つまみ食い

ポエトリー:

「つまみ食い」

 

つまみ食いをして
あなたの詩をのぞきこむのが
野暮なわたしのすることです 

そうやってできた
いささか単調なわたしの詩を
(と呼べるかどうかは別にして)
この際あなたにご覧せしむる 

なんて大層なことはどこにもなく
軽はずみな言の葉
夏休みの子供のお手伝いのように
落ち葉もろともそそそと掃いてください 

そしたらわたしは音もなく
さささと退散するでしょう

 

2023年2月

芸術と生活

 
芸術と生活(坂本龍一の訃報に際して)
 
 
坂本龍一が亡くなった。訃報に際する報道により、氏の情熱的な活動を知り、知的でクールなパブリックイメージが覆った人も多かったかと思う。子供時代の僕にとってはピコピコしたYMOの人であったり、女装をして清志郎と戯れたりの人であったが、気付けば、世界で活躍する人の一番に挙げられる人、日本という枠外にいる人、という印象になっていた。
 
芸術というものは第一義においては、作家が誰に気兼ねすることなく思うに任せて創作をする、ということだと思う。けれどもその先、創りたいように創ってそれを放り投げる、あとは他者に委ねる、それでいいかどうかは考える余地がありそうだ。
 
坂本龍一は自身の才能に任せて創りたいように創り、後は知らない、という人ではなかったように思う。芸術と生活は繋がっているもの、地続きであるということを強く意識していた。被災地での活動や「NO NUKES」や最近で言えば神宮の森についても、それは単に彼が社会的な出来事に強く関心があったということだけではなく、芸術と生活、あるいは芸術と社会は地続きでなければならない、という意志が根底にあったからではないだろうか。坂本龍一はそれを単に口ずさむだけでなく、行動で示した。
 
そしてそれは共に行動することで被災地の若い人たちに受け継がれた。今まさに神宮の森について訴えている人たちに受け継がれた。プロの音楽家として活動している人たちに引き継がれた。まさしく彼は若者を導く教授であった。
 
震災、あるいは戦争といった災厄に対して、音楽が、あるいは芸術が出来ることは何もないのではないか。そう打ちひしがれた芸術家は沢山いたかと思う。けれど、そうではないんだよ、芸術と生活は、あるいは芸術と社会は切っても切れないものなんだ、必要なものなんだから発信していかなければならない、行動していかなければならない、ということを体現していた人がいた。
 
その事実は非常に心強いものだった。坂本龍一は芸術家であると同時に、そのこと自体が社会の一員であるという認識に立っていた。それはすなわち、彼が十代の時になりたいと願っていたコスモポリタンの姿そのものではなかったか。
 
これからも私たちの前には大きな出来事が立ちはだかるだろう。しかし私たちには坂本龍一がいたという事実がある。そのことはずっと長く私たちの胸に横たわり続けるだろう。私たちの多くは芸術家ではないけれど、そのすべては生活と社会と繋がっている。
 
これを機に氏の遺した音楽を聴いてみようと思います。
 
R.I.P.

冬瓜

ポエトリー:

「冬瓜」

 

冷たい雨
降るねこの先
なのにじっとしているだけで
汗かくね 

こんな日はゆっくり冬瓜
冬なのに秋の季語っていいよね
うっかりしてわたしたちまで
冬まで持つ瓜になればいいね 

冬は冬瓜
無慈悲な言葉にも
水分を奪われることなく
簡単に心盗まれることなく
ひと冬ぐらいどうってことなく 

冬は冬瓜
待つのが仕事
冷たい雨はもうしばらく続きますが
今はただ身を固くして
佳き日を待つのみです

 

2023年1月

WBC優勝に際して

WBC優勝に際して

 

日本が優勝した。そうなるかもしれないとの気持ちもあったが、まさか本当に優勝するとは。選手たちはさぞ疲れたろう。普段とは異なり、3月から異様な緊張感の下で全力プレイしたのだ。心身の疲労は大きい。今は気持ちが張っていると思うけど、間違いなく疲労はあり、疲労は故障の元でもある。間もなくペナントレースは始まるが、所属チームの監督はその辺りを十分考えてほしい。

一方でMVPの大谷は試合後のインタビューで早速すぐに始まるペナントレースに向けての心構えを話していた。ついさっき優勝したばかりなのにもう気持ちは入れ替わっている。本当に通常の物差しでは測れない人だなぁと改めて思った。ただ優勝した瞬間のグローブ投げは残念。子供たちは真似したがるかもしれないが、あれはやめてほしい。大谷からも言ってくれないかな。

