天声ジングル/相対性理論 感想レビュー

邦楽レビュー:

『天声ジングル』(2016)相対性理論

 

1曲目、やくしまるのアカペラから入って一気にバンドがなだれ込む感じがいい。余計なギミックは必要ない。これはもうただのバンド。そこにやくしまるの声と絡みつく永井のギターがあれば僕なんかはそれだけでほころんでしまう。

新体制になって2作目。彼らの個性が明確になってきた。やっぱ前作はかつての残り香がそこかしこに漂ってたし、まだまだ手探り状態だったのかも。新しいリズム隊。ガンガン行ってる。これこれ、これくらい思い切りやってくれなきゃ。

ソングライティングはすべてやくしまる。今までは他のメンバーだって曲を書いてたはずなのに、これでいくということはもうそういうこと。明確に方向性がバッチリ出ててスゴクいいんじゃないか。ただまぁやくしまるのソングライティングの不安定なこと。素人みたいなライミングや安易な横文字になんじゃこりゃと思いつつも、時折ソロ・ワークで見せたようなキレキレのソングライティングを見せたりもするもんだから、ワザとなんだかもうなんのこっちゃよく分からないんだけど、ただ今回はこの隙だらけな感じに好感を持ってしまえる妙な説得力があって、なんでそう思えるかっていうとそこはやっぱりバンドとしての音像がくっきり形作られたからだろう。いわゆるロック・バンドにはせーのでドッと出てくる勢いというかゴチャゴチャした感じがあって、細かいことは横に置いとける潔さがある。いつも以上に矢面に立ったギターにドンドカ派手なドラムがあって踊りだすベース・ラインがあって裏方に徹するキーボードがあってっていうはっきりしたバンド・サウンドが未完成なソングライティングだってお構いなしに凌駕してゆける。いや隙だらけだからこそ力を持ちえるのだ。ということでやくしまるさん、やっぱりワザとなんだろか?

ただ新体制云々は別にして、5枚目というそこそこキャリアを積んだ中でこういうしっかりした力強いアルバムを出せたということはとても意味があったんではないかなと。バンドとしての体制がここでもう一回がっちり積み上がって、それはつまりこのバンドとは何かということなんだろうけど、ただ単純にバンドとしてステージに立った様がちゃんと目に浮かぶようになったというのは、やはりここでまた一つ階段を上がったという認識でいいのだと思う。実はもっと過大評価していいのかもしれない。

 

Track List:
1. 天地創造SOS
2. ケルベロス
3. ウルトラソーダ
4. わたしがわたし
5. 13番目の彼女
6. 弁天様はスピリチュア
7. 夏至
8. ベルリン天使
9. とあるAround
10. おやすみ地球
11. FLASHBACK

雨はまだ降り止まず

ポエトリー:

『雨はまだ降り止まず』

 

雨はまだ降り止まず
天気予報は嘘つき
てんでばらばらの太陽
お使いから帰らず

愛しい人は今日もお休み
愛用の枕はへこみっぱなし
正しい事を言うくせに
嘘ばっかし
お酒の力も借りて
今日もお休み

エコーは響かない
思えば若葉の頃
巡り合わせの糸を断ち切る事に精一杯の
欠片拾い集める術はなく
眠たげな眼差しは回り続け
光を求めて立ち尽くす雨

思い出の貝殻を拾い集め
海へ漕ぎ出す夢
見たっけ
目を閉じて
大海原に乗り出した私たちは
風の赴くまま
頼りない帆を上げ
白い波を越えていった

今新しく夜明け
いつまでも変わらない二人は
愛用の枕をへこませたまま
今日も新しい一日を
精一杯ループした

 

2018年6月

Junk of The Heart/The Kooks 感想レビュー

洋楽レビュー:

『Junk of The Heart』(2011)The Kooks
(ジャンク・オブ・ザ・ハート/ザ・クークス)

 

同年デビューのアークティック・モンキーズよりも売れた1st。全英№1となった2nd。ということで、いやがおうにもハードルが高くなるクークスの3rdアルバム。ところがどっこい、期待をよい意味で裏切る素晴らしい作品となった。何がいいって、気負いことなく自然体の中から生まれてきたかのような落ち着いたポップ感が素晴らしい。シングル向けの派手な曲もなければ、過度な演出もないのだけど、その分楽曲のよさが際立っており、掛け値なしのクークスの底力が見事に発揮されている。

