ポエトリー:
『花びらのロンド』
家族で醍醐寺に花見に行った。境内にある霊宝館の傍には大きな枝垂桜があり、満開の花を咲かせていた。眺めていると数枚の花びらがゆらゆらと落ちてゆくのがよく見える。花びらは「先に往くよ」って言っているみたいだった。だんだん僕は花びらに見られている気がしてきた。すると花以外にも木や土やお堂や漆喰にも見られている気がしてきた。
知り合いに赤ん坊が生まれた。よく子は親を選んでくると言うが正にそんな感じ。過去のどこかで一緒にいた。「はじめまして」というより「久しぶり」。そんな気さえしてくる。うちの子は8才と4才だが、そういう気持ちは年々強くなってくるから不思議だ。
僕の方が先に地面に現れたに過ぎない。お先ってね。それから僕が先にこの世界から出てったとして、また別のどこかで落ち合う。家族や友人や、好きな人や嫌いな人や、よく知っている人や名前さえも知らない人。いずれみんな、どっかの見えるものや見えないものになって落ち合う。例えば桜の木の下に舞い降りたとして。やがて木の一部となり、花びらとなり、しまいにゃ、じゃあまたねってまた別の場所へ。出会っては別れ、別れてはまた集う。それは時間のない営み。絶え間のない命の旅。僕らにはその記憶が残っている。古い太古の地層のように。
2013年4月