「没後50年 鏑木清方展」感想

アート・シーン:
 
「没後50年 鏑木清方展」京都国立近代美術館
 
 
日本画の美人画はあまり興味はなかったのですが、Eテレ「日曜美術館」で見た鏑木清方の作品がとても美しく、これは見ておきたいなと小雨まじりの京都へ出掛けました。あいにくの天気だったので、行く日を変えようかなとも思ったのですが、雨の方が人も少ないだろうと出発。これが大正解で、人気の展覧会にもかかわらず、土曜日ではありましたけど程よい人数でゆっくり鑑賞することが出来ました。
 
展覧会は目玉の三部作「浜町河岸」「築地明石町」「新富町」をクライマックスに清方のキャリアを順を追って辿っていく構成となっています。元々は挿絵画家として出発したということで、清方の絵は物語の一場面、という印象を受けますね。絵の背景に何かしらの物語があって、絵の登場人物の表情や体の動きなどを通して、こちらの想像力をかき立てる。僕の場合は絵そのものにどうこうというよりは、肩の入り方とか腰の浮かせ方とか、そういう微妙な体全体を通して出てくる表情に強く引きつけられました。全然関係ないかもしれませんが、この辺りは日本の漫画表現にも繋がる、西洋とは異なる日本人独特の人物の描き方というのがあるのかもしれないなとも思いました。
 
あと写真やネットでは分かりにくいところですが、実物を間近に見ると非常に細かい!髪の毛1本1本や肌の微妙な色合いの変化、睫毛、ものすごく繊細な表現がなされていることに気づきます。あと明治時代の江戸情緒を主題に描いていることが多いのですが、当時の風俗、とくに女性の着物の柄がすごく魅力的で非常にお洒落なんですね。柄もそうですけど、色見のバランスとかも、清方自身も凄くお洒落な人だったんじゃないかと思わせる配色の妙がありました。
 
でやっぱり目玉の三部作ですよね。特に「築地明石町」。女性の瞼の上に薄っすら線が入っているんですね。人によっては気に留めない箇所かもしれませんが、この線があると無いでは大違い。僕はこの薄っすらと入った線を見たいがためにこの展覧会へ行ったと言っても過言ではありません(笑)。
 
この三部作の下絵も展示されていたのですが、この下絵を見ると清方のデッサン力の凄さが分かりますね。鉛筆で描いて消しゴムで消すみたいなことは出来ませんから、ほぼ一発勝負で筆を載せていく、しかも着物を着ているのでやっぱり骨格を取りにくいんですね。それも大きなサイズで描いていく。これは相当難しいと思います。
 
ということで、漫画やイラストを描いている人が見に行ったらとても得るところがあるんじゃないでしょうか。それに江戸の庶民の風俗であったり、清方独自の画風がありますから、あまり日本画に興味がないという人も楽しめる展覧会だと思いました。

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