど、そんなことは一切頭によぎることなく、大満足でバス乗り場へ向かいました。気付けば着替えたばっかのシャツは水を被ったみたいに汗でビショビショだ。リアムは見るとか聴くではなく体験するのだ。そんな気持ちで臨んだけど、まさしく体験する、そんな夜になった。

行きもそうだったけど、帰りのバスもすんなり乗れて今回の導線は良かった。今回はメイン・ステージであるオーシャン・ステージへは行かなかったが、ネットを見るとそっち方面への距離もだいぶ楽になったようで、今回のサマソニ大阪は全体的にスムーズだった模様。まあ毎年のように変更があって、そろそろ落ち着こうよって感じだけど、来年は今年のまんまでもいいかもね。そういや年末にはノエルの新譜が出るみたいだし来年はノエルが来てくんないかな。ハイムとかフォスター・ザ・ピープルも見たいぞ!てか来年も大阪でやってください、頼んます!そういやヘッド・ライナーのカルビン・ハリスはどうだったんだろか?

今年も暑かった。やっぱ昼間は温存すべきやね。それとあとから思えばやっぱビール飲まなくてよかった。あの状態でトイレなんか行かれへんもんね。やはり、この年になりゃ辛抱が肝要です、ハイ。ってことで、休むとこは休む、無理はしない、アルコールの誘惑に負けない、という節度を保った大人のサマソニ観覧記でございました(笑)

命の導き

ポエトリー:

『命の導き』

 

雲が流れてゆく

雨の日も

終電に乗り遅れた夜も

寝坊した朝も

雲はあちこち移動する

 

蒸し暑い遊歩道を歩くだけで

夏休みの少年が中男の会社員に

中男の会社員が散歩する老人に

 

蝉の鳴き声は1985年のもの

伸び放題の夏草は2017年のもの

張り出した高気圧は2040年のもの

 

一週間泣いて

蝉はカラカラになる

The Heart Speaks in Whispers/Corinne Bailey Lae 感想レビュー

洋楽レビュー:

『The Heart Speaks in Whispers』(2016) Corinne Bailey Lae
(ザ・ハーツ・スピークス・イン・ウィスパーズ/コリーヌ・ベイリー・レイ)

2009年の『The Sea』以来7年ぶりのオリジナル・アルバム。7年といやあ結構なもん。なんせ年中さんが中1。中1が成人式ですよ。とにかくコリーヌさんも相当試行錯誤があったのではないでしょうか。新しいアルバム、かなり新機軸です。

早速1曲目からクールなサウンドにちょっとびっくり。昔から知ってる姪っ子がいきなりモード・ファッションみたいな感じっつうか、久しぶりに実家に帰ったら表札がローマ字になっちゃってるっつうか。でもいいんです、いいんです、そのくらいは。私くらいになるとその辺は大人の対応です、はい。ところがですよ、いざ喋ったら中身は変わってないいい子なんすよ。今風にリフォームしちゃってても親はそのまんまなんすよ。

ということで話がだいぶ逸れましたが、新鋭のソングライター、アレンジャーを起用し、非常に凝った最先端のサウンドになってはいても、そこにあの魅力的な声の持ち主、低血圧コリーヌさん(←私の想像です)がにっこり笑って端座しております。今までのコリーヌさんと違ってて残念なんておっしゃるそこのあなた!今回の売りはそこなんです!穏やかな心を持ったコリーヌさんが更なる進化を遂げたスーパー・コリーヌ・ベイリー・レイだっ!

今回のテーマはズバリ、オーガニック・コリーヌさんVSメイン・ストリーム先鋭トラック。はい、アルバム写真そのままです。オーガニック・コリーヌさんと先鋭トラックのまぐあいに、いや失礼、融合がコリーヌさんの新しい魅力をグイッと引き出してくれてます。

まずご挨拶の1曲目(『ザ・スカイズ・ウィル・ブレイク』)はアヴィーチーのような生音プラスの四つ打ちEDM。静かに始まり、サビはアーウ、アーウ、オーウオー♫で一気に行くかと思いきや、ここでアルバム・タイトルをウィスパーしちゃうんですねえ。いいですねえ、この落とし方。結局最後の最後でスパークするんですが、ここもグッと行ってスッと引きます。コリーヌさんお得意のソフト・ランディング唱法、今回はジュラシックパーク・ザ・ライド並みの落差です。3曲目(『ビーン・トゥ・ザ・ムーン』)なんてほれ聴いてみなはれ。このオシャレ&クール・サウンドは何ですか。クァドロンのようなしゃれたサウンドに粘りつくボーカル。終わったらと思ったら、夕暮れのようなよトランペットとアルトサックスでアウトロを決めるという非の打ち所のないクールさ。今回のサウンド・チーム、ただもんじゃあねえなこりゃ。ちなみにこの曲のPVではシルバーの宇宙服みたいなのを着て歩いとります。

