洋楽レビュー:
『Charm』(2024年)Clairo
(チャーム/クレイロ)
米国のソングライターということですが、雰囲気としては気だるい欧州という感じ。アルバムジャケットの印象のせいかな。世代的にはボーイジーニアスと同じようなものかもしれないが、あちらはやはり米国という事でギター・サウンドがメインであるが、こっちのサウンドを特徴づけているのはピアノやフルート(かな?)だったりするので、やっぱ欧州的な印象は受ける。
ジャック・アントノフだとか元ヴァンパイア・ ウィークエンドのロスタムといった有名どころと組んだという1s tや2ndを僕は聴いたことがないが、 今回のアルバムは一転してバンドによる生音にこだわったそうだ。 元々、ベッドルーム・ ミュージックという私的なところから始まった音楽活動のようなの で、1stや2ndは大物プロデューサーの手を借りながら、 ということだったのだろう。 いずれにしてもこれだけメジャーな人と組んでいたわけだから、 表現者としてそれだけ魅力があったということ。
それを表明するように本作のソングライティングもとにかく素晴ら しい。アルバムは11曲あるが、それぞれにちょうど良いクセ、個性があり、 しかもそれがオープンな表現となっている。 それらが抜群の演奏で奏でられるわけだからそりゃいいに決まって いるだろう。特に4曲目の『Slow Dance』あたりからの演奏が本当に素晴らしくて、曲もいいけど音に集中することでまた違った楽しみ方もできる。
先ずもって曲がいいからそれを壊さない形で演奏が進んでいき、 曲ごとにアクセントになるような印象的なフレーズが必ずと言って いいほど挟まれてくる。 クレイロ自身の手腕がどの程度まで及んでいるのかは分からないが 、 バックの演奏と素晴らしいソングライティングが見事に溶け合った本当に豊 かなアルバムだと思います。
#2『Sexy to Someone』や#5『Thank You』や『Add Up My love』といったポップチューンも満遍なく配されていて、その辺も抜け目ない。ひとつ希望を言わせてもらうと、全編ウィスパーボイスは物足りないかなと。どこか一瞬でも感情を爆発させてほしいなというのは野暮な話でしょうか(笑)。