Month: 1月 2023
詩への向かい方
Only The Strong Survive / Bruce Springsteen 感想レビュー
洋楽レビュー:
『Only The Strong Survive』(2022年)Bruce Springsteen
(オンリー・ザ・ストロング・サバイブ/ブルース・スプリングスティーン)
2020年の『レター・トゥー・ユー』以来のアルバムはブルースが若かりし頃に愛聴していたというR&B、ソウル・ミュージックのカバー・アルバム。僕は元歌を全然知らないが、カバーであろうが何だろうが圧倒的なボスの声がある以上、こちらの感触としては変わらずボスのアルバムである。古き良きポップ・ソングに倣ってストリングスやホーンセクション、コーラスもふんだんにゴージャスなサウンド。と言ってもそこはボス。時折E・ストリート・バンドっぽさを覗かせることも忘れちゃいない。流石、ファンの気持ちをよく分かってらっしゃる(笑)。
それにしても73才を迎えても素晴らしい歌声。元々、3時間でも4時間でもライブができる強い体と喉を持っている人ではあるけれど、シンガーというよりシャウターというスタイルなだけに、長年の喉の疲労も相当あるはず。本作の告知を兼ねたTV出演を見ていると、流石にかつてのガタイはなく随分とほっそりとしてきたけど、声の方は相変わらず元気。昔懐かしの歌謡ショーではなく、ちゃんと今現在にフィットしているのはブルースの張りのある声があってこそ。プラスこれがアメリカのポップ・ソングの下地の強さでもあるのあろう。
あとやっぱり歌が上手い。聴いてるとこの辺りの曲はもう完全に歌が主役で、歌が前にあって演奏が後ろにあるのだけど、つまりブルースがこのアルバムに取り組んだのもなんとなく分かるというか、俺だってこれぐらい歌えるんだぞっていうかむしろ歌いたいっていうか。昔好きだった曲というのもあるだろうけど、そういう歌に対するパッションが根底にあるのがこのアルバムを前向きなものにしているのだろう。
それにしてもボーカルだけを抜き取ってもブルースは凄い。結局ソウル・ミュージックだし、歌うより叫ぶところもあったりするのだけど、声量もさることながらソウルフルなボーカルは流石。ホント、歌がリードしています。あと歌が主役とはいえ、もちろんサウンドも素晴らしいからちょっと聞き耳を立ててみると、それはそれで気持ちがいい。よいオーディオとスピーカーがあればもっと最高なんだろうな。
2023年にE・ストリート・バンドでのツアーを開始するとの公式アナウンスがあった。6年ぶりだとのこと。バンドと作った『レター・トゥー・ユー』からの曲も沢山演奏するのだろう。E・ストリート・バンドとのライブだってあとそう何回もあるものではない。ましてバンドを連れて日本に来ることはもうないのだろう。あのブルースだってちゃんと年を取るということを胸に刻みつつ、これからの作品もしっかり聴いていきたい。
2022年 洋楽ベスト・アルバム
蘇生
ポエトリー:
「蘇生」
隊列から離れるに従って
雲がさまざまな形に変わっていった
他に何にもすることがなかったから
庭先に立ってじょうろで水をやろうと思った
精神的な自立は光合成
大きく伸びてよく育つ
焦って取ってしまわないでね
誰にも時期はあるのです
「あなたは、夜中にヒドイ夢を見て飛び起きたことがある人」
身に覚えのない手紙のようにそう言われてもピンとこなかった
これは誰からの手紙?
庭先に立ってじょうろで水を撒いたのは
他に何もすることがなかったから
額の汗を拭って透明になることを願った
今朝は太陽が眩しかった
2022年6月