‘I wanna make you happy’と歌う表題曲からM3まで続く良質のポップ・メドレーの軽やかさ。そして本作で唯一アッパーな「Is it me」の後半におけるヒロイックな畳み掛け具合は流石である。

これまでのような若さに任せたスピード感がなくとも、曲の力だけで聞かせてしまう圧倒的な楽曲の良さ。すなわちそれは当たり前のことではあるが、ロック音楽といえども結局はソングライティングと的を得たサウンド・デザインにかかっているということだ。とくにどうということのない他愛のないポップ・ソング。しかしその錬度は恐ろしく高く、時の経過にも十分耐えうる作品である。これまでのイメージをするりと脱却した彼ら。もうどこへでも行けそうである。

 

Track List:
1. Junk Of The Heart (Happy)
2. How’d You Like That
4. Taking Pictures Of You
5. F**k The World Off
6. Time Above The Earth
7. Runaway
8. Is It Me
9. Killing Me
10. Petulia
11. Eskimo Kiss
12. Mr. Nice Guy

なんと言っても#8。間奏のギターソロがメチャクチャかっこいい。そこから、ラスサビではなく最初のヴァースに戻って盛り上げるところがニクイぜ。このスピード感こそがクークス!!

THE SUN/佐野元春 感想レビュー

THE SUN(2003年)/佐野元春

 

佐野元春は孤高の存在だった。時に抽象的に、時にコラージュのように言葉を並べ、場合によってはスポークン・ワーズ形式で理知的に語るときもあるし、ラップのように語感を強く響かせたりもした。比喩表現をふんだんに散りばめ、押韻を踏み、また聞いたこともないような人名や語彙を盛り込ませながら、聴き手の想像力にさざ波を立てた。ややもすれば聴き手を置いてけぼりにするその態度はアーティストそのものだった。その如何にも意味ありげな言葉や未知の表現に、意味がよく分からないながらも僕はなんとか食らいつこうとした。そしてそこに抗いがたい魅力を感じた。だからライブに行ってたとえそこに佐野がいたとしても、佐野は僕にとってはるか遠い存在だった。

このアルバムが出た2003年、僕は結婚をした。仕事から帰っては時間を見つけて、日に2~3曲づつこのアルバムを聴いていた。当時の僕は仕事から精神的にダメージを受けていた。でも彼女との新しい暮らしに喜びを感じていたし、やがて子供を宿したと聞いてかつてない幸福感を感じていた。そんな色んな日常の感情が激しく揺れ動くなかにこのアルバムはあった。

このアルバムで佐野はいつになく身近な言葉を用いている。時に巧みな比喩表現を用いて心象風景を描いてきたこれまでとは出発点から異なっていた。簡単な、平易なという意味ではなく、生活に根差した身近な言葉。かつての少年少女は大人になった。30年前、街のファンタジーを切り取ったように、今度は地に足の着いた人生を切り取る。アーティストが我々の側に降りてきたとまでは言わないが、佐野のスタンス、視点が大きく変わり始めたアルバムではないだろうか。

佐野はこのアルバムを自身のキャリアと共に成長してきたファンに向けて書いたと言っていた。この時(2003年当時)、30代から40代といった彼、彼女たちは不況の中、上からや下からのプレッシャーの中でしんどい時期を迎えている。そんな彼、彼女たちの物語を書きたいと話していた。その言葉通り、ここには14編の小さな物語がある。どれも生活といううすのろと悪戦苦闘するそう若くない男女の物語。そこには確実に絶望が横たわっている。しかしそれだけではない。見えない何か、それは希望と言ってもいい。明々と照らしているわけではないが、その分確実に存在する光。木漏れ日のような光が差し込んでいる。数十年前に佐野はこう歌った。~いつの日も誰かがきっと遠くから見ていてくれる~(1989年『ジュジュ』)。佐野はここでそれをもう一度高らかに歌っているようだ。何処かで見ていてくれる存在。そして小さくとも確かにそこにある希望。そして僕にとってもこのアルバムは、2003年の景色として冬の日の太陽のように温かく傍にいてくれた。

