ポエトリー:
『君のために』
今朝がた
君の体から
言葉
剥がれ落ちた
今朝がた
君の体から
心
零れ落ちた
レースのカーテンが
風に揺らいでいた
2013年6月
ポエトリー:
『君のために』
今朝がた
君の体から
言葉
剥がれ落ちた
今朝がた
君の体から
心
零れ落ちた
レースのカーテンが
風に揺らいでいた
2013年6月
TVプログラム:
忍耐と想像力を傍らに往く創造的な「旅」のかたちを
※2017.5.28放送 NHK-BSプレミアム 『Not Yet Free~何が俺たちを狂わせるのか~』より
ポエトリー:
『クリーニング店』
広い通りに面したクリーニング店では
服を預けるとちょうどよい肩幅のハンガーが付いて返ってくる
彼女の肩幅もちょうどいいという噂があるがそれは確かめようがない
私ももちろんそこへ行く
今日の私はクリーニング品を預けるだけでなくコインランドリーで洗濯をする
コインランドリーで洗濯をしている間は退屈なので選りすぐりの本を持っていく
普段はあまり読まないようなもの
少し頼りがないものがいい
ここのハンガーがちょうどいいように
ここの洗濯機の音もちょうどいい
彼女も今日あたりここへ来るかもしれない
けれども彼女の肩幅はアイロンをかけていない
彼女の靴下は裏返っていない
彼女の魂は撹拌されていない
ここの洗濯機の音はちょうどいい
私の退屈な時間も残り僅かなので
詩を2編ほど読んで今日はもう終わりにする
2016年6月
ポエトリー:
『青くなるゆえん』
君が尋ねたら
相手は知らないと言った
ただそれだけのこと
恋とも呼べない
ため息は泡となりまどろむ
空気が少しずつ濃くなって
春を導く
空が青くなるゆえん
2015年3月
ポエトリー:
『ただ一つの物語』
ただ一つの物語を君のために送る
荒廃した裏庭にハッと目が覚めるような花を添えて
夕暮れ時、赤茶けた煉瓦の向こうに差す光を
手の甲の青い線に沿って真っ直ぐに線を引く
いつか君の動力源に辿り着きたい
今度こそ正しい言葉を見つけ
出来るだけ分かり易くただ一つの物語を君のために
2017年5月
『Oasis:Supersonic』(2016)
(オアシス:スーパーソニック)
オアシスの映画を観た。公開初日に観た。2時間たっぷり。観終わった素直な感想は「疲れた~」。「馬鹿か、そんなんじゃやってけねぇよ」ってノエルに言われそうだけど、それぐらいすごいパワーに圧倒されっぱなしの2時間だった。
見どころは沢山あってその辺の詳しい話はいろんな媒体に載っているからよしとして、僕が思ったのはオアシスが巨大になっていくに従って、トラブルも倍々に増えていったけど、悪いやつは一人もいないってこと。そりゃノエルもリアムも無茶苦茶やるけど、後に金目当ての裁判を起こしたトニーだって悪くない。すべてなるようになった。それだけのことなのだ。結局、映画観ててこいつ悪いやっちゃなぁって思ったのは父親だけ。でもその父親がいたから二人がいるってことだから全否定はできない。
ということで、この映画には製作総指揮としてノエルとリアムが関わっている。通常この手のドキュメンタリーは死んだあとに作られたりするんだけど、二人はまだピンピンしてる。なのに一番輝いていた時期だけを抜き取って映画にすると言う。そんな昔の栄光、なんで今更って話で、ディナー・ショー・ミュージシャンじゃあるまいし、我々がよく知ってる二人のキャラからは考えられないことだ。なのに映画にすると言う。それは何故か?要するにこれはオアシスの8枚目のアルバムだからだ。
