洋楽レビュー:
『Bankrupt!』(2013)Phoenix
(バンクラプト!/フェニックス)
フェニックスの5枚目。グラミーを受賞し世界的ブレイクを果たした『Wolfgang Amadeus Phoenix』(2010年)を受けてのアルバムだ。『Wolfgank~』ではついに鉱脈を発見したかのようなフェニックス独自のサウンドを展開。この路線でもう一発行くのかな、ていうかもう一発行って欲しいな、なんていうこちらの甘~い期待を覆すかのように全く違う角度で攻めてきました。てことでさっすがフェニックス、と思いきや、おフランスのマイペースなポップ職人が打ち出したのはなんとオリエンタル。オリエンタルといっても日本や中国ではございませんでぇ!舞台は香港HongKongだ!
オープニングを飾るのは『エンターテインメント』。春節祭でも始まったかのような派手なイントロで皆の頭の上に?が浮かんだところですかさず『Wolfgang~』的なドラムが一気になだれ込んでくるこの過剰さ。こちらの期待を見事に見透かすこのセンスは流石です。ちなみにライブでこの曲がかかる時のテンションは凄いっす。
2曲目『ザ・リアル・シング』、3曲目『S.O.S.イン・ベル・エアー』と続く辺りでこのアルバムの概要は見えてくる。ぎらぎらシンセ全開で騒がしいったらありゃしない。4曲目の『トライング・トゥ・ビー・クール』はそれに加えてオリエンタルな雰囲気満載で気分はもう80年代の香港。そやね、ジャッキー・チェンとかそーいうのではなく、ハリウッド映画の香港とでも言おうか。ほら、80年代の日本を舞台にしたハリウッド映画って唐突にニンジャが出てきたり、やたら派手なメイクのゲイシャが出てきたりってのがあるけどそういう西洋人がイメージするオリエンタルっていうのかな。香港じゃなくてHongKongってことです。
でそれをオシャレに切り取ってみせるのがフェニックスならではというか、でも普通香港はオシャレになんないでしょーよ?それがオシャレになっちゃうんだから参りました。この辺りのハンドル捌きはホントにお見事です。
世間の流行廃りに頓着なく好きな事をやって、しかもそいつがセンスいいんだから文句のつけようがない。しかしそう思えるのも元々の曲がいいから。今回も相変わらずいいメロディを書いている。きっとソングライティングがずば抜けているから何をやってもOKなんだろね。ご機嫌な曲もいいんだけど、#7『クロロフォルム』とか#9『ブルジョワ』といったスロー・ソングの組み立て方なんてホントに上手い。
でもっていつもと変わらないトーマの甘い声があるんだから、アレンジがどう変わろうと、やっぱりどこをどう切ってもフェニックスなアルバムである。
1. Entertainment
2. The Real Thing
3. S.O.S. in Bel Air
4. Trying to Be Cool
5. Bankrupt!
6. Drakkar Noir
7. Chloroform
8. Don’t
9. Bourgeois
10.Oblique City
フェニックス史上最も派手なアルバムだ!