僕はこのところ、ライブに行くと目の前に佐野がいるという事実にどうしようもなく胸が熱くなる。そりゃ当然今だって遠い存在であることに変わりはない。でも以前のような全く別の世界にいる人、実際に存在しているのかどうかも分からないぐらい遠い存在ということではなくなってきた。確かにそこに佐野元春がいる。そんな風に感じるようになってきたのは、もしかしたらこのアルバムがきっかけだったのかもしれない。

もう一つこのアルバムについて述べておかないといけないことがある。ホーボー・キング・バンド(HKB)について。消化不良にも思えた前作、『Stones & Eggs』の反省もあったのかもしれないが、たっぷりと時間をかけて8年間を共にしたHKBの集大成とも言えるのサウンドを作り上げている。これが本当に素晴らしく、発酵して熟成された蒸留酒のような表情豊かな演奏。もうこれ以上望むべくもないと言ってしまえるほどの素晴らしいサウンドだ。現にHKBとしてはこれ以降オリジナル・アルバムを発表していない。僕は今のアグレッシブなコヨーテ・バンドも大好きだけど、HKBも同じくらい好きだ。最近のビルボード・ライブやセルフ・カバー・アルバム(2011年『月と専制君主』、2018年『自由の岸辺』)では若干のメンバー・チェンジをしたHKBとなっているけど、僕はやはりこの時期まで(1996年『Fruits』~2003年『The Sun』)のHKBが好き。またいつかこの時のメンバーでガッツリとロックンロール・アルバムを作ってくれたら嬉しい。

自身のレーベル、デイジー・ミュージックからの最初のアルバムであり、HKBとの蜜月が生んだ最良の作品。今思えば、終わりの始まりのようなアルバムだ。佐野にとって特別なアルバムであるように、僕にとっても思い出深いとても大切なアルバム。

 

Track List:
1. 月夜を往け
2. 最後の1ピース
3. 恵みの雨
4. 希望
5. 地図のない旅
6. 観覧車の夜
7. 愛しい我が家
8. 君の魂 大事な魂
9. 遠い声
10. Leyna
11. 明日を生きよう
12. DIG
13. 国のための準備
14. 太陽

Where’d Your Weekend Go/The Mowgli’s 感想レビュー

洋楽レビュー:

『Where’d Your Weekend Go』(2016)The Mowgli’s
(ウェアード・ユア・ウィークエンド・ゴー/ザ・モーグリス)

 

2ndがピンと来なかったからスルーしたので、今回もあまり期待はしていなかったんだけど、聴いてびっくり、スゴクいい感じになっていた。流石に1stのあの感じは1stならではというか、あまり深く考え無さそうなこのバンドでさえやっぱ2枚目ともなるとトーン・ダウンしてしまうのね、なんて思っていたのだが、今回は迷いが無いというか、彼らの持つ陽性が素直に表れていてとても気持ちのいい作品だ。やっぱり身も蓋もなく明るいのがよい。

嬉しいのは同じ陽性のポップネスといえど、今回は1stの時の凸凹した勢いというものではなく、より音楽としてしっかりしてきたというか、ちゃんと成長の跡が窺えるという点だ。それも単に落ち着いてしまったというのではなくて、鮮度が失われずにシェイプ・アップされているという印象。インナー・スリーブを見ると人数も減っているようだけど、それがいい方向に出ていたのか、相変わらず大らかにユニゾンで突っ走るところもあるけれど、適材適所というか、それぞれに明確な理由があるというのが今回受けるまとまりの良さに繋がっているのではないか。1stのインディーズっぽいとっ散らかった感もそれはそれで楽しくて好きなんだけど、これはこれで進化と言っていい。僕はこっちの方が好きかも。

そういう意味じゃ音楽的にも豊かになって表現に幅が出てきたし、例えばキーボードの扱いなんかも今までになかった類のもので、ともすれば明るいだけのポップ・ソングになりがちなところに程よい陰影を与えている。地に足の着いた本当の意味でのポップ・ソングになっているのではないだろうか。アルバム1枚30分と少しという潔さもいいし、現時点での彼らのベストと言っていいだろう。こういうのを作っちゃうと次は何でも出来る。

 

1. So what
2. Spacin Out
3. Bad Thing
4. Spiderweb
5. Automatic
6. Alone Sometimes
7. Arms & Legs
8. Freakin’ Me Out
9. Monster
10. Last Forever
11. Open Energy

#9が耳に付いちゃって離れない(笑)。

「ちびまる子ちゃん」の思い出

その他雑感:

