colour me pop/Flipper’s Guitar 感想レビュー

邦楽レビュー:
 
colour me pop(1991)Flipper’s Guitar
(カラー・ミー・ポップ/フリッパーズ・ギター)
 
 
そういえばと思いSpotifyでフリッパーズ・ギターを検索したら、「バスルームで髪を切る100の方法」が流れて、帰りの電車の中にもかかわらず思わず歌ってしまいそうになった。フリッパーズ・ギターを聴くのは何年振りだろう…。
 
僕の高校時代はいわゆるCDバブルの時代で100万枚200万枚は当たり前。小田和正の「ラブ・ストーリーは突然に」とか米米クラブの「君がいるだけで」とか数えだせばきりがないぐらいメガ・ヒットの連続だった。いわゆるJ-POPなんて言葉が生まれたのもこの頃なのかもしれないな。ただ僕にとってはこれらの曲は街に流れる幾多のヒット曲の一つに過ぎなかったし、友達が夢中になっていた「それが大事」なんてどこがいいのかさっぱり分からなかった。
 
かわりに僕が一生懸命に聴いていたのは、フリッパーズ・ギターとユニコーンとレピッシュ。ユニコーンはダウンタウンやウッチャンナンチャンが出演していた「夢で逢えたら」でもかかっていたからメジャーな存在だったけどフリッパーズ・ギターもレピッシュも全然知らなくて音楽好きの同級生に教えてもらった。
 
ちなみに『colour me pop』は僕が初めて買ったフリッパーズ・ギターのアルバムでそれまでは全部レンタルCD屋で借りてカセット・テープにダビングしたものばかり。それはユニコーンもレピッシュも同じで、言ってみれば今の子がサブスクやyoutubeで聴くみたいなもん。要するに高校生だからお金がなかったということです。
 
で、どうして『colour me popi』はアルバムで買ったのか覚えていないんだけど、そん時はもうフリッパーズ・ギターは解散をしていたし、僕も高校を卒業するしということで何かの節目ぐらいには思ったのかもしれないが、それはちょっと自分の過去を美化しすぎ。
 
フリッパーズ・ギターは解散をして、その後小沢健二が大ブレイクするわけだけど、解散後にソロが出るか出るかと楽しみにして待ったのは小山田圭吾の方。その前には整髪料「UNO」のCMに出たりなんかして、解散後の飢餓感もあって僕の心はウキウキしっぱなし。このCMで流れていた小山田のインストが収められたコンピレーション・アルバムも買いました。なんてタイトルか忘れたけど。なので僕にとってフリッパーズ・ギターはオザケンではなく小山田圭吾。あのこまっしゃくれた鼻声が全てだ。
 
今、フリッパーズ・ギターを聴いてるとオルガン風のキーボードがすごく耳に残る。これはさっき言ったインスト曲でもそうだけど、このキーボードの感じはフリッパーズを構成する大事な要素だったんだな。これは今も続く僕の一番の弱点だから(もしかしたらギターよりも好きかも)、僕自身十代の頃からそこのところがなんにも変わっていないのがちょっと面白い。
 
あとやっぱり歌詞がすごい。例えば冒頭話した「バスルームで髪を切る100の方法」だと「明るい食堂をティーワゴン滑り出してく間 もう君のこと忘れてるよ仕方ないこと」とか、もうサリンジャーとかカポーティーとか有名な海外文学の一説にしか聞こえない。巷じゃ小難しい表現を文学的だなんて言うけれど、ここで小山田と小沢が作り出す、簡単な言葉で構成されるチャーミングで毒のある歌詞は文学以外の何物でもない。あ、『colour me pop』に「バスルーム~」は収録されてません。
 
全然『colour me pop』のレビューになってないけど、フリッパーズ・ギターをといえばあのジャケットを思い出す。まぁそれまではカセットにダビングだからな。どっちにしてもあのアルバム・ジャケットは僕の脳みそに鮮明に焼け付いている。なのに今手元にこのアルバムが残っていないのはなぜだろう…。
 
前述の音楽好きの友達に連れられてアメ村にある怪しげなCDショップをはしごしたのも懐かしい思い出。後にも先にも小山田圭吾や小沢健二みたいなおかっぱ頭のそいつと出かけたのはそれが最初で最後だった。

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