オアシスが解散してからずっと、二人は絶縁状態のままだ。今もツイッターやインタビューで互いを罵り合ってる。なのに力を合わせて映画を作る。確かに面と向き合って作り上げていくわけではないが、これはもう明らかに二人の共同作業。同じ場所にいなくても二人が同じステージに立っていた時のように通じ合っている。こっち向いていくぜって。ケンカしながらもスタジオに入った時に、あるいはステージに立った時に爆発的な力を発揮したあの時と同じ。二人は分かっているのだ。今もそれが可能なことを。そして自分たちが今やるべきことを。それは何か。ただの昔の栄光を辿る下らない映画ではなく、今を、2016年を、ジャスティン・ビーバーやテイラー・スウィフトやカニエ・ウェストがいる2016年を20年前と同じように唾を吐いて、ファッキン喚き散らし、壁に穴をあけて、叩き壊す。二人の目線は間違いなく今ここにある。だからこうやって映画を作ったのだ。
トランプが大統領になるとか、イギリスがEUを離脱するとかはどうだっていい。ロックもEDMもヒップ・ホップもソウルも何もかもポップでいいねっていう世の中に、デビット・ボウイもビヨンセもケンドリック・ラマーもすべて同じ地平で語られる世界に、二人は2016年に叩きつけてきたのだ。そんなんじゃねぇぞ。なにぬるいこと言ってんだって。昔の伝記映画ではなく、新しいロックンロール・アルバムとして。
二人はあの時と何も変わっちゃいない。同じ態度で同じ目線で、無敵なままやってきた。お前ら、くだらねぇこと言ってねえでオレたちを見ろって。ネットや周りの意見なんてどうでもいい。いいことはいいと言えばいいし、やなことは嫌と言えばいい。みんな隣の顔色伺って、あれもいいよねとか、それもありだよねとか、一見物わかりの良くなった2016年に、クリック一つで何もかも分かったような気になる2016年に、顔をさらさず好きなことが言える2016年に、二人は20年前と同じ温度で怒鳴り込んできた。これはそういう映画だ。2016年現在、今この時にドロップされたオアシス8枚目のアルバムだ。そう考えてほぼ間違いない。
2016年12月25日
ポエトリー:
『サヨナラは指差す方へ』
夜空の天気はご機嫌斜め
指差す方へ落っこちてしまいそう
嘘の塊を粘土細工にして
全てあったことにしてしまう
君の嘘も嘘だと言わずに
平仮名に沿って優しく撫でれば
いかようにも景色は移り変わり
だとしても嘘は嘘のまま
代わり映えしない毎日は過ぎていくもの
だけども本当の事を言った事がないのは僕も同じで
こんな風に夕方の涼しい風が吹いて来ても
朝と今は何も変わらない
けれど変わらない事を良しとして
斜めになった日常を氷砂糖のように噛み砕き
サヨナラ(アディオス!)新しい人
もう僕には今日がない
今はもう明日の事で手一杯で
こんな風にして時間は動いていくものだから
握手する暇もなく君の嘘は全部消去され
星空はなす術も無く
指差す方へ落っこちていく
2017年6月
ポエトリー:
『プロローグ』
生きてると
時々起きるボタンの掛け違い
あの人とも
そんなようだった
2017年1月
ポエトリー:
『心の問題だ』
俺がつらいかどうかは俺が決める
俺がくやしいかどうかは俺が決める
一本の線に依って
頼りない俺のこだま
どうか綻びは見せないでくれ
俺が腹立たしいかどうかは俺が決める
俺が喜ばしいかどうかは俺が決める
丹念に描かれた障壁画を見て
今日も一日過ぎた事を知る
大の大人が缶ビール一本に寄りかかり
冴えない夕べ
細かに現像する暗室の森
俺の過去は誰かに切り取られたか
俺が感謝するかどうかは俺が決める
俺がお辞儀するかどうかは俺が決める
指図される覚えはない
現存する俺たちの魂
根気よくこだまする
俺が悲しいかどうかは俺が決める
俺が嬉しいかどうかは俺が決める
レジスタンスは心の中
高名なセラピストにも邪魔はさせない
俺は便箋の折り方をわきまえている
俺の心の中には誰も入れさせないし
俺の心の中には誰も干渉させない
そんな奴らに対しては
絶対に容赦しない
俺は想像力でもって反逆する
徹底的に
これは心の問題だ
誰にも邪魔はさせない
2017年6月