「ちびまる子ちゃん」の思い出

 

高1のある日、友達が学校に「ちびまる子ちゃん」の単行本を持ってきて熱心に薦めてくれた。最初はなんだそれ、小女マンガじゃねぇかってことで無下に断っていたんだけど、パラパラと読んでるとハマってしまって、そのうち皆で回し読みするようになって、気が付けば僕たちの周りではちょっとした「ちびまる子ちゃん」ブームが起きていた。程なくテレビアニメも始まって日本中が「ちびまる子ちゃん」ブームになるんだけど、その数か月前から実は僕たちはちゃんと読んでいたのです(笑)。

僕は絵を描くのが好きだったから、教室の後ろの黒板に、漫画のキャラを描いたり、先生の似顔絵を描いたりして遊んでいたんだけど、そのうちまるちゃんとか丸尾君とか花輪君とかもしょっちゅう黒板に描くようになっていた。また、母がサティでパートをしていたのでPOPを頼まれてアンパンマンとかそんな絵を何度か描いたことがあったけど、まるちゃんの絵を描いたこともあった。まるちゃんを描くのにはちょっとしたコツがあって、輪郭の延長線とか考えず意外と髪の毛ぺっちゃんこにして描いた方が上手く描けた気がするけど、でもやっぱりそれはそれっぽいニセモノでさくらももこさんの描いたまるちゃんほどかわいくはならなかった(笑)。

最近つい考えてしまうことがあって、絵描きはなんで絵を描くんだろうとか、作家はなんで文章を書くんだろうとか、音楽家はなんで音楽を作るんだろうとかまぁそんなようなこと。ただ生活のために描いてる訳じゃなさそうだし。吉増剛造さんはなんで詩を書いてるんだろう?

僕は時折美術館に足を運ぶんだけど、美術館に行くといいことがあって、それはそうした疑問が少し晴れたような気がすること。何か少しだけ分かりあえたような気になれる。まぁそんなことはまず無いんだけど、勘違いでもそんな気分になれるから今のところ僕はそれはそれでよしとしています(笑)。

さくらさん、まるちゃんってさくらさんのことですよね。だから多分、皆もさくらさんのこと友達のように身近に感じていると思います。僕も自慢じゃないですが、なんせ高1の時から知ってますから(笑)、さくらさんには何年にかに1度会う親戚の人ぐらいの親近感を持ってます。さくらさんはなんで描いてたんですか?さくらさんはまるちゃんだから、どーせ「メンドクサイな~も~」とか言いながら、「あっ、そうだ」とか言ってくだらないこと思い付いてニヤニヤしながら、周りの人に「あんた、何ニヤニヤしてんの」とか言われながら描いてたんでしょ。

サマーソニック2018 大阪 2018年8月18日 感想 ~ベック編~

サマーソニック:

サマーソニック2018 大阪 2018年8月18日 感想 ~ベック編~

 

チャンスさんの後は同じオーシャン・ステージで行われるこの日のヘッドライナー、ベックさん待ち。ということでそのまま待機です。人がチラホラはけて更に前方へ行けました。こんな間近でベックさんを観れるなんてサマソニならではやね。ステージ上ではシンプルなチャンスさんとは打って変わって色々運び込まれとります。ほぼ定刻通りにベックさん始めバンド・メンバーが登場!さっすが~、大声援ッス!

うわ~、ベックさんや~、ほっそ~、顔ちっちゃ~、オッシャレ~、貴族みたい~、てことで気品に溢れております。もうベック王子やね。始まりは『デビルズ・ヘアカット』。イントロからしてカッコよすぎるぞ!ていうかサウンドがいい!メチャクチャいい!カラーズ・ツアーのベック・バンドがいいってのは何となく聞いていたけど、塊としてガッと来る感じといい、それでいてちゃんとそれぞれの楽器が聴こえてくるところといい、生で聴くとホントびっくり。メチャクチャカッコイイじゃないですか!CDで聴くのとは全然違う重厚な『デビルズ・ヘアカット』。痺れましたね。

続いて印象的なイントロが。ギャ~、2曲目で『ルーザー』や~。さっき観たチャンスさんのフローもカッコよかったけど、ベックさんのラップもすげーカッコいい。チャンスさんとはまた違うクールさで優雅っす。こりゃもうベック・ザ・ラッパーやね。うわ、言うてもうた…。そうそうっ、勿論サビの「アイムルザーベイビ~、ソ、ホワイドンチュキルミ~」は皆で合唱しましたで!