昭和の時代であれば、子供たちは「オレ大谷な」とか言いながら、さっそく野球遊びに興じたのだろうが、今はそうはいかない。子供たちは忙しいし、まず野球遊びであってもする場所がない。世界一になることも大事だが、やりたい時に気軽にスポーツができる環境づくりの方も大事。というかこちらの方が大事な気がする。

今回の代表チームの価値観はその辺りとも通底する。彼らは野球のみならず、日本のスポーツに対する新しい価値観をもたらした。分かりやすく言えば昭和の野球との決別。楽しむ事。成長する事。相手チームへの敬意。メディアは日本が日本がと大騒ぎしていたが、選手たちの視野はもっと大きなものだった。

まるで戦争へでも行くかのような緊張感。相手もなくただ自分たちだけが存在しているかのような狭隘さ。絶対的な上下関係。いわゆる昭和の時代の体育会系のような息苦しさはそこになかった。

選手たちは伸び伸びとプレーし、極度の緊張感の中でも楽しむことを忘れなかった。勝っていたこともあっただろうがベンチでの選手たちの表情のなんと明るかったこと。不振にあえいだ村上の復活などはこれまでの代表チームではありえなかったのではないか。

その雰囲気づくりに最も貢献したのはダルビッシュだった。あのやんちゃで自意識過剰な青年がこれほどまでに成長するとは思いもよらなかった。報道されているだけでも「戦争に行くわけじゃない」とか「野球よりも家族が大事」といった言葉が伝わっている。彼は自分たちの代で昭和の野球は終わりにしたいと語っていたという。今大会で彼が最も身を砕いたのもそのことをチーム内に浸透させることではなかったか。

大谷にしても常に「先ずは楽しんで。そして勝つための準備をする」と発言していたし、また、日本日本と騒ぐメディアに対しては、韓国や中国などと一緒にアジアの野球を盛り上げていきたいと語っていた。やはり新しい時代を作るのは若者なのだ。

ただひとつ残念だったのは右手小指を骨折した源田の強行出場。新しい時代を体現する代表チームだっただけに、たとえ世界一を決める大会であったとしても今後の選手生命を優先してほしかった。少なからず影響はあると思う。これが大谷だったら、首脳陣は出場はさせていないはずだ。源田だったらよかったのかということではあるまい。漫画では桜木花道の「俺は今なんだよ」に感動してもいいが、現実は感動してはいけないと思う。

Cuts & Bruises / Inhaler 感想レビュー

洋楽レビュー:

『Cuts & Bruises』(2023年)Inhaler
(カッツ&ブルーゼス/インヘイラー)

 

1stアルバムが全英1位になって、この2ndもとてもよい評判。何の変哲もなくグッド・メロディで聴かせる王道ギター・ロックがこれだけ売れてこれだけ注目されるのもホント久しぶりな気がする。フロントマンはU2のボノの息子という派手な出自ですが、音楽の方は実直そのもの。このまますくすく伸びてほしい。

耳目を集めるような強烈な個性はないですが、よいメロディとよいボーカルとよい演奏。これに勝るものはなし。それでいて押さえるところはきちっと押さえる。#1『Just to Keep You Satisfied』の間奏で聴けるギターの鳴りとか、#4『These Are the Days』のラスト近くで畳みかけるところなんて王道そのもの。

ボノの息子ではあるが、雰囲気はU2というよりブルース・スプリングスティーン寄り。#7『Dublin in Ecstasy』なんて若々しくてフレッシュなウォー・オン・ドラッグスみたいな感じ(笑)。というところでキーボードだとは思うが、ピアノやオルガン、シンセのフレーズを効果的に使う柔軟性もあり、今後まだまだ良くなっていく予感大である。

一方でシンプルな#8『When I Have Her on My Mind』も最高にカッコよく、いわゆる誰にもできそうで誰にもできないリフで最後まで押し切れてしまえるのはセンス以外の何ものでもない。ソングライティングは誰かメインの人がいるのだろうが、クレジット的には全員となっていて、この辺りの実直さも好感度は大きい。プロデュースは外部ではなく、バンドのドラマーのようだし、これからもバンド全体でいろいろ学んで着実に成長していきそう。

レディオヘッドやアークティックモンキーズみたいな独自路線へ向かうわけでもなさそうだし、The1975のように派手なところへ振れるわけでもない。アイルランド出身ということですが、同じ英国という括りで見れば、英国ならではの少しの湿り気とグッド・メロディが持ち味の、ウェールズ出身の国民的バンド、こちらも実直なステレオフォニックスに近いのかなと思います。フォニックスのように息の長い活躍を期待したい。

フェニックス Live In Concert 2023 3月14日 Zepp Osaka Bayside 感想

PHOENIX Live In Concert 2023 3月14日 Zepp Osaka Bayside 感想

 

昨年リリースされたアルバム『Alpha Zulu』をフォローするツアー。3月はアジアです。香港、シンガポール、フィリピン、タイ、そして日本では大阪と東京の2公演です。僕は3月14日に行われた大阪公演へ行ってまいりました。前回の来日は2018年4月でしたから丁度5年ぶりです。彼らももう結構な年齢になっているとは思いますが、全く変わりませんね。当代一のオシャレバンドは健在でした!

