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「平成万葉集」感想
昨年の師走にNHKで放送されていた「平成万葉集(再放送)」。今まであまり短歌に馴染みが無かったのですが、番組を見て心が揺さぶられるのを感じました。
それは書き手の生々しい声があって、言うなれば血の通った言葉だったからなんですね。切ればザクッと血の出るような生きた人間の生きた言葉。番組で紹介された句はプロの方のものもあれば素人の方のものもある。でも問題はそこではないんですね。
番組は「ふるさと」、「男と女」、「この国に生きる」というテーマで3回に分けて放送されました。その最後の「この国に生きる」で語られた’短歌は心の底荷(バラスト)’という言葉が心に残りました。
バラストとは船底に積んで、船を安定させるための重量物のことです。番組で紹介された人々は皆それぞれの思いを胸に短歌を書いてきました。つらい体験。悲しい出来事。どうにもならない現実。それらを短歌にすることでなんとか命を繋いでゆくことが出来たという方も一人や二人ではありません。
これは僕の想像でしかありませんけど、恐らくどんな状況であってもよい短歌が出来ると嬉しいんですね。出来た、とその一瞬だけでも心が軽くなる。たとえつらい事に端を発した短歌であっても、瞬間出来た喜びに満たされる。その小さな喜びの積み重ねが、もしかしたら自分自身を癒す効果があったのではないか。そんな風に思います。
番組を見た後、お正月を迎えた僕は友人たちと久しぶりに地元を散策する機会がありました。僕は紙と鉛筆を用意し、彼らと一緒に歩きながら短歌を詠み合うという遊びを試みました。
友人たちは僕の提案にのってくれました。皆で短歌を作りながら昔懐かしい町を歩く。皆楽しんでくれたと思います。案外、短歌って身近なものかもしれないですね。