『ミックスド・ビジネス』もよかったな~。「take a little bit higher」って煽りがまた最高!この曲もコーラスの「All right / Turn it up now」で皆合唱。しかしまあ皆よく覚えてるよな~。みんなのベックさんが好きなんやね。周りを見渡すと流石に年齢層は高め。それに女子率高っ!僕の周りを見た限りでは女子の方がかなり多かった。流石ベック王子!

それにしてもベックさんの曲って皆で歌えるコーラスがいっぱい。オープニングのサビだってそうだし、この次の『ワゥ』だってズバリそのまま「わ~」って言うし、「ナーナー、ナナナナナー」とか「ホェアイッツアッ!」とか。なんかそういうのも楽しい要因なんやろね。ちゅうかベックさんそういう曲揃えたん?

ステージ上にはひな壇が二つあって、その真ん中が通路みたいになっている。ギター持ちかえたり、ジャケット着替えたりする時はそこにスッて入ってまた出てくるみたいな感じでそれがまた優雅なベックさんらしくて良かったな。そういや途中でジャケット脱いで、暑いからもう着ないのかなと思ったら、また着るみたいな場面がありましたけど、あれは地元関西人なら「ジャケットまた着るんかい!」って心の中で突っ込んでいたはず(笑)。

ちなみにこの日はジャケットネタ満載で、今度こそジャケット脱いで真ん中の通路の奥に入って行ったかと思うと、今度は白のジャケットに着替えて登場!とか、ジャケットも途中で着たり脱いだりするんだけど、脱ぐ時に袖が引っかかって脱げなくなって、そこもブンブン振り回して笑いに変えるっていうのがあったり。そういう立ち居振舞いも、あ~ベックさんやねぇって。気が付けば何につけ、あ~ベックさんやねぇみたいになってました(笑)。

しかしまあこのバンドは凄いね。最後の『ホェアー・イッツ・アット』では間にメンバー紹介を挟むんだけど、これがまたすんごくてここだけでも一大エンターテイメント!往年の名曲をそれぞれがリードしていくのがメチャクチャカッコいいのだ。ひとりひとり挙げていきゃキリないけど、ほんと凄かった!でまた演奏も凄いんだけど、ここのメンバーはパフォーマンスにも秀でていて、それぞれがエンターテイナー。それに何より楽しそう!しょっちゅう笑ってるし、逆に笑ってないのはベックさんぐらいで(笑)、観客の僕らよりも思いっきり楽しんでる。そんなの見せられたら、そりゃこっちも俄然盛り上がるでしょう。

とにかく大変な事とかしんどい事はとりあえず横に置いといて、今日は皆で楽しもうよっていう巨大なパワーに満ち溢れてました。世相がこんなだからかどうかは分からないけど、今年のサマソニはずっとポジティブな空気というか、おおらかな雰囲気で進んでいったような気がして、そしてベックさんがその集大成で、舞洲会場に花火はないけど、最後にバーッ!てデカイ打ち上げ花火が上がったような最高に楽しい夜でした。

カラーズ・ツアーが終わった後、ベックさんはどんな事を歌っていくのか分からないけど、今のベックさんのメッセージは十分に受け取れたような気がします。あー、ベックさん最高!ていうか、チャンスさん、ベックさんを立て続けに観れるなんてホント夢のよう。Such a beautiful day!

 

Beck Setlist:
1. Devils Haircut
2. Loser
3. The New Pollution
4. Mixed Bizness
5. Wow
6. Colors
7. Think I’m in Love
8. Sexx Laws
9. Qué Onda Güero
10. l’m So Free
11. Dreams
12. Girl
13. Up All Night
14. E-Pro
15. Where It’s At

 

サマーソニック2018 大阪 2018年8月18日 感想 ~チャンス・ザ・ラッパー編~

サマーソニック:

サマーソニック2018 大阪 2018年8月18日 感想 ~チャンス・ザ・ラッパー編~

 

