季節の花

ポエトリー:
 
「季節の花」
 
 
庭先に季節の花
ポットに植えられたイチゴは食べごろだ
目の高さにある柊の刺に注意して
お隣さんとの境い目でキチンとカットされるべきだ
もちろんなっている 
 
毎朝水をやる
ホースではなく柄杓で
バケツには雨水
心には余裕を 
 
大丈夫、
わたしには季節の花を庭先に飾る母の血が流れている
 
 
2023年2月
 

農夫の黄昏詩

ポエトリー:

「農夫の黄昏詩」

 

一度発話したことがある
黄昏詩と
思ってもみない方向から言葉が来たと
手拭いを懐に入れ振り向く表情も
黄昏詩だ

艱難に耐え
ようやくここまでたどり着いた表情に
いくら難しい言葉を当てようとも
それは黄昏詩

民族の歴史が
その手に凝縮されるのを
わたしは見たことがある

夕刻
田畑に流れ星は
どこまでも走る

 

2023年3月

おまじない

ポエトリー:
 
「おまじない」
 
 

もしも
喉のとおりが悪くなったら
吸い込むのは少しやめて
吐き出すことも熱心に

それでもわたしには
心配事があり
出てくる言葉はつっかえて
よくあること
ありもしないこと

だからなにかのおまじない
それがあなたならなおのこと

もしも
大切なひとへの便り
悪い方角へ向かったら
それは思いがけない悪魔のしたたり

だからなにかのおまじない
金輪際来ないでおくれと
夕暮れ歩く自分の姿に
小さく✕と書きました

 
 
2022年10月

母さんは簡単に言う

ポエトリー:
 
「母さんは簡単に言う」
 
 
友達の頬と思って
軽くひっぱたけばいいのよ
母さんは簡単に言う 
 
そんなことだからあなた
いつまでも煮え切らないのよ 
 
でも母さん
僕には手がないんだよ
食事をしているのは箸で
字を書いているのはペンで
南中しているのが太陽で
そのどれもが僕の手ではないんだよ 
 
夕食をつくる母さんを横目に
僕は今日も
生きることを考えている
珍しいことでもなんでもなく
 
 
2023年3月

The Record / Boygenius 感想レビュー

洋楽レビュー:

『The Record』(2023年)Boygenius
(ザ・レコード/ボーイジーニアス)

 

ジュリアン・ベイカー、フィービー・ブリジャーズ、ルーシー・ダッカスという女性シンガーソングライターによるユニット。ロックの復権が叫ばれて久しいが、過去のロックと異なるのは活きのいいのがほとんど女性ということ。特にこの3人はインディー好きにはたまらない組み合わせのようです。僕はフィービー・ブリジャーズぐらいしかまともに聴いたことがありませんが、このアルバムを聴いていると他の二人のソロ作も気になってきます。

まずもってシンプルにアカペラで歌われるオープニングのコーラスがよいです。そこからロック・チューンの『$20』への流れもいいですね。最後の咆哮はブリジャーズでしょうか。YouTubeを見ていると、1番2番3番と順番に歌うパターンが多いです。曲作りを行った人が1番を歌っているような印象ですね。いずれにしても誰かが突出してということではなく、まんべんなく。この辺りの民主的な態度は世代観が現れているのかもしれません。

3曲目からの3曲はそれぞれのソロ作ですね。『Emily I’m Sorry』がフィービー・ブリジャーズ。『True Blue』がルーシー・ダッカス。『Cool About It』はジュリアン・ベイカー作で順番に歌っています。彼女たち3人の最大の魅力はこの辺りのしっとりとした曲でしょうか。個人的には『True Blue』が一番好きです。この曲はミュージック・ビデオも素晴らしいですね。ダッカスの落ち着いた声がぴったりハマってます。そうですね、ブリジャーズの意味深な声、ベイカーの幼さの残る声、ダッカスの少しくぐもった声。一聴すると近いんだけど微妙に異なる3人の声質が順番に流れてくるのもこのアルバムの魅力です。

YouTubeには彼女たちのライブが幾つかアップされています。音源のみを聴くのもいいですが、それぞれ別個の立ち居振る舞いと互いの信頼感が伝わる絶妙な距離感を映像で見るのは何とも言えずよい気分になります。勿論、それぞれが優れたソングライターなので曲自体も素晴らしいのですが、ボーイジーニアスは3人の佇まいも含めての魅力なのだと思います。なので、ミュージック・ビデオやライブ映像も是非見てほしいですね。

音楽をする理由というのが明確にあって、それを理解し支持する人たちがいる。そういう様子を見るのは単純に素晴らしいです。日本で言うと、あいみょんみたいな作家性のあるソングライターが3人横に並んでいる感じでしょうか。そりゃ素晴らしいに決まってますね(笑)。

四肢

ポエトリー:

「四肢」

 

