ポエトリー:
『プロローグ』
生きてると
時々起きるボタンの掛け違い
あの人とも
そんなようだった
2017年1月
ポエトリー:
『プロローグ』
生きてると
時々起きるボタンの掛け違い
あの人とも
そんなようだった
2017年1月
ポエトリー:
『心の問題だ』
俺がつらいかどうかは俺が決める
俺がくやしいかどうかは俺が決める
一本の線に依って
頼りない俺のこだま
どうか綻びは見せないでくれ
俺が腹立たしいかどうかは俺が決める
俺が喜ばしいかどうかは俺が決める
丹念に描かれた障壁画を見て
今日も一日過ぎた事を知る
大の大人が缶ビール一本に寄りかかり
冴えない夕べ
細かに現像する暗室の森
俺の過去は誰かに切り取られたか
俺が感謝するかどうかは俺が決める
俺がお辞儀するかどうかは俺が決める
指図される覚えはない
現存する俺たちの魂
根気よくこだまする
俺が悲しいかどうかは俺が決める
俺が嬉しいかどうかは俺が決める
レジスタンスは心の中
高名なセラピストにも邪魔はさせない
俺は便箋の折り方をわきまえている
俺の心の中には誰も入れさせないし
俺の心の中には誰も干渉させない
そんな奴らに対しては
絶対に容赦しない
俺は想像力でもって反逆する
徹底的に
これは心の問題だ
誰にも邪魔はさせない
2017年6月
洋楽レビュー:
『I like it when you sleep, for you are so beautiful yet so unaware of it』(2016)/The 1975
(君が寝てる姿が好きなんだ。なぜなら君はとても美しいのにそれに全く気がついてないから。/The 1975)
1stがなかなかのものだったので、次はどうなるのかと期待して待った2nd。キーワードは‘すぎる’。オシャレすぎるし、甘すぎるし、80年代っぽすぎるし、ロマンティックすぎるし、センス良すぎるし、イケメンすぎるし、モテすぎるし…。そして何より、、、長すぎるっ! まあタイトルからしてこれですから…。
敢えて作った音の隙間にセンス抜群のフレーズを持ってくるオシャレ感は今回も健在だ。アクセントをつけて押韻を転がしてくリリックも抜群で、裏拍(間違ってたらゴメンナサイッ)を効かせて畳みかけるリズム感もお手の物。そこのバックで鳴ってるのは同じフレーズをリピートするシャレたギター・リフだという1stからお馴染みのこの得意技をやられた日にゃあ、そりゃあもう誰だって参りますよ。「まあ皆さん聞いて下さい」ときっと人生幸朗師匠も唸ったであろうセンス抜群のオシャレ感だ。
リード・トラックが#2 『Love Me』のようなファンク・チューンだったので、今回は1stとはまた違うジャンルレスなアルバムになるのかなあなどと(何でもできそうな人たちなので)思っていたが、ふたを開けてみれば1stの甘い部分を更に過剰にしたデコレーションな仕上がり。要所要所でピリッと辛さを効かせてくれたりもするんだけど、基本的にはこの恋人に話しかけるような甘い感じが続く。まあ今回はこの過剰さで突っ切るってことなんでしょうか。なんつったってジャケットがピンクだっつう(※巨泉さん風に)。ただ歌詞のフォントまでピンクにするのは止めてちょ。めっちゃ見にくい…。目ぇ疲れるやんけっ!
もうひとつ苦言を言わしてもらえればインスト。収録時間の長いアルバムなので、箸休めにでもなるべき存在であるはずなんだが、ちょっとここでもやりすぎ。表題曲の#12くらいメロディに強弱があればいいんだけど、同じシークエンスの繰り返しは流石にしんどい。特に#7、「まだ続くんかいっ、終わったと思ったやないか!」というセリフが出てくること請け合いである。
さらに難点を言わせてもらうと80年代すぎるという点。目をつむってたらハリウッド映画全盛期の80年代にいるような気分。あ、日本では角川映画です。#10や#14みたいなもろ80年代な、ロマンティックス・ニュー・ウェーブ感(また違ってたらゴメンナサイッ)は、アラフォーのわたくしなどは思いっ切り振り返りモードになってしまい、なんとなく寂しくなってしまうのです。折角なんでもできる器用さを持ってるのだから、#2みたいな、「やったるで!」感をもう少し見せて欲しかった。
とはいえ、これだけずっとナルシスティックでいられるのは大したもの。対セル戦に備え、スーパーサイヤ人のまま過ごす悟空のようだ。しかも17曲もやっておいてお腹一杯感や胃もたれが一切しないのは不思議。つまりはこれは必死こいた感が皆無だからなんですねぇ。だからまあ今回は甘~いアルバムになったけど、やろうと思えばがっつりロックとかダンスものとかもできるんだぜ、みたいな。悟空なら、「おめえ、まだ力隠し持ってんだろ?」とか言いそうな余力感もこのバンドの魅力なのではないでしょうか。中盤に挿まれる#8『Lostmyhead』や#9『The Ballad of Me and My Brain』や#11『Loving Someone』みたいな尖ったやつだってオシャレにこなしちゃうし、最後の3曲(#15『Paris』、#16『 Nana』、#17『She Lays Down』)なんて涙ちょちょぎれるいい曲じゃあないの。もしかして最後に「普通にこんなんもできるんやん!」って思わされた私は彼らの思う壺なのでしょうか?