19時開演でしたが、先ずはサポートアクトからです。3兄弟からなるバンド、Gliiico だそうです。アジア系のバンドのようですが、時おり流ちょうな日本語でもMCをしていました。いわゆるインディー・ロックですね。熱気溢れる演奏でしたけど、ちょっと長すぎたような。。。40分以上はやってましたね(笑)。なので、フェニックスの登場は20時頃。待ちくたびれたせいもあって、初っ端から会場大爆発でした。

なんてったっていきなり怒涛の展開、『Lisztomania』『Entertainment』『Lasso』『Too Young』『Girlfriend』と続く人気曲の連発ですから、そりゃあ盛り上がります。特に『Lasso』までの冒頭3曲ですね。みんな飛び跳ねての大騒ぎ。僕も年甲斐もなくはしゃぎすぎて、既にこの時点でへとへとになりました(笑)。

新しいアルバムからは5曲披露されました。どれも昨年から行っているツアーでだいぶこなれたようで、全部かっこよかったです。印象深かったのは『Winter Solstice』ですね。キーも含め強弱のハッキリとした曲ですし世界観が際立っていました。一方、定番の『If I Ever Feel Better』では仮面にマントの謎の人物が登場しトーマが跪いて歌う新しい演出も。あれはなんのメタファーだったのかな。

あと今回は映像表現が凝っていて、曲ごとにステージ後方の画面にいろいろと映し出されていました。中でもインスト曲の『Love Like a Sunset Part I / Love Like a Sunset Part II』は見応えありました。なんか『2001年宇宙の旅』というかキューブリックの映画みたいな感じでとても興味深かったです。インスト曲だからこそ出来た観客の視線を釘づけにする演出ですね。この辺の展開は流石です。映像と言えば、トーマがのぞいた双眼鏡に映る観客の様子がステージ後方の画面にそのまま映し出されるという楽しい演出もあって、そこに自分が移るわけですから当然お客さんは盛り上がりますね。

本編は1時間ちょいでしたか。短いですけど濃密でした。アンコールはキーボードのみでの弾き語りでスタート。『Telefono』から『Fior Di Latte』へ続くラブ・ソング。なんともあま~いトーマの声にうっとりしますね。バンド編成に戻っていくつかやったあとラストは『Identical』のリプレイズ。今回のトーマが下に降りてくるための曲はこれですね(笑)。当代一のオシャレバンドですから相変わらず女子率高め。なので多くの女子がトーマめがけてワァ~って寄っていきました(笑)。

しかしまぁ相変わらずnイケメンですな。頭ちっちゃくてスラッとした体系も全く変わりませんね。見かけだけじゃなく高音もきれいなままだし、実はもう以前のような元気なステージングはないかなとも思っていたのですが、失礼しました、全く衰えてませんね。ギターの位置が妙に高いあの人もいつも通りチャーミングでした。時折、面白いフレーズを弾いてましたしね。しかしいつも大活躍のドラムの人。バンド・メンバーにはならんのやね(笑)。

アンコール含め、トータル1時間半ちょいぐらいだったのかな。でも強弱あってのよく練られたステージングでエンターテイメントとしての完成度は流石です。ライブによっていろいろ感想はあるけれど、単純に一番楽しいライブと言えばフェニックス!この認識は今回観ても変わりませんでした。

実は翌日が同じ会場でアークティック・モンキーズだったんですね。どっちも行くわけにはいかず非常に迷ったんですけど、フェニックスはもうベテランの域ですから元気なうちにとこちらを選びました。アークティックはまだ若いからね。あ~でもアークティックも観たかった。やっぱロックのライブは最高です。僕は今回が初のコロナ後の洋楽単独ライブでしたけど、そのことを再確認しました。

This Is Why / Paramore 感想レビュー

洋楽レビュー:
 
『This Is Why』(2023年)Paramore
(ディス・イズ・ホワイ/パラモア)
 
