竜馬がゆく/司馬遼太郎 感想

ブック・レビュー:

『竜馬がゆく』 司馬遼太郎

 

『竜馬がゆく』を読んだのは大学生の頃。大学の購買で買って読み始めたんだけど、当時は読書の習慣なんて丸っきりなかったからすぐに挫折(笑)。その後何のきっかけで再び読み始めたのかはとっくに忘れたけど、とにかく僕にとっては沢木耕太郎『深夜特急』とともに、読書をするきっかけになった、読書の面白さを知るきっかけとなった思い出深~い小説です。

でやっぱり竜馬さんはスーパーヒーローなんですね。ケンカは強いわ、でも基本は戦わない人で、優しくって愛嬌あるからモテるし、普段は軽いけどいざとなりゃ凄みがあって、頭もバチバチっと回転して誰にも負けないし、ていうか自分も含めなるべく勝者を作らない。そりゃあもう男なら絶対憬れるような要素をこれでもかってぐらいに持っている人で、勿論これは小説だし、司馬さんの創作なんだろうけど、やっぱ生き生きとしているから、生身の人間みたいに思っちゃう。だから幾多の大学生同様、当時僕は京都に住んでいたから、霊山へお墓参りに行ったり、寺田屋へ行ったり、まあ単純なもんですな(笑)。とにかく竜馬、竜馬って憬れたもんです。

ところがですねぇ、これがだんだんと覚めてくるわけです。現実を見始めるというか、余りにもスーパーヒーロー過ぎて、やっぱ遠すぎるんですね。ちょっと違うんじゃないかなって。そこで出会ったのが司馬さんのもう一つの幕末人気作、『燃えよ剣』でございます。

ここに出てくる土方歳三って人が、この人もめっぽう強くてカッコいいんですが、とにかく一途なんです。新鮮組ですから時代と逆行しているんですけど、それでも親友の近藤勇と共に信じる道を突き進む。けどだんだんと追い詰められていく。それでも近藤勇と袂を分かってまで抵抗し続ける。ま、滅びの美学ってんですか。やっぱこれもねぇ、暇を持て余しているバカな大学生にはグッとくるわけですよ(笑)。そこでやっぱオレは竜馬じゃねえ、土方さんだって思い始める。これまた単純な話やね(笑)。

つーことでしばらくは土方のファンになって、そんでもってそっち関係(←幕府側ってことね)の本を読み漁る。例えば池波正太郎の『幕末遊撃隊』。ここに出てくる主人公の伊庭八郎がまた涙ちょちょぎれるぐらいカッコいいんだ。あと北方謙三の『草莽枯れ行く』とか、これもよかったな~。まぁそういう時勢や損得に関係なく、己の信じた道を突き進む男たちに憬れて、その代表として土方さんがいたってことでしょうか。

ま、でもこれも良し悪しでね。盲目的に信じた道を突き進むってのはそりゃ、大学生ぐらいの年代にゃひとつの憧れにもなるんだろうけど、実際にはね、最初の信念に殉じていくってんじゃなく、一時の情緒に燃え上ってしまうってんじゃなく、自分で考えてこれ違うなって思ったらちゃんと軌道修正して、人に変節したなんて言われようと自分の中で理屈の通った考えを持っていくっていうことに当然ながら気持ちは傾いていくわけで、そうなりゃやっぱ竜馬さんなんです(笑)。

確かに表面的なスーパーヒーロー感というか全能感はありますけど、それはそれとしてね、もっと根本のところというか、自分で考えて、皆の意見を尊重して、より良い方向へ向いていくにはどうしたらいいかっていうことを、これでいいってことじゃなく絶えず考えていくっていうのかな。土方さん的に言うと、そんなこと分かってんだ、それでもオレはこっちに行くんだってことになるんだろうけど、それはやっぱりネガティブっていうか自分も含めて皆がしんどくなるし、気持ちいこと言っちゃうけど、やっぱ一人では生きていけないわけだから、誰かがいて自分がいるっていう、そういう当たり前の営みの中であーでもないこーでもないって思い悩んで軌道修正していく方が自然なんじゃないかって。竜馬さんもきっとそっちの人だったんじゃねぇかなって。

だからまた変わるかもしれないけど(笑)、今は竜馬さんみたいにあっちこっちぶつかりながら自分の考えに固執しない、メンツとかプライドなんか放っぽって、素直に「あっそうか」って簡単に心変わり出来るように、そんなんでいれたらいいなって思うのです。

大学の頃に司馬遼太郎の作品に出会って、そっから夢中になって全作品とは言えないまでもかなりの数を読みまくって、中には何回も読み返したのもあったりして、『竜馬がゆく』も文庫本で全8巻もあるのに覚えているだけで3回は読み返してるし、なんだかんだいって僕は竜馬さんが好きなんだろな~と。家族を持って、いい年になって、今もう一度読み返してみたら、また新しい発見があると思うけど、読みたい本が他に山ほどあるからねぇ。いつになることやら(笑)。

2 thoughts on “竜馬がゆく/司馬遼太郎 感想”

  1. 司馬先生には、非常にお世話になりましたね。先生あるある、余談が多い。時には余談しか残ってないという事も?
    龍馬もいいが、児玉源太郎と乃木希典とか、石田三成と島左近とか人に信を置くって感じがなんとまいかん。結果じゃない過程というか縁というか言葉にならん何かに憧れますなぁ。

    1. いつもコメントありがとう!

      そやね、司馬遼太郎はまさしく社会科の先生。
      いろいろ教わりました。
      余談ながら、現在放送中の「100分で名著」のテーマは平家物語。ポイントはキャラ付けだそうです。
      司馬先生もキャラ付けがお得意でした(笑)

Leave a Reply

Your email address will not be published. Required fields are marked *

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)