ホワイト・マッシブはモンキー・マジックに続いてサンボマスター。サンボは観たかったんだけど、ガチで観てるとオーシャン・ステージのチャンス・ザ・ラッパーに間に合わない。てことで少し離れたところで3曲だけ聴いて、オーシャンへ移動することにしました。でも遠くから聴いててもサンボは最高やね。ずっと叫んでずっと歌ってる。以前テレビで山口が「俺たちが皆の闇を食いつくしてやる」って言ってたけど、本気なんだもんなぁ。あまりの熱量に通りすがりの人も、なんだなんだって振り返ってたもんね(笑)。

で後ろ髪を引かれつつもメイン・ステージであるオーシャンへ。すでに舞台はセッティング済み。サンボに目を奪われていたから結構ギリギリだったけど、思ったほど混雑していなくて結構前へ行けました。う~、ドキドキするぜ~。同じ楽しみと言えども、ウォーク・ザ・ムーンなんかは素直にただ楽しみなだけなんだけど、ホントに好きな場合ってなんかドキドキしてくる。待ち遠しいんだけど、緊張してドキドキしてしまう。でもそういう気持ちがあるうちはオレも大丈夫かな(笑)。

なんて思っていると、YouTubeで何度も見たチャンスさんが転がるように飛び跳ねて来た!本物だ!スゲーッ!本物のチャンス・ザ・ラッパーだ!もうそれだけでしばらく感動~。いつもの3のキャップに赤のヘンリーネックTシャツ。Championのオーバーオールジャージがめっちゃかわいいぞ!

編成はキーボードの前に1人とクワイアが4名。トランペット1名にドラム1名の布陣。嬉しいね、ちゃんとメンバー揃えて来てくれてる。ドラムがプログラミングじゃなく生なものポイントやね。ライブではこれ結構重要やからね。始まりは『ミックステープ』。おぉ、チャンスさんの生ラップにまた感動(笑)。続いて『ブレッシングス』。やったー、コーラス一緒に出来たぜ!次は『エンジェル』。『エンジェル』は短かったぞ。ショートバージョンかな。中盤は数日前に公開した新曲群を早速披露。念のため予習しといて大正解だ。チャンスさん、しっかり煽ってゲストも登場したけど僕は???でした(笑)。

後半は再び『カラリング・ブック』から。『オール・ウィ・ガット』に『ノー・プロブレム』に『オール・ナイト』(←ノックスでも聴いたから、この日2回目!)のメドレー。ここは思いっ切り盛り上がったぞ(笑)。そろそろ時間かなと思ったら『サマー・フレンズ』。リリックは切ないけど、真夏のこの時間帯に聴くとやっぱ染み入りますな。そう、この次の『セイム・ドラッグス』の前だったか、僕ら観客の後ろに真っ赤な夕陽が沈みかけていてステージのチャンスさんが「後ろ見て」って。で振り返ったらホントに綺麗で。ここは舞洲だから僕たちの後ろはもう海だけ。視界を遮るものは何にもなくて大阪湾に真っ赤な夕陽が浮かんでいる…。その時のチャンスさんがまたいい表情してるんだ。もう全てオーケーだよって。何なんだよ、この肯定感はって(笑)。な訳で『セイム・ドラッグス』の最後のコーラス、「Don’t you color out / Don’t you bleed on out / Stay in the line, stay in the line / Dandelion」のところはかなりグッときました。

それにしてもチャンスさんよう喋りますな。もう喋り過ぎっ!何言ってるか分からん(笑)!でも何ていうのかな、この人はメッセージに溢れている人で言いたいことが山にように溢れてきて、だからいやいやチャンスさん、違う言語圏でそんな喋ってもよう分からんへんよってことではなくって、この人の態度とか表情で気持ちは伝わるし、そりゃ正確には分からないけどやっぱこの人は本気なんだなって。

でそんなこと言いつつも実は途中、僕自身も戸惑っていたところはあって、それはこのステージで起きていることが今まで経験したことがない感覚だったからで、一緒に行ってた友達が言ってたんだけど、これはゴスペルなんだと。「Hands up!」なんてのも要はそういうことで、通常のライブで手を挙げるのとはちょっとニュアンスが違うんだな。僕は教会には行ったことはないけど、そこには神父の話や聖歌や場合によったらゴスペルもあるし、別にフェスとか特別な事じゃなく普段の営みとしてそこにある。勿論この日はライブだからとことん楽しいもので教会とは全く異なるんだけど、単に感動して胸が熱くなるっていうのとは少し違う何かが確かにそこにはあった。勿論チャンスさんだって聖者ではないし、これだけの事をした人だからしたたかなところもあるだろうし、人を傷付けることもあっただろうし、そこはそりゃ当然なことなんだけど、とにかく人に何て言われようがここまで圧倒的なポジティビティや圧倒的な肯定感でやり遂げてきた。その真っ直ぐさを臆面のなさを多分僕はどう処理したらいいのか分からなかったんだな。そんな中、あの夕陽や『セイム・ドラッグス』の最後のコーラスでグッと来たのはもしかしたら僕の中でもある意味一つの了解があったからなのかもしれない。