 
6年ぶりの新作。振り返れば、バンド名を冠した2013年のアルバム『パラモア』は全米1位になり、そこからのシングルでグラミーも獲り、さぁしばらくはこの調子でと思いきや、そこに安住せずサウンドを一新。その次の『アフター・ラフター』(2017年)ではカラフルなポップ路線へ舵を切り、さらにヘイリー・ウィリアムスの2020年のソロ作『ペタルズ・フォー・アーマー』では更に目一杯方向転換。実験的でミツキばりのダークな世界観という極端な振れ幅でしたが、そうした取り組みを経ての本作は、キャリアを総括する現時点での最高傑作と言ってよいのではないでしょうか。
 
特にソロとはいえ、メンバーがほぼ参加した『ペタルズ・フォー・アーマー』での成果が大きいかなとは思います。あそこでそれこそビッグ・シーフがやりそうなレディオヘッドばりのサウンドとか、ビリー・アイリッシュやミツキのようなダークさ。初期からのファンには不評だったとは思いますけど、ああいう挑戦をやり切ったことで、新しいパラモアとしての骨格が再構築されていったのかなと思います。
 
もともと良いメロディーを書く人たちでしたけど、パラモアにしか出せないオリジナリティ、例えば、#4『C’est Comme Ça』はポップなフックで耳に残るインパクトを残しつつ、ヴァースの部分は低いトーンのリーディングという、普通ならいびつな構成をごく自然な形で落とし込める能力を得たというのは非常に大きいです。その上で、音楽性云々には言及しなさそうな普通の音楽リスナーが喜ぶキャッチーさはちゃんと保持したままというのは理想的な進化ですね。
 
言葉もうまい具合に転がっていて、今まではこんなに韻を踏んでた印象はないのですが、言葉の載せ方ひとつとっても練度が上がっているような気はします。切ない#5『Big Man, Little Dignity』もホントいい曲でそのまま終わってもよいのでしょうけど、アウトロで冴えたアレンジが何気なくサッと入ってくる。ホント、隅々まで目の行き届いた丹念なアレンジだと思います。
 
若くして人気が出たバンド故にいろいろな苦労があったようですけど、へこたれずに前を向き続けた、何かにおもねることなく探求心を持ち続けた。バンドのアイデンティティーもしっかり積みあがって、いいバンドの一つから、他に比類のないバンドになったのではないでしょうか。

男の笑いと女の笑い

その他雑感:
 
「男の笑いと女の笑い」
 
 
日本が男性社会だというのはテレビを付けていると一目瞭然だ。男性MCと男性タレントがほとんどで、女性が多くを占めているというのは圧倒的に少ない。だってそりゃ男の方がオモロイからに決まってやんという声が聞こえてきそうだけど果たしてそうだろうか。
 
少し前になるが、松本人志が司会を務める「IPPONグランプリ」。女性芸人と女性タレントによって行われた回があった。面白い局面もいくつかあったのだが、総じて男性芸人に比べるとだいぶ落ちるよなぁというの大方の意見ではなかったか。僕はそう思った。でも考える。それって本当?
 
僕の奥さんはよく笑う。でも「M-1」とか「IPPONグランプリ」には全然興味がない。「笑ってはいけない」は嫌いだと言っていた。だからと言って奥さんはユーモアのセンスがないわけじゃない。だって家でも外でもよく笑うから。もしかしたら、男の方がオモロイやんというのは男性の笑いの価値観が世の中を支配しているからだけなのかも。
 
例えば女性ばかりの会に男が一人呼ばれたとする。女性たちが大笑いしている。男性は何が面白いのかよく分からないので愛想笑いをする。後日、男の友達連中に言うわけだ。何がオモロイか分からんかったわ。恐らくそれと同じことが女性の側では毎度起きているのかもしれません。
 
先ほどの女性限定「IPPONグランプリ」で優勝したのはハリセンボンはるか。確かに圧倒的に面白かった。出演者が言う。男女関係なく参加できるんじゃないかって。でもこれって、男が取り仕切る男が面白いと思う基準の笑いの大会にあなた出れますよって言ってるようなものではないかな。ちょうど今、NHKで男女が逆転するドラマ、「大奥」がやっているけど、まさしくあの世界。男女の立場が逆転しそれが何十年も続くと、女が面白いと思うものが世間の面白いの基準になるのだと思う。
 
男の方がオモロイやんというのは男社会だから出てくる言葉なのかもしれないな。なんだか他のことにも当てはまりそうだ。

第5回ワールド・ベースボール・クラッシック、開幕

野球のこと:
 
