「いだてん」第22回 ヴィーナスの誕生 感想

TV Program:

「いだてん」 第22回 ヴィーナスの誕生 感想

 

先日電車に乗っていたら、大阪駅で前に立っていた旅行者が「次降りる方がよか」「降りるばい」と言っていたのを聞いてわたくし、「リアル熊本弁や!」と心中大阪弁で興奮した覚えがございます。個人的には昨年の「じゃっどん、ほなこつ」より「よかですばい!」の方が明るくていいですね。ま、言い方によるか。

先々週の第20回「恋の片道切符」で金栗四三のオリンピックを巡る物語は一旦終了。先週の「櫻の園」からは急転直下、四三の女子スポーツ普及にまつわる話にひとっ跳びです。この変わり身の早さ、いいですねぇ。その第21回「櫻の園」。廃墟のベルリン女子の「くそったれ!」で始まり、黎明日本体育女子の「くそったれ!」で終わるという本大河屈指の痛快回でございましたが、今回の第22回も名場面続出の素晴らしい回となりました。

出だしは志ん生こと若き日の美濃部孝蔵。変名を繰り返した志ん生ですがこん時の名前はなんだったか。ようやく真打ちに昇進したものの相変わらずの放蕩三昧。見かねた小梅が孝ちゃんに無理くり見合いをさせます。で、その相手がちょいといいとこのお嬢さん、かどうかは怪しいりん。ちなみに後年のりんを演じているのが中尾彬の「おい、志乃」でお馴染みの池波志乃さんで、志乃さんは本物の志ん生の長男、金原亭馬生の娘ですから志ん生直系の孫娘様なのです。ってそんなこと知ってるって?

前回、東京府立第二高等女学校に着任した金栗四三。女子スポーツの普及に四苦八苦していたいだてんですが、もうすっかり打ち解けて思う存分女子スポーツの普及にいそしんでいます。と話しは進み、四三先生の生徒の興味はもっぱらテニス!てことではるばる岡山へテニスの遠征へ行きます。そこで出会ったのが後に日本女子オリンピアン第1号となる人見絹枝。その人見に四三の生徒たちはコテンパンにやられます。

が、人見の有り余るスポーツの才能にほれ込んだ同行していたシマ先生、人見に向かって、日本陸上界の第一人者である四三の元へ来てはどうかと熱心に口説きます。最初は渋っていた人見もシマの熱意にほだされ、四三に脚の状態を見せることになる。裾を上げて脚を出そうとする人見に四三は「いやいや、見せんでよか。触れば分かる」と人見の脚にふれようとした刹那、人見は我に返り四三にハイキック!うずくまる四三を横目にスタコラと人見は去っていく…。

この時の描写、良かったですね。人見のハイキックはスローモーションとなり、ワイヤーアクションのように四三が吹っ飛ぶ。人見さん、まるでマトリックスのトリニティー!!で、映像おもしれぇーってなるところで同時に我々視聴者は人見のシャンな(=美しい)ハイキックにとつけむにゃあ運動能力を視覚的に理解するわけです。こりゃ確かに触らんでも分かるなと。

東京へ戻った四三一同は日本初の女子による運動競技会を開催します。ところが第二高等女学校のエース村田富江は新調したスパイクが足に合わない。ってことでその場で黒のハイソックスを脱いでしまいます。なんせ女子は肌を見せちゃいかんという時代ですから、先生、生徒、日本初の女子運動競技会の取材に来ていた記者などなど、競技場全体がどよめく事態となります。が、当の村田は素知らぬ顔、最初は戸惑いの表情を見せた四三も大きくうなずき、見事村田は優勝をかっさらっていきます。

しかし女性が脚を出して走り回ったということが新聞紙上に踊り、大問題に。しまいにゃ、村田の写真が卑猥な写真として露店で売られる始末。それを売ってるのが美川ですよ。忘れたころに出てきますよねぇ美川くん。スヤには本当に忘れられていましたが、我々も本当に忘れそう。でもね、多分ですよ、この美川って人はやっぱ我々なんですよ。同じ遊び人の孝蔵は憎めないのに、美川が憎たらしいのは、そこに自分自身を見るからです。胸に手を当てると誰だって美川くん的な一つや二つあるわけです。そういう現代人っぽい普通の人、ちょっと露悪的に描かれていますが、美川は我々なんだと思います。

で間の悪いことにその写真が村田の父親の知るところになってしまい、父親は第二高等女学校へ怒鳴り込んできます。女子が脚を出すとは何事か。こんなことをしてどう責任を取るんだ。だいたい女子にスポーツをさせるなどと…。最初は殊勝に聞いていた四三先生ですがここで遂にブチ切れます。

「なぜ、女が悪かとですか!」、「それは君、好奇の目にさらされる」、「それは男が悪か!女子が靴下履くのではなく、男が目隠ししたらどぎゃんですか!!」。もういだてん屈指の名場面でしたね。物語中、ここまで四三が怒ったのは初めてじゃないですか。この言葉の力、これほど四三がリアルに感じられたのは初めてでした。「いだてん」では2019年現在に投げかけられたような言葉が随所に見られますが、今回のこの言葉は正にそうでなかったか。それぐらい魂のこもった声でした。

物語の最後、学校をクビになった四三先生を辞めさすまいと女生徒たちが教室に立てこもります。一歩も引くそぶりを見せない女生徒たちに、遂に四三が動き出す。さて、どうなる!ってとこで続きは次回へ。ん?次回はいだてん、金八先生になる、か?!

Leave a Reply

Your email address will not be published. Required fields are marked *

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)