映画『金子文子と朴烈』 感想レビュー その①

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映画『金子文子と朴烈』 (2019年) 感想レビュー その①

 

僕は下手な詩を書いているが、そのひとつに「アメリカ人のことを知りたければアメリカ人の詩を読めばいい/中国人のことを知りたければ中国人の詩を読めばいい/韓国人のことを知りたければ韓国人の詩を読めばいい」というのがある。幼稚な詩だけど、発想としてはまぁそんな悪くないんじゃないだろうか。そこで。僕はこの映画を知った。だったらば観に行かなければ。そんな風に思った。

あらすじはざっとこんな感じ。舞台は大正期の東京。親に捨てられ悲惨な環境で育った日本人、金子文子はある日、朝鮮人アナキスト朴烈(パクヨル)の書いた詩「犬コロ」に衝撃を受け、彼に会いに行く。文子は朴烈と会ったその日に一方的に同居すると宣言。二人は仲間と共に「不逞社」を結成し、アナキストとしての活動を始める。しかし程なく関東大震災が発生。混乱に乗じて朝鮮人や社会主義者への虐殺が始まる中、二人も検挙され、言われの無い大逆罪の罪に問われていく。

映画の感想は、、、正直言って疲れた。先ず長い。それからオーバーアクション。ちょっと作り過ぎ(笑)。こういうのもアリなのかもしれないけど、慣れてないもので…。でも映画を観て疲れた本当の理由は他にちゃんとある。脳みそが整理が出来ずに混乱していたからだ。

先ず、朴烈は何をしたかったのか。金子文子は何をしたかったのか。当然映画を観ただけでは明確に分からない。関東大震災で朝鮮人が虐殺されたのは知っていたけど、日本政府が加担していたっていうのも本当なのか?そんなこと初めて聞いた。映画はある意味青春映画であり、強烈な愛の物語であり、当然社会的なメッセージもふんだんに盛り込まれている。だがクドクドと説明しない。特急列車のように物語は過ぎていく。物凄いスピードでエネルギーを放射していく。僕はこの映画に圧倒されていたんだと思う。ちょっと体力不足でした。

そこで映画を観た後の数日間、僕は暇を見て色々と調べ始める。3.1運動とは何か?アナキストとは?関東大震災時の朝鮮人虐殺について。朴烈とは?金子文子とは?そうすると彼らの思想が少しづつ見えてくる。彼らは天皇制を批判する。天皇といえば僕の頭の中は今の天皇だから、彼らの主張は???だらけ。でも落ち着いて考えれば違う。戦前の天皇のことだ。天皇は万世一系の現人神であり、国民はその保護下にいるのだというやつ。今の北朝鮮みたいなもんか。だから当時はそんな天皇思想に対しそんなのおかしいんじゃねぇかっていう日本人は沢山いたし、当然支配されている朝鮮人の朴烈はもっと思ったろうし、最下層で差別を受けて虐げられてきた金子文子はこの不平等な日本の諸悪の根源は天皇だって強く思う。つまり彼らは絶対的な権力に抗うレジスタンスなのだ。

とまぁ僕の方がクドクドと書いてしまったけど、実際「犬コロ」という詩がどんなものか、それを読んでもらうのが一番分かり易いと思うので、下に転載します。

 

 「犬コロ」 朴烈

 私は犬コロでございます
 空を見てほえる
 月を見てほえる
 しがない私は犬コロでございます
 位の高い両班の股から
 熱いものがこぼれ落ちて私の体を濡らせば
 私は彼の足に 勢いよく熱い小便を垂れる
 私は犬コロでございます

 (解説)
 空は当時の日本帝国最高権力の象徴である天皇だ。
 その空を見て吠えることができる犬畜生の勇気に感嘆する。
 位の高い両班が自分に向かって小便を垂れるのならば、
 やられっぱなしでなく彼の足に向って小便を垂れる。
 これは制度的権力に対する真っ向からの挑戦を宣言した言葉だ。

 

上記はネットで見つけました。「金子ふみ子コミュの朴烈の詩“犬コロ”」というタイトル(mixiユーザー 2005年11月22日 15:43)で記載がありました。勝手に転載して申し訳ないです。詩は青年朝鮮という雑誌に載っていたそうです。「犬コロ」。原文は、“ケーセッキ”と言いまして“犬畜生”“F○ck野郎”といった罵り言葉、卑語だそうです。このことも同じ記事に載っていました。

この映画はいわゆる反日映画ではありません。物語にはちゃんとした日本人も数多く登場するし、主役の二人だって英雄として描かれている訳じゃない。映画を観て僕はよーく分かりました。これは自由を求めて戦う若者の強烈な愛の物語です。不公平な世の中で自由を奪われ、犬畜生として扱われた名もない若者たちの反逆の物語です。日本がどうだとか韓国がどうだというのではなく、この映画のテーマはそこにあるのだと思います。

朝鮮人虐殺ということでえぐい場面も出てきます。それは僕たち日本人がやったのです。国が政府が加担をして隠滅しようとした事実です。僕たちは知らないことが多過ぎる。そういう部分に目を向けるきっかけにもなる映画だとも思います。

でも決して堅い映画ではない。ユーモアもところどころ、というかふんだんにあるし、やっぱり主役の二人だけでなく仲間の若者たち皆も生き生きしているから、爽快な映画でもあります。結局そこが一番大事なのかもしれない。

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