それにしてもホント、チャンスさんはよく喋った。で喋りながら笑ってはる。気持ちは伝わるけど、やっぱ何言ってたのか知りたいね。誰かチャンスさんの言った事、全部訳してくれないかな(笑)。

しかしまぁ、魅力的な人やね。あんだけ英語で喋っときながら、観客がコーラスしたのが嬉しかったのか、跳び跳ねるように喜ぶんやもん。なんやその天然さは!めっちゃかわいいっちゅうねん!

最後は『ブレッシングス(リプリーズ)』。「あーゆーれーでぃ、ふぉーゆぉーぶれっしん、あゆーれでぃ、ふぉーゆぉーみりこー」のリフレイン。チャンスさんは言ってた。日本での初ライブ、導かれてここに来たって。そうやね、日本での初ライブやもんね。そんな日にここに居れてホント幸せっす!そういやチャンスさん、また来るって言ってたぞ!

 

Chance The Rapper  Setlist:
1. Mixtape
2. Blessings
3. Angels
4. Favorite Song
5. Cocoa Butter Kisses
6. Ultralight Beam (Kanye West cover)
7. 65th & Ingleside
8. Work Out
9. What’s the hook?
10. I’m the One (DJ Khaled cover)
11. All We Got
12. No Problem
13. All Night
14. Summer Friends
15. Same Drugs
16. Blessings (Reprise)

 

以下、ベック編へ続く。。。

サマーソニック2018 大阪 2018年8月18日 ~前半の感想~

サマーソニック:

サマーソニック2018 大阪 2018年8月18日 ~前半の感想~

 

今年も行って参りましたサマーソニック。いや~、やっぱ楽しいっすね~。素晴らしい陽気の中、野外で一日中音楽に浸れるってのは何事にも代えがたい喜びです!今年はラインナップが充実していたから余計に満足度は高かった!ていうか毎年終わった直後はそんな事言ってるような気がするな(笑)。

僕が行ったのは18日(土)、ベックさんの日です。そりゃあもう翌日のノエルも行きたかったのですが、なかなかそうはね。ただ1日だけと言ってもベックにチャンス・ザ・ラッパーですから!こうやって書いてるだけでも眩暈がするようなラインナップですよこれは。後で振り返った時に2018年の大阪初日のサマソニに僕は居ました!って言えるぐらいの本当に貴重な体験だったと思います。

先ず目指したのはマウンテン・ステージ。初っ端はノックス・フォーチュン。チャンスさんの曲に参加しているってことで見に行ったのですが、すっごく良かったです。もう自由で開放的で、チャンスさんDNAが見事に流れているっていうか、せっかくなんだから楽しもうよっていう清々しさを感じました。まだかなり若いと思いますが、パフォーマンスも素晴らしかった。音楽的にはラップもあるしロックもあるし何でも来いって感じで、そういうジャンルに無頓着なところもいいやね。あとドラムが日本語を話せる人で、「アツイデスネ」とか「ミナサン、ロックハスキデスカ?」とか妙な日本語を話すのが可笑しかった。そういうのも含めて本当に楽しいライブでした。

その後は一応お昼ってことで腹ごしらえ。そうなんです。フェスではタイムテーブルを見ながら如何に要領よく食事を摂るかってのも重要なのです。あー、次観たいヤツやのにお腹減ったーとか、トイレ行きたなってきたわーってならないようにちゃんとスケジュール管理をしておくことも大切です。あと休養も。今年は予想に反して丁度良い暑さでしたが、それでも真夏ですから。休む時は休む。これもちろん大事です。