信じられないかもしれないけど
腕がたくさん生えて暗闇のなか
バタバタと手、伸ばしても
あなたには届かない

信じられないかもしれないけど
背中じゅうに羽が生えて自由飛行
大空へ羽ばたいても
あなたにはたどり着けない

信じられないかもしれないけど
この足は獣より早く
大地を蹴り上げても
あなたを見失う

けれどこの世に生まれた証
あなたを求め生まれた四肢

腕がもげて
羽が引きちぎれて
足が棒になっても
水しぶき上げてもがいてみせよう
すべては他ならぬあなたのため

 

2022年2月

果物の王

ポエトリー:

『果物の王』

 

果物の王はりんご

あめつちの王はりんご

バナナやブドウを従えて

みかんという民がいたりして

メロンという彼の国の王がいたりして

ザクロという元の国の王がいたりして

山育ちのクルミは時折街へ降りて来て

落花生は抜け殻で昼寝中

お手伝いの松の実は待ちくたびれて

パイナップルは季節を間違えて

キウイはいつも毛並みを気にして

冗談なんか言うポテトの山

だいたいいつもカボチャは退屈で

柿は今日も筋肉痛

パプリカは頑なで

三色揃って頑なで

芸のない大葉は頑固者

わたしらの今日あるのはあの人のおかげだよ

さくらんぼの実は種まで生きる

果物の王はりんご

あめつちの王はりんご

赤いりんごはレッドです

 

2017年10月

The 1975 At Their very best 大阪城ホール 感想

The 1975 At Their very best – Japan 2023 大阪城ホール 4月30日

 

4月24日から始まったThe 1975のジャパン・ツアー、東京、横浜、愛知と来て本日の大阪が最後になります。しかし凄いね、東名阪5公演のホール・ツアーを完売させるなんて。しかも当日は立見席も急遽用意されていました。大阪城ホール周辺にはThe 1975のTシャツを着た人があちらこちらにいる。こういう風景を見ると、気分も盛り上がりますね。

18時5分、ホール内にエルヴィス・プレスリーの『ラブ・ミー・テンダー』が流れ観客は総立ち。その後は映画音楽のようなのがかかってました。後から情報によると、レディオヘッドのジョニー・グリーンウッド作品のようですね。ジャパン・ツアーは例の大掛かりな家のセットではなく、シアトリカルな演出だという前情報があったので、ジョニーの曲もその一部と化していました。とそこへマティ登場。大歓声です。腰掛けて早速ウィスキーみたいなのをあおります。おちょこではなかったのね。

大画面には「Atpoaim」の文字が。これも後情報ですが、「A Theatrical Performance Of An Intimate Moment(=親密な瞬間の劇場的なパフォーマンス)」の頭文字だそうです。最近バンドが公開しているショート・フィルムの名前なんだそう。

ライブの感想を大雑把に言えば、貫禄の大人なライブといったところでしょうか。こっちはマティの挙動不審さとか危なっかしさを折りこみですが、それとは真逆の安定のライブでしたね。ジャパン・ツアー最終公演ということでどっちに転ぶのかなと気にはしていたのですが、安定の方に転びました。多分、喜んでよいのでしょう(笑)。東京から始まって各公演でいろいろな顔をみせていたようですが、大阪はちゃんとした大人なマティでした。

バンドの演奏も安定感バッチリ、曲と曲つなぎも工夫されていてもう盤石ですね。今回は気のせいかアダムのギター・プレイが印象に残りました。アダムは前へ出てくるプレイヤーではないのですが、アレンジがいつもと違ったのかもしれませんね。アレンジと言えば、『Sincerity Is Scary』はオルガン風のキーボードが際立ってました。いつもと異なる曲の表情が出ていてとても良かったです。

ツアー・タイトルどおりのベリー・ベストな選曲だったのですが、個人的には女性ボーカルが加わった『About You』から『Robbers』の流れが良かったです。『I Always Wanna Die (Sometimes)』のクライマックス感も強く印象に残りました。この日のマティにおかしなところはなく(笑)、きちんとショーを全うしていましたね。ていうか歌が上手いのを再確認しました。今日も格好よかったです。いつもベラベラ喋るMCが少なかったのは残念だったかな。ちょっと前に要らん事を言った穴埋めか、『Guys』の「~Japan」のくだりだけを歌ったのには笑ってしまいましたが(笑)。

会場もすごく盛り上がっていてイイ感じだったと思います。僕はスタンド席の最後尾から2列目だったのですが、端っこのこの席でも皆テンション高くて、踊ったり騒いだり楽しんでました。もちろん僕もはしゃぎっぱなし、目いっぱい楽しみました。

今回は5公演だったので、大阪に至るまでの各公演の状況をTwitter上で読むのも楽しかったですね。まるっとThe 1975に浸ったⅠ種間の最後の締め、楽しい時間を過ごすことが出来ました。次はもうちょっと奮発してアリーナ席へ行こうかな。やっぱ近くで観たいぞ!!