洋楽レビュー:
『Madra』(2024年)New Dad
(マドラ/ニュー・ダッド)
アイルランドのギター・バンドのデビュー作。10年代なんてギター・バンドの噂などろくに聞かなかったのに、ここ数年で次々と新しいバンドの名前を聞くようになった。これはやっぱり今流行っているものだけを聴くということではなく、サブスクにより時系列があまり関係なくなったというのもあるだろうし、音楽に限らず物事はどちらかに偏っているように見えて、いずれは行ったり来たりするということなのかもしれない。それにしても昨年あたりから素敵な女性ギター・バンドが本たくさん出てくる。
それはさておき何かひっかかるバンドではある。シューゲイズかと思えばそうとは言い切れないし、ドリーム・ポップという雰囲気でもない。そう思いながら何回か聴いているとこれは歌のアルバムなのだろうということに気付いてきた。サウンド的に何かに特化するのではなく、あくまでも歌に寄り添うサウンド。しかし歌を前面にださないそこはかとない歌心。つまりどっちかって言うと、シューゲイズよりフォークロックの感触。ってことで僕は引っ掛かるのだろう。
つい特定のジャンルに引き寄せてしまいたいこちらの気持ちをはぐらかすようなどっちつかずのサウンドで、浮遊感というより寄る辺なさを歌う。今はやりのサッド・ソングかと思いきやそうでもないユーモアの残骸。物事に言い切れることはないんだよということを初めから分かっているかのよう。とか言いながら、突然#5『In My Head』とか#8『Dream Of Me』とか#9『Nigntmares』みたいなキャッチーなポップ・ソングが突然やって来る。確かに言えることは、これはやっぱり2024年の音楽ということだけだ。