第5回ワールド・ベースボール・クラッシック、開幕
 
 
いよいよ明日からWBCの日本戦が始まる。先ずは東京での予選ラウンド。ここでの上位2か国が米国での決勝トーナメントへ進むことになる日本代表のいる予選Bグループで対抗馬となるのは韓国ぐらいか。とはいえ、ここでグズグズしているようでは決勝トーナメントも心もとないだろう。恐らく予選リーグでの目的は誰が使えて誰が使えないかの見極めだろう。短期決戦では取り返しのつかなくなる前に決断をしなくてはならない。いくら素晴らしい実績がある選手でも好不調はある。監督始め、スタッフの力量が問われるところだ。
 
スターターは大谷、ダルビッシュ、山本由伸、佐々木朗希でほぼ間違いないか。何が起きるか分からないが、余ほどのことがない限り彼らが大崩れすることはないだろう。問題はリリーバー。プレッシャーは回を増すごとに大きくなる。特にクローザーの重圧は相当だろう。どうにもならなくなった時はメンタルの鬼である大谷が務めることもあるかもしれない。栗山監督ならやりそうだ。捕手はソフトバンクの甲斐とヤクルトの中村。きついだろうが気持ちの強そうな二人なら大丈夫だ。
 
問題は打つ方。村上を始め吉田尚、山川と錚々たるメンバーが揃うが、過去のWBCを見ても、メジャー投手のムービングボールには今回も手こずるだろう。そのうえ、日本選手は一戦必勝の国際大会ではいつもガチガチになりがち。昨年のサッカーワールドカップで日本代表が躍進したのも、メンバーは海外組みがほとんどで普段からメッシら一流選手と渡り合っていたというのも大きい。そう考えると、メジャー組の鈴木誠也の離脱は痛い。ここでもやはり頼りは大谷ということにならざるを得ない。
 
そういう中でダルビッシュがリーダーシップを発揮し、硬くなりがちな国内組を解してくれているのは大きい。彼の「(日本代表は)少し気負いすぎというか、戦争に行くわけではない。気負う必要はないと伝えたい」というメッセージは良い効果をもたらしているはず。事実、グラウンドには勝負よりも大事なことが転がっている。皆、おかしなプレッシャーを感じずに伸び伸びとプレーをして、貴重な経験を今後の成長に活かしてほしい。
 
なによりも怪我なく無事に。勝ち負けよりもそれを祈るばかりです。

Rush! / Maneskin 感想レビュー

洋楽レビュー:
 
『Rush!』(2023年)Maneskin
(ラッシュ!/マネスキン)
 
 
大ブレイクを果たした後のアルバムということで、どうなるんだろうと興味津々ではありましたが、こちらの想像を余裕で超えてきましたね。全17曲で前作『Teatro d’ira Vol.1』の倍以上の曲数!しかも8割方がアップリフティングなロックナンバーです。#17『The Loneliest』といったバラードも彼らの人気曲ですけど、ライブのノリそのままにそっちじゃなくてこっちでグイグイくるテンションが最高ですね。
 
しかも全部、目先を変えているので同じような曲がズラッとじゃない。この辺りがマネスキンたる所以というか、強烈な個性を持ったバンドではあるんだけど、そこに寄りかからずに古いとか新しいとかではなく、自分たちのその時々で大好きな音楽をやればいいじゃんという屈託のなさが1曲1曲の個性にも繋がってるという、非常にポジティブな化学反応がここでは起きています。
 
例えば、#2『Gossip』なんてフィーチャリング・トム・モレロですから、ギターでギュインギュインいくわけですけど、よくよく聴いているとエイミー・ワインハウス、テンポ落とせば、まんまエイミーやんっていう。しかもダミアーノのこぶし回しがエイミーそっくりで、サビの声裏返るところなんか多分意識していますよね。
 
マネスキンはエイミーのカバーを若い頃に(今も十分若いですが)ユーチューブにアップしていますから、間違いなく好きなんでしょうけど、そういう好きな部分と今現在の彼らの王道スタイル、そこにトム・モレロっていうところが合わさってなんか分からんけど、時代とかジャンルを超えてカッコいいことになってる。つまり、#9『Kool Kids』で「We’re not punk, we’re not pop, we’re just music freaks」って歌っているようにカテゴリーそっちのけで今やりたいことをやる。それが結果的に17曲全部が違う色を持っていることになる。けれどマネスキンとしての芯がずっと残っているから、マネスキンとしての土台は変わらない。しかも何年も前の曲だけじゃなく最新のアイドルズとかの影響も丸出しで、これこそがマネスキンなんだなと再認識しました。
 
まぁとにかく派手で過剰でカッコいいです。音楽としてだけでなく、カルチャーとして更新してってる感アリです。ミュージック・ビデオも最高なので、そっちも見てほしいですね。先ずは『Gossip』のミュージック・ビデオで度肝抜かれてください(笑)。