ポエトリー:
「波打ち際」
波打ち際で剥がれた人生が
一歩、また一歩と後ずさりす
真剣に生きた心意気さえ簡単に儚い
小鳥のさえずりほどに
目頭が熱くなる瞬間がひとにはあって
後ろめたいことのひとつやふたつ
それでも隠すことのできない腹立ち苛立ち
もくもくと雲が茹で上がり
それでいてときとして晴れわたり
またはのこのこと雨がやみ
いやあれはそうではなかったのですという断りは過ぎ
ひとに長く愛されるサイダーの泡
そんなものに憧れる
ゆっくりと潮が引いていく間ほどには
ひとは穏やかではないと知りつつ
少しづつ重ねたときを折り返し
少しづつ剥がれていくときを経てもなお
若人のように寄せては高波
生の陽気さへ同期す
2024年8月