6曲目(『グリーン・アフロディジアック』)の始まりなんていかがです。いきなりローズですよローズ。ローズと言ってもいてまえ打線の主砲じゃござーませんよ。いきなりポロロ~ンとされた日にゃ、ローズ好きの私なんざ卒倒もんです。静かな展開の中でサビになると感情の高まりと歩調を合わせるシンセのフレーズもまたグッド。続く7曲目は不思議なタイトルの『ホース・プリント・ドレス』。コリーヌさんのセクシーかわいいボイスが全開です。ウーウーと来てアッハ~ンですよ、あ~た。サビのカレードスクープ♫のクのところで声が裏返るとこなんざたまりませんなあ。男性諸氏、ここはニヤニヤしないように要注意ですぞ!全体的にプリンスっぽい雰囲気もあって、コーラスもトラックも完璧。ここは中盤のハイライト。ですよね、殿下。

それでもまだ以前のオーガニック・コリーヌさんが恋しいあなた。ご安心めされい。まずは2曲目(『ヘイ、アイ・ウォント・ブレイク・ユア・ハート』)。バンド・サウンドでゆったり始まり、クライマックスで大きく盛り上がるお馴染みの展開。8曲目(『ドゥ・ユー・エヴァー・シンク・オブ・ミー?』)は少し趣向を変えてジャズっぽいフリーなバラード。5曲目(『ストップ・ホエア・ユー・アー』)のようなワイド・アングルで、郊外で、土埃舞って、UKな(なんのこっちゃ)ロック・バラードなんてのもあります。こういうのもできるんですねえ。9曲目(『キャラメル』)なんてどうです。アウトロが美しいですねえ~。夕陽にラクダのシルエットが目に浮かびます。キャラメルというよりキャメルやねえ~。

こうしたバンド・スタイルも挿みながらラストに向かい、11曲目(『ウォーク・オン』)はけだるいファンク。歌詞がカッコいいです。そしておとぎ話のような12曲目(『ナイト』)で本編終了。ここから続くボートラは本編で見せたハイブリッド感はなく、シンプルなアレンジで曲の良さが際立ちます。コリーヌさんの並はずれたメロディ・センスがよく分かるいい曲揃いなんで、いつもボートラを雑に扱ってる皆さん(←私のことですっ)、今回は飛ばさずちゃんと聴きましょう。最後にやっぱ基本はソングライティングでんな~と思いつつ、ハイブリッドあり、オーガニックあり、多彩なスタイルでトータルで80分。いや~、流石に長いっす。一気に聴くのはオリジナルの12曲目までで勘弁してちょ。ボートラはボートラでゆっくり楽しみましょう。

とにかくっ、今までと違~う!とか、宇宙服イヤだ~!とか、コットン100%じゃな~い!とか、馬の絵ドレスって何~!とか言わずに、せめて5回はじっくりと聴いておくんなまし。あなたの好きなコリーヌさんはちゃあんとそこにいますよ。

 

1. The Skies Will Break
2. Hey, I Won’t Break Your Heart
3. Been To The Moon
4. Tell Me
5. Stop Where You Are
6. Green Aphrodisiac
7. Horse Print Dress
8. Do You Ever Think Of Me?
9. Caramel
10. Taken By Dreams
11. Walk On
12. Night
13. In The Dark
14. Ice Cream Colours
15. High
16. Push On For The Dawn

ハンモック

ポエトリー:

『ハンモック』

 

大きなハンモックの上で世界の悪意が揺れている。

買い物帰りのハンナはレモンを掴む前までの苛立ちは全て机の向こうに、鉛筆やらコピー用紙だかを押しやるように滑らせ、今夜の夕食の支度を始める。時を同じく、夕方のニュースが目の前を横切る。玉ねぎは細かく刻んだ方がいい。

日付が変わる前にアパートに辿り着いたジョーは帰りがけに買った週刊誌のページを繰る。声を立てて笑った約1秒後、ゴミ箱へ丸めた。思わずソファを蹴りあげたくもなるが電話が呼んでいる。お誕生日おめでとう。

南の島の小さな岬には樫の木があり、そこは子供たちの目印だ。今はお昼の真っ只中。大忙しの奥さん連中の頭の中は来週に迫った村の選挙にかかりっきりだ。彼女たちは海に放射能が流れていることを知らない。

8月の朝、前の日に南半球での病が終息したとのニュースがあった。今日は土曜日、シンイチは表に出て子供たちの靴を洗う。新鮮な空気に独り言を放り込み、向こうでは今は冬なんだと、当たり前の事を思う。何処にいても朝は朝の空気があればいい。まして高望みではないだろう。

 

2014月11月

手紙

ポエトリー:

『手紙』

 

昔からの友達がいた

話が合わなくなった

メールをしなくなった

 

何度か仕事を変えた

少しづつ遠くなった

新しい蝉の声がした

命の盛りだった

 

透明な虹

月の重力に抗いながら

 

人恋しくもある

君は真っ当に生きてきた

誰かはひとりを選んだ

 

記憶が遠くなった

濃密な時間がまるで他人事のよう

あの時の仲間は今、

どんな暮らしをしているだろう

 

透明な虹

月の重力に抗いながら

 

2015年8月

好きこそものの上手なれ

ポエトリー:

『好きこそものの上手なれ』

 

好きこそものの上手なれって言うけれど

好きでも上手くなれないもんさ

そりゃあんた

好きがまだまだ足りないんだよと

人に言われるわけでなく

どこかの自分が言うもんだから

どうすりゃいいかはお察しで

もっと好きになるより他はなし

だったらもっと好きになるよ

今よりもっと

 

2017年7月