洋楽レビュー:
『The Bends』(1995) Radiohead
(ザ・ベンズ/レディオヘッド)
レディオヘッドというのは不思議なバンドだ。 陰鬱そうに見えて希望を覗かせるし、 悲痛そうに見えてユーモアをほのめかせるし、 案外悲観的ではなく楽観的な気持ちの方が強いような気もする。 但しそれはあくまでも僕の意見。人によって見方は様々だろう。 しかし彼らの言葉や声、メロディはそれら全てを許容する。 そもそも言葉自身が、メロディ自身が、 サウンド自身が力を持っている、両面を持っているから。 あらゆる見方を全て飲み込んでしまえる度量を持つ音楽こそがロッ ク音楽だとしたら、これは間違いなくロック・アルバムだ。 それにしてもこんなエモーショナルで美しいギター・ ロックにはそうお目にかかれるもんじゃない。
行き場のない言葉。しかし悲痛さとはユーモアを伴うものだ。 美しいメロディ。エモーショナルなギター。トム・ ヨークは人間的でプラスチックな声で歌う。 ひどく感傷的でありながら、 感情に浸れない無機質な手触りの向こうにあるのは正しさ。 それはやはり憂鬱さと不可思議な可笑しみだ。これは死の直前、 スローモーションになるほんの数秒の物語。意識は明瞭となり、 全ては正しく網膜に映写される。
これだけ正しくギター・ロックを奏でてしまったからには、 もう後へは引けない。『キッドA』という被膜をめくると『 OKコンピューター』があり、『OKコンピューター』 という被膜をめくると『ザ・ベンズ』がある。
1. プラネット・テレックス
2. ザ・ベンズ
★3. ハイ・アンド・ドライ
4. フェイク・プラスティック・トゥリーズ
5. ボーンズ
6. ナイス・ドリーム
☆7. ジャスト(ユー・ドゥー・イット・トゥ・ユアセルフ)
☆8. マイ・アイアン・ラング
9. ブレットプルーフ…アイ・ウィッシュ・アイ・ワズ
10. ブラック・スター
11. サルク
12. ストリート・スピリット
13. ハウ・キャン・ユー・ビー・シュアー
14. キラー・カーズ