やばい、なんかこのままではモテない野郎のひがみになっちまいそうだ…。また詞がいいんだなこれが。輸入盤のひとも是非ネットで訳詞を検索してみておくんなまし。陽のサウンド・デザインと陰のポエトリー。その対比を存分に味わえ!
まったく、なんて‘すぎる’連中だ。最後に一言言わせてくれ。ちくしょー!オレもモテたいぜ! しまった、まんまとレビューも長すぎてしまった…。
1. The 1975
2. Love Me
★3. Ugh!
4. A Change of Heart
5. She’s American
6. If I Believe You
7. Please Be Naked
8. Lostmyhead
9. The Ballad of Me and My Brain
10. Somebody Else
11. Loving Someone
12. I like it when you sleep, for you are so beautiful yet so unaware of it
☆13. The Sound
14. This Must Be My Dream
☆15. Paris
16. Nana
17. She Lays Down
ポエトリー:
『月にかさねる』
ベッドから少し起き上がって今見た夢の続きをスケッチする
クロッキー帳は煤で真っ黒だ
シーツの重みを身体全体で感じる
今夜も食事が運ばれてきたから
動脈を流れるその栄養源が思い出を塞がないよう
少しずつ噛み砕いて口にする
最も大事なものはずっとその奥
私だけの隠れ家にある
もう随分と大変な思いをしてきたけれど
これからもまだ何か起きるのだろうか
案外、何も起こらないかもしれない
窓の外には月
銀のスプーンに心をのせて
そっと月にあてがう
少し離れた通りから君の家を見ている
君の魂はまだ其処にいる
心を感じる
二人の距離は削り取られたかのように
今なんてほら、至近距離だ
人生なんてそのようなもの
月に向かって吠えてみる
大声を出して
運動会の小学生のように正直に
十月のアキアカネのようにせわしなく
今宵、月と君に向かって心を重ねる
人の形をしていようがいまいが関係ない
大切なのは今ここに起きている事実
私たちは今、真円を描いている
2017年1月
短歌:
毛筆を 群青色に持ち替えて 空に一閃 ぶちまける哉
ぬかるんだ 土地を踏みつけ 跡残す 後のことなど 知るもんか
波を打つ 私の心臓 海岸線 波飛沫上げ のたうち回る
ミルクジャム 底見えるほど かき混ぜて ゆっくり貴方に 嘘をついてる
それが成功したのかどうかは分からない。ただ、ここにあるロック
彼らの音楽は我々の中に眠る新たな回路を起動させた。と同時にロ
ポエトリー:
『予感』
昨夜用意していた服は朝になって気が変わった
時間もないのにクローゼットから出てこれない
朝のバスの時間、しっかり守ってほしい
雨の予感、五月、クレマチスの匂い
あの人が呉れた芥子粒ほどの期待を掌に載せて
生ぬるい息を吹きかければ一閃
飛び跳ねて草叢に消えていった生き物
あの人のもとへ抜け駆けする気ね
バスを降りて駅へ向かう広い歩道橋
耳元で歌うアル・グリーンと
優しいオルガンと新しい駅舎を背景に
しとしと歩く人々と私
あんなに晴れていたのに今はもう雨
アスファルトが濡れているよ
2016年5月
ポエトリー:
『煮っ転がし』
四六時中話し合って
芋の煮っ転がしのように煮詰まれば
表面もトロトロに
カツオ節なんかもくっついて
君も僕も温かいうちに
頬張ってしまおう
2015年6月
洋楽レビュー:
『Different Creatures』(2017) Circa Waves
(ディファレント・クリーチャーズ/サーカ・ウェーヴス)