I Don’t Live Here Anymore / The War On Drugs 感想レビュー

洋楽レビュー:
 
『I Don’t Live Here Anymore』(2021)The War On Drugs
(アイ・ドント・リブ・ヒア・エニモア/ザ・ウォー・オン・ドラッグス)
 
 
ウォー・オン・ドラッグスの場合、いつもブルース・スプリングスティーンが引き合いに出されるが、本当にそうだろうか。ウォー・オン・ドラッグスにはサックスもオルガンもないし、なによりあの派手でエネルギッシュなボーカルはない。それでもやっぱ似ていなくもない。と考えていると、あぁそうだ、90年代のスプリングスティーンがEストリート・バンドから離れた『Lucky Town』や『Human Touch』の時期、あの頃の雰囲気はあるかもしれないと。でもそれってブルース唯一の低迷期や~ん。
 
ま、でもそうではなくて僕のイメージではオルタナ・カントリー、ウィルコの並びですね。ただウィルコほどの洗練さはなく、もっと土臭い、ハートランド・ロックなんて言われていますが、でもその分野で考えても、ウォー・オン・ドラッグスはちょっと違いますね。サウンド的にはエレクトリカルな部分もあったりかなり新しいことをしているのだとは思いますし、あぁそうだ、やっぱ彼らは土臭い田舎が嫌で都会でなくともいいからとにかく別のところへ行きたい感はあるかも。ってことで僕がわりかし彼らを好きなのは同じく閉鎖的な地元から早く抜け出したかった自分と合致するのだなと、あぁ、ここにきて合点がいった。
 
しかもこのアルバムでは更に聴きやすくなっている。気づいたら、親密なバンド感もあるし、2020年代的なポスト・ロックとしても側面もあって、かなり守備範囲の広いアルバム。なんてったってメロディがいいし。あとはもうクセがなさそうでクセがあるボーカルに好き嫌いが分かれるぐらいだろう。なんだそれ、ダッド・ロックじゃんって思わせながら、そういうのとは対極にある実はめっちゃ新しいロックじゃないかこれは。ビリー・アイリッシュやオリヴィア・ロドリゴと並べて聴いても違和感なし!

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