Modern Vampires of the City/Vampire Weekend 感想レビュー

洋楽レビュー:

『Modern Vampires of the City』(2013)Vampire Weekend
(モダン・ヴァンパイアズ・オブ・ザ・シティ/ヴァンパイア・ウィークエンド)

 

エズラによるとこのアルバムはアメリカについてのアルバムだそうで、アルバムジャケットもマンハッタン。けれどそのマンハッタンは数十年前のマンハッタンのようで、色もモノクロで雲がちょうどよい具合にかかっているから、それこそ中世のヴァンパイア城のようだ。ヴァンパイア・ウィークエンドの新作がようやく出るってんで久しぶりにこのアルバムを聴き直してみたら、古いアメリカというより古いヨーロッパに近い印象を受けた。

そもそもアメリカはヨーロッパからの移民が多くを占めている訳だから、古いアメリカを描こうとすると古いヨーロッパ的なるというのは当然かもしれないが、つまりそういうところまで意識してヴァンパイア・ウィークエンドはこのアルバムを作ったということだろうか。にしても2019年になってその意味が響いてくるとは。恐るべし、ヴァンパイア・ウィークエンド。

このアルバムはエズラの声から始まるように、彼の声を大々的にフィーチャーしている。実際しているかどうかは分からないが、決して軽くない歌詞が彼の声があることにより、全体としての明るいトーンに繋がっている。やはりエズラの声のアルバムと言っていいだろう。

歌詞は至る所に皮肉っぽいところがあってサリンジャーみたいで僕は好きだけど、多分エズラはインテリだからサリンジャーのようにへこたれない。いや実際には大変な事とか嫌な事ばかりなんだと思うけど、そういうのにマトモにぶつかっていかないというか、インテリだからちょっと経路が普通とは違うんだろう。

やたらインテリって言葉で片付けてしまって申し訳ないけど、ただ不思議とそのインテリが作った音楽が何故か凄く風通しがよくって、それは今回は彼ら流のアメリカのロックということらしいが、多分今までがアフロビートだったり欧米主体の音楽じゃないところを経由してきたからかもしれないし、そういう部分も含め改めてインテリだなって思わざるを得ないけど、やっぱり軽やかなのは面白い。

それに彼の声はやたらめったらよく通るから、ジャケットがモノクロだろうが、歌詞が皮肉めいていようがお構いなしに突き抜けてしまう。陽性だから「Diane Young」(=Dying Youngという意味か?)なんて歌っても全然平気なのだ。実験的で批評的(芸術というものは全てそうかもしれないが)であってもその陽性さは崩さない。要するに、難しい顔をしても何も解決しないということか。

 

Track List:
1. Obvious Bicycle
2. Unbelievers
3. Step
4. Diane Young
5. Don’t Lie
6. Hannah Hunt
7. Everlasting Arms
8. Finger Back
9. Worship You
10. Ya Hey
11. Hudson
12. Young Lion

国内盤ボーナストラック:
13. YA HEY (‘PARANOID STYLES’ MIX)
14. UNBELIEVERS (‘SEEBURG DRUM MACHINE’ MIX)

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