ポエトリー:
「傘」
雨傘を
忘れたのかオイラは
リュックの中に
ないじゃないか
あの人が
今夜はひどい雨だと
言っていたのに
雨傘がないじゃないか
2023年12月
ポエトリー:
「傘」
雨傘を
忘れたのかオイラは
リュックの中に
ないじゃないか
あの人が
今夜はひどい雨だと
言っていたのに
雨傘がないじゃないか
2023年12月
ポエトリー:
「ハンカチ」
ハンカチを
忘れたのかオイラは
カバンの中に
ないじゃないか
あの人が
とても感動的な映画だと
言っていたのに
ハンカチがないじゃないか
2023年11月
邦楽レビュー:
『感覚は道標』(2023年)くるり
くるり14作目のオリジナル・アルバムです。今回のメンバーはデビュー当時、要するにくるり結成時のメンバーだそうです。くるりはメンバーの出入りが結構あって、音楽的にも変わったことやってる人たちというイメージがあります。岸田繫の才能に任せてって感じですね。そんなくるりがデビューから25年経って元のメンバーに戻って作りあげたのが今回のアルバムだそうです。
さっきも言ったようにくるりは変態的な音楽をやっているイメージがあるんですけど、このアルバムはいたく真っすぐなロック・アルバムです。メンバーがメンバーだし原点回帰ってことでしょうか。とは言えそこはなかなかどうして一筋縄にはいきません。ずっとあれやこれやと色んな事に取り組んできた流れがあっての真っすぐなロック・アルバムですから、ものすごく聴きごたえがあります。積み上がってます。聴く人が聴けばこれもやっぱり変態的なんでしょうね(笑)。
でも不思議とすごく爽やか。デビュー・アルバムみたいに爽やかです。アルバム・ジャケットがなんじゃこれはという感じでオッサン3人が、ま、くるりのメンバーなんですけど(笑)、3人がただ座ってこっちを向いてるだけの写真なんですが、オッサンやのに不思議な爽やかさがある。アルバムを象徴するいいジャケットだと思います。なんか面白いアルバムです。
ピカソとか岡本太郎も実はちゃんとした絵を描けば凄いのを描くのだと思います。しかもめちゃくちゃ上手に描けるうえに、積み上げたものがあるから更に凄いことになる。言ってみればこのアルバムもそんな感じです。いろいろな取り組みをしてきたんだけど、初心に帰ってシンプルにバンドでジャムってみたら、初心だけでは絶対できないようなプラスアルファの凄いのができた。あと、岸田繫の持っているコマーシャルな部分が素直に出てきてるから、それこそ若い子に混じって歌番組で歌ってしまえるぐらいのポップさもある。デビューして25年経ってなお、こんなに爽やかでポップなアルバムを作れるんだからすごいバンドです。
ポエトリー:
「ことば、いし」
たとえば
そこらじゅうの
いしを
あつめ
おとを
あたえ
いみを
あたえ
かたちを
あたえ
ことばは
なりたち
わたしたちの
くらしや
かいわ
なりたち
それがすなわち
ひとっとびに
いっちょくせんの
ことばの
たびだち
わたしたちも
たびたび
てをかし
ときには
しでかし
あたらしいと
ふるいを
くりかえし
めにみえる
あるいはめにみえない
そこらじゅうの
いし
ひとりあるき
2023年10月
ポエトリー:
「冬のはじまり」
少しずつ大事にあたためてきたのに
いつのまにか繭になって
ほどけなくなりました
いつか
あなたを暖める編み物ができればよいのだけど
わたしたちの夜空には
満天の星と寒風
翌朝の舗道は濡れていて
2023年11月
ポエトリー:
「オンしたりオフしたり」
無限に起きることがない代わりに
スイッチをオンしたりオフできる乗り物があったら
ぼくは一生をかけてきみにたどり着けるだろう
磨いたらきらっと格段に光る乗り物
やればできる子
そんな魔法のスイッチを
自在にオンしたりオフしたりする回路を手に入れて
目指すは人工の池、花と緑の大地の
ささくれ立った根性その他、
良からぬものをジェット噴射し
ぐんぐん進むことにして
もうじきコントラストが
赤やら黒やらのコントラストがきみに向かうのを知る
知っているから
とりいそぎ大事な荷物をひとまとめにして
昨と日のあいだはふれないように
明と日のあいだはさわれないように
そりゃあめいっぱい気をつけて
ぼくは一生をかけて大事なきみに会いにいく
無限に起きることがない代わりに
することがめいっぱいある
今は今と日のゆらぎの中にいて
スイッチはオンしたりオフしたり
2023年10月
ポエトリー:
「なんて特別なことだ」
なんて特別なことだ
今夜きみに羽が生えだしてきて
今にも飛べそうだ
これだから人生はやめられない
まだ見ぬ風景があるのだと
しかしそれさえ人から見れば控えめなこと
難しがることなんてなく
なんならもう空中
たとえば
人から見れば星くず
もしくは砂粒
それでもかまわない
朝
コップ一杯の水を飲んで身支度
なにかいつもと違う気がして
今夜にも羽が生えだしてきそうだ
2023年10月
ポエトリー:
「溶けてなくなる前に」
きみはわたしの声を秒単位で欲しがる
溶けてなくなる前に
早く次のを放り込んでおくれ
でないと声を失うと
そんなにも欲しがるならば
なぜあのとき
日が陰るあのとき
待ち合わせの場所にきみは来なかったのか
冷たい夕に
わたしはひとり凍えていたのだ
きみが
秒単位で欲しがるのと同じに
わたしも
ちいさなひとりの人間だということを
知ってか知らずか
あいも変わらずきみは秒単位で欲しがる
溶けてなくなるのはなにも
きみばかりじゃないというのに
2023年10月