シンクロニシティーン/相対性理論 感想レビュー

邦楽レビュー:

『シンクロニシティーン』(2010)相対性理論

 

ガチャガチャした初期衝動丸出しの1st、気だるい変化球の2ndを経て、バンド全体のクリエイティビティが一気にスパークした印象を受ける3枚目。オープニングのイントロからして明らかに違う。スタイル云々ではなくもう音からして全然。あ、相対性理論、来たな、って感じ。

特に目を引くのがやくしまるのボーカルで、かつてのぶっきらぼうなものから一転、曲調に合わせて表情を変えており、早速1曲目の『シンデレラ』では3パターンの声音を用いている。独特の声だけに結構なインパクト。この覚醒感はなんだろか。

どちらかと言うと故意的に感情を抑えた人工的なトーンだったのが、ここに来て急に魂が宿ったというか、あぁ、生身の女性なんだなと。要するに自覚的になったということか。前作までのボーカル・スタイルはともすればイロモノ的な危うさを孕んでいたので、このアルバムでのボーカリストとして目覚めは大歓迎。やっぱやくしまるさんは放たれるべし。

ソングライティングの冴えも素晴らしく、語呂合わせだとか押韻に重きを置いたリリックへの取り組み方自体はそんなに変わらないのかもしれないが、そこに意味性が加わってきているのは敢えてなのか偶然の産物なのか。どちらにしても曲を書き続けていればこういう時も訪れる、という時が訪れたかのような神がかったソングライティング。この切れ味はもうこの時だけのものだろう。

バンドの演奏も素晴らしく、前作までは猫を被ってたのかどうかは知らないが、このバンドの売りであるギター・リフも力強く、遠慮がちだったドラムも今回は随分と畳み掛けている。『チャイナアドバイス』や『マイハートハードピンチ』のグルーブ感は白眉。こりゃやっぱバンド全体が覚醒したのか。

独特の世界にとどまりたい意志と外の世界に飛び出したい意志とのせめぎ合いが、ギリギリのバランスで平衡を保ちえた故に生まれたアルバム。この緊張感は意図的に出せるものではない。てことでこの後、やくしまるとギタリスト以外のメンバーがごっそり入れ替わってしまうのだが、それも頷ける完成度。第一期相対性理論の集大成と言える作品だ。

 

1. シンデレラ
2. ミス・パラレルワールド
3. 人工衛星
4. チャイナアドバイス
5. (恋は)百年戦争
6. ペペロンチーノ・キャンディ
7. マイハートハードピンチ
8. 三千万年
9. 気になるあの娘
10.小学館
11.ムーンライト銀河

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