腹ごしらえの後はウォーク・ザ・ムーンを観に再びマウンテンへ。その前にENDRECHERIの最後の方を少し観ました。ENDRECHERIって誰?ってことですね、はい。僕も直前まで知りませんでしたが、キンキ・キッズの堂本剛のソロ・プロジェクトのことです。てことで流石の集客力やね。僕はスタンドでのんびり観ていましたがスタンドも結構な人だしアリーナは満員でした。

そして次はいよいよ最初のお目当て、ウォーク・ザ・ムーン。そのままアリーナに降りてがっつり観てきました。もう滅茶苦茶楽しかったです。このバンドもとにかく楽しもうよってバンドで、ボーカリストは上半身裸で体をくねらせながら踊ってるし、ギタリストも目立ちたがりでじゃんじゃん煽ってました(笑)。一応シンセ・ポップってことになるんだろうけど、彼らもそんなこといちいち気にしてないっていうか、場合によっては太鼓を3人で叩いてたり、ハードロック並みにギターをかき鳴らしたり、時と場合に応じて臨機応変に盛り上げていく。バンドの演奏が引き締まっていてホントにいいライブ・バンドやね。

必殺の『シャット・アップ・アンド・ダンス』も、振り付けのあった『タイトロープ』も、これも鉄板の『アンナ・サン』も滅茶苦茶盛り上がった。時間は14時ぐらいだったかな。真夏の一番暑い時間帯にこれ程似合うバンドはなかなかないでしょう。いや~、オレ、サマソニ来たな~って感じを思いっ切り味わえました(笑)。

ところでこのマウンテン・ステージ。休むにはもってこいです。野球場ですから通路は影になってて風通しがいいし、トイレも沢山あるし、自販機も売り切れてない!そうです、確かに室内のソニック・ステージはクーラーが効いていますが、涼みに来た人でごった返してるし、自販機はすぐ売り切れになる。だから皆さん、ひと息入れるなら是非マウンテンへどうぞ。

さて、その後はホワイト・マッシブへ。ここも野外ですけど、テントが張って影があるから心地よい。芝生で小さな椅子も用意されてるから、のんびり聴くにはぴったり。僕はここで足を伸ばしながらモンキー・マジックをゆらゆら聴いていました。このバンドも夏やね。アコースティックなサウンドに流暢な英語詞もあってまるでハワイにでもいるような気分。時々グイッとスピード上げてラップするところもあって、爽やかだけど思わず腰が上がってしまうようなスリリングなバンドでした。結構好きかも。

 

以下、チャンス・ザ・ラッパー編へ続く。。。

詩の状態

ポエトリー:

『詩の状態』

 

詩はおそらく液体 もしくは気体 固体となっては届かない
例えば液体のようにゆっくりと 地面や皮膚に吸い込まれていきます
例えば気体のようにぱっと霧散する 大気中に紛れてしまいます
詩はそのままの形では届かない

指の間をすり抜けて わずか1ミクロン
その届かないところを聞き手は補完します
経験や理知や想像力で
詩はそのままの形では届かない
だからいつしか聞き手のものになる

 

嬉しい時に掛ける言葉はたくさんあるからいい
おめでとうとか よかったねとか ありがとうとか
こういう時の言葉はおそらく固体 言葉のかたまりを笑って相手に手渡しできる

では悲しい時は?
何も言わずただそばにいてあげる それがいいのだとは思います
いいのだとは思うけど 少しでも元気になって欲しいから ついとんちんかんなことを言ってしまう
何も言わずただそばにいることが 実は一番難しいことなのです

悲しい時 一番役に立つのは詩かもしれません
詩は余計なことは言いません(多分)
どちらかというと少し足りないくらいです(多分)

それに
なにしろ液体ですから あなたのもとに辿り着くころには流れ落ちてしまいます
なにしろ気体ですから あなたのもとに辿り着くころには流れ去ってしまいます
届くのはほんの1ミクロン
1ミクロンだからいいのだと思います

なぜなら悲しみはその人だけのものなのですから
人は1ミクロンを頼りに自ら処方してゆくより他はないのです
固体にしてハイって渡しても
それはやっぱりとんちんかんになってしまうのです

詩を道具などと言うと怒られるかもしれませんが 僕の詩は誰かの道具になって欲しいと思います
僕の詩の僅か1ミクロンが どこか知らない誰かが作る処方箋の手助けとなってくれたら
だから僕は固体ではなく うすぼんやりとした言葉を今日も紡ぎます
今日も空に投げ出して 道端にばらまくのです 

 

2017年10月